2022/04/19
くまもりNews日本には7種のシカが存在します。鹿児島県西之表市馬毛島の固有種であるマゲシカは、馬毛島にしか生存せず、今、防衛省が計画している馬毛島の基地化が実施されれば、間違いなく絶滅します。
以前の馬毛島
基地化が進む馬毛島
4月15日金曜日、マゲシカが生き残れるような基地計画に変更していただけるよう、森山名誉会長、室谷会長、熊森顧問の赤松先生と職員羽田が要望書をもって博多市にある九州防衛局の伊藤哲也局長を訪問しました。
森山名誉会長は、島の真ん中に真水がこんこんと湧き出しているところがあるので、その場所を残さないとマゲシカをはじめとする動物たちはは生き残れない。絶滅は取り返しがつかないことなので、何とか考えてほしいと強く訴えておられました。
伊藤局長は、「環境影響評価は防衛省主体で始まっていて、今は準備書の段階に入っている。防衛省としてはマゲシカを絶滅させることなく、保護区を設けて守っていく考えである。」と話してくださいました。
伊藤局長は私達の話に真剣に耳を傾けてくださいました
赤松顧問はいきなり、マゲシカを長年研究されてきた研究者に電話して、何か話しておられ、その後、電話を伊藤局長に回されていました。その場ですぐに事が運んでいくことにびっくりしました。
今回、九州防衛局行きに同行させていただくことになって、北大の立澤史郎先生の論文や、これまでの新聞記事など手当たり次第に読み込んで行きました。最後に、名誉会長が私、羽田に、発言を求められたので、
「国の調査では、マゲシカの生息推定数は700~1000頭とされているが根拠が薄く、保護区案も十分とは言えないないと思います。マゲシカはオスが草地、メスと子供が森林に棲み分けているということなので、生態学的に考えると、ただ土地を残すだけでは保全できません。馬毛島の前の持ち主が入島を禁止したため、もう22年間も生態調査がなされていません。今回、研究者の方を島に入れて、まず、詳細な現状調査をしてもらうべきだと思います。」と、発言させて頂きました。
ロシアのウクライナ侵攻を見てもわかるように、国の防衛は非常に重要なことです。だからといって種を絶滅させていい理由にはなりません。何事も人間だけの都合で動かず、野生動物と共存できるように最大限の配慮をしていくべきです。そのために声を上げ、行動していこうと思います。
■赤松顧問から■
赤松顧問がこの日のことをご自身のブログに書いてくださいました。以下にご紹介します。
2022年4月18日 · 7:45 AM 赤松顧問 「後の祭り回想記」
鹿児島県の種子島や屋久島に隣接して浮かぶ馬毛島。長い歴史と経緯を持つものの、いまは無人島。そこを政府は、海空自衛隊の訓練基地及び米海軍の空母艦載機着陸訓練(FCLP)などに使用するべく、取り組みを進めてきています。国の防衛のためとはいえ基地施設移転には地元自治体も反対の声をあげ、マゲシカなど絶滅が危惧される野生動物保護の観点から環境保護団体も厳しい眼差しを向けてきています。そんな状況の中で、一般財団法人「日本熊森協会」の室谷悠子会長、森山まり子名誉会長らと共に、同会顧問を務める私は、去る15日の午後13時半に、九州防衛局に伊藤哲也局長を訪ね懇談、要望をしてきました◆要望の中身は、①かけがえのない馬毛島の自然を残すことは、生物多様性条約を批准している日本としての国際的な信用、評価に関わる。マゲシマをアンブレラ種とする馬毛島の生物相、生態系を必ず守って欲しい②1987年いらい馬毛島の生態研究を続けてこられた立澤史郎北海道大助教授らに、早急に入島許可を与えて調査研究を再開してもらい、防衛局の今後の基地づくりに助言して貰ってほしいーというものです。要望懇談では、マゲシカの絶滅を防ぐには、島の半分の面積が必要とされること、とくに、中央部の森林環境と水を飲める場の保全確保が大事だと訴えました。更に、工事に当たって、外来種が島に入らないように細心の注意をすべきことも強調しました◆馬毛島の自然は、他のシカの生存する地域に見られるような天敵もいず、大雪も降らないため、マゲシカの生態系がどのように保持されてきたかを研究できる重要なフィールドです。ところが2000年以降、入島が禁止されたため、研究者による生態研究は途絶えてしまっているのです。これまで中心的に研究を進めてきた立澤氏にその場で連絡をし、電話で直接伊藤局長に本人からも要請をして貰いました。伊藤局長は、現在のところ環境影響評価を実施しているところで結論が出るまで今しばらく時間がかかるとした上で、調査のための同島上陸については、本省に相談し、前向きに結論を得たいと答えました。同局長の終始一貫した誠実な対応に、我々は感謝の意を表明しつつ、強く実現を要望したしだいです◆同島の地形を写真資料などで概観すると、あたかも航空母艦の甲板のような平面部分が多いように見えます。基地として使われるべく整地されていくならば、同島のマゲシカの生存は極めて困難になっていくことは否めません。「基地をとるか、マゲシカをとるか」といった二者択一になると、どうしても不毛の論争になり、「自然破壊、軍事優先」になりがちです。ウクライナ戦争が連日報道される中で、我々の眼も心も大きく揺さぶられています。今こそ、生きとし生けるものへの慈しみを持つことが大事です。人間だけではない、全ての生物生命尊重の観点に立ち、安全保障と自然保護の両立を図る知恵を絞らねばならないでしょう。今後も事態の推移をしっかり見守り、成り行き任せにならないことを決意して、防衛局を後にしました。(2022-4-18)
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