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国有林管理経営法改正、参院農林水産委で可決 

 付帯決議に「広葉樹林化」の言葉が入る

 

上記法案は、5月22日から週2日ペースで5日間、計約13時間30分にわたるに参議院での審議を終え、本日2019年6月4日に農林水産委員会で採択されました。明日本会議でも採択の予定。

日本熊森協会は、国有林でこそ、天然林化を率先して進めてほしいと訴えていました。

参議院農林水産委員かでの採決の際、附帯決議で、

「木材の安定供給・造林・保育・間伐等の施業の効率化、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要不可欠な路網整備、鳥獣被害対策、立地条件等に応じた広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するとともに、所要の予算を確保すること」(第10項)

という条項がつき、衆議院の附帯決議では入っておらず、私たちが求めていた「広葉樹林化」という文言が入りました!

みなさん本当にありがとうございました。

 

その他にも、附帯決議の前文で「昨今、頻発している自然災害への対応や、地球温暖化防止に対する国民の強い関心等も踏まえ、国有林野の有する公益的機能は、より一層十全に発揮されることが求められている」と指摘し、「生物多様性の保全や災害防止等の森林の公益的機能を重視した管理経営を一層推進していくこと」(第1項)、企業に長期に亘る大面積の伐採権を与える「樹木採取権」の指定にあたっては、国有林の「公益的機能の維持増進に悪影響を及ぼさないよう、森林の特性に応じたゾーニングを踏まえ、樹木採取区の指定を行うこと」(第4項)といった、災害防止、水源保全、野生動物たちの生息地としての国有林の役割を重視し、大規模な伐採が、こういった機能を阻害しないように求める条項が入りました。

 

この間、インターネットで審議の様子を見続けているうちに、吉川農林水産大臣や牧元林野庁長官をはじめ、質問に立ってくださった国会議員の方々、表には出ないけれど、裏で一生懸命質疑応答を支えられたみなさんに、すっかり親近感を抱くようになりました。心からご苦労様でしたと、今は労をねぎらって差し上げたい気持ちでいっぱいです。

 

国会審議を見ていて、国会議員は大変だなあとつくづく思いました。これだけ専門性の高い議論を人前できちんとした言葉で短い時間内に語ろうと思ったら、特別高い知性と猛勉強が必要です。改めて、なんだか、国会議員のみなさんが、すごく偉く思えてきました。

 

どの意見もそれなりに一理あります。議員のみなさんが自由に発言されているのを見ていると、日本はやはりいい国だなあと思わざるを得ません。政治はここまで進歩したのですね。

 

本当は、5月中に採決してしまう予定だったようですが、日本熊森協会、自伐型林業推進協会、東京パルシステムなどが、この法案に対して声を挙げたためか、理事のみなさん(堂故委員長、上月議員、田名部議員、紙議員)の叡智で審議日程が1日加算されたようです。超多忙な国会なのに、国民としては感謝です。うれしいです。

 

団体の要望

●日本熊森協会

国有林内の人工林は232万ヘクタール。一方、戦後の拡大造林政策によって皆伐された奥山原生林の面積は628万ヘクタール。自然保護団体である日本熊森協会としては、豊かな森を造るクマなどの大型野生動物が棲める水源の森を取り戻したいので、国がこの度、民間企業に頼んで国有林内の人工林を皆伐するのであれば、伐採跡地にはまたスギやヒノキを植えるのではなく、原則として、植えない森造りで全てを天然林に戻してもらいたいと願っています。

広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するという言葉が付帯決議に入ったことは、室谷悠子会長らによるロビー活動の成果だと思います。

 

●自伐型林業推進協会

皆伐と再造林のサイクルでは一時的な収益確保にしかならず、不足している林業人材の育成は極めて困難である。大規模山林分散型の多間伐林業を推進すべきである。(熊森も全く同感です)

 

参議院で「国有林の天然林化」を訴える その2

天然林化が具体的に実行される施策を!

