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カテゴリー「_国会・行政」の記事一覧

50年スギの大量伐採は是か非か 森林環境税の使い方を考える

我が国の人工林のスギ・ヒノキの林齢には、大きな偏りがあります。

林野庁資料より

 

1950年代後半から始まった林野庁の拡大造林政策で、国内ではスギ・ヒノキ・カラマツを代表とする針葉樹の人工造林が猛スピードで進みました。

山林所有者が自らでは植栽できない箇所等については、森林開発公団(当時)や造林公社(当時)が、山主に変わって当面の費用を負担する「分収造林方式」により、人工造林が進められました。

 

しかし、1971年から、拡大造林面積は急速に減少し始めます。

造林できる場所は造林し尽してしまったこと、木材の自由化によって安い外材がどっと入ってきたこと、材価の暴落などが原因です。

日本の林業は、壊滅状態となっていったのです。

 

現在、林野庁は、大型機械を持つ企業などに委託して、森林環境税を使い、伐り出し困難な場所にある50年生以上の材を大量に搬出し、跡地に再びスギ・ヒノキを植えようとしています。目的は、林齢の平均化です。

あまりにも林齢に偏りがありすぎるので、林業の成長産業化を図るために、様々な林齢の材があるようにするという訳です。

 

この林野庁の方針に対して、林業政策を専門とする泉栄二愛媛大学名誉教授(森林国民会議)らは、猛烈に反対しておられます。

従事者が激減している日本の林業の危機を救うには、林齢の平均化ではなく、毎年同じだけの収入が林業者に一定量入る収入の平均化こそが必要で、そのための政策こそたてるべきだというのです。

一度にどっと搬出してしまえば、これが望めなくなります。

 

また、長期伐採をめざしている自伐林家からも、自分たちは巨木を育てて売ろうとしているのに、50年生以上の材を強制的に伐採させるような方針は受け入れられないと、猛反発が出ています。

 

さらにこれは、50年たった分収造林地の分収契約の実施(=林業収入の山分け)が不可能となった現在、山主にあと30年の契約延長を求め、ほぼ全員の契約を80年契約に書き換えさせた国の方針とも齟齬を生じるものです。

 

この問題、みなさんは、どう思われますか。

 

ひとり1000円の森林環境税をどう使うか、林業関係者だけではなく、いろんな者たちが声を出し合う時です。もちろん、国土の自然保護や水源の確保、野生鳥獣からの観点も絶対に必要です。

 

7月12日 平成30年7月豪雨災害のお見舞い ダムで洪水は防げない

この度の西日本での豪雨で被災された皆さんに、心からお見舞い申し上げます。

当協会の会員のみなさんに安否確認の電話を入れさせていただいたところ、通じない方が何人かおられました。

被災されておられるのではないかと本部スタッフ一同、心配しております。

熊森本部は、大丈夫でした。

 

思い返せば、西日本は7月5日から雨でした。

当初、7月8日に予定されていた日本奥山学会の日は晴れてほしいななどと、のんきに考えておりました。

7月7日になって、記念講演をしていただくことになっていた高知県の方から、道路も飛行機も使えず、今日も明日も行けない。今から避難するという連絡が入りました。

急遽、日本奥山学会の発表会開催を延期しました。

 

その後、日に日に被害報道が増大していき、7月12日現在、死者は200人を超え、避難されている方は7千人にものぼるとのことです。

炎天下、現地では自衛隊、警察、団体、市民ボランティア、地元の方々による必至の復旧作業が続いています。

みなさん、本当にご苦労様です。

どうしてこんな大災害になってしまったのか、疑問がふくらんできました。

 

