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昨年の秋田県クマ大量駆除の嵐の中を生き延びた子グマたちがわずかにいた

秋田魁新報4月10日によると、昨年の秋田県のクマ大量駆除の嵐の中を奇跡的に生き延びた子グマたちがいました。
以下の写真は、秋田朝日放送より。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:2023年度秋田県では、山の実り大凶作によるクマ大量出没と過去最多のクマによる人身事故62件70人の発生もあり、有害駆除名目などで前代未聞2314頭のクマを捕殺しました。生息推定数4400頭の52%のクマが殺処分されたことになり、クマは絶滅に向かう恐れがあります。そんな中、秋田県は指定管理鳥獣実施計画を策定して、更なるクマ捕殺を進める方針です。

 

下の目撃件数グラフは、秋田魁新報記事からです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:ふつう、同じクマが何度も目撃されるので、実際のクマ数は目撃数より少ない。

 

テレビニュースによると、秋田の冬を生き残ったみなしごグマは、春になった今、集落周辺の耕作放棄地などに生えている草の新芽などを人目を気にしながら食べています。

 

もし母グマが殺されていなければ、この時期、冬ごもりからあけて、山のバッコヤナギの花や木々の新芽を食べていたことでしょう。

バッコヤナギ - Wikipedia

クマの大好物、バッコヤナギの花

 

人間に見られながらびくついて草を食べている子グマの顔が、テレビニュースで映し出されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々顔を上げて人間の動きを見ながら、不安そうに草を食べる悲しげな表情の子グマ。近くには、捕獲用の罠がすでに2つ仕掛けられています。

 

秋田県では県のツキノワグマ管理計画に「放獣しない」と明記されていますから、市町村はクマが出没した際に、捕獲後は銃殺すると記して県に捕獲申請を出しています。(北海道も同様)

 

秋田では、これらの子グマをヌカとハチミツ入りの箱罠に誘引して捕獲し、全て銃で殺処分しています。

 

 

秋田ではクマの捕獲権限が市町村に下ろされているため、捕獲したクマを殺処分するのか放獣するのか市町村の判断で決められるはずです。また、クマの放獣は法律で禁止されているわけではありません。

 

秋田県は昨年、私たちが放獣を依頼した際、今年は捕獲数が多過ぎて放獣などできないと言われました。今の時期ならできると思います。去年殺された大量のクマの穴埋めのためにも、捕獲してそのまま何もせず山に放獣してやるべきだと思います。

 

山に放してもまた帰ってくると言う方もいますが、帰ってこない場合も多くあります。放獣例もないのに帰ってくると決めつけるのはいかがなものでしょうか。

クマの行動を決める主要な要因はえさです。山に餌があれば集落には出てきません。

小さな子どものクマまで見つけ次第、罠をかけて捕殺してしまうのは、子どもたちの精神衛生にも悪いです。秋田県は生き物たちへの共感を思い起こして、生き物たちにやさしい対応をとっていただきたいです。

人間が攻撃しない限り、犬くらいの大きさの子グマが人間に向かってくるということはありません。クマが凶悪犯人のように報道されるため、クマへの誤解が蔓延していますが、クマたちは基本的に人を避けて行動しており、人が気をつけることで人身事故は防げます。

 

思いやりのある優しい対応が、人にも自然にも一番優れているのです。

 

すでに熊森本部や熊森秋田県支部から、生き延びた子グマを放獣してほしいという要望を、秋田行政へ伝えてあります。

室谷会長、親子グマが逃げ込んだ秋田の作業小屋を視察、その後、秋田のみなさんと懇談 12月3日

室谷会長は連日、全国を飛び回っており、超多忙。しかし、年内に、何とか秋田県を訪れたいとスケジュールを調整していました。

 

12月3日(日)秋田空港着。この日は雪で、あたり一面すっかり雪景色と化していました。

会員のお迎えが、ありがたかったです。

まず、美郷町の親子グマが逃げ込んだ現場である畳屋さんに行きました。

 

親子グマが逃げ込んだ畳屋さんの作業場

 

ちょうどご家族が外におられたので、お話を伺うことができました。

畳屋さんは、「昔からクマがいる町なのだから別にびっくりもしないが、知らずに戻ってきたら騒ぎになっていて、びっくりした。孫は町の送迎バスで送り迎えだから何も心配していない。しかし、こんなところにまでクマが出て来るのは初めてのこと。たいていは、山の中にとどまり、出てきても山の下までだったから、驚いた」とおっしゃっていました。

 

どのようにして親子グマがここまでやってきたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

親子グマの移動経路をみんなで推察

 

山から続く川ですが、この辺りは護岸ブロックが垂直に積まれ、川面にはアシがびっしり生えていました。子グマを連れた母グマが餌を求め川を下ってきたものの、川から陸へ上がることができなくて、ようやく上がれた場所がこの集落だったのではないかと皆で推察しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

両岸に護岸ブロックが積まれた川

 

この後は、山裾まで行き、クリの木にできたクマ棚を見たり、クマが出てきた場所を数か所視察したりしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪の中のクマ棚

 

最後は、近くの集会所で、秋田の皆さんと話し合いました。

お父様が猟師の方、栗林を再生されている方、秋田に移住して2年目という方、林業をされていた方や農業をされている方など、様々な方がお集まりくださいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会長の話に聞き入っておられた秋田の皆さん

 

参加されていた皆さんも、今年のクマ大量出没について心配されていて、いったい山で何が起きているのか、この状況を何とかしたいとおっしゃっていました。

 

来年になったら、お怪我された方や、被害農家のみなさんを訪れる予定です。

 

