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スクープ!指定管理鳥獣化主導の北海道でヒグマ個体数が過大に推定操作されていたことが判明

(はじめに、熊森から)

現在のクマの生息数推定計算は非常に複雑になっており、専門家でないとチェックは不可能です。
統計学の専門家である元日本福祉大学経済学部教授の山上俊彦先生は、この度、北海道のヒグマ生息数の推定過程を精査され、過大推定となるようにように操作されていることを見つけられました。

 

(本文)

以下は、山上俊彦先生のお話をまとめたものです。

 

北海道庁はこれまでクマの個体数推定方法を、全国で唯一非開示としてきましたが、2024年3月末の北海道ヒグマ保護管理検討会にて、やっと、道総研(地方独立行政法人北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部エネルギー・環境・地質研究所)の研究者に依頼してきた1990年~2022年度末におけるヒグマの個体数推定方法の概略を提出しました。

 

概略なので大まかな輪郭が示されただけです。詳細まではわかりませんが、それでも今回の発表で、なぜヒグマの駆除数がこれだけ増加しているにも関わらず(2021年度のヒグマ捕殺数1030頭、放獣ゼロ)個体数推定値が増加し続けているのかがはっきりしました。

 

北海道ではヒグマの個体数を推定するにあたって、まず、北海道を7つの地域に分け、高密度地域は33頭、中低密度地域は20頭程度のヒグマから得たヘア・トラップ調査に基づいて、メスの生息密度を求めています。

 

例えば、渡島半島地域では2012年に渡島西部地で実施したヘア・トラップ調査の結果から、メスの生息密度推定値の95%信用区間は、下限値0.141頭/k㎡~上限値0.327頭/k㎡で、中央値は0.215頭/k㎡でした。

 

これに森林面積をかけて、メスの上限個体数を推定するのですが、当然のことながら、中央値である0.215頭/k㎡に森林面積をかけなければなりません。空間明示型標識再捕獲法(ベイズ統計学)を用いてクマの個体数を推定するにあたって、他府県では皆そうしています。ところが、北海道はなんと、上限値に森林面積をかけているのです。

 

しかもその森林面積はクマが生息できる自然林でなければならないのに、多くの人工林を含めた森林面積をかけているのです。

 

このように北海道庁が、生息密度の中央値ではなく上限値を用いたり、針葉樹の人工林を生息地にカウントしたりするなど、個体数が過大に推定されるように意図的な操作をしていたことがわかりました。

 

生息密度の上限値を用いた上限個体数を設定して計算機実験を行うと、個体数は非現実的な値に接近するまで増加し続けることになります。

 

しかも1990~2012年の間は個体数が増加し続けるように事前にプログラミングしていたこともわかりました。

 

その結果、全道の 2022 年時点のヒグマ個体数推定の下限値、中央値、上限値は、それぞれ 6,264頭、12,175頭、21,347 頭となっています。このとき、生息密度の「上限値」を用いて求めたのが個体数公表値の「中央値」となっているのです。
もし、このような操作がなされていなければ、北海道のヒグマ生息数は7000頭程度になります。実際の頭数は人間にはわかりません。

 

ヒグマを指定管理鳥獣に指定した環境省令は、このような北海道の個体数過大推定操作を精査せずに決定したものであり、この際、環境省は管理指定鳥獣にヒグマを指定したことを無効とすべきです。環境省のチエック機能はどうなっていたのでしょうか。このような操作によって国からクマ捕殺交付金を得ようとした北海道の要求は、誠に不当であると言わざるを得ません。

 

以下グラフは、道総研による、ヒグマ推定個体数の変化です。

 

 

 

熊森から

ヒグマの生息数が増えたか減ったかは、いつと比べるのかで答えが変わってきます。1990年という年はヒグマの生息数減少が危惧され、絶滅するのではないかと心配されて、道庁が春グマ狩りを廃止した年です。その年と比べるなら、ヒグマは増えたという答えしか出てきません。北海道開拓のころは間違いなくもっともっといたはずです。

 

では、何頭だったら適正頭数なのかということですが、クマという動物は、葉が繁る森の中を単独行動で大きく移動し、木々が葉を落とす冬には冬ごもりにはいってしまうという生態上の特性があるため、何頭いるのか生息数のカウントが不可能な動物です。まして適正頭数など、人間が決められるようなものではなく、生態学において「適正頭数」の判断基準などありません。

 

グラフの2022年推定個体数をみると、上限値と下限値の差が15000頭と幅があり過ぎです。もし、下限値が実態を反映していた場合、ヒグマが増えているとは到底言えません。

 

これからのヒグマ対策は、ヒグマの推定個体数に右往左往するのではなく、人身事故や農作物などの被害をどう減らすかに重点が置かれるべきだと熊森は考えます。多くいても人間のいない所にヒグマがいるのであれば問題はないし、少ししかいなくても人間の近くに出てくるようであれば問題です。現在、行政は、クマの個体数推定に膨大な予算を使っていますが、無意味です。こんな簡単なことに、専門家と言われる人たちがなぜ気づかれないのか不思議でなりません。

 

私たちの税金は、ヒグマを殺すことではなく、生息地再生や被害防除対策など、人とヒグマが棲み分けられるようにすることに使っていただきたい。その方が、道民の皆さんのためにもなると思うのですが、道民の皆さん、いかがでしょうか。(完)

 

 

マスコミはクマを悪者にしたてるのはやめて 軽トラに突進した根室母グマ報道の問題点

昨年から、なぜかマスコミのクマ報道が、「クマは悪者で捕殺の対象」というもの一辺倒に変わりました。目に余るひどいクマ報道の連続です。アルメディアの方は、クマを悪者にすると視聴率が取れると言っていました。

クマは本来とても平和的な動物で、人間に遠慮してかわいそうなくらいそっとこの国で生きています。

こんな報道が続くと、クマという動物を全く知らない多くの国民が、人を襲う恐ろしい動物という間違った固定観念をもってしまいます。

 

