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[速報] クマ捕獲規制と共存対策を求める 26,798筆の全国署名と要望書を環境大臣、農林水産大臣宛に提出!!
絶滅回避と人身事故防止のために、緊急対策を要請しました
11月27日、環境省にて、宮崎勝環境大臣政務官(参議院銀)に、熊野正士農水大臣政務官に、全国から集まった26,798筆の署名とクマの絶滅回避と人身事故防止のための緊急対策を求める要望書を提出しました!
コロナ禍の中、人と会うことが制限される中で、本当にたくさんの人が、1頭でも捕殺されないように、クマと共存し、クマの棲める水源の豊かな森が日本にも残るようにと必死で集めてくださいました。署名提出には、赤松正雄顧問(元衆議院議員)、片山大介顧問(参議院議員)その他、たくさんの方にご尽力いただきました。
思いのつまった署名を、室谷悠子会長、片山大介顧問、クマ保全担当の水見職員、川崎東京支部長らと届けてきました。
捕殺より、えさ場の確保、人身事故防止、生息地復元が急務
近年、食料を求めてクマが里に大量に出没し、誘引物を入れた罠に誘引され、大量に捕殺されています。昨年度のクマ捕殺数は過去最多6000頭を超えました。
私たちは24年間奥山を歩き、調査し続けてきました。クマが、人里に出てきたのは、クマが増えたからでも、人を恐れなくなったからでもなく、クマの本来の生息地である、奥山水源域の自然林が、クマを養えないまでに劣化したことが原因です。
拡大造林政策により広大な奥山自然林が失われ、ダム建設によって俎上するサケ科の魚を失い、地球温暖化によって昆虫が消え、液果は実を結ばず、酸性雨によってドングリ類を枯死させるナラ枯れが全国的に大発生、山にクマの食料が皆無という危機的な状況となり、大量出没が起こっています。
今年の全国のクマ捕殺数は、9月末現在で4000頭を超えており、このままいけば昨年を上回る捕殺数となることが予測されます。
クマをこのまま捕殺し続けると、クマは絶滅し、生態系保全上からも人道上からも問題です。豊かな水源の森の造り手を失えば、人間も近い将来水不足で苦しむようになります。
環境大臣への要望事項 ※要望書はこちら
【クマとの共存のための緊急要請】 全国の自治体が捕殺を抑制しながら、人身事故回避・共存対策を実践できるように、今年度改訂予定の「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)」においても、以下の対策を反映させてください。 1 山の実りがない年は、緊急対策として、里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運ぶことを実践できるようにしてください 2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を 3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります 4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を 5 根本対策として、奥山の生息地の復元を |
農林水産大臣への要望事項 ※要望書はこちら
【クマの人身事故防止と棲み分け対策のための要望】 鳥獣被害対策予算、森林整備関連予算、森林環境譲与税などを活用し、クマの生息環境整備と人身事故防止及び棲み分け実現のため、以下の対策を実現ください。 1 人が気をつけることで人身事故は防げます。潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策を鳥獣被害対策予算で実現させてください 2 里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運んでやってください 3 根本対策として、生息地・奥山の広葉樹林の復元を至急進めてください 4 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植える「クマ止め林」を造るための事業に公的補助が使えるようにしてください |
室谷会長は、「本来の生息地である奥山にえさのないなか、捕殺を繰り返しても、出没や人身事故は無くなりません。①えさの問題をどうするか、②棲み分けをどう進めていくかという視点の対策が急務です」と訴えました。
宮崎勝環境大臣政務官は、「来年度前半までに、ガイドラインやクマ出没対応マニュアルの改訂が予定されており、「共存」という視点を取り入れていきたい」と答えられました。熊森が実践し、提案するえさ場の確保や棲み分け対策、放獣体制の整備などもガイドラインに取り入れられるよう重ねてお願いしました。共存のための各自治体のモデルになるガイドラインができるように、今後も要請を続けます。
熊野農林水産大臣政務官には、奥地の放置人工林をクマの棲める広葉樹林に戻してほしいということと、鳥獣被害対策として、捕殺に頼らない棲み分け対策やクマたちのえさ場の確保に力を入れてほしいとお願いをしました。熊野政務官は、エサの問題、生息地の問題を考え、棲み分けをすることが必要という話を、「ゾーニングが大事なのですね」と真剣に聞いてくださりました。
「農林水産省の鳥獣被害対策予算が、来年度さらに拡充される予定です」と政務官がおっしゃられたので、現在の捕殺を中心とする獣害対策から、野生動物たちが山で暮らし、棲み分けができるような環境整備と野生動物を寄せつけない集落づくりにシフトしていくことが必要なことをお伝えしました。
署名提出に合わせて、環境省記者クラブと農政記者クラブで、記者に説明をしました。「クマが出てきて捕殺された」「事故が起こった」という現象だけではなく、クマたちが奥山から出て来ざるを得ない現状や共存と人身事故防止のため、何をすべきかということを報道してほしいと訴えました。「現場を取材に行きたい」とおっしゃられる記者さんもおられました。
日本熊森協会の提案は、いずれも24年間、クマ生息地で実践してきた取組に基づいて行われているものです。ぜひ、私たちの活動を取材に来ていただきたいです。
現在も、全国各地で、クマが出没し、捕殺が続いています。署名提出を契機に、安易な捕殺に頼らない共存の取組みが進んでいくよう、今後も、国に対して要請を続けるとともに、都道府県や地元自治体にも共存対策の実施を働きかけていきます。
国際動物福祉団体 Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア)も共存対策を提案
世界をまたにかけて、飼育下にある野生動物の福祉向上に取り組むWild Welfare(ワイルド ウェルフェア)の幹部のSimon Marsh(サイモン マーシュ)氏からも、小泉進次郎環境大臣宛の親書を授かり、政務官にお渡ししました。
サイモン氏は、捕獲された野生動物の自然復帰プロジェクトに関わった経験を持ち、人との軋轢を減らすための啓発や捕まったクマの放獣、野生復帰のための一時保護施設の整備などを、日本熊森協会などのNGOとも連携し、行うべきだと提言をされました。
Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア) サイモン氏の親書はこちら
海外では、クマが人里へ出てきただけで捕殺するのではなく、原因を究明し、人側も十分に注意し、クマを寄せ付けないように配慮して行動することを徹底している地域が多くあり、学ぶべきことがたくさんあります。
東京都が絶滅危惧種のクマ4頭目を有害捕殺、8月22日、東京都支部と熊森本部が現地に出動
推定生息数60頭、東京都の絶滅危惧種クマ守れ!
