お知らせ

2022/08/22

くまもりNews
今後、岡山県若杉天然林で原生林ツアーは可能か

熊森結成以来25年間、毎年夏に本部が実施してきた若杉原生林(岡山県西粟倉村)ツアー。

この原生林では炭焼き窯の跡が発見され、200年前に一度ブナが伐られてタタラ製鉄用の炭に利用されたことが近年判明しました。(若杉天然林に名称変更される)しかし、その後は幕府によって森が守られてきたのでしょう、200年のブナの巨木群が繁る原生状態の生物の多様性が保たれたすばらしい冷温帯の森83haです。(でした。)

今年の若杉天然林ツアー。入り口前駐車場に到着。周辺は、よく手入れされた裏スギの人工林です。間伐が行き届いているため、下層植生も育っています。トイレ周辺は、他所から持ってきたドウダンツツジ、ヤマボウシ、ナナカマド、イロハモミジなどの植栽木が育っています。

天然林内に入ります。入ったところのビニールシート群には、ぎょっとさせられます。

ナラ枯れの直接の原因である約5ミリの昆虫、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が拡散しないよう、枯れたミズナラの木を伐って虫ごとビニールシートで覆ってあるのです。なぜ、カシナガが冷温帯で大繁殖しだしたのか、原因はよくわかりません。各地でいろいろなカシナガ対策が取られましたが、現在、有効手段がありません。

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 カシナガが拡散しないように、枯れたミズナラの木を小さく伐って厚いビニールシートで虫ごと覆ったもの

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                    耳を澄ませて谷川の音を聞く。原生林・天然林は、私たちの水源の森です。

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夏なのに谷川の水が冷たいのは、雨水ではなく湧き水だからです。例年の水温測定で、以前は17度でしたが今年は19度。

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      老木が倒れてできたギャップ。日光が入り次の芽生えを育てます。原生林の特徴です。

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          熊森職員がわずかな生き物としてアオダイショウの若者を一匹だけ発見 観察後逃がす。

熊森協会を結成した25年前と比べると、森の劣化が著しい若杉天然林ですが、それなりに参加者のみなさんは楽しみ感動してくださっていました。

一方、長年この山を見てきた私たちは、谷川の水量や動植物の姿がますます減ってきたなあと、変化に驚いています。

もう、これが生物の多様性が保たれた天然林ですとは言えないと思いました。

怖いのは、かつての森を知らない今の若い人たちが、生き物たちが消えたこの森を見て、これが天然林だと何の疑問もなく受け入れてしまうことです。

森に種の大量消滅という大異変が起きていることに、誰も気づかないことです。本当の森にはこの時期、昆虫などが無数におり、数など数えられません。

1997年に第1回の原生林ツアーを実施したときは、クマがアリの巣をあばいて食べた後や、看板に付けた好奇心によるひっかき傷などが生々しかったです。1998年実施時には、ミズナラの巨木群にクマ棚が延々と続き、皆で大感動しました。テレビ局にも取材をしてもらいました。コエゾゼミの背中の模様がアイヌの着物の模様とそっくりで驚きました。今では何もかもが、消えています。

ナラ枯れには、松枯れ防止用のヘリコプターによる薬剤散布?、酸性雨(霧)?、地球温暖化?シカ増加説?いろいろな説がありますが、原因は不明です。いずれにしても、人間活動の何かが原因だと思います。

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奥山冷温帯から始まり、最近は里山に下りて来たナラ枯れ  クヌギなどのドングリ類がひと夏で枯れ、山々が赤く見える(中国自動車道周辺)

原生林や天然林は本来、生物の多様性が保たれた森です。参加者は、野生生物の姿や痕跡を見たかったと思いますが、もはや奥山にほとんど生き物がいません。以前、あんなにびっしり生えていた林床のチシマザサもスカスカです。昆虫に詳しいスタッフが、これなら明石市の公園の方が、ずっと生き物がいろいろ見れますよと明かしてくれました。(ガックリ)

来年から原生林ツアーの実施場所を、まだ自然が残っている石川県白山とかに変えた方がいいのではという提案がありました。西日本にはもう他に残されていないからです。森に何かとんでもないことが起きていることを、私たち人間は他生物の大量消滅から気付かねばなりません。いずれ、私たち人間にも、大変なことが起きてくると思います。そのときにあわてふためいても、もう手遅れです。

未来を決めるのは今なのです。

比べてみよう   1998年7月26日第2回若杉原生林ツアー

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2022年7月31日第25回若杉原生林ツアー

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下層植生が著しく衰退しており、林内が見渡せる。クマは棲めない。目撃多数となる。

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