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環境省令で指定管理鳥獣にクマ追加も、初年度から不適で、熊森はクマを外すか別案を提案

指定管理鳥獣とは、全国的に生息数が著しく増加していたり、生活環境や農作物、生態系に被害を及ぼしたりする野生動物で、集中的かつ広域的に管理(=捕殺)が必要な種に対し、国が大幅な個体数低減をめざして捕殺強化のための交付金を出すもので、2014年に鳥獣保護管理法に新しく導入され、シカ・イノシシが指定されました。

 

(熊森は、1999年に当時環境庁が個体数調整捕殺を導入しようとした時から、自然保護上からも生物倫理上からも、山の中にいる何の被害も出していない野生動物を個体数調整の名で人が殺すことに一貫して反対してきました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲睦まじい親子のヒグマ

 

今春、私たちが大反対したにもかかわらず、環境省は伊藤信太郎環境大臣が主導して、この指定管理鳥獣に、環境省令(=施行規則)でこれまでのシカ・イノシシに加え、クマを追加しました。

 

このような発想のバックには、クマが山から出て来て被害を及ぼす最大の原因は生息数の増加であるというクマ研究者たちの一方的で誤った考えがあります。

 

このクマ指定管理鳥獣、案の定、初年度から不適です。

 

以下、北海道のヒグマの例で見ていきます。

 

<北海道庁ヒグマ捕獲(=捕殺)新目標>

 

年間捕殺目標雌雄計1329頭、10年間で1万3290頭を捕殺する。

 

目標:人里周辺の森林に生息する個体を中心に捕獲を強化し、推定生息数を22年末の1万2200頭から34年末で約35%減の7931頭にする。

 

 

今年8月21日の道ヒグマ保護管理検討会では、検討会委員の一人である兵庫県立大の横山真弓教授(野生動物管理学)が、「10年で1万3290頭捕殺では不十分で、5年間で達成すべき」と主張していました。そうなると、毎年の捕殺目標は、2658頭になります。

 

ちなみに、山の実り大凶作の異常年となった2023年度の道内ヒグマ捕殺数は、最終統計によると過去最多の1804頭でした。

 

命あるヒグマをまるで工業製品でもあるかのように数字だけで機械的に扱うことを恐ろしく感じます。ヒグマは人間同様、豊かな感情を持ち親子の愛情も深い動物です。ヒグマをはじめとする北海道の野生動物たちは、北海道の豊かな自然生態系を形成してきた生き物たちで、人間から尊厳されるべき先住民です。クマ研究者の皆さんが作られた「北海道ヒグマ管理計画」には、クマが生存することによる恩恵を、今、私たち人間が受けているという視点が完全に抜け落ちていると感じます。

 

機械的な捕殺目標に基づき、問題を起こしていないクマも、子グマでも親子グマでも無差別に捕獲する個体数調整捕殺を止めるべきです。狩猟と有害駆除で十分です。

 

ところで、11月12日に報道されたUHB 北海道文化放送の番組によると、今年の北海道はこれまで長年続いていた秋の山の実り不作から一転して、10年ぶりにクマの主食であるドングリが大豊作です。

 

札幌市西区の登山道入り口に大量に落ちているミズナラのドングリ(UHB)

 

番組の中では登山者たちも、「10何年歩いていてこんなにドングリやクルミの実がなったのは見たことがない。今年は異常なほどの実りだ」  「すごく多いですよ。ドングリは大豊作。山ぶどうも多い。今年はクマ出てこないと思う。いままで出てきていたでしょ、エサなくてね」と語っていました。

 

ヒグマは今年の5月~7月はいつも通り出没していましたが、秋以降の出没がピタッと止まっているそうです。これまでクマと人の軋轢が増えるのは、クマ数の増加が問題とされてきましたが、熊森がずっと主張してきたように、クマの出没数は、山の中の餌量で決まることが証明されました。

 

道庁は、今年、どうやって1329頭(2658頭?)のヒグマを捕殺するのか。

山の中に分け入って殺すのでしょうか。捕殺する必要などあるのでしょうか。

これがクマ指定管理鳥獣初年度の実態です。

ちなみに今年10月末までのヒグマ捕殺数は579頭です。

 

クマという動物の特性を知らない一般の方は、今年ドングリが大豊作なら来年クマが爆発増加するのではないかと心配されているようです。

しかし、ヒグマは6月ごろの交尾期、オスの子殺しもあるそうで、生まれた子供が全て成長するわけでもなく、元々、クマは繁殖力の弱い動物です。

秋の実りの凶作年、十分な脂肪を貯えられなかったメスは受精卵を着床させません。

自ら個体数を調整する能力を持っているのではないでしょうか。

 

ヒグマだけではなくシカやイノシシに関しても同様ですが、野生動物と人が日本列島で共存するには、祖先がしていたように、使用する大地を分け合ってお互いに生息地を侵さないように棲み分けることが必要です。野生動物たちの聖域内で、彼らが増えようが減ろうが、それが自然なので、人間は何もしなくていいのです。

 

生き物にとって命ほど大切な物はないのですから、私たち人間は生き物を殺すことばかり考えずに、餌量が確保されるよう、戦後の国策であった拡大造林や奥山開発で人間が破壊し過ぎた生息地を再生させていただくこと、クマを初めとする森の生き物たちが安心して山で暮らせるように、人間が一歩後退して、原則として彼らの生息地に人は入らないようにすること、祖先が延々と設置していたシシ垣のように、被害防止柵を設置するといった棲み分け対策を優先すべきでないでしょうか。

 