くまもり東京都支部員たちの必死の現場訪問活動や行政への要請活動にもかかわらず、東京都は今年4頭目のクマを有害捕殺しました。
そして、現在も、まだ、クマ捕獲罠を設置中です。
場所は奥多摩湖の隣山、中腹に位置します。
建物裏側には古い物置きがあり、放置されて腐敗した味噌や古い果実酒などが入った一部破損した容器が置かれています。その周辺からは腐敗臭が漂っていました。
ここにクマが夜、出てきました。
行政は、クマを誘引している生ゴミ(倉庫内)の除去は行わずに、クマ捕獲罠を設置しました。
倉庫内の誘引物を生ゴミに出す準備 8月17日撮影
くまもり東京都支部は、クマが出てこないように、誘引物の除去や電気柵の設置を家主に申し出ました。しかし、受け入れてもらえません。
捕獲したあと殺処分するのではなく、放獣してほしいというくまもりの長年の切なる願いに対して、東京都行政はいまだに放獣予算を付けようとしません。(都内の業者に依頼すれば、1頭1回放獣20万円)
住民の安全とクマの救命の両方を願うなら、クマを誘引している物を片付けて、クマの忌避剤を撒くしかありません。
8月22日、本部職員2名が出動し、レンタカーを借りて、東京都会員2名と計4名で、現地で被害防除活動を行いました。
以下は、その時の報告です。
現地に着くとうれしいことに、先日訪問したくまもり東京都会員たちと神奈川県支部長の説得を受けて、家主が生ゴミを町の回収に出してくださっていました。感謝。
生ゴミが消えていた現地
しかし、クマの誘引物を入れたクマ捕獲用の箱罠は、口を開けたままです。これでは5頭目がやってきて、また捕殺されます。
家主はおられませんでしたが、奥様がおられ、夜ごそごそとやってきたクマと、台所の窓を挟んで目が合った話など、詳しく語ってくださいました。私たちが、クマは東京都の絶滅危惧種に指定されているというお話をしたところ、奥様は、「それは知らなかった。」と大変驚かれていました。
そして、「クマはどこにでもいるものだと思っていた。昔からこの地域はクマが出てくるから、東京にはたくさんクマが棲んでいる、むしろ昔より数が増えているんじゃないかと思っていた」と、話されました。
クマの侵入経路を教えてくださる奥様(中央)
生ゴミは片付けてもらっていましたが、現場にはまだ腐敗臭が漂っています。建物の周囲を歩いてみると、果物やなにかよく分からないものがビンに詰められたまま、大量に廃棄されていました。ものすごいにおいで、このままではまたクマを引き寄せてしまいます。クマは、腐敗臭に誘引されることを伝えると、また、大変驚かれていました。しかし、奥様は足の調子がわるく、ほとんど遠くへは歩けません。重いものも持てなく、これらのビンも捨てたいがどう処理をしようかと悩んでいるということでした。
果物を漬けた古い液体などが放置されていた
とてつもなく強い腐敗臭でした。4人で悶えながら、処理をしていきました。ビンの中身は新聞紙などにしみこませたりなどしてごみ袋に回収しました。4人で3時間かかりました。
ビンはきれいに洗ってゴミ袋に入れ、ゴミ捨て場へ
クマの通り道と思われる場所は、はしごでふさがれていました。もし今度通ったら、倒れて音がするようにと、防犯ベルの代わりに設置したものです。
奥様が設置された、クマを防ぐはしご
そこで、私たちは、用意してきたクマの忌避剤を設置しました。1つ目は、ペットボトルに入れたニコチン水です。喫煙所から煙草の吸殻をもらってきて作りました。ペットボトルの上部には、クマの嫌がるニコチンの臭いが出るように、小さな穴をたくさんあけてあります。
ニコチン水
2つ目は、東京支部のKさんが取り寄せてくださったウルフンエキスです。実験的にクマの通り道に設置してみました。相当きつい臭いです。こちらも、奥様の許可のもと、設置しました。家屋に近いところでは臭いがきつすぎるため、ハシゴでクマの侵入経路をブロックしているあたりに設置しました。
ウルフンエキス設置
誘引物の回収と、クマ侵入経路上に忌避剤の設置を行ったことで、家主の奥様から大変喜ばれました。生ごみやにおいの出るものはもう外にはおかないよう約束していただきました。
あと、この場所へクマが来る残りの要因は、ただ一つ。クマ捕獲用罠の中に入れられた誘引物だけです。
この後、役場へ向かい、回収したごみを受け取っていただきました。役場の担当課長を訪ねましたが、不在でした。事前に、「行きます」と、支部の方からお伝えしてあったのですが、熊森とは会いたくないのでしょうか。
仕方がないので係長さんに、「今日、私たちはクマの誘引物を除去してきました。しかし一つだけ除去できていない誘引物が残されています。それは捕獲罠です。罠があることでクマを誘引しています。本当に地元の方の安全を守りたいのであれば、クマが出てこないように、どうか罠の撤去をご検討ください。そして、こうした誘引物除去作業は、本来罠をかける前に最優先で行ってほしいです。人手が足りないのであれば、私たち市民団体にも相談してください。可能な範囲で出向きますのでよろしくお願いします」と伝えました。しかし、係長は、クマ捕獲罠を撤去するとは言ってくださいませんでした。