クマ問題に27年間取り組んできた自然保護団体として、熊森は秋田の行政や県民の皆さんに精一杯寄り添って、来年からはクマを殺さず、クマと共存できるよう、これまで培ったノウハウを提供していこうと決意しています。(完)

 

熊森本部が秋田県のクマ出没現場と背後の山を顧問研究者と視察② 11月20,21,22日

20日、秋田空港に着くと、秋田県のクマ情報を熊森本部に長年送り続けてくださっている秋田県会員の方が、出迎えてくださいました。会員のみなさんは本当にありがたい存在です。

 

マスコミは、今年の秋田のクマの異常出没は、去年、ブナの実りが良かったため(並作)、メスグマがたくさん子を産んで増え過ぎたからというクマ原因説を報道しています。しかし、過去、ブナが並作どころか豊作の年もありましたが、次の年、今年のような異常出没は起きていません。熊森は、クマが増え過ぎたのではなく、今夏の異常な暑さによって、山の中でありえないような餌不足が発生したことが原因であると考えています。

 

参照  第5次ツキノワグマ管理計画(資料編)

 

まず最初に、今年、集落に初めてクマが出たと本部に電話をくださった秋田県民の方の家を訪れました。とても喜んでくださいました。長年、雄物川の西側(日本海側)に住んでいるが、これまでクマなどいなかった。親子グマが雄物川を泳いで渡ってくるのを見た人がいると言われていました。この日は雄物川の水量が多くて、とても泳いで渡れない感じでした。集落からかなり離れたところで、主原先生がクルミを食べたあとのクマの糞を見つけられました。

 

次に、秋田県庁自然保護課にご挨拶に伺いました。これまで何度も訪れてきた課ですが、しばらく行かない間に、担当者がすっかり新しい方になってしまっていました。

 

この後、今年熊森本部に電話くださった奥羽山脈のふもとで農業を営む秋田県民の方のお計らいで、秋田の鳥獣の専門家を訪れ、長時間お話を聞かせていただくことができました。

 

秋田の海岸近くは風車がとても多くて、慣れない私たちはクラクラしました。このあたりは、植林されたマツの松枯れがものすごかったです。

海沿いは風車でいっぱい

 

夜、奥羽山脈の山沿いの集会場に向かいました。十数名の方が手作りの晩御飯を用意してくださっており、遅い時間まで食べずに私たちが来るのを待っていてくださいました。お茶は、野草茶でした。いただいているものの原料がよくわからなかったのですが、おそらく山里のものだと思います。どれもとてもおいしかったです。

 

食べながら、秋田の皆さんと長時間お話ししました。集まってくださった方々は、今年どうしてこんな大変なことになったのか、とても知りたがっておられました。

 

私たちが接する報道では、秋田県民はクマの大量捕殺に異論なしという感じでしたが、来てみると、人身事故への恐怖はあるものの、空腹に耐えかねて人間のところに出て来ては駆除され続けているクマたちに胸を痛めている方々もそれなりにおられることがわかってきました。しかし、秋田では、行政のすることには声を上げられない雰囲気があるようでした。

 

翌21日、地元の皆さんと秋田の山に入りました。今年、クマに会った時の様子など詳しく話していただきました。山裾のあちこちの栗の木に、クマ棚がびっしりできていました。クリには凶作年がないので、このクリを食べることができたクマたちは冬ごもりに入れるのではないかと思いました。

このあたりの家の横の柿の木には実が鈴なりについていましたが、なぜかクマが来た形跡はありませんでした。(秋田の柿はすべて渋柿、寒いので甘柿は育たない)

知事は、来年、柿と栗を全部切ってしまえと言われているそうですが、栗の木は残しておかないと、クマがさらに下に降りていくと思います。

冷温帯のドングリであるブナやミズナラが弱ってきているのなら、今の温かくなった気温に合わせて、山にクヌギなどのドングリを植えたらどうだろうかと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

クリの木にびっしりできたクマ棚

 

 

 

 

 

 

 

 

クリの木の下にたくさん落ちていたクリの枝。母グマが子グマに落とし与えたか。

 

田んぼや畑も見せていただきました。この辺りは、田畑と山がつながっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマが稲穂を食べていたという現場も見せていただきました。

 

この時期、ブナやミズナラはもう落葉していますから、山の上の方は灰色っぽい樹皮の色です。

黄色に色づいているのはまだ落葉していないコナラです。

秋田に来て、やはり人工林が多いなと思いました。(人工林率50%)

 

 

 

 

 

 

 

 

秋田でもこのあたり人工林は放置されており、林内にはシダ植物ぐらいしかありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

スギの人工林の中

 

最後に、この山の尾根まで登りました。尾根はブナの純林でしたが、どれも木が細かったです。

拡大造林時に山裾から尾根まで雑木林を皆伐して、山の下半分にスギを植林、上半分は放置したのでブナ林に戻ったのだと思います。ブナの幹を丁寧に調べて歩きましたが、クマの爪痕は、古いのも新しいのも皆無でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

尾根の細いブナ林

 

地元の80歳を超えた長老が、山からの湧き水が昔の1割!にまで激減していると言われているそうです。雑木林を伐ってスギを植えたことや、田んぼ整備が原因だそうです。山がどんどん荒れて保水力が失われてきているということは、このあたりに住んでいる方は皆さん知っていることだそうですが、どうしたらいいかというところまでは、いっていないようです。

 

2日目の夜も、秋田市やその他の地域から秋田県民の皆さんが集まってきてくださいました。みなさんは、熊森の話を食いいるように聞いて下さいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