今回の根室の軽トラに突進した母グマの報道でも、子グマを守ろうとした母グマの行為であったことがほとんど取り上げられておらず、ヒグマ凶暴、軽トラの被害ばかりが強調されています。以下は報道の見出しです。

 

・【クマ】軽トラックに襲いかかる 北海道・根室市
・北海道根室軽トラックにヒグマが衝突乗っていた2人けがなし
・【衝撃】ヒグマが軽トラックに体当たり フロントガラス破損

 

ニュース映像に使われたドライブレコーダーを注意深く見ると、一番初めに一瞬子グマが画面左に歩いていく姿が映っています。
(子グマと母グマの文字は、熊森による挿入)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この子グマのことに触れないと、なぜ母グマが軽トラにとびかかったのかが視聴者に伝わりません。

 

地元の方に聞くと、この軽トラックを運転していたのはギョウジャニンニクを採りに、国道からそれた山道に入り込んで行った地元の方だそうです。母グマにクラクションを鳴らし、パニックに陥らせています。ヒグマの生息地に入るのですから、最初に子グマを見つけた時点で一旦停止してそっと引き帰るという最低限のマナーを守るべきです。

 

突進してきた母グマの後ろにも、もう1頭の子グマが現れますが、この軽トラは無視してこの林道をぶっ飛ばしていきました。

 

また、根室市がこの母グマに捕獲罠を仕掛けるとの続編ニュースも、人間側の視点ばかりです。以下は報道の見出しです。

 

・ヒグマによる「軽トラック襲撃」を受けて「箱わな」緊急設置へ 今月中にも周辺2か所に車体は大きく損傷、、、北海道・根室市

・軽トラを襲ったクマ箱罠を設置し捕獲へ「人身事故につながる危険」北海道根室市

 

行政は、罠を掛ける前に、この軽トラを運転していた方を指導したのでしょうか。

 

物言えぬ生き物たちに全責任を負わせるという最近のマスコミ界の倫理感も問題です。

 

根室市は、道の駅の横に罠を掛けることを考えているそうです。しかし、罠の中にはハチミツなどクマの大好物が入っていますから、遠くのクマまで誘引してしまいます。北海道ではクマ放獣体制がありませんから、罠に掛ったクマは100%銃で殺処分されます。
この辺りは元々ヒグマの生息地で、何かを狙ってクマがやって来たのではなく、元々の通り道だということです。
根室市担当者によると、地元ではクマを捕獲してほしいという声も出ていないということですから、根室市は罠を掛けないようにお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

根室の道の駅(鈴木支部長撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅横の熊注意や立ち入り禁止看板(鈴木支部長撮影)

 

注意看板は必要です。
根室市さん、今後ともヒグマとの共存をよろしくお願いします。

門崎允昭顧問が視察してきたオーストラリアでの野生動物と人の徹底した棲み分け実態

以下は、札幌にある北海道野生動物研究所の所長で長年くまもり顧問を務めてくださっているヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生が発行されている北海道熊研究会 の会報 第 125 号( 2024 年3月30日付)です。先生の許可を得て転載させていただきました。

 

私(門崎允昭)の羆に関する基本姿勢は人的経済的被害を予防しつつ、極力羆は殺すべきでないと言う立場です。
理由: この大地は総ての生き物の共有物であり、生物間での食物連鎖の宿命と疾病原因生物以外については、この地球上に生を受けたものは生有る限り互いの存在を容認しようと言う生物倫理(生物の一員として、他種生物に対して、人が為すべき正しき道に基づく理念による。

日本では熊や鹿が、市街地に出て来るからとの理由で、その抑止策として、一方的に、殺す事を決め、殺しまくっていますが、皆さんはどう考えますか。
今回、73 日間、オーストラリアに滞在し、その間に、各地で野生動物に対する対応を、調査しました。(2023 年 12 月 20 日札幌出発し、娘宅に滞在し、2024 年 3 月5 日、札幌へ帰着。)、

 

その結果、どの地域でも、野生動物が本来の生息地から、人が利用している地域に、出て来る事を、高さ2m程の金網を張りめぐらせて、(一部の箇所では有刺鉄線柵を張って)、完全に防いでいる事を、国策として行って居ることを目撃し、日本との違いに、驚嘆。
動物が(利用する可能性が有る地所も含めて=市街地の道路沿いは勿論、僻地の道路沿いも含めて)道路を越えて、人が日常的に使用する場所には、一切出てこられないようにされている事に驚きました。

 

次の写真は、Australia の東海岸の中部に位置する Coffs Harbour 市の市街地で撮影したものです。

我が国でも、同様の対策をすべきなのに、そうしないで、熊や鹿を、殺しまくろうと、決めて、殺し始めたのだから、世界中から、日本人の知性の劣等さが時と共に広がり、非難を受ける事になるでしょう。

 

本号のお知らせ

<電気柵と有刺鉄線柵の設置法>
地面から約 20cm 上に一線を張る。それから、約 40cm 置きに、4 線ないし 5 線を張る
北海道の熊問題は、昔も今も、以下の4項目です。解決法を記載します。

① 「羆の生息地に山菜採り、遊山・登山、作業等に入って羆に襲われる
解決法・・・ホイスルと鉈の持参

② 羆が里や市街地出没して住民に不安を与えている
解決法・・・一時的には電気柵・恒久的には有刺鉄線柵

③ 放牧場、僻地の農地、果樹園、養魚場にクマが現れ食害や不安がある
解決法・・・一時的には通り道に電気柵を張る。 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

④ 僻地の農作地での人身事故の予防
解決策・・・ 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

 

札幌市芸術の森では、2013 年から、羆が出て来る可能性がある5月~11 月の間、全長 12km にわたり、電気柵を張って羆が園内に侵入するのを、完全に防いでいる。
芸術の森の電気柵の設置、撤去にかかる経費は約 40 万円で、若干の変動はあるとのことです。漏電防止のための草刈りは、一月約 20 万円ですが、草が繁茂する時期になると 100 万円程度増加し合わせて 120 万円前後になるとのことです。したがって、電気柵にかかる経費はトータルで年間 160 万円~180 万円になるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門崎先生と芸術の森の有刺鉄線