帰りに現地の山を見ると、スギやヒノキの放置人工林に多く覆われていました。これも何とかしなければなりません。くまもりが地元議会に、放置人工林の天然林化の陳情を出したのですが、採択されなかったということでした。
スギやヒノキの放置人工林で覆われていた東京都の奥地
この日はずっと鼻に臭いにおいが付いていました。
東京都にも熊森会員がたくさん誕生したら、今日のようなボランティア活動がもっともっと行われるようになります。
この国で、市民団体を大きく成長させて、郡部国民と都市部国民が助け合い、自然や野生動物たちの命も大切にするやさしい国を作っていきたい。
これが、熊森協会がめざしているものです。
11月4日(日)林野庁初参加 祝 第11回くまもり東京シンポジウム「人工林から豊かな森へ」
2018年11月4日(日)東京都表参道のウイメンズプラザにて、くまもり東京都支部主催の第11回くまもり東京シンポジウムが開催されました。
今回のくまもり東京シンポジウムには、林野庁担当者がご出席くださり、今年5月に国会で成立した「森林経営管理法」をもとに、林野庁の考えていることを発表してくださいました。
くまもりの集まりで林野庁の係官が発表してくださるのは初めてのことであり、画期的なことです。時代の変化を感じるとともに、発表してくださった担当者には心からお礼申し上げます。
また、今年新たに熊森顧問になってくださった元徳島県木頭村村長の藤田恵氏も、ビデオ発表となりましたが、熱弁をふるってご講演くださいました。
室谷悠子くまもり新会長も、30分間の力強い講演を行いました。
以下は、各発表者の要旨です。
まず初めに、くまもり東京都支部の川崎支部長より挨拶がありました。
「日本は世界で唯一、首都にまだクマの棲む森が残っている国です。しかし東京都の山の多くが戦後の拡大造林政策でスギなどの単一人工林に覆われてしまいました。残された自然林の山の実りが悪いときは、クマなどの野生動物が人里に出て来てしまいます。
山にかかわってこられた三重県の後藤さんは、次のように述べられています。
「本来植林は大きな山でも、その3分の1しかできません。それ以上したら間違いです。
山の尾根は全部自然林で残す。谷間の緩やかな所だけ植林する。谷間にはスギを植え、中腹にはヒノキを植え、南向きの日の当たる所は全部自然林で残す。これが紀州人の掟でした。
戦後の拡大造林は、これを破って山という山に全部植林しました。だから今ある植林の3分の2は間違いです。
手入れできない人工林も、半分土砂で埋まったダムも、コンクリートで固められた河川や海岸も、全てが今後、大規模災害につながる負の遺産です。
全てのことに私が解決策を訴えられるわけでもありませんが、崩壊寸前の植林地に関しては国民総出で巻き枯らし間伐の運動を行えば、今なら崩壊を止められると思います。」
動物と人間の棲み分けを復活させるためにも、大都市の水源を守るためにも、来年度からの森林環境譲与税は、「放置人工林を豊かな森へもどす」ことに使っていただきたい。私たち都民にとっても、重要な話です。今日はたくさんのことを学びましょう。」
くまもり新会長 室谷悠子 「熊森がめざす豊かな森づくり」
「私たちが兵庫県北部の豪雪地帯で実験した例では、スギやヒノキの人工林に6割の強度間伐を施して、間に広葉樹の苗を植えても、数年たてばまた残されたスギが太り、林内が真っ暗な元の人工林に戻ってしまいました。こうなるともう広葉樹は育ちません。
人工林を広葉樹林に戻すには、定性間伐ではなく、皆伐または崩れやすい山では小面積皆伐を実施する必要があります。兵庫県北部はシカが多い場所でもあり、シカが侵入しないための囲いや雪対策が必須です。
一方、温暖で湿潤な気候の九州では森の再生力が大きく、シカが多くても、シカ除け柵など不要で、皆伐場所を放置しておくだけで、数年で広葉樹林化できます。
これまで熊森が人工林の広葉樹林化をめざして長年試行錯誤した結果得られた知見からモデルをつくり、国や行政に提示していかなければならないと考えています。
また、来年1月に国会に提出される森林環境税法案は、現段階では何に使うかという使途がはっきり決まっていません。ぜひ放置人工林の自然林化を使途に義務付けるよう、多くの国民の皆さんに声を挙げていただきたいです。」
熊森顧問・元徳島県木頭村長 藤田恵氏 「拡大造林で壊れ続ける四国の山と川」
「戦後の拡大造林により、山の保水力が落ちてしまいました。その影響で台風や大雨がくると山からどんどん土砂が流れてきて、川底やダムを埋めていきました。また、土建業者をもうけさせるための補助金規定に従って、山奥まで不必要な幅の広い舗装林道が作られ、山奥の自然がどんどん壊されています。」
