2022/01/22
くまもりNewsパブリック・コメントより
特定計画作成のためのガイドライン(クマ類編)の改定に関する意見の募集(パブリックコメント)について
マスコミが実態を報道しないので、ほとんどの国民は、現在、日本の野生動物たちが毎年大量に捕殺されている事実を知りません。日本の野生動物対応が捕殺一辺倒であることを知った方の中には、他生物の生命も尊重する以前のやさしい日本社会に戻せないのだろうかと、胸を痛めておられる方も多いと思われます。
そのような方は、ぜひ、環境省のパブリックコメントにご応募いただいて、国民としてのご意見をお伝えください。
環境省の資料を見ても、難しすぎてよくわからないという方々のために、1月21日、熊森本部では夜8時から夜9時半まで、オンラインで勉強会を持ちました。43名の方がご参加くださいました。
人と大型野生動物はどうあるべきか。一番大切なのは棲み分けです。棲み分けるためには、まず第一に、野生動物たちに生息地を保障する必要があります。現在、ここが全くできていません。西日本中心に、クマたちのかつて奥山生息地は大荒廃したまま放置されています。メガソーラーや風力発電によって、さらに生息地は破壊され続けています。第2に必要なのは、被害防除対策ですが、これも有効な対策はほとんどなされていません。野生動物対応政策は個体数管理(個体数低減)ではなく、棲み分けをめざして、①生息地保障、②被害防除の順に重点を置くよう根本的に政策転換することを環境省にお願いしたいです。
日本熊森協会は、大量捕殺を続けても人身事故は減らないし、野生動物の被害はなくならない。大事なことは生息地保障と被害防除。根本解決にこそ予算をかけるべきだと訴え続けてきました。
今回のガイドラインには一部、このような考え方も取り上げられており、引続き、いろいろな地域に広めていきたいです。
次に、クマ最前線の現場を調査し、現地対応を続けてきた水見竜也主任研究員から、特定鳥獣保護・管理計画の最大の問題点は野生動物の生命軽視であり、このような政策を続けていけば、人間社会も悲しいものになるという指摘を伴うレクチャーが30分間ありました。
①自然界のある特定の野生動物の個体数だけを減らしてやろうという特定鳥獣保護・管理計画は、もともと実現不可能な計画です。その証拠に、おびただしい数の野生動物たちが、シカ・イノシシ用のくくり罠に錯誤捕獲されています。くくり罠による錯誤捕獲の悲惨な実態は、長野県の小諸市が詳細に調査報告しており、もうこれ以上新たな実態調査は必要ありません。
くくり罠にかかったほぼすべての野生動物たちが、足を失うなどの残酷な障害を負ったり命を落としたりしています。クマがシカやイノシシを捕獲するためのくくり罠に錯誤捕獲された場合は放獣している地域も例外的にはありますが、3本足や2本足になって山に放されたところで、その後の生きる苦しみを思うと、胸のつぶれる思いです。
シカが奥山に入り込むと下層植生が消えてしまうので、シカが悪者になっていますが、もともとシカは林縁の草原に棲む動物です。シカの棲む草原を人間が住宅や農地としてシカから奪い尽くした結果、シカは行き場を失ってしまいました。
②ゾーニングは、西日本のような奥地にまで人が入り込んでいる地域では効果がありません。ゾーンの線引き場所は、考案した人間が知っているだけで、地域住民にもクマにもわからないため、ゾーニングしても棲み分けられません。
①残虐この上ないくくり罠を即刻廃止する。シカ・イノシシの捕獲には、箱罠や錯誤捕獲の起きない新たな罠を考案する。より野生動物にやさしい対策としては、使われなくなったスキー場やゴルフ場などの草原を、シカに開放してやり、シカ・イノシシを殺すのではなく、(現代版シシ垣で被害防除することが考えられます。殺さない獣害対策のエキスパートである井上雅央氏によると、クマ、サル、シカ、イノシシなどの被害防止は、女性がやればずんずん進むということですが)、過疎化高齢化した地元だけでは大変なので、くまもりがしているような都市からの惜しみない支援体制も考えていくべきだと思います。
②ゾーンの線引き場所に沿って電気柵や有刺鉄線を張り、クマに入ってはいけないゾーンを知らせるか、効果のないゾーニングはやめる。
熊森より
ガイドラインを読んで、こまごました気づきはいろいろとありますが、野生動物対応の方向性が根本的に間違っていることをまず正さなければならないと思います。環境省は、ガイドライン作成に当たって、熊森のような新しい考えを持つ者を委員に入れるべきだと思います。(完)
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まず最初に、室谷悠子会長から、我が国の野生動物対応の移り変わりや問題点について30分間レクチャーがありました。
以前、わが国では、野生動物は狩猟(11月15日から1月15日までの3ケ月間期間限定、スポーツ、レジャー)か、有害駆除(人間の農作物などに被害を与えたために行政から許可を得て捕殺する。期間限定なし)のどちらかで殺処分することができました。
しかし、1999年に法改正があり、狩猟と有害駆除に加えて、生息推定数が、人が考えた適正頭数よりも多くなっていたら、個体数調整という名目で、被害がなくても捕殺できることになりました。
ツキノワグマの場合、大量に捕殺し続けているのに、クマと人との人身事故は減らず、クマが市街地などに出て来る人とクマとの軋轢も深刻化しています。これは、野生動物の個体数だけに注目して、個体数を減らしておけばうまくいくと考えてきた1999年以降の野生動物対応である「特定鳥獣・保護管理計画」の背景にある考えに根本的な問題があります。
日本では野生動物の捕殺のために毎年莫大な予算をかけていますが、野生動物は捕殺して数を低減しても、すぐ、元の数に戻ってしまいます。