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2026/10/19

くまもりNews
西中国山地のツキノワグマ、推定生息数は約27%減少する一方で分布域は拡大「ドーナツ化」と奥山の異変
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島根・広島・山口3県にまたがる西中国山地で、ツキノワグマの推定生息数が減少する一方、分布域が広がっていることが2025年度調査で明らかになりました。
公式資料によると、2020年度の推定生息数は767~1,946頭、中央値1,307頭でしたが、2025年度は690~1,290頭、中央値950頭。中央値で357頭、約27%減少しました。一方、分布域は約8,200平方キロメートルから約8,600平方キロメートルへ、約400平方キロメートル拡大しています。
今回の調査では、3県に設置した225台のカメラによる個体識別数、撮影回数、位置情報などから生息密度を推定。分布域は、過去5年間にメスが捕獲された場所や、4年以上目撃が続いた地域などを基に設定されています。行政資料では、減少の原因は今後、有識者が評価・検証するとしており、現時点で確定していません。
●「分布域が広がった=クマが増えた」ではない
近年、クマの出没地域が広がると「個体数が増えた」と受け止められがちです。しかし西中国山地では、推定生息数が減少しているにもかかわらず、分布域は外側へ広がっています。
科学部会で次期管理計画の議論に関わる金井塚先生は、この状態を「ドーナツ化」が進んでいると考えています。奥山の中心部で生息密度が低下する一方、人里に近い外縁部でクマの活動が目立つようになる現象です。
RCC中国放送の取材でも金井塚先生は、奥山での生息密度が下がり、出没範囲が広がっていると説明しました。山全体でクマが一様に増えた結果として分布が広がった、と単純に捉えることはできないという指摘です。
●広島の梨園で続く深刻な被害
RCC中国放送は、広島県三次市の梨園でクマによる食害が続き、農園によっては一晩で275個のナシが食べられたと報じています。
農家では大音量のラジオ、唐辛子や木酢液、忌避剤、焚き火、花火など様々な対策を続けていましたが、被害は止まりませんでした。金井塚先生は、クマは状況を判断する能力が高く、音やにおいだけではすぐに慣れてしまうと指摘。当面の対策として、くぐられないよう適切に設置した高電圧・低電流の電気柵が有効だとしています。
さらに、里山の資源を再び人が利用する仕組みをつくること、奥山の豊かさを取り戻すことなど、農家だけに負担を負わせない長期的な対策が必要だと訴えました。
●今年の山の実りと、現地で見えている異変
2026年度の行政の豊凶調査では、西中国山地全体でミズナラとクマノミズキが凶作、コナラが並作とされています。一方、20キロメッシュごとの結果には地域差があり、調査資料も一部地域ではコナラの凶作によって出没が増える可能性を指摘しています。
金井塚先生が広島県内で実際に確認している地域では、ミズナラ、コナラ、クリなどの堅果類に加え、ミズキやサルナシなどの液果類も不作・凶作で、植物質の食べ物が深刻に乏しい場所があるといいます。
トラスト地を取材クルーと歩いた際には、クマが朽木を崩して中の昆虫類を探した痕跡が目立ち、取材中にもクマが朽木を倒すような音が聞こえたそうです。栽培品種のクリに食痕が確認された場所がある一方、集落内のクリには痕跡が見られない場所もあり、「実があるからクマが人里に来る」と単純には説明できません。
●問題は「餌不足」だけではない
金井塚先生は、今年の餌事情は深刻である一方、クマ問題を餌の多少だけで説明することにも注意が必要だとしています。「西日本のクマの主食は液果類」と固定的に捉えることも正確ではなく、クマはその時々の実りや環境に応じて食べ物を変えるからです。
大切なのは「今年何が実ったか」だけでなく、奥山の森林環境が長期的にどう変化し、なぜクマの生活圏が人里側へ移ってきたのかを見ることです。
3県は2027年度から5年間の次期管理計画を策定する予定です。環境省の新たなガイドラインを受け、市街地や農地などの生活圏を「排除エリア」、その周辺を「管理強化エリア」とし、人里への侵入や定着を防ぐため捕獲を強化する方向が示されています。金井塚先生は、個体数管理を中心とするのではなく、生息地の保全を主とした管理への転換を訴えてきました。
金井塚先生は、出没個体の捕殺が進む一方、今後は出没する個体自体が少なくなり、5年後には現在の管理方針の見直しを迫られる可能性もあると見ています。
「何頭いるか」だけでなく、「どこで、どのように生きられているのか」を見る。西中国山地で起きている個体数減少、分布拡大、人里での出没を一つのつながった現象として捉え、奥山の保全・再生と人とクマの棲み分けを進めることが必要です。

金井塚先生は、こうした背景を著書『奥山を捨てたクマ―大量出没の謎を解く』でも詳しく論じています。短い報道だけでは伝わりにくいクマ出没の背景を、長期的な森林環境の変化から考える視点が、今こそ求められています。

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