クマとの軋轢を低減させたいのなら、まず、クマ生息地での観光開発や道路開発、メガソーラー、風力発電など自然破壊を伴う再生可能エネルギー事業をやめねばなりません。

 

環境省の職員の皆さんが、クマがシカ・イノシシのように捕殺強化だけにならないように、クマの交付金メニューに捕殺以外のものも入れてくださっています。しかし、地方自治体次第で、捕殺強化に偏る恐れがあり、そうなると絶滅が心配されます。元々、指定管理鳥獣はクマという動物の特性に合わないものなのです。(伊藤環境大臣の失敗です。)

 

浅尾慶一郎新環境大臣には、シカやイノシシと比べて繁殖力も弱く、生息数が3ケタも少ないクマを、シカやイノシシと同列に扱わないように、クマを指定管理鳥獣から至急外すことを、まずやっていただきたいです。

 

ただし、電気柵の設置や専門員の配置などの目の前のクマ対策に国からの交付金は必要ですから、指定管理鳥獣に、捕殺強化をめざさない種類をつくり、クマをそちらに指定する案などはありだと思います。

 

シカやイノシシも捕殺以外の方法で対処していけるようにすべきだと思います。殺しても殺しても、手を緩めるとすぐ元の数に戻ってしまいますから、無用の殺生になっています。これは残酷なだけで、永遠に殺処分が終わりません。明治にオオカミを滅ぼしたから、シカ・イノシシの数が制御できなくなったという説もあります。自然界のことは、調べても調べても人間にはわからないことだらけなのです。それが自然です。ただ、祖先の生命尊重思想だけは、子孫として忘れずに持ち続けねばなりません。(完)

 

感謝 釧路湿原メガソーラー拡大に土地買収で対抗しているNPO法人・トラストサルン釧路

釧路湿原のメガソーラーラッシュについては、熊森も大変胸を痛めています。くまもり北海道支部は、今年の9月15日、現地視察のツアーを組みました。しかし、欧米の自然保護団体と比べるとまだまだ当協会の規模が小さすぎて、実践自然保護団体ではありますが、水源の森の保全・再生活動で手がいっぱい。残念ながら釧路湿原保全実践活動にまでとても手が回らないというのが現状です。
しかし、河野さんの文により、メガソーラーがこれ以上広がらないように釧路湿原を守ろうと土地買収(ナショナル・トラスト)運動を展開してくださっている地元団体NPO法人・トラストサルン釧路(サルンはアイヌ民族の言葉で湿原を表す)という団体があることを知りました。うれしいです。トラストサルン釧路に感謝でいっぱいです。
トラストサルン釧路は、土地を購入し管理する活動に取り組み、これまでに主に湿原の南部で59カ所、約607ヘクタールの土地を取得したとのことです。(釧路湿原の1/40)
釧路湿原は、北海道釧路市に広がる日本最大の湿原で、東西 25km、南北 36km、面積は約2万8000ヘクタール。東京ドーム約6000個分に相当する広大な湿原は、約1万年前の地形変化によって形成され、キタサンショウウオや湿原の象徴とも呼べるタンチョウといった希少な生物が生息する貴重な自然環境です。
湿原に依存する生物の保護や開発からの保護を目的として、1980年、釧路湿原は日本で初めて中心部の7863haがラムサール条約登録湿地としてラムサール条約に登録され、国際的に保護の重要性が認められた場所です。湿原の中央部やわずかな丘陵地が、1987年に国立公園に指定されましたが、行政に聞くと、国立公園内でも環境省の許可でメガソーラーが設置されているとのことです。
釧路湿原メガソーラー  毎日新聞より
熊森が調べると、夏のパネルの表面温度70度、積雪時の発電量はゼロ。設備利用率わずか15%でした。…役に立つ???雷が落ちたり火災になったりしたら、パネルの中から有毒物質が流れ出て水や大地を汚染するかもしれない。そうなれば、もう取り返しがつかない。

南部湿原一帯には、環境省のレッドリストで絶滅危惧種のキタサンショウウオ、タンチョウ、猛禽類のチュウヒの生息が確認されており、キタサンショウウオは釧路市指定、タンチョウは国指定の天然記念物。チュウヒは激減しており、全国で「135つがい」(日本野鳥の会による推定繁殖つがい数)しかいないとのことです。

 

 

南部湿原にあるメガソーラー。(撮影:河野博子)
発電所ができる前、この付近では、タンチョウの営巣やチュウヒの繁殖が確認された

 

熊森から

 

太陽光発電施設は現在、建築基準法上の建物にあてはまらないため、開発が抑制されている市街化調整区域でも設置できます。

釧路湿原に太陽光パネルが次々と設置されていくのに、止めることのできない国や自治体って何のためにあるのでしょうか。

 

かつて原野商法で釧路湿原に土地を買ったものの手放したい人々が多くいるそうですが、行政はそういう土地を受け取ると管理コストと管理責任が半永久的に続いていくから困るとして、受け取りを断っているそうです。

 

釧路市には、2023年7月に施行された「自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」がありますが、2014年6月には96施設だった市内の太陽光発電施設が、2023年12月には631施設と6.6倍に増えているそうで、条例に格上げしないと太陽光発電施設の建設ラッシュが止まらないもようです。

 

市長さんと市議会議員のみなさん、条例化を急いでください。お願いします。条例には効果があります。利益追求しか考えていない外資や道外の事業者から、釧路湿原を守ってください。

国は、再エネ事業による自然破壊を止めるために、法規制を急いでください。(完)

 

速報 北海道支部が札幌大通公園で初の街宣

以下、北海道鈴木ひかる支部長からの報告です。

 

11月9日(土)、札幌大通り公園3丁目で、14時から約2時間、くまもり北海道会員6名が参加して、北海道支部初のくまもり街宣を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日と明日、札幌ドームで人気アイドルであるスノーマンの5万人集まるコンサートがあるので、札幌の街は全国からやってきた10万人の若者たちですごいことになっていました。

 

スノーマンの話も折り込みながら、楽しい街頭演説、考えさせる街頭演説をやりました。

 

ひぐまの出没、出没したら殺すと言うことだけを考える世の中にするのではなく、もっと原因を考えましよう。
なぜ、ひぐまが出没するのか?