原因はいろいろありますが、ひとつはダムです。

本日、「6府県の8ダム、満杯で緊急放流…西日本豪雨」という読売新聞の記事を読んで考えさせられました。

8ダムの水量が当時、満杯に近づき、ダム決壊を防ぐために、流入量と同規模の水量を緊急的に放流する「異常洪水時防災操作」が行われたというのです。

ダムによっては、放流1時間前の午前5時20分にサイレンやアナウンスで緊急放流を知らせたということですが、気づかなかったという住民もおられます。

その結果、逃げ遅れて亡くなられた方も出ました。

 

ダムのせいでこんな大変な洪水が起きたという声があがる一方で、ダムがあったからこそ、それまでに降った雨水を溜めこんで被害をこの程度に押さえられた、流入量と同じ量の水を放水しただけなので、ダムがなくても洪水は起きていた。もっと多くのダムを今後造るべきだなど、ネットにはいろんな声が渦巻いています。

 

「ダムが国を滅ぼす」の著者で、ダムの専門家であるくま森顧問の今本博健先生(京都大学名誉教授)に電話できいてみました。

以下、今本先生のお答えです。

 

「ダムで洪水は防げないことが、今回のことで皆さんによくわかっていただけたと思います。もっと多くのダムを造るべきだなんて声は、利権に走る御用学者の言うことで、とんでもないです。

今回、流入量と同じ水量を放水しただけと言われても、住民は突然そんな大量の水が流れ出してくるなど予想していませんから、洪水の犠牲者になってしまいました。

放水していなかったら、ダムが一気に決壊して、もっと大変なことになっていただろうというのはわかりますが、要するにダムでは洪水は防げないのです。

洪水を防ぐには、ダムではなく、堤防なのです。しっかりとした高い堤防を築いておく必要があります。堤防は越水したら崩れるという人がいます。今回も、あちこちで川の水が越水して、堤防が崩れています。しかし、土砂でできている堤防だからです。「ハイブリッド堤防」(堤防の天端両側の法肩に鋼矢板を打ち込んだり、中央部にソイルセメント壁を設置した物)だと、越水にも耐えられます。絶対に破堤しないとは言い切れませんが、治水の使命を果たすには、ダムではなく、堤防補強が必要なのです。そして、万一の場合は早めに確実に避難することです」

 

熊森から

今本先生、ありがとうございました。おかげで、もやもやしていた頭の中がすっきりしました。

 

 

 

 

【利尻のヒグマ】北海道のテレビ局が門崎允昭顧問のコメントと熊森の要望書を報道 6月25日追記

北海道文化放送局が6月22日夕方のニュースで、門崎允昭顧問のコメントと、熊森が高橋はるみ知事に6月21日に提出した利尻のクマを捕獲しないようにという要望書を報道してくださいました。リンクが切れないうちにぜひご覧になっておいてください。

北海道文化放送UHB、2018年6月22日

北海道文化放送局さん、ありがとうございました。

 

みなさんも利尻のヒグマを捕獲(=殺処分)しないよう、地元行政へ声をお届けください。

利尻富士町役場 総務課 TEL:0163‐82‐1112  fax:0163-82-1253

利尻町役場 総務課 TEL:0163‐84‐2345   fax:0163-84-3553

 

捕獲許可を出した北海道庁自然環境課は、守るべき自然が何なのかわかっておられないようです。一体どんな理由で、何の問題も起こしていないこのヒグマを殺すことを許可されたのでしょうか。強く抗議したいと思います。

北海道庁自然環境課 TEL:011-204-5205   fax:011-232-6790

 

6月25日北海道庁に熊森が電話

熊森:何もしていないクマを殺処分するのは、犯罪だと思います。なぜ、捕獲許可を出されたのですか。

北海道庁:捕獲許可を出したのは、道庁の出先である宗谷総合振興局です。今のヒグマの状態で、ヒグマを捕獲することはありません。罠もかけていません。万一の事態が生じた時のために、あらかじめ捕獲許可を出しておいただけです。このヒグマが利尻の山に棲みついたとしても自然なので、島民に被害がない限り、このヒグマはそのままにしておくと思います。