現在、参議院で審議中の、国有林管理経営法の一部を改正する法案。

私たちは、国有林こそ、民有林のお手本となるように、率先して、天然林化を進めてほしいと訴えています。

5月29日、室谷会長は、参議院の農林水産委員会委員の小川勝也議員にお会いしました。

室谷悠子会長(左)と、小川勝也議員(右)

もう20年も前のことになりますが、小川勝也議員は、野生動物の個体数調整を導入し、現在の野生動物の大量捕殺の道筋をつくることになった1999年の鳥獣保護法改正に、熊森も他の自然保護団体も大反対をしたときに、私たちの声を代弁してくださいました。鳥獣保護法改正時は、室谷会長は大学生だったことをお伝えすると、「あの時は、国会が止まったもんねぇ」と懐かしそうにおっしゃられました。

当時から、環境や自然に対し、熱意溢れる議員でしたが、その後、民主党政権時代の農山漁村地域活性化担当の内閣総理大臣補佐官や参議院農林水産委員長などを務められ、熱意はそのままに、森林や林業に対する知見も深めておられ、「何倍もパワーアップ」されているように感じました。

1999年当時は、会員数300人しかいなかった日本熊森協会が、その後、各地で「天然林化」「広葉樹林化」に取り組み、どのようにすれば放置人工林を野生動物たちが棲める天然林に戻していけるか、わかってきたことを実践例としてお伝えすると、たいへん喜んでくださり、林業に適さないような場所を天然林化するための技術や知見を集め、実行する仕組みをつくることがとても重要だとおっしゃられました。

参議院農林水産委員会で、熊森作成の資料を基に質問される小川議員

 

5月30日、小川勝也議員が農林水産委員会での質問で、国有林でも公益的機能を重視し、災害に強い国有林、広葉樹や混交林をつくることが重要で、林野庁の方針が計画だけに終わらず、山が険しく機械が入りにくい場所や急斜面、条件が悪いところでも、しっかりと天然林化を進めていくのかと林野庁に質問をしてくださいました。

林野庁は、人工林の伐採跡地で、天然更新を促すなどしていく、森林整備事業も使って進めていくと答弁しました。

小川議員の指摘のとおり、実際に天然林化が進むかどうかが一番重要です。国有林で、天然林化が実際に進むよう、私たちも今後の動きを注視し、国会や林野庁へ声を届け続けなければなりません。

 

国有林管理経営法案の参議院での審議もいよいよ大詰めです。

5月24日 元農林水産大臣政務官に面会

「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」について

 

衆議院の審議では、<立地条件等に応じた針広混交林化の多様な森づくりを推進する>という付帯決議を付けていただきました。

 

日本熊森協会としては、もう一歩踏み込んで、国有林内の人工林伐採跡地の広葉樹林化(ベター)又は天然林化(ベスト)を進めてもらえるように訴えています。

なぜなら、自然界では、気候や標高によって、自然状態が広葉樹林であったり、針広混交林であったり、針葉樹林であったりします。よって、熊森のめざす森林を一言で表すには、「天然林化」という言葉が最適なのです。

 

  

広葉樹林         針広混交林           針葉樹林

 

・戦後、皆伐した奥山原生林の面積628万ヘクタール

(民族の大失敗、近い将来水源枯渇の恐れ)

・国有林内の人工林面積232万ヘクタール

・造りすぎたためなどの理由で針広混交林に戻す国内人工林の面積343万ヘクタール(林野庁発表)

→ (熊森の主張)ならば、国有林内の人工林面積から、まず天然林に戻すべき

 

5月23日夕方、自民党農林水産委員会理事の上月良祐議員事務所から、お会いできるという連絡をいただき、森山まり子名誉会長が急遽、上京しました。

 

参議員議員会館

 

上月良祐議員と森山熊森名誉会長

 

上月議員は、茨城県選出で農林水産大臣政務官をされていたことがわかりました。「これから人口も減っていく一方ですから、使わなくなった山や田畑は、自然に戻していけばいいと個人的には思っています。」と、言われました。熊森の主張を誠実に聞いてくださったことに心から感謝します。