風力発電による自然破壊も原因の一つですよ。

 

北海道で夏、クーラーが必要になって来たのはなぜですか。

原因を追及しないのですか?

森は夏の気温が暑くなり過ぎないように、気温調節をしてくれるところですよね。
北海道の森を再エネで伐ってしまえば、夏、北海道の気温がさらに上がってしまいますよ。

 

皆さんは、日々の生活に追われて、考える気力を無くしてはいませんか?

自然災害が増えたのは、人間が自然を破壊したのが原因です。

 

石狩ではものすごい数の洋上風力発電が計画されていますが、そこから出る低周波音が、北札幌市民の体に影響を与えるようになるというシュミレーションがでていますよ。ご存知ですか?

この話になると、意外と若い人たちが振り向いて関心を示してくれました。

こうして、用意したチラシ100枚がなくなりました。

街頭演説をして良かった!

 

信号待ちの人とか、結構多くの人たちがこっちを向いて話を聞いてくれていました。

 

がんばれと言ってくださる方や、そうだそうだとうなずいてくれるおばあちゃんたちもいました。

「くまもり協会だって」と話している人や、熊森の新しい旗をスマホで撮っている人もいました。

チラシをもらいに来てくださった人たちは、家に帰って中身を読んでくださると思います。

 

翌日のアメリカの国立公園のガイドであるスティーブ・ブラウンさんとのコラボ講演会に参加してくださる方も、何人か増えました。

行政の方も参加してくださいます。

 

北海道はもうすぐ雪になります。

 

街宣、大成功でした。😀

 

風車ができたらヒグマが出て来たと稚内の酪農家が証言 くまもり北海道が稚内で学習会

広大な土地を持つ北海道は東北と並んでメガソーラーや風力発電など、再エネ事業の草刈り場となっています。

再エネは、火力発電の何百倍もの土地が必要ですから、北海道のや東北の山間部や大地が狙われるのです。

 

道北の稚内ではもうすでに稼働している大型風車が188基もあります。

この1年間で44基増えました。

今後も続々と風車計画があがっています。

なんともかとも、もう信じられない思いです。

 

 

下の図は、稚内を中心とした道北地方のアセス中、建設中、稼働中の風力発電です。

クリックして拡大してから見てください。作成時のもののため、現時点と異なるものもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

佐々木邦夫氏Facebookより

 

 

 

 

 

こんな稚内で、10月13日、熊森北海道支部が風車学習会を開きました。十数名の方が集まってくださいました。

 

 

以下、北海道鈴木ひかる支部長からの報告です。

稚内に来ると、山の尾根筋にずらりと風車。ものすごかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稚内の山々の尾根に林立する風車群 クリックしてください。

 

 

地元で昔から代々酪農を営んでおられる方にインタビューしました。

風車ができたらヒグマが山から出て来た、電波障害が起きて携帯電話が使えなくなったと訴えられています。

 

 

 

すでに稼働している稚内の風車の騒音を録音してきました。

 

風車の音

 

この風車の騒音や振動、人間の耳には聞こえない超低周波音などに耐えかねて、山から出て来るヒグマなど森の動物たちを責められますか。

北海道庁は、ヒグマの大量捕殺を計画しています。

 

 

稚内風車に関する新聞記事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町を上げて風車推進の中では、稚内市民もいきなり反対の声を上げにくいと思います。
風車の真実を学ぶ市民学習会を市内各地で順次持っていくことが、まず必要だと思いました。

 

熊森本部から

北海道鈴木直道知事は、再生可能エネルギーの積極導入に熱心です。

北海道の自然を大破壊をして、東京などの首都圏に電気を送ろうとしています。

北海道の大地を愛する者ならできないのではないでしょうか。

稚内も市長以下、ほとんどの市議が風車推進派だそうです。

日本は、産業構造上、地方がどこも疲弊しています。

膨大な利益を得ることになる発電業者からのおこぼれのお金をたった20年間もらうために、地方はふるさとの大自然破壊行為を許すのでしょうか。一度壊してしまった自然は元には戻りません。

風車で命を奪われることになる鳥や獣や昆虫などは、どうなってもいいのですか。

未来の子供たちのことは考えないのですかと問いたいです。

 

 

自然の大切さを理解できるトップが、行政側にも企業側にもほとんどいないことが、日本社会の深刻な問題です。

 

風車には、バードストライクや騒音低周波音による風車病、山崩れなど、様々なデメリットがあります。

風力発電は製造から、発電中ずっと必要なバックアップ電源まで考慮すると、火力発電以上に二酸化炭素を出すともいわれています。

このようなことは国民には伝えられていません。

マスコミは、風力発電の負の側面や私たち国民の電気代から徴収されている再エネ賦課金を使って、どこの国が、どんな事業者が再エネで莫大な利益を得ることになるのかしっかりと伝えてほしいです。

 

ネットの時代ですから、国民のみなさんも、その気になって調べたら、今行われている再エネの嘘がわかってくるはずです。

要は、この国の未来に責任を持とうとしている大人がどれだけ我が国にいるかという問題だと思います。

再エネは、我が国の存続にかかわる重大問題です。やるなら、都市部と屋根置きまでにとどめるべきです。

 