集まってくださった皆さんとの語らい

 

集会後、10名くらいで横手まで行って夕食をとりました。森の再生、人身事故防止、田畑の被害防除etc、個人の活動には限界があります。

里や集落に出てきたクマを山に押し返すには、当面、犬や花火などで脅すことも必要ですが、何と言っても根本解決は秋田の山にクマを養えるだけの餌のある森を再生して、昔のように棲み分けを復活させることが必須です。秋田にも支部を作って活動したいという話をすると、皆さん次々と会員になってくださいました。

 

何とか秋田でも、組織的な活動ができるようにしていきたいです。支部づくりにご協力をいただける方は、ぜひ本部までお知らせください。

 

22日は、横手盆地の西側にある山間部で暮らしておられる方を訪れ、周りの山や秋田での暮らしをじっくり見せていただきました。

 

今回は駆け足でしたが、やはり現地を訪れ、山や田畑を見せてもらって、地元の皆さんと語り合えたことの収穫は大きかったです。

 

最後になりましたが、横手市で泊まったホテルの窓から見た雪をかぶって真っ白になった鳥海山の神々しさが今も頭に焼き付いています。あとで写真に撮ろうと思ったら、雲に覆われてしまい、いい写真が撮れませんでしたが、一応パチリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

雲に覆われてしまった、はるかかなた山形・秋田県境の鳥海山

 

クマなどの森の動物と棲み分け共存することは、日本文明を支えてきた水源の森を未来にわたって確保することであり、地球環境面からも精神面からも秋田に住む子供たちをはじめとするすべての人間の幸せにつながると私たちは思います。

 

今後、秋田県各地で集会を持って、クマ問題をどう解決していくか、皆さんの叡智を出し合う機会を作っていきたいです。

 

3日間、秋田の皆さんに大変お世話になりました。心からお礼申し上げます。(完)

 

熊森本部が秋田県のクマ出没現場と背後の山を顧問研究者と視察① 11月20,21,22日

今年の夏の記録的な猛暑も関係していると思われますが、東北地方の今年の山のドングリ(ブナ、ミズナラ、コナラ)の実りは前代未聞の大凶作となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北地方のブナの実り(林野庁東北森林管理局)

 

 

中でもブナは元々豊凶が激しいのですが、昨年度の並作と打って変わって皆無に近い状況です。(ブナには、よくあることです。秋田では2019年も2021年もブナが大凶作)

 

冬ごもり中の数か月間、飲まず食わずで暮らす生態を持ったクマは、ブナなどのカロリーの高いドングリを食べて、冬ごもり前までにおなかの周りに分厚い脂肪層をため込んでおかないと、生き残れません。柿やリンゴでは命は繋げても冬ごもりはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森本部作成

 

冬ごもり前の食い込み用ドングリが得られない多数のクマが必死になって、里や時には市街地にまで餌を求めて出て来て、過去最多の人身事故が発生しました。もちろん、クマ捕殺数も過去最多となっています。

 

東北地方の山の状況は、山に入り続けている各県の方々から電話でそれなりに情報を得ていましたが、東北6県の中でもクマ生息数が最も多いと思われる秋田県では、11月末現在の人身事故件数69件、クマ捕殺数2000頭以上(秋田県クマ生息推定数4400頭)という最も大変な状況です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ目撃情報

秋田県庁 HPから(2023年11月29日現在)

 

これまで熊森本部は2012年に経営破綻した秋田県の八幡平クマ牧場に残された29頭のクマたちの救命に立ち上がったことで、鹿角市や北秋田市の阿仁などを何度も訪れ、マタギの方に秋田の山を案内していただくなど、それなりに秋田の山のクマの餌事情を見てきました。

 

しかし、近年、まして今年の史上最大のクマと人の異常事態には、ただただ驚くばかりで、何とかできないかとやきもきしてきました。残念ながら、秋田県にはまだ支部がないので、新潟県支部長が10月4日、朝帰りが遅れ人に早朝見つかって作業小屋に逃げ込んだ秋田県美郷町の親子グマの救命に駆けつけた以外、実践活動ができていませんでした。

 

事務所が連日パンク状態のため遅くなったのですが、やむにやまれぬ思いで、熊森本部は11月20日21日22日の3日間、森山名誉会長、職員の吉井で秋田県を訪れました。本部クマ担当の職員たちは、近場のクマによる人身事故防止対策などに連日走り回っており、「気持ちは秋田ですが、残念ながら今は秋田までは無理です!」という悲鳴状況でした。

 

今回、数十年間全国各地の山を歩かれ、現場で研究されてきた森林生態学者の主原憲司先生にご同行いただきました。秋田の地元の皆さんのご尽力で、3日間びっしりつまった現地視察を、次に簡単にご報告させていただきます。

 

 

苦情なんかじゃない魂の叫び、でも、訴え方のルールは必要

今も連日、人身事故が相次ぐ秋田県では、今年、クマは1500頭までは殺しても良いとして、山から餌を求めて里に出てきたクマはすべて殺処分しています。10月23日現在で46件53名のクマによる人身事故が報告されており、クマ捕殺頭数も前代未聞の1030頭に登っています。

 

私たち自然保護団体が、一番つらくて一番恐れているのが人身事故です。人身事故が起きると、当然ながら地元では「クマ殺せ」の声が高まってしまい、とてもクマたちとの共存など考えられなくなります。何とか、人身事故の発生を止められないものかと、私たちもやきもきしていましたが、残念ながら秋田県には支部もないし、私たちの力不足で動けていませんでした。