林野庁森林整備部計画課 三間知也氏 「新たな森林管理システム(森林経営管理制度)について」
「林野庁としても、スギやヒノキなどの針葉樹の人工林を、造り過ぎたと感じています。なので、今後は減らしていき、林業で使われない部分は、できる限り針葉樹と広葉樹が混交するような複層林に変えていきたいです。
また、森林環境税が市町村で実際に使われる際に、土地所有者が不明もしくは亡くなられているなどの理由でおられないときは、市町村の権限で放置人工林の整備をしていけるように法改正しました。
九州豪雨災害や西日本豪雨災害で大規模な土砂崩れが発生したのは、人工林のせいではなくて、異常な降雨によるものだと私たちは考えています。」
この後、東京都支部、神奈川県支部から、活動報告がありました。
熊森から
この日、62名の方々がこの会場に来てくださいました。
参加者の中には、人工林問題や東京都のツキノワグマ生息状況に関心の高い都議会議員の先生や、大学の生物系の先生方もおられました。また、質疑応答の時間には、参加者からたくさんのご意見・ご感想をいただきました。
戦後の拡大造林政策の失敗は、林野庁だけの責任ではなく、声を上げなかった全国民に責任があると熊森は考えています。
林野庁は、ごく最近まで、戦後進めてきたスギやヒノキの針葉樹の単一造林に問題はないと主張されていましたが、ようやく「人工林を造り過ぎた」と発表されるようになりました。しかも、今回、民有人工林の8割が放置されていると、言いにくいことを正直に発表されました。国民としては、温かい拍手を送りたいと思います。
しかし、近年の豪雨被害で発生している山崩れに人工林が関係していることについては、今も林野庁は否定的であることがわかりました。
森林経営管理法や森林環境税が正しく効力を発揮するためには、多くの国民が山のことも勉強し、声を上げていかなければならないと思います。(国民が勉強しなければならないことが多過ぎて、大人は本当に大変です)
まだ、奥山放置人工林を森林環境税を使い天然林に再生すべきだという署名にご署名をいただいてない方は、以下のネット署名でご協力ください。Change.org森林環境税で、スギ・ヒノキの放置された人工林を天然林に戻してください
青梅猟友会会員による親子グマ駆除問題 熊森が刑事告発受理の申し入れを取り下げて終わる
熊森本部は、東京都青梅猟友会に所属する会員が、2016年11月に親子グマ3頭を駆除したにもかかわらず、駆除数を1頭分しか青梅市に届け出ていないことを、同猟友会の内部告発により知りました。
熊森本部はさっそく証拠物件を確認し、「鳥獣保護管理法」等違反でこの猟友会員を刑事告発する準備を進めました。(2018年2月会報くまもり通信94号参照)
しかし、青梅市は熊森の動きを察知したのか、熊森が予定していた刑事告発記者会見直前に、当該猟友会員に再度聞き取ったところ、捕殺グマは実は3頭だったことを明らかにしたと、熊森の先を越して全マスコミに文書で通達してしまいました。青梅市が、この猟友会員を擁護しようとしたのだと思われます。
熊森の刑事告発の申し入れを受け、青梅警察署は捜査を開始してくださいました。そして、3月14日、熊森本部と熊森東京都支部は、現場の山中で、青梅警察署担当職員から捜査結果の説明を受けました。
青梅警察署員の説明後、再度現場検証する熊森本部と熊森東京都支部員ら(2018年3月14日)
事件があった場所は集落から400メートルも離れており、クマが居ても何の問題もない場所です。前述の猟友会員が、猟犬やハンターに追われてこんな山の中まで逃げ込んでいた親子グマを撃ち殺したことに、まず、私たちは深い憤りを感じました。
また、山中に逃げ込んでいる親子グマの母グマを捕殺することを認めた当時の青梅市にも問題があります。残された子グマは母グマなしには生き残れないことぐらい、誰でもわかることです。
この猟友会員は、「現場は当時、サワフタギ等の藪に覆われており、木から降りて藪に隠れた母グマが向かってきた。我身を守るため散弾銃を撃ったら、子グマ2頭にも当たってしまった」と警察に供述したそうです。
その後、熊森が、情報公開制度を使って青梅市の森林整備記録を取り寄せたところ、事件現場は当時、下草や低木が刈られた後で、その後は現在に至るまで、森林整備は行われていないことがわかりました。
ならば、当時、藪に覆われて母グマや子グマが見えなかったという供述は、客観的事実と矛盾します。当該猟友会員が警察に供述した内容に、真実でない部分があったことを熊森は確認しました。
しかし、撃つ必要のない親子グマを撃ったのではないかという疑問は残るものの、目撃者がいません。撃たれたクマは1頭ではなく3頭だったという以上の真相究明は難しいと結論し、熊森は2018年8月 16日、青梅警察署に刑事告発受理の申し入れの取り下げを通知して、この件に終止符を打ちました。
