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2025/05/12

くまもりNews
4月9日長野県飯山市の悲惨なクマ人身事故はなぜ起きたのか

5月5日ニュースによると、ドローン捜索により千曲川中州でうずくまっている1頭のツキノワグマが発見され、猟友会に射殺されたということです。1.4m、110kgのオスでした。
胸にガラス戸を割った時のものとみられる切り傷の跡があり、4月9日夕方長野県飯山市で、4月16日早朝飯山市に隣接する長野県木島平村で、双方の人身事故を起こしたクマではないかと見られており、DNA鑑定中だそうです。

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                クマイメージ図

熊森は長年、人はもちろんクマの立場にも立って、無数の人身事故を時には現地に急行して調べてきましたが、飯山市で起きた男女3名重軽傷となったクマによる悲惨な人身事故ニュースを見た時、このクマの行動が理解できず、コメントを出すことすらできませんでした。
お怪我された皆様に心からお見舞い申し上げると同時に、1日も早いご回復をお祈りします。

 

熊森は長年、人はもちろんクマの立場にも立って、無数の人身事故を時には現地に急行して調べてきましたが、飯山市で起きた男女3名重軽傷となったクマによる悲惨な人身事故ニュースを見た時、このクマの行動が理解できず、コメントを出すことすらできませんでした。
お怪我された皆様に心からお見舞い申し上げると同時に、1日も早いご回復を祈ります。

信濃毎日新聞の4月10日記事はさすがに地元だけあって詳しく、なぜ人身事故が起きたのか、腑に落ちるものでした。題名も冷静で内容もとてもいいと思います。熊森は、後藤さんや玉谷さん、記者さんに心から感謝します。

 

(以下は、信濃毎日新聞2025/04/10 記事より、下線は熊森による)

 

■飯山市の熊、パニックに陥り襲ったか 現場から1・5キロにわたり足跡と血痕を確認 専門家が調査■

 飯山市で住民3人が熊に襲われた事故で、県クマ対策員の後藤光章さん(51)=長野市=と、北佐久郡軽井沢町で熊の保護管理に取り組むNPO法人「ピッキオ」の玉谷宏夫さん(52)が10日、熊の捜索に同行し現地を調べた。熊は住宅地でパニックに陥り住民を襲った後、北東方向に逃げたとみられ、柿や栗を目当てに何度も里地に入った経験がある個体だった可能性を指摘している。

事故現場から北東の方角1・5キロほどにわたり、田んぼなどに足跡と血痕が残っていた。後藤さんは、足跡の大きさなどから10歳ほどの雄と推測。被害者宅の玄関のガラスを割って飛び込んだ際に体を切り、流血しながら移動したとみられる。

 玉谷さんによると、熊は住宅地に入り込み「平常心を失いかけた状態」だった。最初に被害に遭った男性は自宅物置にある車の下で作業していたため、気づくのに遅れた熊が急に襲いかかったとみる。パニックに陥った熊は向かいの民家の玄関ガラス越しにあった暗がりに逃げ込もうとしたが、目があまり良くないためガラスを割って突っ込んだ―と推察する。

 この向かいの家にいた女性によると、玄関先からスパーンとガスの抜けるような破裂音の後、ガシャーンとガラスの割れるような音が響いた。2階の台所でフレンチトーストを焼いていたので、確認に向かった玄関の土間に幅1メートルほど腰の高さくらいの黒い物体がいるのを目撃した。目と鼻の先まで迫っていたのは熊だったが、その瞬間は正体が分からず「ハアハア」と荒い息が聞こえて来た。「ダメー」女性はありったけの大声で叫び、右手で熊の頭の付近を払いのけた。その際、右足の後部分を引っかかれ熊の小指が2センチほど食い込んだ。痛みを感じないほどの恐怖を抱き、3階まで愛犬を抱き抱え駆け上がった。数分後、熊が裏口から出て行ったのを確認し、2階の茶の間にいた義父のもとへ駆け寄った。顔付近から出血して呻き声を上げる義父にタオルを巻いて止血した。1階で作業していた女性の夫はガラスの割れるような音や叫び声を聞き、慌てて2階へ向かった。熊が屋外へ出て行くところを目撃し唖然とした。自宅は足の踏み場もないほどのありさまだったという。

 後藤さんによると、足跡が途絶えた場所の近くに、数日前に同じ個体が北東方向に移動したとみられる足跡が残っていた。市内では、過去にも餌となる柿を目当てに里地に降りる熊が目撃されており、3人を襲った熊は「里地で柿を食べた経験があるのではないか。山に食べ物が少ない時には、健康でも集落に頼ってしまう」とする。

県森林づくり推進課によると、県内の今年1~3月の熊目撃情報は8件。4月はまだ情報がなかったが、宮坂正之・鳥獣対策担当課長は「どの地域でも起きる可能性がある。自分事として注意してほしい」と呼びかけている。

熊森から

さすが、日本で一番多くのツキノワグマが生息していると言われる長野県(令和 2 年度:推定生息数 3,831~10,128、中央値は 7,270 頭)だけあって、人身事故があった時、駆けつけることのできる専門家を備えており、彼らの冷静な見立てはどれも納得のいくものです。

やはり、このクマはとてつもなく臆病で、夕方、集落に迷い込んでしまいパニック状態だったところ、車だけだと思っていたら思いがけず車の下に人がいたため、いっそうパニックになってしまい、向かいに見えた暗がりに逃げ込もうとしたら今度はガラスがあって割ってしまい、自身は大量出血、ますますパニックは極限に、そういう中で引き起こされた人身事故であったことがわかりました。

人にもクマにも不幸な条件が何重にも重なってしまった結果の悲惨な出来事だったことがわかりました。重傷を負いながら1か月間逃げ続けたクマの心情、そして最後を思うと、クマも哀れです。

最近クマ生息地では、今までクマなど見なかったというところに、頻繁にクマが出てきてくるようになっています。メガソーラーや巨大風車などによる森林伐採なども加わってますます人為的な要因が大きくなってきており、気候など様々な原因もあるのでしょうが、地元のみなさんには十二分に警戒していただき、可能な限り人身事故が起きる前に山に追い返したり捕獲放獣する非捕殺対応をお願いしたいと思います。

私たちが水を得るには、クマたちが造る保水力豊かな水源の森が必要で、クマとの棲み分け共存は未来永劫に必須です。
ーー「日本の森は、クマがいないと森にならない」(故:高橋延清東大林学科名誉教授が私たちにくださったお手紙の中の言葉より)ーー

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