 

そんな時、美郷町に夜こっそり何かを食べに来ていた(飢えに苦しむ)親子グマが、朝帰りに遅れ、人間に見つかってしまったんでしょう、作用小屋に逃げ込んでいるというニュースに接しました。親子グマが逃げ込んだ小屋は、数十人の猟師や警察、行政に取り囲まれ、逃げ出せば撃ち殺される状況下にあります。クマも私たち人間と同じように豊かな感情を持っていますから、恐怖と後悔で途方に暮れている母グマの姿が目に浮かびます。

 

私たちは、この母グマはまだ人身事故も起こしていないのだから、例外的に山へ返してやってもらえないだろうかと、秋田までお願いに行こうと思いました。全国の多くの子供たちも、このニュースを見ているだろうから、殺処分しましたでは、人間の子供たちも胸がつぶれてしまい、精神衛生によくないだろうと思いました。里に出てきたクマはすべて殺すが当たり前ではなく、助けられる命は助けるという例を1例でも秋田で作りたいというささやかな願いでした。(隣接岩手県では、捕獲後山への放獣例がいくつかある)

 

熊森新潟県支部長が夜通し車を飛ばして、山形の人(2人ともクマ生息地に在住しており、クマには詳しい)と合流し、美郷町に駆けつけました。急を知った秋田県会員もひとり現場に駆けつけました。新潟県支部長は、秋田県に抗議に行ったのではなく、頭を下げて親子グマの救命をお願いに行ったのです。

 

早朝、秋田に着くと、親子グマは、もうすでに箱罠に捕獲されており、住民の安全は守られていました。山に逃がすか、連れ帰るか、どちらにしても、熊森は非捕殺例を1例でも作ろうとしたのですが、長時間待たされた挙句、殺処分報告を受けました。私たちは胸がつぶれそうになりました。

 

今回の親子グマ殺処分に対して、多くの声が美郷町や秋田県庁に寄せられたそうです。他の人たちも殺処分されたというニュースを聞いて胸がつぶれそうになったんだろうと思います。

 

これに対して、マスコミが、役所の業務妨害になるとして、電話した国民を一斉に非難しました。これまで国民の自由な発言を大切にされてきたアエラまでもが、「秋田県美郷町寄せられた苦情2日電話450件メール160件役場担当者苦悩」と書きました。言論の自由を大切にしなければならないマスコミが、これではまるで国民に声を上げるなと言論封じしているように感じました。

 

電話をかけたみなさんは、魂からの叫びを伝えようとしたのだと思います。声を上げない日本国民がここまで多く電話したということは、同じことを感じた国民が他にも大勢いたはずです。これを単なる身勝手な苦情や迷惑電話にしてしまうのは良くないです。国民の言論を委縮させるものです。一大事と感じた時に、国民が一斉に声を上げるのは当然です。役場の皆さんは2日間電話対応に大変だったと思いますが、それだけ大きな問題だったということです。

 

ただ、双方にルールは必要だったと感じました。訴える側は、できるだけメールにすること。電話をかける場合は、きちんと名乗ってから手短かに伝えること。感情に任せて暴言を吐いたりしないこと。役場の方も、電話が込み合っているので5分以内でお願いしますと伝えるなど、こういう時はルールを設けられるといいと思います。

 

今回のことで行政側が報道規制を敷いてしまい、どこかの県のように今後はクマ関連のニュースを一切流さないようにしてしまうことも予想されますが、そういう方向にはいかないようにお願いしたいです。

 

クマ多数出没問題は、秋田県だけの問題ではありません。

 

なぜ近年、こんなに多くのクマが山から出て来るのか。

 

直接の要因は山に冬ごもり前の食い込み用食料がなかったことですが、背景には、人間が戦後、経済のために、山にスギばかり植え(秋田県の山の50%はスギで、そこには野生動物たちの餌なし)、開発で奥山のクマ生息地を破壊し続け、今も、全国各地で野生動物たちの生息地である森林を大量伐採して再エネ推進名目でメガソーラーや風力発電建設などを建設し続けている事実があります。

クマの多数出没は、森を大切に守って来なかったこれまでの国策の失敗です。野生動物たちの生息環境を脅かしているのは人間なのに、生息数が増えたなどと物言えぬ野生動物たちに全責任が押し付けられ、彼らの命が奪い続けられています。マスコミは現象ばかり追わずに、原因を追究すべきです。

 

美郷町の果樹園は今年全てクマに食べられて壊滅状態だそうです。果樹園を営む方々も、国の森林政策の失敗によって被害を受けています。弱い所に、声を上げられない所に、しわ寄せが行くのです。リンゴ農家などに温かい支援の手が差し伸べられることを望みます。お怪我された方への見舞金も必要だと思います。

 

美郷町の担当部署の方に聞くと、今回、ひとり10件ぐらいの電話を根気強く最後まで聞いたということで、2日間確かに大変だったと思います。職員の皆さんには心から感謝申し上げます。

くまもり新潟県支部長が小屋に逃げ込んだ秋田県美郷町親子グマの放獣を求め現地に急行  その3

美郷町は、親子グマの箱罠を積んだトラックを山の上で待機させていました。

結局、美郷町は北秋田市のクマ飼育施設「くまくま園」にクマたちを引き取ってほしいと依頼しなかったそうです。

午前10時40分、銃で3頭を殺処分。死体は解剖せずに山に埋めたそうです。胃内容は調べていないとのことです。

美郷町役場の担当者から、何とか助けてやれないのかという声は出たそうです。しかし、一度人里に出たクマは、再び里に下りて住民の安全を脅かす恐れが強いと県が言い、秋田県は、有害捕獲したクマは生かしたまま山に返すことはしないと決めていたので、山に返せなかったそうです。