以上。

 

熊森から

門崎先生のお話では、オーストラリアでは、行けども行けどもどこまでもこのような柵で人と野生動物の棲み分けが徹底されていたそうです。これだと、確かに有害駆除はゼロです。
人と野生動物が触れ合う機会が全くないというのはちょっと寂しいような気もしますが、殺すよりはいいかな。
ただし、オーストラリアの人は狩猟を楽しみますから、狩猟の時はもちろん柵内に入ります。
2016年度のカンガルーの狩猟数は150万頭だったそうです。オーストラリアのカンガルー推定生息数は5000万頭だそうですから、もしこの数字が正しいなら、3%の狩猟率です。
学者によっては、干ばつ年は大量のカンガルーが餓死して、自然がカンガルーの生息数をコントロールしているから、狩猟などしなくてもいいと言っている人もいます。
カンガルー皮を売って儲けたい人は狩猟をします。ただし、子供のいるカンガルーの狩猟は禁止されているそうです。

パブコメで大多数が反対でも原案通り進める 環境省がクマを指定管理鳥獣に指定(省令発表未)

<クマを指定管理鳥獣に決定するまでの納得できない道のり>
こんなのでいいのか!日本。
①令和5年 11月13日、北日本の知事たちがクマを指定管理鳥獣にしてほしいという要望書を環境大臣に提出
伊藤大臣は迅速な検討を指示。

◎12月6日、熊森は、環境省堀上審議官と鳥獣保護管理室の職員に要望書を提出。クマ指定管理鳥獣化を再考してくれるよう要請しましたが、知事からの強い要望があるとのことでした。
◎熊森は、クマを指定管理鳥獣にすると、シカ・イノシシと同様、見つけ次第殺される対象になるとして断固反対を表明。捕獲の強化ではなく、奥山広葉樹林化や被害防除対策など、捕殺に頼らない棲み分けのための支援こそ今実施すべきと主張して、12月末から急遽、環境大臣宛の反対署名を集め始める。
②12月26日、1月9日、2月8日、環境省が3回にわたる専門家検討会を実施

検討委員たちの発言は、クマは数も少なく繁殖力も弱いのでシカ・イノシシと同列にはできない。東北や北海道と他の地域では生息状況がかなり違うので、全国一律にクマを指定管理鳥獣に指定することには無理があるなど、まっとうな意見が全体を占めていた。

◎熊森は、2月5日、クマ指定管理鳥獣化に反対する緊急署名 1 万4749筆を環境省堀上審議官に提出した。
(必死で署名を集めてくださったみなさんに、熊森は心から感謝)
③2月8日伊藤大臣がクマ指定管理鳥獣化を発表
第3回検討会終了後、伊藤信太郎環境大臣が、「絶滅の恐れがある四国を除いてクマを指定管理鳥獣に指定します。」とマスコミ発表。除くのは四国だけ???
検討委員たちの意見が無視されている。
何のための検討会だったのか。
④2月13日環境省がパブリックコメントを募集
環境省は2月 13日(水)から1か月間、パブリックコメント開始。
・・
意見 ※賛成か反対かを( )に記入
ヒグマ、ツキノワグマ(四国の個体群を除く)を指定管理鳥獣にすることに(   )します。
これまでの例から言うと、パブリックコメントがたくさん来たことにより結論が変わるということはまずありません。それでも、今後の政策変更のために強い声をしっかり届けておくことは大切ですので、熊森はパブリックコメントに応募しました。
また、国会議員にも指定管理鳥獣化でクマ問題は解決せず、奥山の再生や被害防除対策が必要であることを伝えて回りました。
参議院と衆議院の環境委員会では、クマを指定管理鳥獣にすることについての議員質問が相次ぎました。
⑤3月28日環境省パブリックコメント結果発表(提出意見535 件)
クマを指定管理鳥獣に指定することに、賛成9、反対440、その他86
パブリックコメントで結論は変わらないと言われても、これだけ反対が多いのに本当に環境省はこのまま進めるのだろうか。熊森は環境省の動きを見守ることにしました。
⑥実は、3月26日環境省はクマ指定管理鳥獣を決定していた
環境省によると、3月26日に開催された環境省中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会でパブコメ結果を見せたところ、委員全員が指定することに賛成したとして、クマ指定管理鳥獣を最終決定したとのことです。(省令発表未)
結局、最初から、結論ありきのまま、環境省はクマの指定管理鳥獣化を強引に推し進めたということです。
1999年の鳥獣保護法改正で、狩猟や有害駆除に加えて個体数調整のための捕殺を導入しようとした当時の環境庁がとった対応も同じでした。この時は法改正だったので、熊森は反対運動の先頭に立って国会議員を次々と訪問し、このような法改正をすると日本の自然が守れなくなるので反対してほしいと訴えて回りました。
他の自然保護団体もみんな立ち上がって、日本で初めて全自然保護団体がひとつにまとまって法改正に反対する大運動となりました。国会議員も多くが反対でした。しかし、強引に法改正がなされ現在に至っています。

野生鳥獣との軋轢を、野生鳥獣の生息数を人間が大幅に低減させて一定数にコントロールすることによって解決しようとする考え方を導入して25年が経過しましたが、罠だらけの山となり残酷なだけです。しかも、大量捕殺によって被害がなくならないことはシカやイノシシの対応で、すでに結論が出ています。
まして、シカやイノシシと比べる桁違いに生息数の少ないクマまで捕獲報奨金を引き上げて大量捕殺してしまうと、乱獲によりクマが絶滅に向かう地域が出てくるでしょう。
環境省の鳥獣行政は、他方で進めている生物多様性の保全とは真逆の方向に進んでいます。
環境省は、指定管理鳥獣に指定しても、クマはシカやイノシシのように捕殺一辺倒にはしませんと今は言っていますが、やがてそうなっていく恐れがあります。生息地を再生したり、被害防除対策を進めることが根本解決につながるのですが、大変な労力が必要です。それに比べると捕殺は簡単ですから、よほど強い意志がないと人間は安易な方向に流されていきます。今後、各地の動きを注視しておかないとクマの乱獲が抑えられなくなると、熊森は強い危機感を持っています。
今後、クマ指定管理鳥獣化を受けて、各都道府県がクマの指定管理鳥獣実施事業計画を策定していくことになると思います。
この計画が、大量捕殺を推進するものにならないように、私たちが各地で働きかけをしていくことが重要です。(完)