記念写真を撮ってもいいですかとお聞きすると、天然林化を訴える熊森の資料をさっと手に持って、これと一緒に撮りましょうと言われ、うれしかったです。

この法案に関する審議時間は少ししかないようですが、引き続き、審議を見守っていきたいと思います。

 

参議院農林水産委員会議員への配布物第2弾

 

①国有林内では林業をせず、天然林にもどす要望書

②植林ではなく植えない森造り(=天然更新)を

 

4月から「森林経営管理法」スタート 放置された私有人工林は市町村が管理、企業が伐採の流れに

生物の多様性や水源を失うとして、私たちが27年前から訴え続けてきた放置人工林問題。

最近は豪雨による崩れが激しくなり、野生動物だけではなく、人間も命を失ったり財産を失ったりすることが増加。もう待ったなしです。

 

事ここに及んで、国は、やっと重い腰を上げ、2018年に森林経営管理法、2019年に森林環境税・森林環境譲与税法を、国会で矢継ぎ早に成立させました。

 

突然の法案提出→成立だったため、放置人工林を抱える山主さんにどれくらい新法が周知徹底されているのかわからなかったのですが、和歌山県有田市と海南市で配布されているフリーペーパー「アリカイナ」の本年3月号に、興味深い記事が掲載されていました。

 

「アリカイナ」によると、今年2月9日に、和歌山県有田川町・旧清水町地区で開催された山林所有者説明会に、約200人が詰めかけたということです。やはり、具体的にどういうことになるのか、みなさんよくわからず、心配になられたのだと思います。

 

森林経営管理法によると、市町村は、放置人工林の所有者を調べ、森林管理の委託希望をたずねたり管理委託のお願いをしたりして、管理権を得ます。所有者不明の場合はホームページや掲示板で広告し、半年たっても連絡がなかった場合は、その森林を市町村の管理下におきます。

 

一方、都道府県は、意欲と能力のある林業経営者(企業)をリストアップします。市町村は、管理下に置いた森林のうち、もうかりそうな山は、リストアップされた企業に伐採や収益の権利を与えます。

 

「アリカイナ」によると、無断で人の山の木を伐って販売してもうけるのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害である(憲法29条に抵触)と森林経営管理法に反対している専門家もおられるそうで、山主にも結構反対者がいるということです。有田川町では、山林所有者への意向調査は、10年かけて行う予定だそうです。

 

熊森としては、放置人工林は余りにも弊害が多く、亡国につながるため、国としては一刻も早く手を打たなければならないと思います。しかし、どんないいことでも、強制は許されません。市町村山林担当者は、何とか山主さんとよく話し合っていただいて納得されたところから、管理方法、供給過多による材価低下を防ぐための計画的な伐採、伐採後の跡地の処置、販売利益の分配など、スムーズに事が運ぶように、がんばっていただきたいです。現在、全国市町村の3分の2には、山林担当職員がいないということです。放置人工林をかかえる市町村に、優秀な山林担当者を付けることが、森林環境譲与税を使って第一になされるべきことでしょう。

 

ただ、放置人工林は、材の搬出が不可能、または、無理して搬出しても搬出経費が掛かり過ぎて赤字となるため放置されてきた山林であることが多く、民間企業が無理に材を搬出しようとして、大型機械を入れて無茶な林道造りを実施し、どうせ他人の山、後は野となれ山となれで、山をずたずたにしてしまわないか心配です。市町村の強力な監視が必要です。

 

市町村は、企業に、山神様や野生動物たちの存在を忘れないようにすることを指導していただきたいし、放置人工林を天然林に戻すことで、林業者(山仕事)に森林環境譲与税から多額のお金が支払われるようにしていただかなくてはなりません。また、人口減、空き家増加、和風建築の需要減を考慮していただき、拡大造林政策の失敗を深く反省して、50年後の放置人工林を造るようなスギ・ヒノキの再造林だけはやめていただきたいです。

 

今後、あちこちの市町村で、森林経営管理法の実施に当たり、山主への説明会が持たれると思います。林森経営管理法がどのように進んでいくのか、私たちにはわからないことが多くあります。情報をお持ちの方は、熊森本部まで情報提供いただけたらありがたいです。