昭和48年→平成27年 国内木材需要40%減 現在、国内丸太挽きの国産材率76%(農林水産省)

株式会社 山田事務所の山田社長の発表資料

「統計から見た最近の木材需要の動向」が、ネットで閲覧可能です。大変、参考になります。

 

Wクリックで画面を大きくするか、またはネット上で資料を入手してください。

 

戦後の焼け野が原で50年後の木材需要を予測するのは、国にとっても難しいことであったと思います。だからと言って、水源の森まで人工林にしてしまうとは、国中が狂ってしまっていたとしか思えません。

 

しかも、新規住宅着工数は減る一方です。

 

Wクリックで画面を大きくするか、またはネット上で資料を入手してください。

 

今後は人口が減り続けることが確実の上(地球環境を守るには、国土で食料自給できる適正人口にまで、ゆっくりと自然に人口縮小していくべきでしょう)、周りを見ていても空き家が目立つ時代になってきました。ますます新規住宅着工数は減っていくことでしょう。

 

このような木材需要の動向も明らかになったのですから、放置人工林を国策で早く保水力豊かな天然林にもどしていかねばなりません。過剰な放置人工林を間伐などでごまかしてこのまま維持しようとするなら、田植えもできないような大変な水不足の時代がやってくるでしょう。そうなってからでは、もう遅いのです。

 

1992年、尼崎市立武庫東中学校の中学生たちが兵庫県庁の林務課を訪れ、「明らかに、人工林が過剰で、弊害がいっぱい出てきています。スギ・ヒノキの植林にストップをかけてください」と訴えた時、「何をバカなことを言い出すんだ。兵庫県はこれからも、どんどんスギ・ヒノキを植えていきます」と係官が激怒されたことを鮮明に覚えています。本当は、中学生の発言は表彰に値する発言だったのにと、恨み節の一つも言いたくなります。

 

熊森も設立以来一貫して過剰人工林の縮小と天然林化を訴える一方、自らもお金を出し合って天然林再生を実践し続けています。

目で見ればわかることであっても、数量化されたデータがないのは科学的ではないとして私たちの訴えを一切受け付けようとしてこなかったのが、これまでの行政の一貫した科学的?姿勢でした。反省していただきたいと思います。

 

今回、農林水産省が、自ら数量化したデータを出されたのですから、かくなる上は、過剰な需要予測をもとに造ってきた人工林を、一刻も早く自然林に戻してください。

私たち大人の責任で、人間、そして多くの生き物たちがこの国で生き残れるようにしておかねばならないのです。

山口県下松市の住宅街 麻酔銃で捕獲したクマを殺処分 熊森山口県支部長が県庁を訪問

5月21日、山口県下松(くだまつ)市の住宅街にクマが現れ、民家に逃げ込んで殺処分されたというニュースが流れました。

 

5/21 毎日新聞デジタル:https://mainichi.jp/articles/20180522/k00/00m/040/162000c

この件に対して、熊森山口県支部長が県の自然保護課に駆けつけ、担当者と直接お話をしました。

 

熊森山口県支部長が県の担当者に訴えた内容

①、今回のクマは、人間に対して何の危害も加えていません。本当に殺処分されなくてはならなかったのか疑問です。今回行政がとるべき対応は、捕獲したクマは放獣すべきだったし、今後も同様のことが発生したらクマを山に返してあげてほしいです。

 

②、山口県のクマ生息地は山奥まで野生動物の食糧にならないスギやヒノキの人工林でいっぱいです。クマが人里に出てくるのが困ると言ってもクマの生息地にクマが生息できる環境がありません。

どうか、奥山のスギやヒノキの人工林を広葉樹林に戻していってほしいです。生息地がなければ、クマは山では生きてはいけません。

 

