2022/11/04
くまもりNews10月8日(土)
(公財)奥山保全トラストが所有する宮崎県高千穂トラスト地で、奥山保全トラストと日本熊森協会が合同で、皆伐跡地で自然林の再生がどのように進んでいるのか調査することになりました。
トラスト地看板
高千穂は天孫降臨の地ですが、この辺りの山は戦後の拡大造林政策によって、今やスギの人工林で埋まっています。この地をなんとか少しでも元の保水力豊かな自然林に戻せないものかとの思いから、2009年、奥山保全トラストが、標高500-600mにある約2ヘクタールの人工林の皆伐跡地を購入しました。皆伐跡地の頂上部には自然林が少しだけ残されていました。
白破線内が購入当時のトラスト地
この年、さっそく購入した山の下の部分に、実のなる木の苗を植樹しました。2010年の夏には下草刈りも実施しました。しかし、よく見ると、植えた覚えのない多様な芽生えが苗木よりも元気に育っていました。この地域では植樹などしなくても自然再生で森に戻るのではないかと思い、植樹をやめて様子を見ることにしました。
あれから12年が経ちます。
今回の調査参加者は、指導してくださる広島フィールドミュージアムの金井塚務先生、両団体の職員、日本熊森協会本部応援隊、宮崎県支部(チームくまもり)のボランティアの方々、計8名です。
方形調査とは正方形の調査区画を設定して、その中で生育している植物の状況を記録するものです。年単位で継続して行うことで、年ごとの植生変化を明らかにし、森を再生する過程で何がどう変わったか明らかにするのが狙いです。まず初めに、金井塚務先生に、調査のやり方や植物の種類判別を現場で教えて頂きました。
赤線内が現在のトラスト地
現場は想像していたより遥かに急斜面!そこを杭などの道具を持って上がるのはとても疲れました。移動しながらの測定調査では、気を抜くと斜面を転げ落ちてしまいます。時には滑り落ちながらの調査となりました。
斜度、38度!
方形作り
基準点を決めて杭を打ち、GPSに記録。基準点からコンパスグラスを使い、最初に張ったロープから角度90度の位置を定め、そこに杭を打つ。これを繰り返して15m×15mの正方形を作り、その中で5m×5mの合計9区画のメッシュを作成し、杭を打ってロープを張る。場所を変えてこれを2か所作ります。
赤い杭を打ち
ロープを張っていきます
ロープで正方形を作る
調査
各5mメッシュ内の胸高直径1cm以上の木本を調査対象とする。樹木の位置、樹種、太さ、高さ、その他気づいたことを記録用紙に書き込む。
樹木の種類を同定する必要があるので、図鑑が必要。分からない場合は写真を撮り、位置を明確に記録して後で調べる。
樹木の太さを測定しています
今回は上部と斜面下部の2ヶ所で調査を行いました。
斜面上部
元々自然林だった場所で、シイ類・カシ類など常緑の広葉樹が優占種。大部分がアラカシで、シラカシ、ウラジロガシ、スダジイなどが混ざっており、この地域の本来の植生と思われます。他にツバキとケヤキも生育していました。下草はほとんどありませんでした。
斜面下部
皆伐跡地には既に人間の背丈を超える高さにまで木々が育っており、アカメガシワが優占です。他にタラノキやカラスザンショウが生えてきていました。皆、皆伐跡地にいちはやく入ってくるパイオニア種(先駆種)である落葉広葉樹です。その間にハンノキ、エゴノキが入り、林床にはアオキが多く生えていました。やがてこの場所も、上部と同様、常緑の広葉樹林に遷移していくものと思われますが、地球温暖化が進む今、森の遷移はこれまでと違ってくることも予想されます。
記録用紙
今後はデータロガーを用いて温湿度、水温を記録し、植生との関連等を考察したり、自動撮影カメラを設置して、この地に生息する野生動物を撮影して、森がどのように再生されていくのか継続調査していくことになりました。最後に、今回の調査に参加してくださったみなさんと、地元のすばらしい林業家である興梠さんを訪問し、お話を聞かせていただきました。
左から2人目が興梠さんと調査に参加してくださったみなさん
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