美郷町の担当者のひとりは、「私はクマのことをあまり知りません。生きたクマを今回初めて見ました」と語っておられました。

今年美郷町で39頭目のクマの有害駆除でした。去年の有害駆除は2頭だったそうです。
今年、秋田県ではブナが大凶作ということで、リンゴなどの果樹園やイネに、クマによる被害が出ているそうです。

いくらなんでも殺し過ぎではないかと担当者に尋ねると、秋田県が出しているクマ生息推定数は4400頭(2020年度発表)で、今年は上限枠の36.6%(1500頭)まで殺していいことになっており、現在の捕殺数は850頭ということでした。

 

熊森から

 

結局みんな、クマについて無知すぎて、殺す必要などないことがわからないのです。

水はクマたちが造る森から 生息推定数の計算結果がどこまで真実に近いのかは、誰にもわかりませんが、それにしても、生息推定数の3分の1までなら殺していいという秋田県のクマ捕殺上限枠は異常です。山にクマたちがいて初めて、私たち人間も滋養豊かな森からの水が得られていることをご存じないのでしょうか。

 

人間側に責任はないのか 山からクマのような大きな動物が出て来て農作物をあさられると困るのはわかります。しかし、人工林率が50%で多くが放置され、人里との境もわからなくなっている秋田の山に、人間の責任はないのでしょうか。クマに人里に出て来るなというのなら、人間もクマの生息地に入るべきではありません。人間の方はどんどん奥山に入って道路を造ったり、開発したりしています。

 

県の権限の方が上 秋田県では有害鳥獣駆除許可権限は市町村に降ろされていると言われていましたので、美郷町と交渉すればいいと思いましたが、やはり県の権限の方が上でした。町ではなく、初めから県と交渉すべきだったと反省しています。

 

実は、あまりにも待ち時間が長かったので、不安になった本部は、11:03に秋田県庁の佐竹知事に、親子グマを山に放してほしいと電話をしました。佐竹知事は生き物たちにとてもやさしい方で、以前お会いした時、経営破綻した八幡平熊牧場に残された29頭のクマたちの救命運動を行った熊森協会を高く評価してくださっていたからです。

電話に出られたのはお付きの方で、知事に伝えますということでした。後でわかったけれど、親子グマはこの時、もう殺されていたのです。

 

失礼というもの それにしても、親子グマを助けたい一心で遠方から駆けつけ、必死の思いで待っている熊森新潟県支部長になんの連絡もせずに、殺したと事後報告のみ。行政がこんな礼を失したことをするとは、熊森は想像もしていませんでした。どうしても山に放せないのなら、持ち帰るとまで熊森は申し出ていたのに。

 

<熊森新潟県支部長の報告文>

時々担当課に電話を入れ、進捗状況を問い合わせたが、その度に、担当者が現場に居るのでもう少し待ってくれと言われる。
待ちきれずに担当課の前まで行って待っていた。

正午頃、ようやく担当者が戻り、別室で説明を受けた。
3頭とも駆除したとして、1枚の紙きれを渡された。
「秋田県ではこれまで放獣の経験が無い。今回、県の方針に従った」
この担当者は最初の説明では、決めるのは県でも猟友会でも無い。
あくまでも町が決めると言われていたので、その言葉を信じていたのだが、、、、、
放獣は全て熊森がさせてもらうとまで言っておいたのに、、、、
最悪の場合は、この親子グマを引き取ると言って手配まで始めていたのに、、、

 

クマを駆除することで出没が減らないのは過去のデーターを見ても明らかです。
毎年無用の殺生を続けることで、多額の町予算も失われていきます。
熊森は野生動物を殺すことなく、少ない費用で野生動物と共存しながら住民の不安を無くす活動を年間100日以上展開しており、現場で取り組んでいるクマ対策専門家たちがいる。

秋田県は、そのノウハウを知り、使うべきではないのか?

それだけを言って車に戻りました。

(こんなことを言っても、もうあの親子は帰って来ない)
一人になると失望感と、無力感で、涙が止まりませんでした。(完)

 

くまもり新潟県支部長が、小屋に逃げ込んだ秋田県美郷町親子グマの放獣を求め現地に急行 その1

食べることに夢中で、朝、山に帰りそびれたクマがいたようです。2023年10月4日16:42NHK news webを見た埼玉県支部長から、以下の情報が支部長ラインに届きました。(以下要旨)

 

 

本日午前7:30頃、歩いているところを人間に見つかった親子グマが美郷町役場東300mにある畳を作る作業小屋に①入り込んだ

近くには認定こども園があるため、②子供に危険が及ぶとして認定こども園は休園に。猟友会が③花火などで脅して追い出し、この④親子グマを駆除しようとしたが、日没まで待ってもクマたちは小屋から出てこず、発砲できなかった。(熊森注:秋田県は初めから駆除しか考えていないことがわかる)

そのため、警察は5日朝まで⑤作業小屋の戸を閉めてこの親子グマを閉じ込め、出口に箱罠をしかけた。明日、猟友会が駆除する方針。

町長の発言:⑥夜間にクマが出歩かないように作業場のシャッターを閉め、住民の命を守ることにした。

 

熊森から

 

①クマへの誤解を招く用語 ×入り込んだ。×たてこもった。×居座った クマは凶悪犯人ではありません。 正確にいうと、〇逃げ込んだ、です。

 