このような結果に終わりましたが、今回の刑事告発の申し入れは、猟友会や野生動物捕獲業者による違法行為を抑止することにつながると思われ、それなりの意味はあったと熊森は考えています。
弁護士の先生方をはじめ、いろいろな方にお世話になりました。みなさん、ありがとうございました。
10年間連続 駒澤大学高等学校新入生520人にくまもり講演
今年も5月30日1時限目にくまもりが講演させていただきました。
東京と言っても、学校のある世田谷区は緑あふれる住宅地です。
家々の花壇に花があふれていました。
学校の玄関の菩提樹の大きな木も、ちょうど花盛り。
いい香りを漂わせていました。
この学校は毎年夏に1年生を長野県の提携している山村集落に連れて行って、森について学ばせておられます。
2年生は平和学習に取り組まれるのだそうです。
どちらも高校生にとって大切な勉強で、このようなカリキュラムを組まれている先生方に敬意を表します。
講演する森山名誉会長
会長の日程の都合がつかなかったので、今年は名誉会長の講演となりました。
くまもり講演を聞く駒澤大学高校生
講演の後、毎年、全生徒の感想文が送られてきます。
人間として大切な、まじめさや真剣さ、やさしさを失っていないすばらしい生徒たちです。
銃の前には絶対弱者とならざるを得ない他生物のことも考える優しい文明だけが、自然を守って生き残るという趣旨のお話をさせていただきました。
どれくらい伝わったでしょうか。
感想文が届くのが楽しみです。
【続報】 東京都での親子グマ違法捕殺がテレビ等で報道されました
2月1日にお伝えした、東京都青梅市の親子グマの違法捕殺問題の続報です。
2016年11月、東京都青梅市で、猟友会員が、捕獲許可が1頭しか出ていないにもかかわらず、山で木に登り逃げていた3頭の親子グマを射殺しました。2頭の子グマを射殺したことは最近まで隠されていました。
熊森は、1月31日、クマを撃った猟友会員を鳥獣保護法違反で刑事告発するため青梅警察署に申し入れしました。
また、2月1日には、東京都知事宛に再発防止と絶滅危惧種である東京都のツキノワグマ保全強化の要望書を提出しました。
熊森の活動がいくつものメディアで報道されています。
親子グマの死を無駄にしないために、クマの生息地である奥山の自然林の復元と、クマと共存できる保護体制の構築ができるよう、関東での活動もこれまで以上に広げていきたいです。
たくさんの方にこの問題を知ってもらいたいので、ぜひこの記事を拡散してください。
【各社のニュースはこちらから見られます】
弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_1009/c_22/c_21/n_7366/
TBSニュース
http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye3280091.htm
NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20180201/0007388.html
産経新聞
http://www.sankei.com/smp/life/news/180201/lif1802010035-s1.html
【速報!】東京都青梅市での子グマ2頭の無許可射殺を刑事告発へ
2016年11月、東京都青梅市で、猟友会員が、捕獲許可が1頭しか出ていないにもかかわらず、山で木に登り逃げていた3頭の親子グマを射殺しました。2頭の子グマを射殺したことは最近まで隠されていました。
日本熊森協会は、関係者の証言と現場調査から、2頭の子グマの捕獲は鳥獣保護法等に違反するとして、昨日、青梅警察署を訪れ刑事告発を申し入れました。
また、本日、東京都のツキノワグマ保護体制の構築を求めて、東京都知事宛の申入書を提出しました。
熊森の副会長の室谷弁護士の外、東京都の市野綾子弁護士、島昭宏弁護士にも告発代理人としてご協力いただきました。
クマは襲ってきたのではなく、山林で木の上に逃げていて無抵抗だった
2016年11月10日、親子グマ3頭の目撃情報があり、東京都猟友会青梅地区から駆除隊9名が出動し、猟犬をかけてクマの追い払いを開始しました。青梅市は、1頭しか捕獲許可が出ていないから子グマを撃たないようにと指示していました。それにもかかわらず、猟犬を追いかけていた猟友会員が、山林でスギの木に登って逃げていた3頭の親子グマを射殺しました。猟友会員は、3頭を射殺したにもかかわらず、青梅市には「1頭だけ捕獲した」と嘘の報告をし、2頭の子グマを捕獲したことは隠し、なかったことにしてしまいました。
熊森に、今回の無許可捕獲の通報があったのは、2017年11月末です。熊森本部は以降、聞き取りや現地調査等を進めてきました。