再エネ業者に道徳心を失わせ、地元行政を狂わせている再エネ賦課金を即時廃止は見直すべきと考えています。(完)

マスコミはクマを悪者にしたてるのはやめて 軽トラに突進した根室母グマ報道の問題点

昨年から、なぜかマスコミのクマ報道が、「クマは悪者で捕殺の対象」というもの一辺倒に変わりました。目に余るひどいクマ報道の連続です。アルメディアの方は、クマを悪者にすると視聴率が取れると言っていました。

クマは本来とても平和的な動物で、人間に遠慮してかわいそうなくらいそっとこの国で生きています。

こんな報道が続くと、クマという動物を全く知らない多くの国民が、人を襲う恐ろしい動物という間違った固定観念をもってしまいます。

 

今回の根室の軽トラに突進した母グマの報道でも、子グマを守ろうとした母グマの行為であったことがほとんど取り上げられておらず、ヒグマ凶暴、軽トラの被害ばかりが強調されています。以下は報道の見出しです。

 

・【クマ】軽トラックに襲いかかる 北海道・根室市
・北海道根室軽トラックにヒグマが衝突乗っていた2人けがなし
・【衝撃】ヒグマが軽トラックに体当たり フロントガラス破損

 

ニュース映像に使われたドライブレコーダーを注意深く見ると、一番初めに一瞬子グマが画面左に歩いていく姿が映っています。
(子グマと母グマの文字は、熊森による挿入)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この子グマのことに触れないと、なぜ母グマが軽トラにとびかかったのかが視聴者に伝わりません。

 

地元の方に聞くと、この軽トラックを運転していたのはギョウジャニンニクを採りに、国道からそれた山道に入り込んで行った地元の方だそうです。母グマにクラクションを鳴らし、パニックに陥らせています。ヒグマの生息地に入るのですから、最初に子グマを見つけた時点で一旦停止してそっと引き帰るという最低限のマナーを守るべきです。

 

突進してきた母グマの後ろにも、もう1頭の子グマが現れますが、この軽トラは無視してこの林道をぶっ飛ばしていきました。

 

また、根室市がこの母グマに捕獲罠を仕掛けるとの続編ニュースも、人間側の視点ばかりです。以下は報道の見出しです。

 

・ヒグマによる「軽トラック襲撃」を受けて「箱わな」緊急設置へ 今月中にも周辺2か所に車体は大きく損傷、、、北海道・根室市

・軽トラを襲ったクマ箱罠を設置し捕獲へ「人身事故につながる危険」北海道根室市

 

行政は、罠を掛ける前に、この軽トラを運転していた方を指導したのでしょうか。

 

物言えぬ生き物たちに全責任を負わせるという最近のマスコミ界の倫理感も問題です。

 

根室市は、道の駅の横に罠を掛けることを考えているそうです。しかし、罠の中にはハチミツなどクマの大好物が入っていますから、遠くのクマまで誘引してしまいます。北海道ではクマ放獣体制がありませんから、罠に掛ったクマは100%銃で殺処分されます。
この辺りは元々ヒグマの生息地で、何かを狙ってクマがやって来たのではなく、元々の通り道だということです。
根室市担当者によると、地元ではクマを捕獲してほしいという声も出ていないということですから、根室市は罠を掛けないようにお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

根室の道の駅(鈴木支部長撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅横の熊注意や立ち入り禁止看板(鈴木支部長撮影)

 

注意看板は必要です。
根室市さん、今後ともヒグマとの共存をよろしくお願いします。

門崎允昭顧問が視察してきたオーストラリアでの野生動物と人の徹底した棲み分け実態

以下は、札幌にある北海道野生動物研究所の所長で長年くまもり顧問を務めてくださっているヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生が発行されている北海道熊研究会 の会報 第 125 号( 2024 年3月30日付)です。先生の許可を得て転載させていただきました。

 

私(門崎允昭)の羆に関する基本姿勢は人的経済的被害を予防しつつ、極力羆は殺すべきでないと言う立場です。
理由: この大地は総ての生き物の共有物であり、生物間での食物連鎖の宿命と疾病原因生物以外については、この地球上に生を受けたものは生有る限り互いの存在を容認しようと言う生物倫理(生物の一員として、他種生物に対して、人が為すべき正しき道に基づく理念による。

日本では熊や鹿が、市街地に出て来るからとの理由で、その抑止策として、一方的に、殺す事を決め、殺しまくっていますが、皆さんはどう考えますか。
今回、73 日間、オーストラリアに滞在し、その間に、各地で野生動物に対する対応を、調査しました。(2023 年 12 月 20 日札幌出発し、娘宅に滞在し、2024 年 3 月5 日、札幌へ帰着。)、

 

その結果、どの地域でも、野生動物が本来の生息地から、人が利用している地域に、出て来る事を、高さ2m程の金網を張りめぐらせて、(一部の箇所では有刺鉄線柵を張って)、完全に防いでいる事を、国策として行って居ることを目撃し、日本との違いに、驚嘆。
動物が(利用する可能性が有る地所も含めて=市街地の道路沿いは勿論、僻地の道路沿いも含めて)道路を越えて、人が日常的に使用する場所には、一切出てこられないようにされている事に驚きました。

 

次の写真は、Australia の東海岸の中部に位置する Coffs Harbour 市の市街地で撮影したものです。

我が国でも、同様の対策をすべきなのに、そうしないで、熊や鹿を、殺しまくろうと、決めて、殺し始めたのだから、世界中から、日本人の知性の劣等さが時と共に広がり、非難を受ける事になるでしょう。