②過剰な危険意識が殺処分を正当化する ツキノワグマによる人身事故は、人間にやられると感じたクマが、恐怖のあまり人間から逃げようとして起こすもの。小さな園児にクマが恐怖を感じて排除しに行ったりするでしょうか?熊森はこれまでツキノワグマが起こした人身事故例をずいぶんと調べてきましたが、そのような事例を知りません。

 

③クマに恐怖を与えるのは一番の禁じ手 逃げ場を失っているクマに恐怖を与えると、クマはパニックになり人身事故を起こす恐れが生じます。花火や轟音玉でクマを脅したり、警察、行政、猟友会、マスコミなど大勢の人間が取り囲んだり、パトカーが住民に注意を促すために大音響で周りを回ったり、美郷町は、絶対にしてはいけないクマ対応をしています。

 

●人間がクマに恐怖を与えないことが人身事故を防ぐ鉄則●

クマが人身事故を起こさないようにすることが最も大切で、そのためには恐怖で震えているクマを刺激しないことです。追いかけるのは厳禁。クマの見張り人は離れたところに二人ぐらいで十分。建物に逃げ込んだクマが安心するように、やさしくそっとしておくのが人身事故を防ぐための鉄則です。

 

秋田県にはクマの専門家がいないのでしょうか。

 

④クマの立場に立って考える 出て行けば撃たれるだけなのに、クマが出て行けるわけがありません。

 

⑤⑥優しい方法が一番優れている 夜、戸口を開けておくと、元来た道をクマはそっと帰って行きます。周囲の人は外に出ないようにし、離れたところに暗視スコープを付けた人が二人ぐらいでクマを監視しておくだけで良いのです。万一に備えて夜は出歩かない、クマに出会っても自らそっと離れるなどの地元広報は必要です。

 

どんな生き物もみんな命は一つしか持ち合わせていません。大切な命、殺さなくてもよいクマまでは殺さないというのは、人間の倫理観の第一歩です。

 

2頭のかわいい子グマを抱えて作業所に逃げ込んだものの、水も食料もなく、大勢の怖い人間たちに包囲され、思案に暮れて恐怖におののいている母グマを思いやり、美郷町の親子グマを山に逃がしてやってほしいという声が熊森本部に入り始めます。

 

残念ながら、まだ秋田県には熊森の支部がありません。

 

兵庫県本部からは遠すぎて間に合いません。

 

そんな中、新しく結成されたばかりの新潟県支部長が、この親子熊の命を救うために現地に駆けつけると決意されました。これでこそ熊森支部長です。

 

熊森本部は、この親子グマがどういう経路をたどってここに来たか推測してみました。ツキノワグマは人間が怖いので、人目を避けて夜に水路や川を伝って移動することが多いのです。
彼らは人間以上に地理感覚が鋭く、やってきた道をしっかりと覚えていて、すばやく元来た道を帰ることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大枠はわかってきました。美郷行きの準備が慌ただしく進みます。室谷会長や本部クマ担当職員が、すばやくいろいろなところに手配し始めました。こういう時、本部、支部が連絡を取り合って進めますから、関係者は徹夜体制に入ります。我が国の地のクマ研究第一人者に指導され、27年間に蓄積された長年のクマに対する知識と経験、そして熊森という組織があって初めてできることです。

(つづく)

 

 

 

秋田県庁自然保護課 クマが増えたのではない 算出法が変わっただけ クマ生息推定数4400頭

以下、秋田魁新報2月26日より抜粋

 

秋田のクマ、最多4400頭「駆除強化」へ苦慮の方針転換

 

秋田県内にツキノワグマが中間値4400頭(2800~6000頭)生息しているという推定値を県が26日、公表した。3年連続で急増し、1000頭前後で推移していた2016年までに比べると4倍余りという水準だ。

しかし、この間にクマの実際の数が急に増えたというわけではない。どういうことなのか。

 

 

 

県が毎年発表している推定生息数は最近5年、次のように推移した。

2016年 1015頭

2017年 1429頭

2018年 2300頭

2019年 3700頭

2020年 4400頭

 

2017年以降に生息数急増

 

2016年までは1000頭前後で推移してきたのに、2017年以降に推定生息数が急増したことになる。

県は毎年、県内での推定生息数を算出しており、ことしの数値は2月26日に秋田県庁で開かれた県環境審議会自然環境部会で報告された。

会議で配布した資料には「本県の推定生息数は、環境省のガイドラインで示されている安定存続個体群の水準を満たしており、また、4400頭は全国的にも高水準にある」「近年、住宅地周辺での人身被害や出没等が急激に増加しており、個体数も増加傾向にある」と記されている。

 

“半数捕殺”でも出没止まらず

 

大きな転機が2016年春にあった。県北部の山中でタケノコ採りの男女計4人がクマに襲われて亡くなるという凄惨な事故の続発だ。この年、人里周辺にまで現れるクマが急激に増え、目撃数と有害駆除数はともに過去最多を記録。数字の上では、その時点での推定生息数の半数近くを捕殺したことになった。

だが、それでもクマの出没はやまず、推定生息数が実態と大きくずれているのではないかという見方が広がった。苦慮した県行政は、生息数を算出する方法を大きく変えた。

それ以前の算出法は、猟友会員らが春に山へ入り、実際に目撃したクマの数や足跡やふんなどのデータを集め、それを頼りに推定するというものだった。一方、新たに取り入れた手法は、赤外線センサーつきカメラを山中のあちこちに仕掛けてクマを自動撮影し、得られた映像から胸の三日月模様などを頼りに個体を識別し、統計学的分析を加えてはじき出すというもの。