2017年12月、青梅市は、2016年に11月のクマ捕獲は1頭ではなく、3頭だったとメディアへ訂正発表をしました。青梅市の聞き取り調査では、クマを撃った猟友会員は、「クマが藪から出てきて、自分に向かってきたから射殺した」と証言しているとのことでした。
しかし、熊森本部、東京支部、神奈川支部等の現地を調査したところ、現場はスギの人工林内でクマが身を潜められる藪などありませんでした。クマが登っていたスギの木には母グマと思われる爪痕がいくつも発見されました。
また、クマを撃った猟友会員は、3頭を射殺した直後、駆除隊にいた猟友会に対し、「木に登っている親子グマ3頭を全て撃ってしまったので、市役所の人に内緒で山から下ろすのを手伝ってほしい」と依頼をし、クマが向かってきたという発言は一切していないという証言も得られました。
違法行為には、法に基づく処分を
東京都では、絶滅危惧種とされているツキノワグマは狩猟禁止措置が取られており、許可のない捕獲は鳥獣保護法や銃刀法違反となります。
クマを撃った猟友会員の「藪に隠れていたクマが向かってきたから撃った」という報告は、クマが潜める場所のない現場の状況や当日駆除隊に参加していた猟友会の証言とも矛盾します。
青梅警察署は、刑事告発を受理するかどうか検討するとのことでしたが、絶滅危惧種の保全という観点からも、事実を適正に捜査し、違法行為に対しては厳しい処分がなされるべきです。
東京都でツキノワグマの保護体制強化を要請
2月1日、熊森は東京都庁へ出向き東京都知事あてに、今後、絶滅危惧種である東京都のツキノワグマ保全強化を要請する要望書を提出し、都庁記者クラブで記者会見を行いました。
クマは、本来臆病で、人間が怖いので、積極的に人を襲う習性はありません。猟師が猟欲のあまり無抵抗のクマを「襲ってきたから撃った」ことにしてしまう、今回のようなケースは、氷山の一角であると考えられます。クマは繁殖力が低く、捕獲圧に弱いので、「危険」というレッテルを張り、安易な捕獲を進めていると絶滅に拍車をかけることになります。
東京都で、クマと人が共存できるよう、奥山への放獣や追い払いの徹底、そして何より本来の生息地である奥山の自然林の復元等の取り組みが行われるよう、東京都支部とも協力し活動を進めていきたいです。
(野生動物保全担当 水見)
ツキノワグマ保護体制構築のための東京都への要望事項
1 東京都でも、他府県のように、ツキノワグマの放獣体制をつくること。特に山の実りが凶作年の出没やイノシシ等の罠への錯誤捕獲については、捕獲したクマを山に放獣できるようにすること。
2 クマの出没時、追い払いや誘因物の除去を徹底すること。 3 絶滅防止の観点から、子連れのメスグマは原則捕殺しないことをルール化すること。 4 ツキノワグマの違法捕獲が発生しないよう、捕獲許可権者である東京都が捕獲従事者の監視体制の強化、各自治体への指導を徹底し、違反者に対しては適正な処分をすること。 5 東京都の本来のクマ生息地である奥山がスギ・ヒノキの人工林率が高く、クマが生息できない環境となっているため、奥山の広葉樹林化を進め、ツキノワグマの本来の生息環境の整備をすること。 |
第6回ストップ・リニア訴訟 南アルプスを愛する登山家が、物言えぬすべての命に代わって訴え
9月8日、熊森としてストップ・リニア!訴訟の第6回口頭弁論を傍聴するため、東京地裁に行ってきました。
傍聴の抽選には173名が並びました。
今回は、服部隆さん、林克さん、西ヶ谷弁護士から、静岡県のリニアトンネル工事についての陳述がありました。
服部さんは、登山歴46年のベテラン登山家です。
以下、服部氏の訴え
「登山歴46年、私たち岳人は、リニア・トンネル工事による南アルプスの自然破壊に対し深く憂慮しています。
本日、私は登山者の代表として、また物言えぬすべての命に代わって、裁判官各位に訴えます。
<トンネル掘削によ地下水脈分断について>
静岡県の北端でリニア路線が横切る地域を「南アルプス南部」と呼びます。
頂点は3000メートル峰で、そこから駿河湾に流下している130キロメートルの大井川。
その最上部地下をリニアが貫通します。
静岡県におけるリニア問題は、ここ大井川最上流部に集中しています。
この拡大図を見ると、まるで毛細血管のように無数の枝沢=谷が本流に注ぎます。
この無数の支流が減水、ないし枯れる恐れがあるのです。
資料によれば「二軒小屋」付近が毎秒2トン強の減水予測で、ここは登山基地です。南アルプスの真っ只中です。
毎秒2トンは冬の渇水時は本流が干上がることになり看過できません。
保全策として、JR東海は「導水路トンネル」を計画。
トンネル内にあふれ出した水を集めて11.4キロメートルほど下流の椹島(さわらじま)で本流に放水、「水を戻す」という案です。
しかしこれでは根本解決になりません。水が戻るのは椹島より下流のみ、上流部には一滴の水も戻らないのです。
すなわち「人間の都合」しか考えていない保全策です。
「隣に似たような谷があるから大丈夫」?!