 

民間林業会社等に国有林の人工林伐採権を長期間与える「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に 

2月26日、上記法案が閣議決定されて、農林水産委員会に提出されました。

 

この法案は、2018年に成立した「森林経営管理法」で新たな民有林管理システムの要となる、意欲と能力のある民間林業経営者(森林組合、素材生産業者、自伐林家等)に、10年~50の長期にわたり、数百ヘクタール、年間数千立方メートルの国有林の伐採権を与える法案です。(現在も民間が国有林を伐採していますが、現行は3年までという制限がついています)

伐採後は、伐採林業者が再造林を行い、造林経費は国が支出します。

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これによって、民間林業経営者が収入を確保し、長期的な経営計画が立てられるようにするとともに、安定的に木材を供給できる仕組みをわが国に創設し、川上・川中・川下の連携による木材需要拡大をはかるものです。

 

林野庁経営企画課に電話をして問い合わせました。

くまもり:国有林の多くは最奥地にあるので、伐採跡地は、天然更新させて天然林に戻してください。伐採後は林業をせず、水源の森・生物多様性保全の森に再生させて、全生物のため、子や孫のため、永久保全すべきです。

林野庁:今回の法案は、林業として成り立つ場所での伐採しか考えていませんから、そのような奥地の人工林には手を付けません。

くまもり:じゃあ、伐採跡地には、またスギ・ヒノキを植えるのですか?

林野庁:地元の森林管理局や森林管理署に任せます。もし、造林するのなら、費用は国が持ちます。

熊森:国有林伐採に外資が参入するのではないかと心配している人がいますが、その恐れはありますか。

林野庁:伐採権を得られるのは、地元で実績のある林業会社と決められていますから、外国人が入ってきて国有林を伐採することはありません。ただ、その林業会社に外資が投入されることはあるかもしれません。

 

熊森から 

林業振興のためだけの法案であることがわかりました。これからはどんどん人口が減っていく時代ですから、材の需要が増えることは考えられません。無理に木材需要を拡大しなくても、身の丈に合った林業規模でいいのではないでしょうか。人間の利益ばかり考えるのではなく、生息地を人間に破壊されて苦しんでいる野生動物たちに、森を返してやることも考えていく人間でありたいです。

 

国産木材の需要の伸び悩み

以下、2月23日毎日新聞より

花粉症対策の決め手「少花粉スギ」 植え替え進まないのはなぜ?

花粉症対策の決め手「少花粉スギ」 植え替え進まないのはなぜ?

 「国民病」とも言われる花粉症患者が悩む季節が到来した。春とともに大量に飛散するスギ花粉。林野庁は花粉症対策の決め手の一つとされる「少花粉スギ」の苗木への植え替えを推進しているが、木材需要の伸び悩みや木材品質への不安などの理由が重なり、植え替えは進んでいない。

 

東京都の調査では、都内で花粉症を抱える人の割合は推定で48.8%(2016年現在)と、ここ20年で2.5倍に急増している。

花粉症患者の増加には、戦後の国の森林政策が関係している。成長が早く、加工がしやすいスギは人工林の主役。日本の国土の7割にあたる森林(2508万ヘクタール)のうち、人工林は約4割の1029万ヘクタール。中でもスギは448万ヘクタールと最多を占める。スギは樹齢20~30年で花粉を激しく飛散させるが、花粉症が社会問題化した昭和の後半と時期的に重なる。

 

そこで林野庁が進めているのが、少花粉スギへの転換だ。同庁の対策方針では、32年度までに少花粉や無花粉のスギを年間苗木生産量の7割にする目標を定めている。だが、16年度現在、少花粉スギの苗木の割合は25%どまりで、植え替えも難航。大半が少花粉スギとなるには数百年かかるペースだ。同庁担当者は「品質がダメな木だったら育てた何十年かが無駄になるので、所有者は植え替えに慎重になる。決して品質が悪いわけではないのだが」と話す。

 