昨年の秋田県クマ大量駆除の嵐の中を生き延びた子グマたちがわずかにいた

秋田魁新報4月10日によると、昨年の秋田県のクマ大量駆除の嵐の中を奇跡的に生き延びた子グマたちがいました。
以下の写真は、秋田朝日放送より。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:2023年度秋田県では、山の実り大凶作によるクマ大量出没と過去最多のクマによる人身事故62件70人の発生もあり、有害駆除名目などで前代未聞2314頭のクマを捕殺しました。生息推定数4400頭の52%のクマが殺処分されたことになり、クマは絶滅に向かう恐れがあります。そんな中、秋田県は指定管理鳥獣実施計画を策定して、更なるクマ捕殺を進める方針です。

 

下の目撃件数グラフは、秋田魁新報記事からです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:ふつう、同じクマが何度も目撃されるので、実際のクマ数は目撃数より少ない。

 

テレビニュースによると、秋田の冬を生き残ったみなしごグマは、春になった今、集落周辺の耕作放棄地などに生えている草の新芽などを人目を気にしながら食べています。

 

もし母グマが殺されていなければ、この時期、冬ごもりからあけて、山のバッコヤナギの花や木々の新芽を食べていたことでしょう。

バッコヤナギ - Wikipedia

クマの大好物、バッコヤナギの花

 

人間に見られながらびくついて草を食べている子グマの顔が、テレビニュースで映し出されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々顔を上げて人間の動きを見ながら、不安そうに草を食べる悲しげな表情の子グマ。近くには、捕獲用の罠がすでに2つ仕掛けられています。

 

秋田県では県のツキノワグマ管理計画に「放獣しない」と明記されていますから、市町村はクマが出没した際に、捕獲後は銃殺すると記して県に捕獲申請を出しています。(北海道も同様)

 

秋田では、これらの子グマをヌカとハチミツ入りの箱罠に誘引して捕獲し、全て銃で殺処分しています。

 

 

秋田ではクマの捕獲権限が市町村に下ろされているため、捕獲したクマを殺処分するのか放獣するのか市町村の判断で決められるはずです。また、クマの放獣は法律で禁止されているわけではありません。

 

秋田県は昨年、私たちが放獣を依頼した際、今年は捕獲数が多過ぎて放獣などできないと言われました。今の時期ならできると思います。去年殺された大量のクマの穴埋めのためにも、捕獲してそのまま何もせず山に放獣してやるべきだと思います。

 

山に放してもまた帰ってくると言う方もいますが、帰ってこない場合も多くあります。放獣例もないのに帰ってくると決めつけるのはいかがなものでしょうか。

クマの行動を決める主要な要因はえさです。山に餌があれば集落には出てきません。

小さな子どものクマまで見つけ次第、罠をかけて捕殺してしまうのは、子どもたちの精神衛生にも悪いです。秋田県は生き物たちへの共感を思い起こして、生き物たちにやさしい対応をとっていただきたいです。

人間が攻撃しない限り、犬くらいの大きさの子グマが人間に向かってくるということはありません。クマが凶悪犯人のように報道されるため、クマへの誤解が蔓延していますが、クマたちは基本的に人を避けて行動しており、人が気をつけることで人身事故は防げます。

 

思いやりのある優しい対応が、人にも自然にも一番優れているのです。

 

すでに熊森本部や熊森秋田県支部から、生き延びた子グマを放獣してほしいという要望を、秋田行政へ伝えてあります。

どうする環境省 クマ指定管理鳥獣化パブコメ結果 賛成9 反対440

環境省はクマを指定管理鳥獣にすることをどう思うかの1行だけを提示して、国民の意見を聞きたいとしてパブリックコメントを募集しました。締め切りは3月13日でした。
環境省は3月28日、パブリックコメントの結果とそれに対する回答を発表しました。

以下が、その発表です。

(1)クマ指定管理鳥獣化パブコメ結果

(2)パブコメに対する環境省回答

 

忙しい中、パブリックコメントに応募されたすべての皆さんに敬意を表します。

膨大な数のコメントをまとめてくださった環境省職員の皆さんに感謝申し上げます。

熊森としては、パブコメ結果と環境省回答を見て今後どうしていけばいいのか、多くの国民の皆さんと大いに議論したいです。

自分の考えをしっかり述べることのできる国民が増えることが、いま日本に本当に必要です。

みなさん、ご意見をお寄せください。

 

 

3月15日 林佑美議員が参議院予算委員会でクマの生息地である奥山の生活環境について質問

3月15 日、令和6年衆議院第3回環境委員会で林佑美衆議院議員(和歌山県、維新・教育無償化を実現する会)が、クマ生息地の生活環境の改善について質問されました。

 

質問中の林佑美議員
要旨 (文責熊森)
林佑美(ゆみ)議員 
クマによる人身被害の防止についてお伺いいたします。近年、クマの市街地などへの出没、人身被害が春や秋に多く発生しており、とりわけ昨年秋はクマの大量出没が起こり、今年度クマによる人身被害の件数は2月末の集計で全国で計197件となり、統計を始めた平成18年以降で最多となっております。
こうした人身被害の増加を受けて、先月大臣からも談話が出され、クマを指定管理鳥獣に指定する手続きも進んでいると承知しております。
しかし、他方でツキノワグマは九州では絶滅、四国ではあと20頭弱、紀伊半島、中国山地、近畿など西日本を中心に1990年代から2000年代に各地で絶滅危惧種になっております。