環境アセス書でJR東海は「周辺に同質の環境が広く分布するから影響は小さい」と記述していますが、そんな単純な話ではありません。
その谷に棲む水生生物、魚、植物はどうやって移動するのでしょう。
また簡単に「重要種の移植」を持ち出すのも、水を戻さず見捨てるという宣言であり、この言い訳は免罪符にすぎません。
そもそも重要種とそうでない命をどうやって決めるのか?
厳しい自然条件の中で南アルプスに生きる命への敬意のみじんもなく、心の震えが止まりません。
生き物の生息場所には皆理由があり、安易に「移植」などすべきではありません。
この7月に奥西河内(おくにしごうち)の水源調査に行って、2.350メートル地点の谷筋でツキノワグマの糞を発見しました。
山は彼らのものです。
彼らが生きる場所です。
この谷は彼らが命をつなぐ場所なのです。
この谷水を減らしては、枯らしては決してなりません。
「上流部の谷に水を戻せないなら、工事は中止してください」これが、南アルプスに生きる生き物と私たち登山者の思いです。
ずさん極まりない、甘すぎるアセスメントを追認した国土交通省の、リニア工事計画認可の取り消しを求めます。
(熊森から)
大井川下流
リニア工事によって大井川の水が毎秒2トン減少することはJR東海も認めており、その保全策として、導水路を引いて水を戻すとしています。
しかし、この保全策にはそこに生息する動植物への配慮が全くありません。
トンネルを掘るのは大井川最上流部にもかかわらず、JR東海が保全によって水を戻す場所は11.4km下流であり、大井川中下流域住民のための利水対策にすぎません。
大井川上流におけるリニアトンネル工事は、上流に生息する「谷の水を生きる糧としている多くの動植物の減少そして死滅を意味」します。
山を知り尽くした登山家が物言えぬ生き物に代わって訴えてくれたことが、熊森としてとてもうれしかったです。
リニア事業によって、南アルプスに生きる動植物の生息地は確実に奪われ、移動できるものは益々人里に出てくるようになるでしょう。
そして、有害獣のレッテルを張られて殺処分されていくのです。
リニア事業を止めるためには、世論を動かすことが不可欠です。
一体誰のためのリニアなのか。
自然を、そして、私たち人間や動植物の大切な水源の森を壊してまで必要な物なのか。
一旦破壊してしまえば、後でいくら後悔しても、豊かな自然も地下水脈も、もう2度と取り戻せないのです。
全国民が、JR東海やJR東海から宣伝費をもらっているマスコミによるリニア宣伝に騙されず、自分の頭でよーく考えて見るべきだと思います。
口頭弁論後の集会
現在、リニア市民ネットは
リニア中央新幹線訴訟の公正な審理を求める署名が始めました。
まだの方はよろしくお願いします。(署名用紙)
次回以降の口頭弁論は、
2017年11月24日 第7回(愛知県におけるリニア被害について)
2018年1月19日 第8回(東京・神奈川におけるリニア被害について)
2018年3月23日 第9回(内容未定)
です。
ストップ・リニア!訴訟の口頭弁論をまだ傍聴されたことのない方は、ぜひご予定ください。
2月24日 東京地裁「第3回リニア公判」傍聴報告 裁判に頼らず、もっと反対運動を大きく!
くまもり本部から、今回も傍聴に行ってきました。
98席の傍聴席に、152名が並び、抽選が行われました。
●古田孝夫裁判長が被告側に鋭い質問
古田裁判長は、「事業認可の前に建設指示を出しているが、それぞれの段階での判断がもし違法であれば、最終的に工事実施計画の認可も取消しになるというのでいいですか?」と被告である国に鋭い質問を投げかけました。
国の代理人は、「次回期日までには明らかにしたい」と答えました。
●岐阜県民の意見陳述<リニア工事によるウラン鉱床問題>を聞いて
リニアは国が認可して安部政権が3兆円の公的資金を融資、JR東海という大企業が行う事業だから、きちんと調べてやっているのだろうと思われがちですが、実態は全く違います。
これまでJR東海は、岐阜県側からウラン鉱床に関して、現地調査・ボーリング調査などを求められていたにもかかわらず、文献調査やヒアリングによる調査しか行っていませんでした。
しかし、「リニアを考える県民ネットワーク」が独自で、放射線量測量調査を行い、改めて、調査を要請した結果、JR東海も調査をせざるを得なくなりやっと調査したのです。
その結果、リニアが、ウラン鉱床が生成されやすい地質にトンネルを掘って工事を進めていく事業であることを認めました。住民のみなさんの不安は大変大きなものです。
●裁判中にもリニア工事は進み、自然環境が大破壊されていく問題について
参議院議員会館での報告集会会場で、沿線住民の一人が、「こうやって毎回の公判で、沿線住民の意見陳述をひとりずつ続けている間に、リニア工事が進んでいく。もっと裁判のスピードを上げられないのか」と、心配の声が上がりました。
これに対して、川村晃生原告団団長は、「裁判を進める一方で、この裁判を支える運動の裾野を各地にどんどん広げ、そのことが裁判に跳ね返るようにしていくことが大切」と答えられました。
本当にその通りだと思いました。裁判だけに頼るのではなく、裁判中にも、リニアの問題点を知った私たちが、どれだけ各地域でリニア問題を多くの人に伝えていくことができるか、これがリニアを止められるかどうかの鍵になります。