さらに根本的な課題としては、国産木材の需要の伸び悩みがある。建物が高層化したことや輸入木材の普及、景気の低迷もあって、木材の総需要量はピーク時の6割ほどに落ち込んだ。林業従事者は15年時点で4万5000人と、1980年時点と比べ、3分の1にまで減っている。

林野庁は国産木材の活用がカギとみて、需要の拡大を図ろうとしている。昨年成立した改正建築基準法では、壁の厚さなど一定の条件が整えば高さ16メートル以上の中層建築物でも木材をそのまま使えるようになる。4月に導入される森林環境譲与税は森林整備のために各自治体に配分されるが、都市部では木材利用に使うこともできる。

 

林業に詳しい宮崎大の藤掛一郎教授(森林経済学)は「住宅需要の低下や労働力確保の難しさなどから、伐採後の植え替えを敬遠する林業関係者は少なくない。植え替えだけでなく、林業全体の維持に向けた取り組みが必要だ」と指摘する。【渡辺暢】

 

◇ことば「少花粉スギ」

花粉症対策のため森林総合研究所などが開発した、花粉量が極めて少ないスギ。花粉量は通常のスギに比べて1%以下。北海道と沖縄以外の都府県が苗木生産と植栽を進めている。07年には富山県農林水産総合技術センターが全国で初めて無花粉スギを開発し、登録した。

 

熊森から

今や空き家でいっぱいの時代です。建築材としての木材の需要が伸びることは、もう、考えられないのではないでしょうか。炭や紙などに利用するのであれば、広葉樹の方がいいはずです。

木材自給率の推移

50年スギの大量伐採は是か非か 森林環境税の使い方を考える

我が国の人工林のスギ・ヒノキの林齢には、大きな偏りがあります。

林野庁資料より

 

1950年代後半から始まった林野庁の拡大造林政策で、国内ではスギ・ヒノキ・カラマツを代表とする針葉樹の人工造林が猛スピードで進みました。

山林所有者が自らでは植栽できない箇所等については、森林開発公団(当時)や造林公社(当時)が、山主に変わって当面の費用を負担する「分収造林方式」により、人工造林が進められました。

 

しかし、1971年から、拡大造林面積は急速に減少し始めます。

造林できる場所は造林し尽してしまったこと、木材の自由化によって安い外材がどっと入ってきたこと、材価の暴落などが原因です。

日本の林業は、壊滅状態となっていったのです。

 

現在、林野庁は、大型機械を持つ企業などに委託して、森林環境税を使い、伐り出し困難な場所にある50年生以上の材を大量に搬出し、跡地に再びスギ・ヒノキを植えようとしています。目的は、林齢の平均化です。

あまりにも林齢に偏りがありすぎるので、林業の成長産業化を図るために、様々な林齢の材があるようにするという訳です。

 

この林野庁の方針に対して、林業政策を専門とする泉栄二愛媛大学名誉教授(森林国民会議)らは、猛烈に反対しておられます。

従事者が激減している日本の林業の危機を救うには、林齢の平均化ではなく、毎年同じだけの収入が林業者に一定量入る収入の平均化こそが必要で、そのための政策こそたてるべきだというのです。

一度にどっと搬出してしまえば、これが望めなくなります。

 

また、長期伐採をめざしている自伐林家からも、自分たちは巨木を育てて売ろうとしているのに、50年生以上の材を強制的に伐採させるような方針は受け入れられないと、猛反発が出ています。

 

さらにこれは、50年たった分収造林地の分収契約の実施(=林業収入の山分け)が不可能となった現在、山主にあと30年の契約延長を求め、ほぼ全員の契約を80年契約に書き換えさせた国の方針とも齟齬を生じるものです。

 

この問題、みなさんは、どう思われますか。

 

ひとり1000円の森林環境税をどう使うか、林業関係者だけではなく、いろんな者たちが声を出し合う時です。もちろん、国土の自然保護や水源の確保、野生鳥獣からの観点も絶対に必要です。

 

