本部に以下のような相談が寄せられましたので、みなさんと共有したいと思います。
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わたしは静岡県浜松市のくまもり会員です。
浜松市では、公園や緑地などでクリハラリス(通称タイワンリス)が放し飼いにされており、すっかり野生化しています。私もその一人ですが、その姿や仕草に心癒やされている市民も多くいて、すっかり地域の風物詩になっています。今やクリハラリスはアイドル的存在です。
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浜松城公園で撮影したクリハラリス(尻尾を入れて30~40~センチ)
・このリスたちは野生化してすでに半世紀近く経っています。浜松市はこれを観光資源として利用してきました。
その数、推定1万5千頭(浜松市のみ)だそうです。
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しかし、今年度5000万円の予算が組まれ、このリスたちが、浜松市によって根絶殺害(=ゼロになるまで殺し尽くすこと)されようとしています。
理由は、
・外来種だから。
・家庭菜園の果物を食べるから。
・家の戸袋をかじるから。
・在来種のニホンリスを脅かすかもしれないから。
だそうです。
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自分たちの楽しみのために海外から連れてきて利用しておいて、都合が悪くなったらいきなり全部殺す。私は、とてもではありませんが、はいそうですかと賛同はできません。あまりにも人間勝手ではないかと感じております。
賛同できない理由を、以下の6点にまとめました。
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①コロナ禍にある今、やるべきことなのでしょうか
・5千万円もの予算があるなら、今大変なことになっている人命を救うべきです。
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②大きな哺乳類を大量に殺すことに対する市民感情を考えてください
・リスはかわいい哺乳動物です。捕獲作業に当たる人間も、目の前で捕獲されていくリスを見ることになる市民も、その心的負担は相当なものになるはずです。子どもたちは間違いなく胸を痛めるでしょう。
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③クリハラリスを根絶しても問題は解決されない
家庭菜園のミカンやビワを食べたり、家の戸袋をかじったりする。林業に影響が出るかもしれない。ある程度はそうだろうと思われます。
しかし、それは、ニホンリスをはじめ、他の野生動物たちもすることです。ミカンやビワなどは、カラスもスズメもネズミも食べています。全部殺さねばならなくなります。法的には許されないでしょう。
緑地近郊で暮らしたり、農業を業とするには、ある程度は避けて通れないリスクの一つではないでしょうか。
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④在来種のニホンリスと本当に競合するのですか
クリハラリスのほうが体が大きいから、ニホンリスを駆逐するのではないか、ニホンリスを守るためにクリハラリスを根絶しなければならないと言われます。しかし、クリハラリスは南国出身であり、基本的には寒さが苦手です。浜松市北部の山中へ進出して先住民であるニホンリスを駆逐するとは限りません。したとしても、ある程度は限定的なものになる可能性も考えられます。
大陸から来たコウベモグラはアズマモグラより体が大きいが、競合することなく、自然環境の違いに合わせてうまく棲み分けています。種類の多いコウモリなども、実に、環境の違いによってうまく棲み分けています。
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⑤第一、根絶などできないです
クリハラリスは静岡県だけでなく、すでに12都府県で生息しています。小さな島や半島の先ならいざ知らず、広い大地で自然環境を残したままの根絶殺害は不可能ではないでしょうか。根絶殺害を施したつもりでも少しは見逃しが出るはずです。その結果、気が付くと再び元の数に戻ってしまっている、この繰り返しになると思われます。このようなことのために、多額の税金を投入することは、費用対効果の面からも問題です。
外来種問題は、まず、外来種の輸入を止めること。すでに国内で大量に繁殖してしまっている外来種は、もう、新たな可能性として受け入れるしかないというのが世界的な流れになってきています。現在、在来種とされている動物でも、元をただせば外来種であったものがとても多いのです。
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⑥対策の提案
諸外国でも外来リスが問題となっているところがあるようですが、アメリカなどは数の低減をめざして避妊ワクチンや生殖力減衰エサなどで対応している例もすでにあります。
浜松市もこうした動物福祉に沿った先進的な手法で問題解決をめざせないでしょうか。こちらの方が、圧倒的に市民からの賛同も得られやすいでしょう。
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このコロナ禍の中、多くの国民が声をあげたことで、チャーター機が無料化されるなど、国が姿勢を変える場面を何度か見ました。クリハラリスの問題も国民が声を上げれば、変わるのかもしれないと知るいい機会でした。
リスのこと、クマのこと、自然のこと、私たちが声を上げることによって、今や罠や銃の前で完全弱者である地球のなかまたちを助けてやれないでしょうか。命を大切にする文明を取り戻せないでしょうか。何とかかれらとの共存をめざしたいと思います。
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ご賛同いただける方は、浜松市に柵や網で果樹被害を低減させたり、海外のように避妊去勢策をとったりして、クリハラリスの命を奪わない対処法をとってほしいと一緒にお願いしていただけないでしょうか。他にもいいアイディアがあれば、ぜひ、浜松市にお伝え願います。