リニア工事は、人間だけではなく、たくさんの野生動植物の生息場所をも奪う工事です。これほど膨大な自然を失ってまで進める価値がある事業なのかどうか、ひとりでも多くの国民のみなさんに、一度立ち止まって考えていただきたいです。
今後の東京地裁での公判予定日は、以下です。
2017年4/28、6/23、9/8、11/24、2018年1/19
1月29日 東京クマ学講座
くまもり東京都支部とくまもり神奈川県支部の共催による東京クマ学講座が、日本教育会館一ツ橋ホール707号室で開催されました。
講師は「東京のクマ」で有名な山﨑晃司氏(東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 教授)です。
「東京、そして日本のツキノワグマの今」という演題で話してくださいました。
会場風景
1991年から奥多摩のツキノワグマの調査に取り組んでこられた山崎先生のお話は、東京都などのくまもり会員が以前からぜひお聞きしたいと熱望していたものでした。参加者一同、全神経を集中させて聞き入っておられたことと思います。
先生はまず初めに、クマ保全に取り組むなら、現地に行き、地元の方とお話をし、地元の方たちの気持ちをくんであげて、その上で自分の意見を言うことが大切だと話されました。これは熊森本部もずっと言い続けてきたことで、その通りだと思います。まだ地元集落と結びついていない支部は、ぜひがんばってください。
大昔、日本列島の本州には、ヒグマ、ツキノワグマ、ヒョウ、トラ、オオカミたちが暮らしていたそうで、想像しただけですごいです。アジアの広大な地域に生息してきたツキノワグマですが、現在、残念ながら、分布域がどんどん縮小されているそうで、危機感を持ちました。そんな中で、日本には、まだツキノワグマがいます。単位面積当たりで見たら、日本はクマの生息密度がもっとも高い国のようで、祖先の共存文化をとても誇らしく思いました。残念ながら、九州のツキノワグマは滅びてしまいました。四国は大変危うい状況なので、山崎先生も、今年、何とかしようと決意されているようでした。熊森も、四国のクマの絶滅を止めるために、できる事をみんなで一緒にしたいです。
2016年に起きた秋田県鹿角市のツキノワグマと人との事故については、一体何があったのか、神のみぞ知るですが、山崎先生の推察を興味深く聞かせていただきました。それにしても、この事故があったことで、秋田のクマは推定生息数の約半分500頭近くが殺処分されてしまいました。
熊森が思うに、クマによる人身事故が起きると、いつも、研究者を名乗り、どこまで本当かわからないセンセーショナルなことを流してメディアの寵児となる人がいます。今回もそのような人の言葉を真に受けて、マスコミが、「人喰い熊誕生」、「殺人熊誕生」などと、大騒ぎしました。その結果、全国で罪もないクマが大量に殺されたのです。熊森は、マスコミのあり方に猛省を促したいです。
東京都奥多摩のクマについては、まず、終戦直後の1947年にアメリカ軍が上空から撮った禿山だらけの山々の写真を見せていただきました。会場からどよめきの声が上がりました。ここまで過度に人間が山を利用していたということです。今、この場所は木々で覆われています。山崎先生の調査によると、最近、山に入った時出会うクマの数や見る痕跡が増えて来ているということでした。これまでクマがいなかったところにも、クマの分布域の拡大がみられるということでした。首都という巨大な大都市のバックにある奥多摩には、今も、クマ、サル、シカ、イノシシ、カモシカ、大型野生動物たちがすべて残っているということで、本当にすごいことだと思います。1362万人東京都民の水源を支える奥多摩の山々を、調査してみたくなりました。
山崎先生のわかりやすいやさしい語り口に、参加者一同、参加して良かった勉強になったと、みな喜んでおられました。
この後、森山まり子(日本熊森協会会長)が「日本熊森協会とツキノワグマ」という題で話しました。森山会長は、人工林・自然林とも荒廃して奥山にクマが棲めなくなっている兵庫県の現状から、作今のクマの生息域拡大現象が、実は生息域の移動によるドーナツ化現象なのではないかという推察や、今、全国で実施されている「数を 推測して殺すだけ」の野生動物を物扱いした管理(=ワイルドライフマネジメント)の残酷さや非人間性を、物言えぬ野生動物たちに代わって、物言える私たち人間が声を大にして世に告発していかねばならないなどと話されました。
会場には山崎先生を含めて、大学の先生が3名出席されておりました。後の2人の方には、大気汚染が及ぼす森林の枯死や、ベイズ推定法でクマの生息数を推定することが不可能な理由など訳などについてミニ発表をしていただきました。おかげさまで、この講座がさらに盛り上がったと感じました。
会場との質疑応答では、クマの生息数推定を計算する手法が現在確立しておらず、将来も確立するとは到底思えないため、研究者たちがそのようなことに労力を費やすことへの疑問など、参加者一同が考えさせられるような質問がいくつも出て、有意義でした。
今回の学習会で発表してくださったみなさん、会を企画してくださったみなさん、参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。今後の熊森活動の力にしていきましょう。