くまもりNews
6月16日 (本部)三重県奥山調査
- 2015-07-03 (金)
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三重県大台町父ヶ谷から、さらに奥にある大杉谷国有林までを見に行ってきました。
道中、紀伊半島の険しい山々に圧倒されました。
父ケ谷 の林道はあちこちで崩れており、水の破壊力のすごさ、重力に従って崩れ落ちようとする岩の力のすごさを思い知らされました。これらの自然の力の前には、人間が何をしても無駄だと感じました。
以前造られていたコンクリートの橋も、大雨や崩れてきた岩でふっとばされていました。2010年には車で入れた道ですが、今は完全に通行不可能です。
ここは、年間降水量が3000~5000mmもの雨が降る世界的な多雨地帯です。山のあちこちから、水が噴き出していました。
この辺りは、暖温帯と冷温帯の境目になっているため、低木層には常緑広葉樹が、林冠層には落葉広葉樹が多くみられました。
確認出来た植生は、ミズナラ、アカガシ、ヤマツツジ、サルナシ、タニウツギ、フサザクラなどです。動物は、山ビル、マムシ、ニホンシカなどです。
(帰り道の林道で、1頭の子鹿が全速力で走っているのを見る事が出来ました。)
3時間歩いて、やっとのことで大杉谷国有林に到着です。
この国有林は台高山脈の山奥標高800~1000mの場所にあり、1500haという広大さです。
戦後の拡大造林により、ここもスギやヒノキの人工林の山となりましたが、自然遷移が進み、針広昆交林となりつつある場所も多くなってきているそうです。
この日は、あいにくの雨の中での調査となりました。
こんな奥地まで林業に利用しようとして莫大な税金を投入し続けた日本国の歴史があります。この国策によって、クマをはじめとする野生鳥獣たちは、生息地を奪われ、絶滅を迎えています。
今や、木材需要は低迷しており、苦労して育てた材が、バイオマスという名のもとに、燃やして発電に利用されて終わるケースも増えています。
同行してくださった地元林業家の方も、こんな奥地にまでスギやヒノキを植える時代はもう終わったと言われていました。
国有林に残された膨大な人工林。これまでお会いした林野庁の上層部の方々は、口をそろえて、「戦後の拡大造林政策は失敗しました。日本の奥山を大荒廃させてしまいました。もうどうしていいのかわからないのです」と、言われています。
国有林は国民すべての財産ですから、国だけに判断を任せるのではなく、今後どうしていくのか、広範な国民で知恵を出し合って、共に考えていく時が来ています。
次回は、国有林の奥深くに入って、スギ・ヒノキの成長具合など見てみたいと思います。