クリックすると大きくなります。

熊森本部から

熊森本部も山口県の担当者に電話で問い合わせました。下松市で捕獲されたクマは、体長115cm、オス、2-3歳くらいの若いクマだったそうです。

経験のない若グマが、山から降りてきて、車や人間に恐怖心を抱きながら逃げまわっていたと思います。たまたま逃げ込んだ先が家の縁側だったというだけで、何も人間を襲ってやろうなんて気はなかったはずです。

 

日本は、行政が生き物の命を大切にしないおかしな国になってきたと思います。

この行き着く先は、自然破壊の拡大と人間社会の崩壊です。

熊森は、どこまでも生き物の命を大切にする国をめざして声を挙げ続けていきます。

殺さなくても良い命を奪うことは犯罪です。

 

 

 

仙台市倉庫にいたクマ、麻酔銃で捕獲して檻に入れた後、射殺 なぜ放獣しなかったのか 熊森が抗議

6月6日、仙台市の日本郵政の倉庫内に1頭のクマが入り込み、麻酔銃で捕獲された後、殺処分されました。

 

熊森本部は、仙台市の担当者に、なぜ放獣できなかったのか、電話で聞き取りました。

担当者は、人身事故の危険性が高かったためにやむ終えなかったと答えました。

しかし、

クマは麻酔銃を向けても無抵抗で、人間に牙や爪を向けたりしなかった。

体長117cmで体重が36㎏しかない小柄なクマだった。

ということです。

 

このことを知った宮城県のクマ生息地に住む熊森会員が、「麻酔をかけられ眠っているクマに銃を向けるなど許せない」として、すぐに、仙台市の担当者へ電話を入れてくれました。

 

宮城県の熊森会員が仙台市に訴えた内容

●麻酔をかけて捕獲をしたところまでは、良い。しかし、その後なぜ殺処分なのか。

●仙台市内でも奥羽山脈の山奥へ行けば、まだ豊かな森が残っていてクマたちが棲んでいる。近くには民家もないし、簡単に放獣できるではないか。

●どうしても放獣ができないと言うのなら、捕まえたクマを仙台市で飼ってほしい。毎日食べものを与えて、掃除などの世話をしてみたら、クマを容易に殺処分することなんてできなくなるはずだ。

 

市の担当者は本部が電話をした時には謝りませんでしたが、この会員には、「命を奪ってしまって申し訳なかった」と言われたそうです。

地元の会員が、クマの命も大切にしなければならないという声を行政に届けてくださった効果は大きいと思います。

 

仙台市には、今回のクマ捕殺の件で、どうして助けてやれなかったのかという声が多く届いているそうです。

声を届けてくださったみなさん、ありがとうございます。

 

 

 

 

利尻島のヒグマ「そっとしておいてほしい」北海道庁にくまもりが要望書提出。

6月7日付けの朝日新聞デジタルに、利尻島のヒグマの今後の対応について、捕獲も検討という記事が載り、熊森はあせりました。ヒグマ放獣体制が全くない北海道では、捕獲後は100%射殺するからです。

 

朝日新聞デジタル(6月7日)https://www.asahi.com/articles/ASL6635W6L66IIPE003.html

 

熊森本部はすぐに北海道稚内総合振興局と利尻富士町の担当者に電話をしましたが、会議中ということで出られませんでした。

利尻富士町役場で利尻のヒグマ対策会議が開かれ、道(宗谷振興局)、利尻富士町、利尻町、環境省稚内自然保護官事務所、稚内警察署、宗谷森林管理署の6者で話し合いが行われていたのです。

 

熊森本部は、このクマが捕獲(=駆除)されないよう、北海道のヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生(北海道野生動物研究所所長、日本熊森協会顧問)に電話をし、先生の見解を聞いてみました。

先生は、捕獲や駆除はすべきではなく、調査のためにドローンなどを使ってクマを追いかけることも避けるべきで、静かに見守るべきということで、私たちと同じ見解でした。

さっそく、熊森本部から北海道の高橋はるみ知事あてに要望書を提出しました。

クリックしたら大きくなります。

 