 

本号のお知らせ

<電気柵と有刺鉄線柵の設置法>
地面から約 20cm 上に一線を張る。それから、約 40cm 置きに、4 線ないし 5 線を張る
北海道の熊問題は、昔も今も、以下の4項目です。解決法を記載します。

① 「羆の生息地に山菜採り、遊山・登山、作業等に入って羆に襲われる
解決法・・・ホイスルと鉈の持参

② 羆が里や市街地出没して住民に不安を与えている
解決法・・・一時的には電気柵・恒久的には有刺鉄線柵

③ 放牧場、僻地の農地、果樹園、養魚場にクマが現れ食害や不安がある
解決法・・・一時的には通り道に電気柵を張る。 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

④ 僻地の農作地での人身事故の予防
解決策・・・ 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

 

札幌市芸術の森では、2013 年から、羆が出て来る可能性がある5月~11 月の間、全長 12km にわたり、電気柵を張って羆が園内に侵入するのを、完全に防いでいる。
芸術の森の電気柵の設置、撤去にかかる経費は約 40 万円で、若干の変動はあるとのことです。漏電防止のための草刈りは、一月約 20 万円ですが、草が繁茂する時期になると 100 万円程度増加し合わせて 120 万円前後になるとのことです。したがって、電気柵にかかる経費はトータルで年間 160 万円~180 万円になるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門崎先生と芸術の森の有刺鉄線

以上。

 

熊森から

門崎先生のお話では、オーストラリアでは、行けども行けどもどこまでもこのような柵で人と野生動物の棲み分けが徹底されていたそうです。これだと、確かに有害駆除はゼロです。
人と野生動物が触れ合う機会が全くないというのはちょっと寂しいような気もしますが、殺すよりはいいかな。
ただし、オーストラリアの人は狩猟を楽しみますから、狩猟の時はもちろん柵内に入ります。
2016年度のカンガルーの狩猟数は150万頭だったそうです。オーストラリアのカンガルー推定生息数は5000万頭だそうですから、もしこの数字が正しいなら、3%の狩猟率です。
学者によっては、干ばつ年は大量のカンガルーが餓死して、自然がカンガルーの生息数をコントロールしているから、狩猟などしなくてもいいと言っている人もいます。
カンガルー皮を売って儲けたい人は狩猟をします。ただし、子供のいるカンガルーの狩猟は禁止されているそうです。

2月11日 北海道支部主催 ヒグマ指定管理鳥獣化案について語り合う会in札幌 

昨年11月、北海道の鈴木知事が秋田の佐竹知事ら東北地方と新潟県の知事を誘って、クマの捕殺強化のために国の交付金を求める要望書を、環境省伊藤信太郎大臣に提出しました。
これを受けて環境省は、今年4月の省令化をめざして、今、クマ指定管理鳥獣化を急ピッチで進めています。

 

元々、指定管理鳥獣の制度は、農業被害などを多く出しているシカとイノシシの頭数を10年後の2023年までに半減させる目的で、罠を仕掛けて夜でも山奥でも大量に捕殺することが出来るようにしたものです。結果、大量に捕殺したものの減った分すぐに新しい子が生まれるため、10年たっても思ったように数は減らず、錯誤捕獲される他の野生動物が続出するなど、大変な弊害が出ています。

 

昨年度、東北地方中心に山の実り皆無という前代未聞の異変がおき、秋にクマたちが餌を求めて山からどんどん出て来て、近年最多の1.3倍となる人身事故(218名、うち、死者6名。)とクマの大量捕殺(12月末8558頭:内訳はヒグマ1002頭、ツキノワグマ7556頭)という悲惨な記録が残されました。

 

大激減したクマを、指定管理鳥獣にしてさらに捕殺強化しようという動きに、私たちは疑問を持ちました。シカやイノシシと比べると、クマの生息数は桁違いに少ないし、繁殖力も弱く、地球規模で絶滅しかけている動物です。

 

これ以上クマの捕殺強化を進めると、オオカミに次いでクマまで絶滅し、日本の水源の森が保てなくなってしまいます。

 

第一、クマたちは人身事故を起こそうとして山から出てきたわけではありません。

空腹に耐えかねて出てきたのですから、クマを殺すのではなく、山の中に以前のような昆虫や実りを復活させて、クマが山から出て来なくてもいいようにすることが、この後の対策の中心になるべきです。

 

2月11日、熊森北海道支部はいろんな立場の方をお呼びして、指定管理鳥獣のことなどヒグマについて語り合う会を札幌で開催しました。
会場いっぱいに100名近くの方々がお集まりくださり、予想を超える盛会となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

札幌 かでる2.7の会場風景

 

(1)「広葉樹の森を育てる」

札幌市森林組合理事 我満嘉明氏 札幌在住

 

 

 

 

 

 

 

 

元青森の漁師だったひおじいさんが、沿岸沿いに北海道にやってきて盤渓に住み着いた第1号です。当時の北海道では、屯田兵の生活を守るために、国有林の木が伐られていました。私のおじいさんは、北海道中の山を歩き回って造材の仕事をしていました。私たち孫にホタテやスルメのおやつを持って帰って来てくれるのが楽しみでした。

 

今、地球規模で地下水が減ってきているそうです。北海道も原生林がどんどん伐られて、スギやカラマツ、エゾマツなどに植え変えられた。そういうとこって下草が生えないんです。雨が降っても水がしみ込まない。しかし、クマが好むナラの木は、根が深く入り込んで地下水を貯える。おいしい水が湧き出る森をつくることにクマが一役かっている。

 