 

データが毎年積み上がるにつれ、それを基に算出される数字は急増していった。 動物保護と被害防止のはざまで  26日の会議では、人間の生活環境近くへの出没を繰り返すクマにどう対処するかについての新たな方針も示された。

「毎年、捕獲するクマの上限頭数を設定していたが、毎年の捕獲数は、推定繁殖数を下回っており、結果として個体数の増加に歯止めがかかっていない状況にある。そのため、今後の方針としては人身被害の防止を最優先に、当面の間、個体数が減少に転じるように繁殖数を上回る捕獲数を設定する」(担当者)。

人身被害を防ぐため生息数の減少を目指し、毎年新たに産まれると想定される数よりも多くのクマを駆除していこうというものだ。

 

野生動物の保護と人身被害の防止。両者のバランスの間をどう取っていくのか、模索が続く。

 

以下、2月27日朝日新聞から抜粋

 

秋田県はこれまで、環境省のガイドラインに基づき、生息数の12%(120頭)を捕獲頭数の上限に設定してきた。

一方で県内のクマの推定繁殖数は、毎年23%ずつ生息数が増える計算となっている。このため、ガイドライン通りの従来の捕獲ペースでは「個体数の増加に歯止めがかからない」と判断し、推定繁殖数を上回る捕獲に向けてかじを切る。

 

熊森から

こんなの本当に大の大人が考えることなのか。真に受けて報道する方も報道する方だ。こんなまやかし、小学生でもわかることだ。熊森としては、頭が変になりそうです。

 

秋田県はずっと長い間、ツキノワグマの生息推定数が1000頭でした。猟師が山に入ってみて、見かけるクマの数や痕跡に変化はありませんでした。

 

環境省の指導は、年12%以上は殺すなですから、秋田県としては、120頭以上は殺さないように気を付けていたと思います。

 

しかし、平成28年に、476頭も殺してしまいました。クマによる死者4名という特別な事件があったものの、行政としては捕殺に歯止めをかけられなかったわけで、批判されるべきだと思います。秋田県のクマは絶滅に向かうのかと思いきや、平成29年にはなんと793頭もまたまた駆除してしまったのです。

秋田県としては、もう環境省に申し開きができない事態です。しかし、この時、どうもおかしいぞ。1000頭以上いたのではないかということになってきたと思います。

 

そこで、たくさんの自動撮影カメラを山中に設置して、推定数の数え方を変えたのです。秋田県の担当者も、クマが増えたのではなく、数え方が変わっただけといっています。秋田のクマが1000頭でなくてラッキーでした。クマ数はこれまで猟師が数えてずっと増減がなかったのですから、もし今年度の推定数4400頭が正しいのなら、昔から4400頭だったのだと思います。その中で120頭以上殺さないように気を付けてきたら、ずっと安定していたのですから、毎年23%ずつ生息数が増えるなどあり得ないことです。

 

推定繁殖数を上回る捕獲に向けてかじを切るとはどういうことでしょうか。

4400頭×0.23=1012頭、今後は毎年1012頭ずつ殺していくと言うことなのでしょうか。あまりのばかばかしさに熊森はついていけません。

 

人身事故はあってはならないことです。クマが山からどんどん出て来るのも困ります。しかし、それとクマ数は関係ありません。環境省が、クマは800頭いたら安定個体群だと言ってるので、秋田はクマ数を800頭にしたらいいと思う人がいたらそれもまちがいです。

 

生息推定数は神のみが知る数ですが、もし秋田にクマが6000頭いたとしても、豊かな森を造ってくれているのですから、現状維持に務めるべきなのです。人身事故を減らすためには、山から出て来るクマ数が増えないようにしたり、クマとの対応法を啓蒙したりする必要があります。最近、山からクマが出て来るようになったのは、秋田の奥山でクマが棲めなくなるような異変が起きているのかもしれません。

 

秋田県庁に問い合わせると、秋田の奥山を調査している研究者は、秋田県には一人もいないのだそうです。早急に秋田大学などに依頼して調べてもらうべきだと思います。

 

最後にもう一度言いたい。生息推定数が4400頭になったことと、クマを大量捕殺していくように舵を切ることは、何の関係もない話です。小学生でもわかることです。4400頭がどこまで真実に近いのかということすら、誰にもわかりません。1000頭ではなかったようだとは、今となっては思いますが。

 

再度書いておきますが、秋田県庁担当者に電話をすると、クマが増えたのではなく、算出法が変わっただけですという回答でした。それならそれで、マスコミの駆除強化という言葉を訂正指導すべきだし、大量捕殺に走らないようしっかりとブレーキをかけていっていただきたいと思います。熊森は今後も秋田県を注視していきます。(完)

北秋田市くまくま園に行ってきました

今年も5月に、日本熊森協会本部でクマの保護飼育に長年携わってくださっている本部ボランティアスタッフのみなさんが、北秋田市の山の上にある「くまくま園」を自費で訪れました。

今年の参加者は4名、現役中の3名は、いずれも勤務先の休暇を取って打当温泉泊まり込み参加です。みんなで、獣舎掃除などの飼育補助の奉仕活動を行ってきました。

 

くまくま園の入り口 正面がツキノワグマ飼育場  写真右奥がヒグマ飼育の新獣舎

 

くまくま園を裏から撮影 写真左建物がヒグマ舎で、その左広場がヒグマ運動場

 

2018年度日本熊森協会がヒグマたちに差し入れた食料の一例

(写真提供:くまくま園)

 