この日の利尻ヒグマ対策会議では、

「クマの捕獲や駆除はせず、引き続き島民や観光客にむけて警察・町・環境省でクマの注意喚起をしていく」

ということが決まったそうです。マスコミに、捕獲を考えているなど言ったことはこれまでないということでした。

道や町は、自動撮影カメラを設置し、このクマの姿をとらえようとしています。

 

利尻富士町役場には、このヒグマを捕獲したり駆除したりしないでほしいという声が多数寄せられているということでした。

声を届けてくださった皆様、ありがとうございます。

熊森本部は、今後も、利尻島のヒグマがどうなるか注目していきます。

 

 

 

 

 

 

林野庁作成「森林経営管理法案」、5月25日参議院を通過し成立

(熊森解説)

今回の法案は、表向きは「林業の成長産業化」と「森林資源の適切な管理」のためとなっている。

 

しかし、林野庁の本心は、昨今の豪雨による放置人工林の山崩れの頻発化を見るにつけ、戦後の拡大造林政策の失敗を思い知らされ(林野庁は絶対に政策の失敗を認めようとしないが)何とか崩れやすい放置人工林を一気に消し去りたいという焦りではないだろうか。

 

林野庁の発表によると、戦後造林された民有林の人工林のうち、1/3は、管理できており、2/3は、放置されて大荒廃しているということである。これまでも、人工林の7割が放置され大荒廃していると林野庁が発表してきたことと整合性がとれる数字ではあるが、ゆゆしき実態と言わざるを得ない。拡大造林政策により、日本の広大な山林が大荒廃したのである。

 

この放置人工林の半分、つまり全人工林の1/3は、伐期が来ており伐り出し可能な場所にもあるので、森林環境税を使って林業会社や森林組合に間伐ではなく皆伐(主伐)してもらうことにしたのだそうだ。しかし、一気に各地で主伐をし始めれば、国会の議論でも問題視されていたが、材の価格低下や今後の人工林の林齢の偏りなど、弊害が出るのは明らかである。間伐も導入しながら、少しずつずらして主伐をしていくべきであろう。

 

問題は、放置人工林を皆伐した跡をどうするかである。また以前と同じように1ヘクタール3000本のスギ・ヒノキ・カラマツの密植針葉樹単相林を指導するなら、50年後再び同じ状況に陥らざるを得ない。

 

どのような林業をめざして再造林するつもりなのか、林野庁に電話で問い合わせたところ、市町村に任せるということであった。

 

崩れにくい林業地、環境に配慮した林業地、保育に人手がかかりすぎない林業地とするためには、1ヘクタール当たりの苗木数を減らし、針広混交林にするなどの新手法が必要であると熊森は考える。

 

また、これから人口は確実に減っていくし、3軒に1軒は空き家という時代が来る。林業が建材目的でなくてもいい訳で、パルプ用、バイオマス発電用など、海外からの木材を輸入しなくていいように、多様な林業を展開していくべき。このあたりが今回の法案でどうなるのか、さっぱり見えない。

 

さて、放置人工林の残り半分、つまり全人工林の1/3は、林業経営に適さない森林として、「林野庁法案概要」によると、自然に近い森林(複層林化等)に誘導するとある。

 

今回、奥地であったり急斜面であったりして、林業に向かない場所まで人工林にしてしまったことを、林野庁が自ら認めたわけで、熊森としては、この点を大きく評価したい。

 

林野庁に電話をして、具体的にどのような方法で自然に近い森林に誘導するのか訊ねたところ、間伐するということだった。これではだめだ。

 

地域によって違うが、例えば兵庫県で実験した結果、均等に間伐する定性間伐ではスギ・ヒノキ人工林は自然林に戻らない。広葉樹の芽生えや苗は、やがて樹齢の高いスギ・ヒノキの成長に負けてしまうため、高齢人工林が誕生するだけである。自然林化には、皆伐、列状間伐、群状間伐などが必要であることを伝えたが、これも市町村に任せるという答えだった。