戦後、北海道も、針葉樹ばかり植え過ぎた。道民のボランティアで、広葉樹の森に戻していきたい。

 

 

(2)「ヒグマの判断力・学習能力を知り、ヒグマ出没抑止対策を考える」

プロカメラマン稗田一俊氏 二海郡八雲町在住

流域の自然を考えるネットワーク所属

 

 

 

 

 

 

 

 

魚の写真を取りに行くとヒグマに出会うことになる。ヒグマは人と出会うと、自ら人とのトラブルを回避しようとする高い能力を持っている。集落の裏に住み着いているヒグマは、新たなヒグマがよそから入り込んでこないように住民を守っている面もある。むやみに捕殺するのではなく、出没抑制対策にこそ力を入れるべきだ。

 

ヒグマの研究者たちが、研究のためと言って、誘引物でヒグマをおびき出して捕獲し、首に発信機をつけるなどして、クマに耐え難い負担を強いているが、誘因物多用行為がクマの行動範囲を広域化させていると感じる。

 

 

 

 

 

 

 

首の毛は擦り切れ、発信機によって下にも上にも顔を上げることが制限されて苦しむヒグマ
電磁波障害も心配

 

 

(3)「ハンターとしての経験、今後の対応」

猟友会標茶支部長 後藤勲氏 標茶町在住

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに多くの方がお集まりとは予想外です。ヒグマを守りたい人ばっかり集まっている会に殺す人間が行ったら袋叩きに合うんじゃないかと不安だったのですが、今朝、家内が、クマを守ろうという人たちだから優しい人たちばっかりじゃないのというので、そうだなと思ってやってきました。

 

ハーフライフルの規制緩和は時期尚早。内地からやってくる獲りたいだけの経験のない若いハンターたちを誰が指導するのか。ハーフライフルはベテランのハンターに何年かついてノウハウを学んだ人以外が使用するのは危険だ。

 

クマ指定管理鳥獣については、皆さんがクマを殺すなというのはわかるが、私たちは被害を出すクマを殺さねばならない立場にいる。もちろんなんでも殺すのではなく、悪いことをする前に、どうしたらしなくなるか考えることが先決。花火などで追い払うことができる場合は追い払えばよい。

 

クマと人の共存の前に、私たちハンターとあなた方の共生・共存が必要だと感じている。

 

 

熊森北海道支部長 鈴木ひかる

 

 

 

 

 

 

ヒグマ問題は行政だけに任すのではなく、立場が違う様々な人たちの意見を聞きながら、道民みんなの叡智を集めて考えることが大切。クマと人間が棲み分けて共存し続ける北海道をめざして、このような会を今後、もっと北海道各地で開催していきたい。

 

集会を終えて

参加者の皆さんの感想文には、自分たちはあまりにもヒグマのことを知らなさ過ぎた、このような集会を何度も開いていただき、いろいろな立場の方の話を今後も聞いてみたいという声が多くありました。

クマとの共存を願う熊森会員を二者択一的に誤解し敵視する人たちがいますが、熊森会員は一般の人たち以上に被害にあわれている人々にも共感し、何とか手を差し伸べられないかとやさしい気持ちを持っています。みんなで繋がり合ってよい方向に進めていきたいです。

雪の中参加してくださったみなさん、ありがとうございました。

北海道新聞や朝日新聞などの記者さんが取材に来られて記事にしてくださいました。今後ともよろしくお願いします。

ヒグマが津軽海峡を渡る可能性は?

2023.9.6、FFNプライムオンラインでおもしろいニュースを見つけました。

 

熊森協会顧問の北海道野生動物研究所所長門﨑允昭先生もコメントを寄せておられます。

以下に、ニュースの要約を紹介させていただきます。

 

ヒグマ 本州進出の可能性は?

日本の動物界で最強の身体能力を持つヒグマ。 果たして海を渡ることは可能なのだろうか。

 

 

 

 

 

泳ぎながら威嚇するヒグマ

2020年、風蓮湖で、体長2メートルほどのヒグマが泳ぐ姿が捉えられた。 クマはうなり声をあげながら漁船に接近。 威嚇する様子が撮影された。 そのスピード感のある泳ぎから、驚異的な身体能力がうかがえる。

利尻島に2度上陸したヒグマ

2018年6月、北海道北部の利尻島に突然クマが現れ、島は大騒ぎとなった。

クマの生態に詳しい北海道野生動物研究所所長の門﨑允昭さん:利尻島と北海道間の最短距離は19キロ。 利尻島に現れたクマは、交尾のためメスを探して海を渡ったとみられる。 メスがいなかったせいか、クマはまた泳いで島から去っていった。

 

ヒグマは津軽海峡を泳ぎ切ることができるのか?

津軽海峡は北海道の汐首岬から青森県の大間崎まで最短で約21km。 北海道の白神岬から青森県の龍飛崎だと約20km。

ヒグマの生態に詳しい北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室の坪田敏男教授:距離だけで考えると津軽海峡を渡って本州に行けるかもしれないが、潮の流れや風の向きなども関係し、そう簡単ではない。

ヒグマが津軽海峡を渡って本州にたどり着いたという話は聞いたことがない。

海面が低かった時代にヒグマは一度本州に渡来していて、本州でヒグマの化石も見つかっているが、本州にいたヒグマはすべて絶滅した。

 

ツキノワグマとの交配の可能性は?