 

この原因は、拡大造林政策によるスギ・ヒノキの植林、奥山の大規模開発による生息地の自然林の減少です。九州、四国、紀伊半島では、人工林率が6割を超えております。大臣もよく発言されておられますように、クマはシカやイノシシと比較して、生息数も少なく、繁殖力も弱く、環境変化にも弱い動物です。

 

クマは春夏秋の山の植物を食べており、食べる植物の種類は200種類を超えると言われております。秋はドングリ類を大量に食べ脂肪をつけ、冬眠に入ります。奥山に豊かな自然林があることがクマの生存条件です。昨年は東北や北海道で大量出没が起こりました。

 

山の実りの凶作が原因とされておりますが、異常な熱波による記録的猛暑となったためか、山に食料が何もないという例を見ない状況が発生した模様です。気候変動などの環境破壊により、豊かな森が残っていた東北や北海道でも森がクマを養えるだけの豊かさを失ってきていると感じております。

 

秋田県は近年、クマの捕殺の強化を進めてきましたが、昨年生息推定数の半数を優に超える2400頭超のクマを捕捉しております。捕殺をいくら繰り返してもクマが出てくる根本原因を解決しなければ被害は減りません。また、大量捕殺を繰り返していくと、地域的にクマが絶滅するところも出てくるでしょう。

 

そこで質問なのですが、被害を減らしていくにはクマが人里に出なくてもいい環境をつくるという根本的な対策が一番大切であり、林業不振により放置された人工林を自然林に戻す取り組みや、去年のような温暖化の影響が考えられる山の実りの大凶作の年であっても、クマが山の中に餌を確保できることを考えた、実のなる樹種の植樹などが必要となってくると考えますが、クマの生息地である奥山の生息環境について、環境省はどのように考えられておられますでしょうか。

 

朝日健太郎 環境大臣政務官

お答えいたします。環境省では、クマ類の保護や管理に関しまして都道府県の対策の指針となるような①ガイドラインを策定しております。また、昨年秋の、委員からありましたとおり、深刻な被害状況を受けまして、②専門家による検討会を設置をいたしまして、本年2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針を取りまとめていただきました。

 

この内容ですけれども、クマ類の地域個体群の保全、そして人間との軋轢の軽減の両立を図るため、人間とクマ類の③棲み分けを図ることとしております。こうした考えに基づきまして、奥山などにおいてクマ類の保護を図るための保護優先地域や人身被害の防止を図るための人の生活圏、それらの間の緩衝地帯を設置設定し、それぞれの地域に応じて適切に管理を行うゾーニング管理を進めているところであります。

 

環境省では、奥山地域を含めまして、④国立公園や鳥獣保護区などの保護区域の指定などによりまして、生息環境の保全を図ってまいります。引き続き、農林水産省などの関係省庁と連携をいたしまして、クマ類の生息環境の保全を図って参りたいと考えております。

 

林議員

ありがとうございました。日本最大の大型野生動物であるクマの棲める森は、多種多様な生き物が絡み合う生態系の営みの中でつくられた水源の森でもあります。人工林が多く占める森林環境を少しでも改善して、クマの生息できる環境を奥山につくっていくことが、人や動物のみならず、地球の環境にも資すると考えております。

 

ぜひ環境省が先頭に豊かな森林環境をつくっていただきたいと思います。

 

熊森から

林議員、ご質問ありがとうございました。戦後の拡大造林政策による奥山人工林化が行き過ぎ、クマなど奥山の動物たちが生きられなくなっているという指摘を私たちが開始してから32年目です。人工林は行き過ぎていないとして、私たちはずいぶん批判されてきました。やっと国会でこの問題が出るようになったことに感無量です。
今の日本の行政は、経済第一で、野生動物たちの食料を思いやるような優しさは皆無に近い状態です。一般国民は胸を痛めているので、環境省や農水省が市町村など地方行政を指導して、野生動物たちの餌場となる森再生事業を進めていただきたいです。

 

熊森から環境省と国民のみなさんへ

①環境省のガイドラインが守られていないという現実があります。
熊森はこれまで各地の奥地集落を訪れ、地元の方や猟師の皆さんと話し込んだり、自分たちで調べたりして得た見聞を元に、何度も環境省に、「錯誤捕獲された野生動物は放獣すること」などのガイドラインを多くの都道府県が守っていないという現実を訴えてきました。
しかし、1999年の地方分権法によって野生動物の捕獲に関しては、国は都道府県に権限を委譲しているからとして、これまでこの件に対して環境省は都道府県を指導してくださっていません。権限を委譲したと言っても、国の定めた範囲内での権限移譲のはずですから、環境省は都道府県を支援するとともに、国のガイドラインを守るように強力に指導すべきだと思います。
第一、くくり罠のような残虐罠を山の中に無数に設置してシカやイノシシの問題を解決しようという発想自体が、人間の倫理観からも生態系保全上からも間違っていると思います。

 

②検討会委員に自然保護団体や動物たちの心がわかる動物愛護団体を加えるべきです。
研究者ばかり集めて検討しても、斬新な発想が生まれにくいと思います。クマ関係の検討会には、ツキノワグマ研究の第一人者である宮沢正義先生(今年97才)や、ヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生(今年86才)らに長年指導していただき、自らも徹底した現地調査やクマの生息地保全、被害対策の実践を行ってきた日本熊森協会も検討委員会に入れていただきたいです。国の今後を決めるにあたって正しい歴史を学ぶことが大切なのと同様、自然保護にとってもわが国の野生動物たちとの共存の正しい歴史を知る識者から学ぶことが大切です。

 

③祖先がしていたように、原則、奥山をクマの生息地として棲み分けるべきです。
現在、スキー場やキャンプ場など、奥山にも人間活動の場が多く広がっており、そのような場所を人間ゾーンとしてゾーニングしている現状では、クマたちはどこにおればいいのか居場所がないという現実があります。

 

