②12月26日、1月9日、2月8日、環境省が3回にわたる専門家検討会を実施
検討委員たちの発言は、クマは数も少なく繁殖力も弱いのでシカ・イノシシと同列にはできない。東北や北海道と他の地域では生息状況がかなり違うので、全国一律にクマを指定管理鳥獣に指定することには無理があるなど、っとうな意見が全体を占めていた。
◎熊森は、2月5日、クマ指定管理鳥獣化に反対する緊急署名 1 万4749筆を環境省堀上審議官に提出した。(必死で署名を集めてくださったみなさんに、熊森は心から感謝)
④2月13日環境省がパブリックコメントを募集
環境省は2月 13日(水)から1か月間、パブリックコメント開始。
意見 ※賛成か反対かを( )に記入
ヒグマ、ツキノワグマ(四国の個体群を除く)を指定管理鳥獣にすることに( )します。
これまでの例から言うと、パブリックコメントがたくさん来たことにより結論が変わるということはまずありません。それでも、今後の政策変更のために強い声をしっかり届けておくことは大切ですので、熊森はパブリックコメントに応募しました。
また、国会議員にも指定管理鳥獣化で問題は解決せず、奥山の再生や被害防除対策が必要であることを伝えて回りました。
参議院と衆議院の環境委員会では、クマを指定管理鳥獣にすることについての議員質問が相次ぎました。
⑤3月28日環境省パブリックコメント結果発表(提出意見535 件)
クマを指定管理鳥獣に指定することに、賛成9、反対440、その他86
パブリックコメントで結論は変わらないと言われても、これだけ反対が多いのに本当に環境省はこのまま進めるのだろうか。熊森は環境省の動きを見守ることにしました。
⑥実は、3月26日環境省はクマ指定管理鳥獣を決定していた
環境省によると、3月26日に開催された環境省中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会でパブコメ結果を見せたところ、委員全員が指定することに賛成したとして、クマ指定管理鳥獣を最終決定したとのことです。(省令未発表)
結局、最初から、結論ありきのまま、環境省はクマの指定管理鳥獣化を強引に推し進めたということです。
1999年の鳥獣保護法改正で、狩猟や有害駆除に加えて個体数調整のための捕殺を導入しようとした当時の環境庁がとった対応も同じでした。この時は法改正だったので、熊森は反対運動の先頭に立って国会議員を次々と訪問し、このような法改正をすると日本の自然が守れなくなるので反対してほしいと訴えて回りました。
他の自然保護団体もみんな立ち上がって、日本で初めて全自然保護団体がひとつにまとまって法改正に反対する大運動となりました。国会議員も多くが反対でした。しかし、強引に法改正がなされ現在に至っています。
野生鳥獣との軋轢を、野生鳥獣の生息数を人間が大幅に低減させて一定数にコントロールすることによって解決しようとする考え方を導入して25年が経過しましたが、罠だらけの山となり残酷なだけです。しかも、大量捕殺によって被害がなくならないことがシカやイノシシの対応で、すでに結論が出ています。
まして、シカやイノシシと比べる桁違いに生息数の少ないクマまで捕獲報奨金を引き上げて大量捕殺してしまうと、乱獲により絶滅に向かう地域が出てくるでしょう。
環境省の鳥獣行政は、他方で進めている生物多様性の保全とは真逆の方向に進んでいます。
今は、指定管理鳥獣に指定しても、クマはシカやイノシシのように捕殺一辺倒にはしませんと環境省は言っていますが、やがてそうなっていく恐れがあります。生息地を再生したり、被害防除対策を進めることが根本解決につながるのですが、大変な労力が必要です。それに比べると捕殺は簡単ですから、よほど強い意志がないと人間は安易な方向に流されていきます。今後、各地の動きを注視しておかないとクマの乱獲が抑えられなくなると、熊森は強い危機感を持っています。
今後、クマ指定管理鳥獣化を受けて、各都道府県がクマの指定管理鳥獣実施事業計画を策定していくことになると思います。
この計画が、大量捕殺を推進するものにならないように、私たちが各地で働きかけをしていくことが重要です。