くまもり本部 近畿とは違う、九州の人工林を視察

7月19,20日、熊森協会本部から九州におもむき、熊本県支部長、宮崎県支部長、福岡県支部長、平野虎丸顧問や現地の熊森会員と共に,熊本県、宮崎県、大分県の山々を現地視察してまわりました。

 

移動中の車窓から眺める景色は本当に人工林ばかりで、九州の人工林の多さには愕然とするものがありました。

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九州の山は、ほとんどがスギの人工林

 

●地震による山崩れ跡と、豊かな湧水(熊本県)

熊本県阿蘇に入り、まず目についたのが今年4月の地震で崩壊した山々の姿でした。

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地震による山地崩壊

今回の地震で崩れた場所はその多くが人工林でした。しかし、そのような観点では報道されていないので、人々は<人工林が土砂災害の大きな原因>となったことにあまり気づいていないそうです。

 

阿蘇周辺では湧水が非常に多く、とてもきれいでした。毎分60トンもの水が湧きだす場所もあるそうです。高森町では湧水をいただきました。クマが絶滅した九州で、こんなにきれいな湧水が出るのを不思議に感じました。昔はもっとたくさんの湧水が湧いていたということです。私たち若い世代は、過去の自然の姿を知らないので、つい今の自然の状態だけで判断してしまいます。

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湧水(熊本県高森)

 

●九州では、皆伐してもすぐに森が再生

今回、九州の山を視察しに行った目的の一つは、九州の支部長の皆さんが、「九州では皆伐後、シカ柵を張ったり植林したりしなくてもすぐに自然林が回復する」と言われるので、この目で見てみたいと思ったことです。

 

実際に九州の山に入って驚きました。

皆伐して一年放置されていた山が、すでにパイオニア種であるヌルデやネムノキ、カラスザンショウなどの稚樹や、ノイチゴなどの下草に覆われていました。近くに広葉樹林が残っていたので、今後、次々と種が飛んできて立派な自然林に回復していくと思われました。

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人工林を皆伐して1年後の跡地(熊本県山都町)

 

下の写真は50~60年放置されていた牛の放牧場跡です。見事に自然林に復元しています。

皆伐後50~60年の山

皆伐後50~60年の山(熊本県)

 

奥山保全トラストが6年前に購入した宮崎県高千穂の人工林の皆伐跡地を見に行きました。沢の対岸から眺めただけですが、見るからに自然植生が回復しており、樹高が6~7mくらいに成長していると見られる木々もありました。九州では、わずか6年でこれほど回復するのかと、とても驚きました。もちろんどこも、シカ柵は張られていません。

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皆伐後6年の山(宮崎県高千穂)

 

自然林再生がむずかしい現在の兵庫の山

下の写真は人工林皆伐後3年たった兵庫県宍粟市の広葉樹植樹地です。シカ除けネットの外はもちろん、中にもほとんど下草が生えてきていません。

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人工林皆伐3年後 2015年8月28日撮影(兵庫県)

 

この違いは?

兵庫県のシカ年間捕殺数は4万6千頭、宮崎は2万5千頭、熊本は2万頭、どちらにもシカはたくさんいそうです。九州と兵庫の自然再生スピードの違いは、シカの密度差?気候差?他にも理由がありそうです。

 

●バイオマス事業の為に皆伐

九州では林業が収入になるということで、皆伐がかなり進んでいました。近年急速に需要が進んでいるのが、バイオマス事業です。これまで売れなかった木材がある程度の値段で売れるということで、林業界は活気づいていました。しかし、バイオマス発電に使われる木は、どんな木でもいいので、バイオマス事業を中心に林業を進めていくと、人工林を放置したり、自然林を伐採したりすることも考えられます。

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バイオマス事業のために皆伐された山(宮崎県)

 

熊森は林業を否定しているわけではありませんが、木材生産に使う場所、バイオマスに使う場所、そして動物がすめる自然豊かな水源の森にする場所などと、山をゾーニングすることがとても重要だと考えています。今のように、目先のお金のために人間が山を全部使うというやり方では、貴重な自然や生物の多様性、水源の森が失われてしまいます。

 