④国立公園内での風力発電など再エネ事業を禁止してください。
巨大風力発電計画が奥山尾根筋で目白押しです。環境省が国立公園を守ってくださるのはありがたいことです。ならば、山の命ともいえる山の最も大切な場所である尾根筋を平らに削ってしまい、尾根筋に至る道路建設のためにと森林を大伐採して国立公園を破壊してしまう再エネ事業を環境省は禁止すべきです。
環境省には、本当にがんばってもらいたい。
環境省がんばれ!
私たちは環境省の応援隊です。

串田誠一議員、参議院予算委員会でクマ指定管理鳥獣化について質問

3月6日、参議院予算委員会で串田誠一参議院議員(比例関東ブロック、動物愛護議連、維新)が、クマを指定管理鳥獣とする環境省案について質問されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問中の串田誠一議員

 

串田誠一議員の質問:

次にクマについてお聞きをしたいと思います。

(クマを)指定管理鳥獣に4月にするという報道がございます。被害が連日昨年は報道をされたということでありましたが、昨年のクマの捕殺数は、ついこの前発表されました9030頭が昨年捕殺された。その前は3000頭だったのが、いきなりすごい数が捕殺されたわけでございます。

九州は絶滅している、四国ももう数十頭しかいない。そして繁殖力が大変弱いというのがクマの特徴でございます。

日本オオカミも同じような経路を辿って1905年に絶滅をしてしまいました。

(略)今年見なくなったなあというようなときに、実は絶滅していたというようなことが起こりうる可能性もあります。環境委員会でこの問題があったときに、環境大臣、大変その慎重な対応されていて私も色々熟慮されているのだろうなあと思っているんですけど、クマを捕殺をするのではなくて、里(人)に入らないよう強化していく必要があるんじゃないかと思うんですけど、環境大臣のご意見をお聞きしたいと思います。

 

伊藤信太郎環境大臣(宮城県、衆議院議員)の答弁:

環境省では昨年秋のクマ類による深刻な被害状況を受けて、専門家による検討委員会を設置いたしました。そしてまた科学的観点からの検討を経て本年の2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針のとりまとめをしていただきました。

この方針の中ではゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理の3つの管理、これを推進しながら、クマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって、人とクマの空間的な棲み分けを図ることとしました。

また絶滅の恐れのある四国の個体群を除いたうえでクマ類を指定管理鳥獣に指定するとの方向性を整理いただいたとこでございます。

環境省ではこの方針を受けて必要な関係省令の改正を行うために4月中に指定の手続きを完了させる予定でございます。

クマ類を指定管理鳥獣にして、またこの関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。

具体的にはクマ類の生態等の調査やモニタリング、人の生活圏への出没防止のための環境管理、また人材育成等の各地域の状況に応じた効果的な対策を講じてまいりたいと思います。

 

串田議員:

エサがなくなる原因としては、太陽光パネルが森に、高速道路などを走っていると山肌にずっと太陽光パネルがあったりとか、あとは人工林とか、下が真っ暗になってしまっていて、木の実が育たないとか、そういうような人間がクマが食べられないような状況になって、そして出没したら捕殺をしていくというのは、これは反省しなければいけない面もたくさんあると思うんです。私が心配しているのは、太陽光パネルや人工林は、たとえば農水だとか、太陽光パネルは経産だとか、そういう他省庁にまたがった意味で総合的に検討をしていかなくてはならないと思うんですけども、環境大臣としてこうだというだけではなかなかできないと思うんですが、これについての連携は十分になされるんでしょうか。

 

伊藤環境大臣:

お答え申し上げます。ご指摘のように、太陽光パネル、あるいは木の種類の偏在、そういったことが今回の人的被害の原因の1つになっているとも考えられます。

したがって先ほど申し上げたように捕獲に偏らない総合的な対策を講じることが重要だという風に考えております。

環境省が設置した見解でもクマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によってクマ類と人の空間的な棲み分けを図るという方向を示しているところでございます。

捕獲以外の対策としては、クマ類の個体数等の適切なモニタリング、これをやっぱりエビデンスとしてしっかり押さえる必要があります。それから人の生活圏への出没を防止するために、また例えば果樹ですね、放任果樹にクマが寄って来る、誘因物の管理の徹底、それから農地への進入を防止するための電気柵の設置、それから専門的な知見を有する人材育成など、それぞれ地域によって多少事情が違いますので、その地域の実情に応じて、都道府県等によって実施していただくことが重要だと思っております。

環境省としては関係省庁、農林水産省も含めてですね、関係省庁や都道府県等とも連携して、人の生活圏の出没を防止をはじめとした被害防止策を推進し、国民の皆様の安全・安心の確保をしっかり守っていくという支援を進めてまいりたいと思います。

 

熊森から

人の生活圏へのクマ出没防止のためにまず一番に必要なのは、クマ類の個体数等の適切なモニタリングではなく、実り豊かな山の再生であり、農水省と組んで、まずこの根本問題の解決から手掛けていただくことを、熊森は環境省にお願いします。

 

串田議員の質問によって、伊藤環境大臣から「関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。」という答弁を引き出せたことは、良かったです。

しかし、現実には、ほとんどの地域で捕殺一辺倒の対応となっているわけで、今後、環境省の強力な指導が望まれます。

 

2023年度 東北・北海道クマ捕殺数

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※クマの正確な生息数推定が不可能なため、北海道ヒグマの場合も、95%限界の生息推定数は6600~19300頭と幅が大きく、中央値は11700頭となっている。この数字がどこまで正確か不明。他県の中央値についても同様。

 

クマを指定管理鳥獣に指定などしなくても、東北地方では現行の管理計画だけでも、推定生息数の50%ものクマ捕殺ができている県が2県あり、そのうちの1県では今年度になってからも、保護対策をとらず、雪の中をさまよっている子グマを次々と駆除しています。

 

令和6年2月 16 日に 北海道東北地方知事会が環境省に提出した要望書を見ても、クマをシカ・イノシシのように指定管理鳥獣にして、捕獲報奨金の引き上げなどを要求されていますが、昨年度の捕殺一辺倒となったクマ対応や、生息数を激減させてしまったことに対する反省など全くみられません。

