2022/03/31
くまもりNews森林環境譲与税は、自治体の関係団体が持つ準備金を元手に2019年度から先行スタートし、毎年200億~500億円が、都道府県と市町村に譲与されてきました。
元々、森林環境譲与税は、戦後の林野庁の拡大造林政策で林業用に造林されたスギなど針葉樹一辺倒の人工林の大半が放置され、林内が真っ暗になって大荒廃しているのを、間伐などで整備し、林業の担い手の確保、国産木材の活用推進などを目的に創設されようとしたものでした。
しかし、森林環境譲与税の配分が、50%が「私有林人工林面積」、20%が「林業就業者数」、30%が「人口」の比率によって配分されることになったため、2019年度の配分は、
1位 横浜市(約7104万円) 2位 浜松市(約6067万円) 3位 大阪市(約5480万円)
などと、人口の多い政令指定都市に多額の税が支給されることとなってしまいました。
反対に、荒廃した人工林を多く抱え何とかしたいと思っているのに数百万円しか支給されない市町村があったりしました。
森林環境譲与税はいよいよ2024年度(令和6)から1人年額1,000円が住民税に上乗せする形で課税され、約6千万人分計600億円の税が毎年、国から都道府県・市町村へ譲与され、本格的に実施活用される予定です。
朝日新聞2022年3月12日記事の要約:森林環境税を何に使っていいかわからず、5割余りが使い残されている。2月に自民党の農林関係議員が集まったプロジェクトチームの会合で議題となったのは「森林環境譲与税の活用状況」で、与党内で税の配分見直しが議論に上がっている。
■熊森から■ 熊森は、税の見直しに賛同します。すでに、林業には多額の税が投入されています。
2014年に林業用に投入された国税 白井 裕子 : 慶應義塾大学准教授資料より
木材生産額 2000億円 林道、造林の行政投資 3000億円 治山 2000億円 砂防 3500億円 河川 1兆5000億円
熊森は2019年、森林環境譲与税は林業のためだけに使うのではなく、林業不向きの奥山に造林されて放置されている荒廃人工林の天然林化にも使えるようにしてほしいと、会を上げて大運動。衆参国会付帯決議に「森林環境譲与税は荒廃人工林の天然林化にも使える」という文言を入れてもらうことに成功しました。
しかし、熊森が当時、全国市町村に聞き取ったところ、都道府県市町村担当者には、突然上から降りてきたこの税の使い道がわからず、困惑気味のところが多くみられました。
「森林環境譲与税の使途グラフ」熊森調べ 2020年5月7日 熊森ブログ記事より
どうも、今も使途に進展がないようです。
大きな原因は、ほとんどの行政担当者が、日本の奥山が大荒廃していることを知らないことだと思います。
熊森は、都市に配分された使い道のない森林環境譲与税は、他市町村にあるその都市の水源の森の整備や広葉樹林化に税を差し出して、有効活用するようにと行政にお願いし続けてきましたが、なかなかこのような取り組みも進んでいないようです。
本格投入を前に見直し議論が出てきている森林環境税。与党の農林部会での税の配分見直しに期待するとともに、600億円にしか過ぎないこの税は、林業抜きで、名前の通り、大荒廃して野生生物が棲めなくなっている奥山人工林の天然林化という森林環境の改善に、毎年、全額使ってもらいたいです。
熊森がめざしているのは、水源の森である
・奥山の保全 ・奥山の天然林化 ・奥山の大型野生動物完全保護区化
です。これなくして、日本文明の存続はありません。
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