●ストップ・ザ・スギ再植林

残念ながら、九州では人工林の皆伐跡地は、ほぼ必ずスギを再植林していました。手厚い補助金が出るからです。

九州では、人工林皆伐跡地でも、放置しておくだけで簡単に自然林に移行していくのですから、何とか植え過ぎた人工林を自然林に戻していけるよう、熊森がその流れを作っていこうと、支部長さんたちと話し合いました。

再植林したものの、その後、放置されて、自然林に戻りつつある山もありました。

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再植林地が放置され、自然林へと移行

九州で再植林がさかんなのは、九州の山林所有者のみなさんの考え方として、人工林は手入れされたきれいな山で、雑木林は管理されていないきたない山であり、自分の山が雑木林になるのは恥ずかしいという意識があるのだそうです。そのため再植林したものの、その後の管理は補助金で補いきれないので、結局山は放置され、雑木林に戻っていく例もあるようです。

 

●自伐林家の手入れされた美しい人工林

最後に、山を非常にきれいな状態で保っている宮崎県の自伐林家の方をご紹介します。自伐林家は自分の山を間伐し、山が崩れないように手を入れてていねいに木を育てます。本来であれば60年生ほどの太さと思われるスギが、まだ45年しかたっていないというのでとても驚きました。下草もたくさん生えているとても綺麗な山でした。

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林床にはキレンゲショウマの花が一面に咲いていた(宮崎県高千穂)

 

他県の支部の山を見せていただいたことで、また、いろいろと勉強になりました。ご案内くださったみなさん、本当にありがとうございました。

 

 

 

林野庁を林業から解放し、奥山の国有人工林を、まず自然林にもどすべき 参考書籍:里山資本主義

わたしたちが、人工林率60%70%80%という、針葉樹一辺倒の奥地の行き過ぎた人工林の大変な弊害を訴え続けて22年。

しかし、台風や大雨という自然の力が人工林を倒していく以外、人工林は放置されたままで、一向に、人為的な力による

人工林→自然林

の転換が進みません。

奥山生息地を壊された野生動物たちは人里に出てくるしかなく、哀れにも、人間によって有害獣のレッテルを張られ、大量殺害を受け続けています。

 

国や研究者、行政の指導で、地元の人たちの中には、動物を殺すことが当たり前のように洗脳される人たちが出てきているようで、心配です。

殺生をしない。生き物の命を大切にする。

これは、日本人のすばらしい特性であったはずです。この文化があったからこそ、日本には自然が残り、豊富な水があり、今日の繁栄があるのです。

自然を守るには、自然への畏敬の念や、同じ生きとし生けるものとしての生き物への深い愛情があればよく、高度の学問も研究者も科学技術も不要です。

 

かくなる上は

林野庁を林業から解放し、奥山国有人工林を自然林に戻していっていただく

しかありません。

 

林野庁に電話をして、前提となる現在の債務について尋ねてみました。

<林野庁債務> 2014年1月31日現在

一時期3兆8千億円まで膨らんだ累積赤字ですが、1997年、2兆8千億円が、国により補填され、残り1兆円の債務(国や銀行から借りたため、返さなければならないお金)となりました。

しかるに、この1兆円の赤字ですが、現在、1兆2700億円まで膨らんでしまいました。

林野庁はこれまでの特別会計から一般会計になり、職員の給料は国から出るようになりました。

あとは、木を伐って売って、1兆2700億円の債務(内訳、銀行に8000億円、財務省に4700億円)を返していけばいいだけです。

ちなみに、平成24年度返還できたのは41億円だそうです。これでは永遠に、林野庁は奥山の木を伐り続けなければなりません。

 

熊森は、2兆8千億円に引き続いて、1兆2700億円の債務も、国が補填して下さることを望みます。戦後の森林政策が失敗したわけですが、これは、林野庁だけに責任があるものではなく、行き過ぎた拡大造林に反対する声を上げなかった国民にもあると思います。

林野庁が林業から解放され、奥山国有人工林が保水力豊かな自然の森に戻されていくなら、国民にとってはこちらの方が、はるかにメリットがあると思います。林業は、里山民有林で行うようにすれば、伐り出しも簡単になります。(以下、参考書籍)