 

やはり、環境省が専門家による検討委員会を設置するおり、自分たちの主張に沿った有識者だけを集めるのではなく、28年の歴史を持つ日本熊森協会のような民間団体を委員に入れる必要があると思います。(完)

 

みなさんへ 国民の力で熊森をもっともっと大きくしていただき、熊森が環境省の検討委員会に入れるように後押ししてください。野生動物たちとの真の共存をめざしたい方は、どうかご入会願います。

クマ問題の解決にクマ生息推定数の精査追究事業は不要

クマは以前、奥山から出て来ることがなく、会いたくても会えない動物でした。
しかし、最近は、里や、時には市街地にまで出て来るようになり、農作物被害を出したり、時には人身事故も起こします。
被害にあわれた方、被害にあう恐れがある方にとっては、耐え難い事態だと思います。

 

この問題を解決するために、環境省はクマ指定管理鳥獣化を検討する会を3回実施。
この会の委員に任命された研究者たちが、クマ指定管理鳥獣化で国から交付金が出るようになれば、まずすることとして、毎年のクマの個体数推定事業を実施し、クマが各都道府県に何頭生息しているのか、これまで以上により正確性を高めたいと言われていました。
すばらしい肩書を持つ研究者のみなさんがそう言うと、国会議員も含め、一般の国民は、クマ問題の解決のためには、まずクマが何頭いるのかより正確な生息数確定が必要なんだと思ってしまうでしょう。

 

しかし、クマ問題に取り組んで32年の私たちに言わせると、四国のようにあと十数頭などと絶滅を迎えた場合は別ですが、一般的に、そのような事業は研究者の仕事づくりや論文発表のために必要なだけで、クマ問題の解決のためには、全く不要です。そんなことに私たちの税金を使わないでいただきたいのです。

 

理由1 今問題なのはクマの数ではなく、クマがどこにいるかなのです。

食料が豊富な奥山にのみクマが暮らしているとします。このような以前の状態に戻せば、クマが何頭いても誰も困る人はいません。クマも人も、我が国では長い間、棲み分けを守っていました。戦後、棲み分けラインを超えてどっと奥山に入り、皆伐や開発を行い、うまくいっていた棲み分けを壊したのは私たち人間です。
図①参照。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ数は多いが、クマ被害は起きない。

 

クマがハチミツに目がないことを利用して、現在日本では、ハチミツを入れた罠でクマを誘引し、捕殺し続けています。しかし、クマ数を極限まで減らしたとしても、クマが集落のそばにいる限り、被害はなくなりません。

図2参照

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ数は少ないが、被害が起きる。

 

問題は、クマの数ではなく、クマがどこにいるかなのです。

熊森の説明を聞けば、小学生でもわかってくれると思います。
環境省やマスコミさん、熊森にも発言の機会を与えてください!

 

理由2 クマ数を正確に数える方法がない

専門外の人には意外でしょうが、実は、クマの生息数を正確に数える方法がないのです。
アフリカの草原の動物なら、上から写真を撮れば何頭いるかすぐ数えられるのですが、クマは普段深い森の中にいて木々に隠れているし、人が山に入ると人を察知してそっと逃げてしまう。木々の葉が落ちる冬には冬ごもりしています。何頭いるのか数えようがないのです。

 

そこで多くのクマの研究者たちがクマの生息数を推定しようとして、悪戦苦闘。膨大な予算を獲得し、クマに不自然なことを次々として、論文発表をしてきました。発信機装着、ヘア-トラップ、カメラトラップなどなど。いずれもクマの生活をかき乱すものばかりです。

 

下の写真は、捕獲されて首に発信機をつけられていたヒグマです。首が締め付けられ、首の周りの毛が擦り切れています。この写真を撮られた北海道のカメラマンによると、山で偶然出会ったヒグマを見ていたら、頭を下にも上にも動かしづらくしていて、クマは耐え難い苦しみを味わっているようだったとのことです。
本来、研究というのは、対象動物に負担をかけずにするのが生物倫理というものです。ダーウィンは、木の陰に隠れてそっと野生動物の生態を研究していたと言われています。

 

 

 

発信機を付けられたヒグマ 稗田一俊氏撮影

 

このヒグマには、両耳にもタグが付けられていたそうです。
兵庫県では、子グマに発信機を付けた研究者がいて、大きくなる時に首が絞められて山で死んでいました。猟師が研究者に向かって、「かわいそうなことをするな!」と、目をむいて怒っていたのを覚えています。

 

ちなみに、現在、クマの生息数推定はどこまで進んでいるのでしょうか。最新発表となる2020年度分が以下です。

 

●北海道のヒグマの場合

95%信頼区間:6,600頭~19,300頭。中央値:11,700頭。

 

●秋田県のツキノワグマの場合
95%信頼区間 :2,800~6,000 頭。中央値 :4,400 頭。

他府県も同様につき、省略。

 

 

95%信頼区間の幅が大きすぎますね。最先端の科学技術をもってしても、クマの生息数の推定がどんなに難しいかお判りいただけたかと思います。

 

秋田県は昨年度、生息数中央値の50%以上にあたる2,300頭のクマを捕殺しました。捕殺数の方は、正確に近いと思われます。秋田県は、さらに捕殺を進めるそうです。みなさんはどう思われますか。環境省指導では、クマが多くいる県でも、絶滅させないように15%以上は捕殺しないこととなっています。

 

私たちは、より正確な生息推定数の把握やさらなる捕殺に税金を使うのではなく、食料豊富な山を再生したり、当面の被害を防ぐために電気柵を張ったりして被害防除に励む方が、クマ問題の解決に効果があると思います。

水源の森を造り守ってきてくれたクマたちに、畏敬の念を失ってはならないと思います。(完)

母を探して走り回るくくり罠で左前足切断の子グマ、みなし子グマたちを作らず保護する社会に

今年1月9日のTVニュースによると、ある町のショッピングセンター入り口付近に、子グマが猛ダッシュで走り込んできました。本来なら、母グマと一緒に冬眠しているはずの時期にです。