ヒグマとツキノワグマは種レベルで違うので繁殖の可能性は極めて低く、これまで交配できたという報告はない。

門﨑允昭さん:たとえ複数のヒグマが渡り切り繁殖できたとしても、もはや本州は気候が暖かすぎるためヒグマには合わない。 本州にヒグマが突如現れる…? 今のところ杞憂に終わりそうだ。

(北海道文化放送)

 

熊森から

泳いでいるクマの動画を見ると、その驚異的な身体能力にほれぼれします。感動です。

以前、この地域を訪れた時、地元の方に「ここのヒグマは何を食べていますか」と聞いたら、「貝だよ」と言われ、びっくりしました。

未来永劫に、クマも、クマが生きられる自然も、日本に残したいですね。

今を生きる私たちの使命です。

NHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見て

以下、会員からのメールです。

 

昨晩のNHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見ました。

 

 

 

 

 

 

 

老漁師が大声でコラッとかこの野郎とか言ってヒグマを遠ざけながら漁をしていました。

見ていてヒグマと共存というより、私にはヒグマを虐待しているように見えました。

なぜなら、ヒグマは人が見えるところに来ただけで、大きな声で追い払われているのです。何も悪いことはしていません。

番組のなかで、ここまでヒグマと共存できているのは、この知床だけだというようなことを言っていましたが、そうではありません。

ロシアでは(場所は記憶していませんが)、猟師のすぐそばで何頭もの大きなヒグマが、漁師から捕った魚を分け与えてもらって食べている場所があります。

漁師たちもヒグマも、どちらも互いを恐れてはいませんでした。

しかし、この知床では漁師が捕った魚は1匹たりともヒグマには与えないと言っていました。

だから飢えてやせ細ったヒグマの親子は弱り果て、子熊は死んでしまいました。(多分あの母熊も死んでしまうでしょう)

そんな状態のどこが共存なのでしょう。

人間がまるで海の幸は自分たちだけのものだと言わんばかりに独り占めして、ヒグマを見殺しにする自然遺産なんて変です。

NHKは、ヒグマと人が共存しているこの場所は何と素晴らしいのかと称賛しているようですが、違うと思いました。

別の方法で共存する方法があると思います。

ユネスコ自然遺産の調査団は、漁師の都合で作った道路とダムを撤去するように要請しました。

 

熊森から

番組は見ておりませんが、あの場所は有名です。

あの場所は特別保護区で、普通の人は入れません。

入れるのは許可を得た特別な研究者と環境省のレンジャー、番屋の漁師だけだと思います。ああそれと、NHKのカメラマン。最果ての地です。

残念ながら、日本でヒグマが殺されないのは、あの場所だけです。

北海道に行って驚くのは、海にびっしりと張り巡らさせた定置網が延々と続いていることです。

これでは、戻ってきたサケやマスが、川を上る前にほとんど人間に捕獲されてしまうのではないかと危惧します。

それでも、ヒグマを殺さないという一点だけで言えば、知床のあの場所は、ヒグマにとっては奇跡のような唯一の天国だと思います。

その点では、ヒグマを殺すことを止めて50年という老漁師さん(84歳)はすごいと思います。

しかし、人間も含めた全生物のために、入らずの森や開かずの森を取り戻したいと考えている熊森としては、あのような最果ての場所は、将来的には海岸の定置網を除去して、漁業も撤退して、人間が入らないヒグマの国に戻すべきだろうと思います。

【北海道標茶町】家畜被害が沈静するも、いまだに捕獲罠が設置され、無実のヒグマが捕殺されていく

今夏、北海道標茶町の牧場で、ヒグマが乳牛を襲う事件が相次ぎました。

NHK2019年8月8日ほっとNEWS北海道

どうしてこのような事件が発生したのでしょうか。

事件を起こしたヒグマはまだ捕獲されておらず、今もなお、捕獲罠が設置されたままです。

北海道では捕獲されたヒグマの放獣体制がいまだに皆無のため、これまでこの罠に誤ってかかってしまった無関係のヒグマが5頭も捕殺されています。

このことを問題視した熊森本部が、標茶町の担当者に電話で問い合わせました。

 

〈以下、担当者とのやり取り〉

熊森:今年、8月から9月にかけて、ヒグマによる乳牛被害のニュースを見ました。現在も被害は続いているんですか?

 

標茶町担当者:8月から発生し、9月18日を最後に被害は止まりました。

 

熊森:具体的にどんな被害があったんですか?ヒグマが乳牛を襲って食べたのですか、それとも圧死ですか。

 

標茶町担当者:今回、放牧中にヒグマに襲われて死亡したと思われる乳牛は12頭です。死因は、ヒグマにはたかれたり引っかかれたりしたことで首の頸動脈や脇を損傷して失血死したものがほとんどです。確実にヒグマが食べたと思われる乳牛は1頭です。発見されたときその乳牛はかなり腐敗が進んでいましたから、ヒグマに襲われて死んだのではなく、何らかの原因で病死して腐敗していた乳牛をヒグマが食べに来た可能性もあります。

また、一命はとりとめましたが、ヒグマに前足ではたかれたのか、ヒグマの爪痕がついてケガを負った乳牛や、その爪痕から感染症を引き起こしてしまった乳牛も13頭います。(ということは25頭もの乳牛がヒグマの被害に遭ったわけだ)

 

ヒグマの攻撃を受けたと思われる乳牛の様子。(NHKほっと北海道8月8日)

 

熊森:今回のヒグマは、何のために乳牛を襲ったのでしょうか?食べるためではないようですね。

 

標茶町担当者:詳しい原因は分かりません。猟友会の方のお話では、手負いグマなのではないかという推測もあります。真相はわかりません。

 

熊森:今回これらの乳牛を襲ったヒグマは特定されているんですか?