大好物のスイカとサツマイモ

 

運動場に置かれたスイカ

 

寝室内に置かれたスイカ (一玉ペロリだそうです)

 

大好物のブドウ

 

運動場のあちこちにブドウが置かれました

 

現在、北秋田市のくまくま園には、新しく建設された獣舎に、十数頭のヒグマが飼育されています。

いずれも、経営破たんした八幡平クマ牧場で飼育されていたヒグマたちで、殺処分が予定されていましたが、日本熊森協会が終生保護飼育を強く願い出て実現したものです。

飼育員の方とも、すっかり仲良くなりました。

主な餌は、トウモロコシの粉とクマフードです。

飼育員の方が、獣舎の周りに自然に生えているたくさんのフキ等の山菜を摘んで来て、主食の上に置いてやっていました。

飼育員の方が、ヒグマに深い愛情を持って飼育されているのが、各場面から伝わってきます。

どのヒグマも、満ち足りてとても幸せそうな顔をしていました。

 

熊森本部は、くまくま園に引き取られたクマたちが元気にしているかどうか、ツアーを組んだり、ボランティアスタッフたちが訪れたりして、毎年、見に行っています。

また、年に何回かは、おいしい果物などを差し入れしています。

くまくま園に引き取られたクマたちがどうしているか心配してくださっているみなさん、ご安心ください。

以前から飼育されていたツキノワグマたちにも会ってきました。

 

クマはヒトと心を通わすことができる、すばらしい動物です。

メディアは、「クマは人を襲う」などの誤情報を流さないでください。

 

八幡平クマ牧場で飼育されていた、以前、愛知県豊田市で捕獲されたアイチとトヨコたちも元気でした。

頭数が増えないように、ヒグマ舎もツキノワグマ舎も、オスとメスを分離飼育しています。

そういうわけで、今年生まれたクマの赤ちゃんは1頭だけでした。

私たちはどんな動物も大好きですが、クマの赤ちゃんのかわいさは格別です。

 

今年生まれた子グマ

 

みなさんも、北秋田市のくまくま園をぜひ訪問してあげてください。

大切に飼育されている動物たちを見ていると、こちらまで幸せな気分になってきます。

その時は、感想などを熊森本部にお送りいただければうれしいです。

 

 

 

 

 

秋田県鳥海マタギのドキュメンタリー 「熊を崇めクマを撃つ」

日本熊森協会です。

2019年4月6日・4月11日に放映されたNHK Eテレ「クマを崇めクマを撃つ」を見られましたか。

日本熊森協会としては、多くの方々に見ていただきたいと願って、再放送直前でしたが、ブログに番組の予告を書かせていただきました。

 

秋田県由利本荘市、鳥海山のふもとに今も残るマタギ集落があります。

番組に登場した鳥海マタギの末裔の方の、ひとつひとつの言葉に、非常に重みや真実みがあると感じました。

山は一歩入れば、そこは神様のものだと言われていました。

昔のようなブナの原生林を取り戻したいとして、ブナを植林されていました。ブナの原生林があれば、クマは山から出てこないとも言われていました。

すばらしい自然の映像をバックに、事実を淡々と伝える優れた番組であったと思います。

 

山のこと

クマは人工林率が40%を超えると絶滅に向かうと言われています。

秋田県の県平均人工林率は57%と大変高率です。

これでは、山の実りが悪い年は、クマたちが冬眠前の食い込み用の食料を求めて、山から出て来ざるを得ません。

 

そんな秋田県ですが、番組のバックとなった鳥海山のふもとの山には、落葉広葉樹を中心とした峰々が延々と続いていました。

人工林率が高いと言っても、さすが秋田県です。

こんな深い奥山天然林がまだ残っているのだなあと感激しました。

西日本ではもう見られない光景です。

あのような広大な天然林を再生しないと、クマは野生で生き残れないことを多くの国民に知ってもらいたいと思いました。

 

マタギのこと

明治になるまで1200年間殺生禁止令が出続けていたわが国で、特例として狩猟を許されていた山の民が、東北のマタギです。

彼らは、年貢の代わりに、熊の胆を将軍に献上するなどしていたそうです。

世間では今、<マタギ=クマを撃つ人>に、されてしまっていますが、元々は、カモシカ、サル、キツネ、ウサギなど、マタギは生きるために何でも狩っていたそうです。

 

彼らは先祖代々、山に精通し、山の神を信じ、山から得られるものは全て神様からの授かりものとして、手を合わせて感謝し、命を頂くことの重みを体で感じて残さず食べ、自らの命を繋いできた人たちです。マタギとハンターを一緒にしないでほしいと強く訴えておられました。

 

しかし、今はスーパーに行けば、いくらでも食料が手に入る時代です。鳥海マタギの末裔の方は、マタギはこの国からなくなる。時代の流れだ。マタギとは深い深いもので、自分も自分のことをマタギと思っていないと言われていました。

 

これからのこと

狩猟するために山を知り尽くして来たマタギの、山への畏敬の念や野生動植物に関する知識は本当に貴重です。

クマについても、良く知るからこそ、「クマはすごい、クマは偉大だ、クマはかしこい、クマは勉強になることをいっぱい教えてくれる、クマは山の神様の使い」と崇めることができるのだと思います。

今後は、ガイドやレンジャーの仕事として、その思いや知識が受けつがれることを願わざるを得ません。

 

「すごいアウトドア」と称して、スポーツハンターやレジャーハンターの養成に軽々しく旗を振り続けている環境省のみなさんに、ぜひ、見ていただきたい内容でした。

 

 

 

 

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