2026/05/05
くまもりNews一体、昨年のクマ大量出没は何だったのでしょうか。当時、一部のクマ専門家が、東北地方の山の中でクマが増えてあふれ出してきたと断言したため、多くのマスコミがこの説を流しました。環境省も、クマが増えていることを前提に捕殺強化を進めています。その結果、地元行政も多くの国民も、クマが増えたと信じてしまっています。
自然界のことは複雑すぎて、人間の頭ではわからないことがほとんどです。その上、そもそも日本の自然は地域によってかなり違っています。メディアには、多様な声を取り上げていただきたいです。
以下は、山形県に生まれ育ち、東北の山を見続けてきた登山ガイドでもある熊森会員の八木氏が、昨年10月に本部へ送ってくださったものです。
山を歩いていると、この秋はブナの実が全く稔っていません。研究者の方々は前年の秋の段階で予測するそうですが、私の場合は春先のブナの枝先の芽の膨らみ方で判断します。花が咲いて秋に実が稔る年の春先の芽は、丸く膨らむのです。昨年はまずまず実が稔ったのに、今年は膨らんだ芽がなかったので、秋に実がならないことは想像できていました。
今年は全国的に人里へのクマの出没が増え、毎日のように全国どこかのことが話題になっています。クマの出没とブナの実の稔りとの間には、ある程度の相関関係があるようで、それは「有害鳥獣」として駆除されるクマの個体数となって表れます。環境省の統計によれば、山形県で昨年度駆除されたクマの頭数は240頭でしたが、今年度は10月6日までで404頭にのぼっています。昨年はブナの実がけっこう稔った「並作」、今年は「凶作」となっていることを反映しているようです。今年はブナに加えてミズナラやコナラ、いわゆる「ドングリ」類もほとんど稔っていないので、山でクマが食べるものがほとんどないことが、出没数の増加に影響していることは間違いありません。
環境省はホームページで全国のクマの駆除数統計を公開していますが、今年度は10月6日までの段階で4226頭のクマが駆除されています。2008年度からの統計を見ることができますが、1370頭だった年度もあることからすれば、今年度の数値は、まだ年度の途中であることを考慮しても、かなり大きい数と言えるでしょう。
クマが人里や街中まで出てきて、人身被害をもたらしていることは憂慮すべき事態です。しかし報道を見ていると、クマが一方的に悪者扱いされていて、クマが人里に出なければならない背景に迫るものがないように感じられます。
今、地方では山林の荒廃が問題となっています。1960年代から拡大造林事業が展開され、里山の自然林はスギやヒノキの人工林に置き換えられました。しかし、それから数十年たち、海外からの輸入木材が安く利用されるようになるのに伴い、地方の人工林は半ば放置されるようになりました。個人で山林を所有していても、富を生み出すことのない「負の財産」となっていきました。山林の持ち主の世代が代わると、自分の持ち山がどこにあるのかもわからなくなってしまうことさえあるようです。
そうした状況につけ込むように、山林の木をチップ用に買うとか、太陽光発電や風力発電のための敷地として借り受けるなど、民間企業が手を伸ばし始めたのです。
山林の木を伐り出すために、まず道路を切っていきます。そしてその道路が目的とする山林まで届けば、そこに育っている木々を皆伐していくのです。そうなれば、木々が育っていたことで保たれていた森林の保水機能や土砂流出防止機能が破壊されてしまいます。「再生可能エネルギー開発」の美名のもとに、もともとそこに棲んでいた野生動物たちの生息環境も壊されてしまうのです。
また、地方では過疎化が進み、以前は住んでいた住民が都市部に移り、かつての山里は人の気配がなくなっています。そうなれば、山の動物たちが自分たちの活動域を山から里へと広げてくるのは、自然の成り行きでしょう。そしてそこに、市街地からの「通い」で畑作物や果樹を栽培していれば、それらは動物たちにとって格好の食料になるのです。
私がお伝えしたいのは、クマを含めた野生動物たちの行動の変化の背景には、私たち人間の生活の変化があり、そこに起因する問題の解決なしに、「出てきたら殺す」ということに終始していては、本質的な解決にはならないということです。
私はかつて、山形県内の自然保護団体を代表して、県の「特定鳥獣保護管理検討委員会」の委員を委嘱されていました。その会議の中で、「目先の駆除だけではなく、長い時間がかかっても、人と野生動物とが棲み分けるための対策を進めなければならない」と主張していました。しかし、そうした意見は会議の中では少数派で、県は聞く耳を持たないといった状況でした。その結果が、山形県内で今世紀に入ってからの25年間で捕殺されたクマの頭数が7,008頭にものぼることにつながっているのです。
クマをはじめとする野生動物たちは明らかに、私たち人間より先住者です。何万年も、何十万年も、自然の摂理の中で生きてきた彼らを、まるで邪魔者を排除するかのように駆除することに正当性はないと、私は考えます。
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