 

標茶町担当者:はい、体重300㎏近い1頭のオスの大きなヒグマだと思われます。

今回の被害があった牧場には、肉球の足幅18cmという大きなクマの痕跡がありました。標茶町は町域の中央を釧路川が縦断していますが、この川の西と東でヒグマによる乳牛被害が立て続けに発生した訳です。被害にあった乳牛の傷跡が同じことと、牧野の周囲に張り巡らされた鉄線の先に付いていた体毛のDNA鑑定結果からも、川の西・東とも事件を起こしたのは同じクマであることがわかりました。実際、被害現場付近に自動撮影カメラを設置したところ、大きなヒグマが撮影されました。

 

熊森:町のHPに、クマの家畜被害があった場所をプロットした地図が出てきますが、その現場に罠をかけているんですか?

 

標茶町担当者:はい、家畜被害があったその現場に罠をかけています。現在も5基設置してます。

 

クリックすると、大きく見られます。

 

熊森:そのヒグマは罠に捕獲されたんですか?

 

標茶町担当者:これまで、5頭のクマを捕獲しましたが、事件にかかわったクマはまだ捕獲されていません。

 

熊森:誤捕獲された5頭のクマはその後どうなりましたか?

 

標茶町担当者:すべて、殺処分しました。

 

熊森:それは、むちゃくちゃですよ。事件に関与していないクマだと知りながら殺処分ですか。山に返してあげるべきじゃないですか。問題を引き起こしたクマがかかるまで、罠を設置し無関係のヒグマを獲り続けるんですか?

 

標茶町担当者:はい。来年も、同じ事件が起きるかもしれませんので。

 

熊森:北海道のクマ管理計画を読まれましたか?原則はクマを殺さないでクマ対策を行うことになっていますよ。どうしても捕殺が必要な場合は問題グマのみ確実に捕殺すべきで、標茶町のやり方は、北海道のクマ管理計画に反して、乱獲になっていると思います。事件に関与していないクマが捕獲された場合、放獣してやれませんか。

 

標茶町担当者:海外と違って、北海道にはヒグマの放獣体制がないのでむずかしいです。今後もこうした被害が発生してはなりません。

 

熊森:捕獲罠を設置して問題グマがかかるまで無実のヒグマを何頭も捕り続けるのですか?それはもはや共存とは言えません。ヒグマが牧野に入ってきた侵入経路を探して、電気柵などでそこを通れないようにしておくことが必要です。人間側が知能を使って被害防除を考えないと、罠設置だけでは問題は解決しないですよ。電気柵は設置されていますか?

 

標茶町担当者:していません。

 

熊森:ぜひ、柵を設置してください。このような事件が今後起きないようにするには、まず被害防除です。9月に標茶での事態がおさまってから、近隣の自治体で同様の被害が発生していませんか?また、標茶の周辺自治体で、このDNAをもったヒグマが捕殺されていませんか。

 

標茶町担当者:今回の事件は道内でも非常に珍しいケースのようで、他の自治体では起きていません。隣接の釧路市、厚岸町、鶴居村、弟子屈町には、このヒグマの情報をお知らせして捕獲があったら連絡してもらう体制をとっています。今のところ、その特徴を持ったヒグマの捕獲はないようです。

 

熊森:中標津町や、別海町ではどうですか?

 

標茶町担当者:隣の根室振興局になりますので聞いてません。

 

熊森:ヒグマはそれぐらい移動するので、その地域にも聞いておいた方がいいと思います。

 

標茶町担当者:たしかに確認したほうがいいですね。聞いてみます。

 

熊森:昨年、羅臼の方で飼い犬がクマにやられて死亡する事件が相次ぎましたが、その時のクマが屈斜路・阿寒の山々を伝って標茶に入ってきた可能性もあります。

 

標茶町担当者:じつは、羅臼町の担当の方が、今回の乳牛被害のニュースを見られて電話してこられたんです。羅臼でも同様の問題が昨年あったと。その時のクマではないか?と。その時のヒグマはうちの町で出ているヒグマよりもっと小さいクマだということで、話を聞く限り別グマです。(羅臼町の件は、飼い犬がヒグマに食べられる瞬間を家主が見ておられたので、ヒグマの特徴が把握できたそうです)。羅臼でも、そのヒグマの捕獲にはまだ至っていないそうす。

 

熊森:ぜひ、周辺自治体のみなさんで連絡を取りあっていっていただきたいです。ただ、今設置されている罠は、今被害が落ち着いているのですから、蓋を閉めるか誘因物を除去していただきたいです。別のクマを引き寄せますし、無実の無害グマを次々と獲って殺処分していくのは問題です。

 

標茶町担当者:また内部で話して、相談します。

 

〈熊森から〉

標茶町担当者様におかれましては、お忙しい中、当方からの電話に丁寧に対応していただき、誠にありがとうございました。

罠閉めをだいぶんお願いしたのですが、今年は雪が降るまでこのまま罠を設置するそうです。

これだけの被害があると、酪農家のみなさんの怒りは相当強いと推察します。しかし、罠にかかったクマが事件と無関係なクマであるとわかっていながら全て殺処分というのは、生態系保全上、倫理上、教育上、大変問題です。誤捕獲グマは、車の中からロープを引いて罠の扉を開けるなど、放獣時にけが人が出ないように細心の注意を払って放獣すべきでしょう。みなさんはどう思われますか。賛同していただける方は、6頭目の無実のヒグマが殺処分される前に、声を標茶町に届けてください。

 

【連絡先】

標茶町農林課 住所:〒088-2312 北海道川上郡標茶町川上4丁目2

TEL: 015-485-2111 FAX:015-485-4111

お問合せリンク:https://town.shibecha.hokkaido.jp/contact/index.html

 

 

 

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