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(要望先)
・浜松市役所 鈴木康友市長 〒430-8652 浜松市中区元城町103-2
市長へのご意見箱 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/cgi-bin/simple_faq/form.cgi
広聴広報課電話番号:053-457-2021ファクス番号:053-457-2028
熊森注:担当部署には決定権がないので、要望先から外しました。
・環境省 自然環境局 野生生物課 外来生物対策室
・電話03-3581-3351(代)
浜松城公園の森を臨む
クリハラリスの生存を支える浜松城公園内の自然豊かな森の中
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・クリハラリス根絶殺害の開始を伝える新聞記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200327-00010013-satvv-l22
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熊森から
今回のクリハラリス根絶殺害は、浜松市が考えたことではなく、日本哺乳類学会(茨城県つくば市にある国立研究開発法人森林総合研究所内に事務所)に属する一部の外来種根絶派の研究者たちの脅しともいえる要望書に、行政が屈して実施するものだと思われます。
<クリハラリスの根絶殺害を要望する日本哺乳類学会からの要望書>
2019年11月15日 熊本県知事・宇土市長・宇城市長宛て
2019年11月15日 神奈川県知事宛て
2017年12月12日 環境大臣・農林水産大臣宛て
2016年11月29日 静岡県知事・浜松市長宛て
2010年1月4日 熊本県知事・環境大臣・農林水産大臣宛て
確かに、大学の偉い先生方に、いますぐ外来種を根絶殺害しなければ大変なことになると専門用語を使って脅されたら、行政は人間として、そんな無茶なそんなかわいそうなと本能的に思うものの、専門知識もなく他に情報源もないため、震えあがってしまうのも無理のないことだと思います。
大人たちは思っていても口には出しません。まさに、裸の王様です。「外来種を皆殺しにするなんてまちがってるよ」という子供の声が、今こそ日本社会に必要です。
歴史は、専門家の判断が時には間違うこともあることを示しています。外来種根絶思想は、専門家たちが専門性を高めるために小さな穴の中にどんどん潜って行ったことによって、全体や他生物の命の貴さが見えなくなってしまったことで生じた誤判断ではないでしょうか。
まちがい1 倫理上完全にアウト
外来種が入ってきて在来生態系のバランスが変化するのを好まない研究者たちの気持ちはわかります。しかし、現在の外来種根絶政策は、そのような外来動物を輸入してもうけようとした人、輸入を許可した国、売った人、買った人、逃がした人、これら人間の責任を一切追及することなく、無理やり日本に連れて来られた哀れな被害者である外来種に全責任を負わせ、彼らの命を奪って終わろうとしています。これは、倫理上、完全にアウトです。恐ろしい思想だと思います。予算の5000万円(うち1200万円は環境省からの交付金)は、捕殺業者にわたすお金だそうです。
自然保護団体などの輸入を止めろという声で、現在やっと、植物も含めて148種の特定外来生物の輸入が止まりました。しかし、一方で、2000種以上の外来生物の生体輸入が今も続いていると聞きます。
昨年度、動物実験を廃止する会(JAVA)が取り上げたエキゾチックアニマル展示販売会問題に熊森も賛同し、環境省にこのような販売会を禁止するよう申し入れました。しかし、環境省は、職業は自由であり、特定外来生物種のリストに入っていない種の販売は違法ではないとして動きませんでした。今売られている外来種が、いずれ野に出て繁殖し増えて特定外来生物種になることは十分に考えられます。環境省は、蛇口をまず止めないとだめです。
まちがい2 外来種の根絶は不可能で、無用の殺生となるだけ
私たちも、在来生態系を守りたいと思っています。しかし、いったん野で繁殖してしまった外来種を根絶することはもはや不可能なのです。取り返しのつかない問題です。北海道では平成11年からアライグマ根絶事業が始まっていますが、北海道の気候がアライグマに合うのでしょう。殺しても殺しても生息域は拡大の一歩。あれから20年以上たちますが、頭数的に増えたか減ったかさえつかめないということです。これまで全国で殺してきたおびただしい数のアライグマの死体の山を想像すると、ぞっとします。根絶殺害は一体何だったのでしょうか。自然界をコントロールしようという人間たちのおごりがもたらした残虐行為ではないでしょうか。
大量に殺害しても、しばらくすると再び増えて環境収容力に合わせた元の数に戻ってしまうため、それまでの殺害が無用の殺生となります。行政はもういい加減に気づいてほしいです。
早稲田大学の池田清彦名誉教授のように、専門家でありながら、外来種根絶政策を無意味と批判しておられる方もいます。現在、外来種根絶派の研究者たちと環境省がつながっているので、こんな漫画のような理不尽で残酷な政策が全国でまかり通ってしまっているのです。
当協会がドイツの自然保護団体を訪れたとき、ドイツでは50年以上野で暮らす外来種は在来種とみなすということでした。ドイツのアライグマは50年以上たっているため、アライグマを組み込んだ生態系がドイツの新生態系とみなされるのです。合理的だと思いました。
日本哺乳類学会からの要望書が来ても乗らず、手間がかかっても、殺生しない解決法をめざす毅然とした命に優しい地元行政であってほしいです。
尚、浜松市の会員さんは、クリハラリスに関して膨大な資料や専門的な文献を集めておられます。今後、避妊ワクチン導入などの代替案を早急に出していかなければなりません。一人では大変なので何人かの方につながっていただきたいです。(完)