 

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林野庁を、森林保全庁とし、今後は森林保全業務のみ行うようにしていただくことを提案します。

みなさんは、どう思われますか。

平野虎丸顧問、むかしの熊本の山を語る

熊本の林家に生まれ育って75年、当協会顧問平野虎丸氏が、野鳥密猟Gメンの活動に忙しい中、合間を縫って、熊森本部事務所を訪れてくださいました。戦後の拡大造林などで、人間が自然生態系を破壊してしまう前の、熊本の山の話をしてくださいました。若いスタッフたちもみんな、目を輝かせて長時間聞き入りました。

 

自然を守るといっても、人間が余りにも今は何もかもに手を入れ過ぎてしまったので、今の人たちには、どんなのが自然の生態系なのかわからなくなっています。どれも大変興味深いお話でした。ほんの一部ですが、ご紹介します。

 

Q1:NHKクローズアップ現代が,かつて、シカが増えなかったのは、狩猟圧があったからだというのですが。

A: 自分の所では、考えられない。昔は、今のように山に道路がなかったし、もちろん車もなかった。シカは、当時、早朝家を出て昼にやっと到着するような奥山にいた。そこまで、道なき道を斜面をよじ登っていくん だが、普通の人が行けるようなところではなかった。昔は、銃の性能も悪かった。猟師でも、年に1~2頭シカが獲れたらいいとこ だった。

 

Q2:NHKが、増えたシカが生態系を壊しているというのですが。

A:人間は何を勘違いしている のでしょうか。生態系を破壊しているのは人間です。野生動物には、本来、生態系を破壊するほどの能力はありません。野生動物は銃も機械も使えず、林道もコ ンクリート道路も大きなダムも造ることが出来ません。原生林を伐採したこともありません。一斉造林をしたこともありません。野生動物が、人間よりも大きな自然 破壊力を持っていると、本気で信じているのでしょうか。森を破壊しているのは人間であることぐらい、小学生だってわかります。生態系を破壊しているのは人 間です。

 

Q3:拡大造林前の自然の山には、実のなる木がありましたか。

A:いっぱいあったです。山の中には、野生の柿や栗もたくさんありました。柿や栗は、どれも幹の直径が70センチぐらいの巨木でした。今栽培されている柿の木は、毎年実るでしょう。あれは人間が接ぎ木したものだからね。特別であって、自然じゃない。山に自然に生えていた柿の木は、数種類あって、成り年が微妙にみんなずれていた。その結果、毎年どれかの実がなっていました。実はどれも小さかった。種類によって、指の先ぐらいの実もあれば、ピン球ぐらいの大きさの実もあった。実は小さかったが、もうびっしり大量になるんです。今のように何の実りもない年とかはなかった。栗もね、実は小さかったが、びっしりなっていた。

 

Q4:山の生き物は多かったですか。

A:鳥がいっぱいいた。クマタカがうちの猫や鶏小屋の鶏をしょっちゅう獲っていった。蛇は1回山に入ると、10匹~20匹ぐらい出会った。昔の山にはハチがものすごくたくさんいた。ハチは大切な役目をしている。1度、巨木を伐ったら、ハチが怒って攻撃してきて、ひどい目にあった。その木に、ハチが巣を作っているのがわからなかった。地上10メートルぐらいの所に巣を作っていたようだった。ハチは、木のいろんな高さの所に巣を作るからね。昆虫は、もういっぱいいたから多すぎて気にもかけなかった。里山にはタヌキ・ウサギとかいろいろいた。マムシも沢山いたが、マムシは匂いがきついので、いるなとすぐわかる。独特のにおいだ。それで人間は注意するので噛まれることは無かった。

 

Q5去年、人工林を中心に、熊本でも、山があちこちで崩れましたが、人工林の根が小さいからですか。

A:植林した木が、成長して重くなってきたのです 。植林スギは根が小さいので、重くなった自らの体重を支えきれなくなって、どんどん崩れ始めました。これからますます崩れて来ますよ。

 

 

 

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