お知らせ

2023/09/07

くまもりNews
時代は大きく変化、リニア見直し必須

リニア新幹線沿線住民ネットワークが2023年8月に発行した「ストップ・リニア!訴訟ニュース」によると、2016年5月に提訴した「ストップ・リニア!訴訟」は、7年間にわたる25回の口頭弁論を経て、7月18日東京地裁で、結審となりました。当日は、傍聴席満席の中、市原義孝裁判官ら3名の裁判官により、「原告の請求を全て棄却する」、「訴訟費用は原告負担」の判決が下されたということです。

99c4fa760b96f55209e00e96d1625070-1694047677.jpg
cca4aba600a3223397b71151089106ce-1694047669.jpg

すなわち、JR東海による環境影響評価や「全国新幹線鉄道整備法」に基づいてなされた2014年の太田昭宏国交大臣の計画認可に法違反はないという判決です。

川村晃生慶応義塾大学名誉教授を団長とする訴訟団は、東京高裁への控訴を決められたそうです。

熊森から

学校では、日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めていると教わります。

しかし、残念ながら、我が国では、裁判所というのは事業者のしていることが国会で成立した法律に違反していないかどうかをチェックするだけの政府の機関になってしまっています。

一般国民と違って、裁判を通してリニアの大量のデメリットを知る立場にあったはずの裁判官なのに、国策に逆らっての判断はできなかったのでしょう。

 

本の紹介1

2023年7月に、リニアに関する新しい本が発刊されました。川村晃生編の「リニアはなぜ失敗したか」です。この本は、10名の執筆者がその専門の立場から、リニアは失敗だったと結論付けておられます。たとえリニアがいつか開通することがあっても、かけがえのない豊かな水源の森だった南アルプスに穴を開けてしまったり、国土の地下に延々と巨大な穴を開けて100年しか持たないコンクリートで固めてしまったりしたことを考えると、失敗事業であることに変わりはないそうです。(100年後の日本の国土に対する責任は、だれが取るのでしょうか)

ca308de1ae24ed2240b59a61eaf2f310-1694047782.jpg

川村晃生編「リニアはなぜ失敗したか」1000円

リニア中央新幹線は1973年に基本計画線に決定されたものですが、あれから50年。2011年の福島原発事故以降は、東海道新幹線の3倍の電気をくうと言われるリニアを動かすために、原発をいくつか作ればいいと言える時代ではなくなりました。しかも、今後、少子化の傾向が続くと予測されることや、コロナでリモートワークが大きく伸びたことなど考えると、リニアが出来ても乗る人がどれぐらいいるのか。ペイできるのか。国から借りた3兆円のお金は返せるのかということです。JR東海の破綻を避けるためにも、これまでの計画に固執している場合ではなく、JR東海は見直しが必須でしょう。

本の紹介2

2023年4月に信濃毎日新聞社編集局がまとめ出版した「土の声を」~リニアは誰を幸せにするのか~(岩波書店)を読みました。「土の声」というのは、現地の人々の声ということで、これはリニア反対本ではなく、とにかく、現地の人々の声を取材してみようという姿勢でまとめられた本です。長野県大鹿村での取材が中心になっています。すでに工事が始まった地域で何が起きているかの現在進行形的検証も大切です。

190386106d243950f41cc7eed9db63f7-1694047916.jpg

2023年4月に信濃毎日新聞社編集 2400円

熊森協会は2015年5月、職員研修旅行で「日本一美しい村」大鹿村を訪れ、地元の何人かの皆さんと親しくなりました。当時お会いした方々は、いろいろとリニアの勉強を深くされていて、南アルプスに穴をあけるなど絶対にしてはならぬと大鹿村を守る強い意志を固めておられました。

翌2016年、政府がリニア建設に3兆円規模の財政投融資(財投)を打ち出したことで、民間事業だったリニアが一転して、“国策事業”のようになり、用地交渉がまとまらない場合、国や自治体が予定地を強制的に取得して使用する土地収用法の適用対象になってしまいました。

土地の強制収容は召集令状と一緒だと地元の方も言っておられましたが、その通りで、こうなると相手は業者ではなく国ですから、住民はもう、いくら反対しても国には勝てません。こうなってくると、もう物が言いにくくなってしまいます。本には、あの時お会いした懐かしい方々のお名前が次々と出て来ます。彼らの苦悩を思うと胸が痛みます。SDGsの理念である「誰一人取り残さない」の言葉が、むなしく頭をよぎりました。現実は、多くの方々の泣き寝入りの上に成り立っているリニア事業なのです。

今、リニアの用地収用業務を行っているのは県庁や市の職員である公務員です。移転したくない住民に立ち退きを迫る辛い仕事ですから、誰も行きたがらない部署だそうです。当然でしょう。

この本によると、リニアの大工事を始めてみて、水涸れが各地で起きるなど、デメリットがいろいろ見えてきたようです。

また、ほとんどが大深度地下の工事現場から出る残土は膨大な量です。残土を盛っておく場所などありません。

盛り土を行うと、たとえ木々が生え表面的には山林に戻ったように見える場所でも崩れやすくなります。西宮市の百合台や最近では熱海の土石流がいい例です。リニア建設を進めてきた方々が、このまま突っ走ってやってしまいたい気持ちはわかりますが、無視できない新しい大デメリットが次々と見えてきた今、やはり、リニアは立ち止まるべきでしょう。信濃毎日新聞社の現場に密着した住民の声の連載報道を讃えるとともに、他のマスコミの皆さんにも、現実問題から目をそらさないリニア報道を願います。

最後に、熊森協会として、信濃毎日新聞社リニア取材陣への要望があります。

人間以外にも、リニア工事で苦しむ者たちがいます。それは、生息地を破壊されてねぐら、水、食料を失う、クマをはじめとする野生鳥獣たちです。彼らの悲鳴や苦しみが抜けています。彼らの視点からのリニア工事のデメリットにも触れていただきたいです。

ー人間至上主義は人類を滅ぼすー

人間は、人間だけでは生きていけない。全生物と共存しなければ、人間は滅びる。これが自然界の仕組みなのです。

文責:森山まり子(日本熊森協会 名誉会長)

お知らせ一覧に戻る

ページトップに戻る