なんだか走り方が変です。前足の左手首がないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングセンター入り口付近に、3本足で猛ダッシュで走り込んできた子グマ

 

入り口を通り過ぎて、ショッピングセンター前の隅っこに行ったので、人々がその辺にあったいすなどを使って包囲し、逃げないようにしました。2時間後、警察と猟友会がやってきて鉄製の箱罠に移し、山に返したということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱罠に捕獲された子グマ。左前足手首がちぎれている

 

 

この子グマに関するマスコミの報道論調には驚かされました。

報道文中の太字は、とんでもないと思われる言葉です。

 

 

<以下、報道文>

1月9日、昼下がりのショッピングセンターに体長およそ50センチの子グマ1頭が出没し、店内が一時騒然としました。

この後始まる大捕物、その一部始終をカメラが捉えていました。

冬眠しないこの子グマは、来店客が行き交う入り口に2時間居座りました。

子グマはその後捕獲され、客などにけが人はいませんでした。

市では子グマは山に返す方針ということです。

 

 

熊森から

 

地元の方の話では、クマが出た!というと、記者のみなさんは大喜びで飛んでくるとのことです。怖いもの見たさ故か、クマニュースは視聴率アップ間違いなしになるからだそうです。

その辺の犬と同じくらいの大きさのやせてガリガリの小さな子グマに人身事故を起こす危険性など全くないことを、熊森は多くの人に伝えたいです。

冬眠しないのではなく、こんなガリガリでは、冬眠できません。(食い込みができていないと冬眠中に死ぬ)
第一、母グマがいないので、大地が雪で覆われる前に、どこでどうやって冬眠しておけばいいのか、この子グマにはわからないでしょう。

 

居座ったのではなく、周りを囲われて動けなくされていたのです。

けがをした人はいませんでしたと言うけれど、けがというなら、子グマの前足首切断という大けがにはなぜふれないのでしょうか。

 

山に返すと言われても、何の餌もない真冬の山で、この子グマは100%生きていけません。

 

この子グマ、どこにいるのか。

熊森は、緊急保護の必要性があると判断し、警察と行政に次々と電話しました。

警察:県に聞いてください。

県庁:市に任せているので市に聞いてください。

市:保健所が対応したので、保健所に聞いてください。

保健所:猟友会に任せているので猟友会に聞いてください。人混みがすごかったので、子グマの前足首がないかどうかは、見ませんでした。

 

行政と違って、電話番号が公開されていない猟友会の方には連絡のしようがありません。個人情報だからと行政も教えてくれません。

 

私たちが保護することを申し出ましたが、飼育許可は降ろせないと言われました。

私たちは胸がつぶれそうになり、どこに放されたかわからないこの子グマのことを思って、何日間も苦しみました。

 

後日、地元の方に聞くと、この子グマは、河川敷を母グマともう一頭の兄弟と3頭で歩いている時に、河川敷に設置されていたくくり罠に左前足がかかってしまったんだそうです。なんとか、罠を外そうとこの子は必死にもがいていたが、何をしてもワイヤーは外れません。早くこの場を立ち去らないと、人間に見つかったら皆殺されると判断したのでしょう。母グマは子グマを助けようと必死でしたが、やがて不可能と悟ったのか、もう1頭の子グマを連れて去っていったようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地元では、シカやイノシシ無制限捕獲用の無差別くくり罠が、至る所に仕掛けられている。
強力バネでワイヤーが足を締め付けるため、様々な野生動物たちが足を失っていく。
日本は先進国です。こんな残酷な罠は、使用禁止にすべきです。

 

残された子グマは、自分の前足の手首を引きちぎり、狂ったように母を探し求めて走り回わっていたということです。ショッピングセンターに何かの物を狙って来たわけではなく、自分を置いていかないでほしいと必死で母を探していたんだろうということでした。

 

昨年、人身事故が相次いだこともあって(過去最多年の1.3倍)、食料を求めて山から出て来て有害獣のレッテルが張られた大量のクマたちは、ハチミツ入り罠に次々と誘導されて駆除されました。(2023年度のクマ捕殺総数は前代未聞の9028頭)その結果、冬が来てもどうしていいかわからず、各地で孤児グマたちが雪の中をさまよっていました。いずれ死ぬだけですが、誰も助けようとしない日本社会です。こんな人間社会でいいのでしょうか。

 

我が国がクマに無慈悲でクマを憎む社会に変化したのは、権威のある人たちやマスコミが、臨界距離内(一般的に12m)で人間に出会ってしまったクマが、人間が怖くて人間から逃げたいあまりに起こす人身事故を、クマが人を襲ったと一斉表現して、まるで一方的にクマが意図して人間に傷害事件を起こすかのような誤情報を出し続けているからだと思います。クマは本来、大変平和的な動物です。

 

日本は水道の蛇口をひねるといつでも水が出て来ます。しかも飲める水です。こんなめぐまれた国は、世界にまたとありません。
これは祖先が奥山水源の森を、森づくりの名人クマたち以下全ての森の生き物たちの聖域として、手つかずで残していたからです。平成になるまで、クマが奥山から出て来ることなどまずなかったのです。

この奥山生態系の仕組みを、熊森は全ての国民に伝えたいです。

 

その奥山を、わたしたち人間が、拡大造林、さらに今、地球温暖化、再生可能エネルギーなどで破壊し続けたから、クマたちは山から出てこざるを得なくなったのです。

人間活動の被害者であるクマたちをさらに殺し尽くそうとしている私たち人間、どうかしています。
人間の倫理観や道徳観はどうなってしまったのでしょうか。

 

野生動物対応の権限は都道府県にありますから、軌道修正するには、各都道府県庁に一般都道府県民が改善を求めて声を上げていくしかありません。

 

私たちは、この県の地元の皆さんのためにも、クマ問題の真の解決に向けて声を上げ行動しようという熱い方々が現れるのを心待ちにしています。(完)

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