 

熊森は、生物多様性保全機能の低下や水源涵養機能の低下、災害多発等を見るにつけ、奥山全域、尾根筋、急斜面、山の上1/3、沢筋の5か所を、花が咲き実がなり生き物たちが暮らせる広葉樹を主体とした自然の森にもどすべきだとかねてより訴えてきた。

今回の森林環境税の使い方によっては、一気にそのチャンスが到来することも考えられる。

複層林化という言葉からは、針葉樹だけの複層林化がイメージされる。そうではなく、自然の広葉樹林に誘導する、天然林に誘導するなど、イメージをはっきりさせて、今後、市町村に伝えるべきである。

 

熊森はこの機会に、署名を展開するなどして、森林環境税を使って林業に向かない山、林業に使ってはならない山を、自然林・天然林に戻そうという声を国中に広げていきたい。

 

今後の日本の林政は、国が東京から一律指導するのではなく、江戸時代のように諸国に任せる方向だということだ。これはいい方向だと思う。

国有林の放置人工林も、一刻も早く同様に処理していってほしいと願う。(完)

 

 

<参議院HPに掲載されている森林経営管理法案要旨>

 

熊森から見た「森林経営管理法案」3月6日閣議決定、4月19日衆院通過、現在参議院で審議中

林野庁が出してきた重大な法案が、今国会で審議されています。

残念ながら、現在の状況ではこの法案に関心を持っている国民は、林業者以外にはほとんどいないと思います。

森林経営管理というのは、林業のことだと思ってしまうからです。

 

実は、この法案は、この国の水源の森、生物の多様性、国土のグランドデザインを大きく変える、重大な法案です。

しかし、99%の国民は、そんな法案が国会で審議されていることすら知らないのではないでしょうか。

マスコミが大きく取り上げないからです。

一般国民は、マスコミが騒いでくれないと気づきませんから、マスコミのみなさんは使命感を持って、国民に今どの問題を大きく伝えるべきか、判断していただきたいです。

 

林野庁の「森林経営管理法案」の趣旨は、まとめると以下のようになります。

林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図るために、

①山主に、経営管理の責務を持ってもらう。

②経営管理ができない山主の山は、市町村が経営管理を行うか、意欲のある林業経営者に委託する。

 

 

「森林経営管理法案」は、2019年度から実施されることになっている国民一人1000円徴収、年間620億円の森林環境税の前提となる法案で、「戦後林政の大転換」と呼べるものです。

戦後の拡大造林政策で造りすぎた人工林の材が売れずに延々と放置されて内部が大崩壊、水源涵養機能、生物多様性機能、土砂災害防止機能など、森林の持つあらゆる機能が低下し、もうどうしようもないところまで行って行き詰まってしまっている現状を大転換しようという訳です。

 

AERAは、「データ捏造」疑惑が浮上した森林環境税関連法という見出しで、「森林経営管理法案」を論評しています。

 

こんな大事な問題に取り組もうという時に、「データ捏造」疑惑など、あってはならぬことです。

どういうことかと調べてみたら、林野庁がこの法案を説明するために作成した資料「林業の現状」に、森林所有者へのアンケートの結果、「8割の森林経営者が経営意欲がない」とわかったと書かれてあったそうです。そもそもアンケートには、「経営への意欲」を聞いた質問は存在していなかったのだそうです。さらに、「意欲の低い森林所有者のうち7割は主伐の意向すらない」と断じられていたのだそうです。

森林所有者などから猛烈な反発が出て、林野庁は「誤解を受けた」として、4月19日、資料の文言を修正したそうです。責任転嫁はよくありません。

 

熊森としては、林野庁がどうして今や誰の目にも明らかな戦後の拡大造林政策の失敗を認めようとしないのか、残念でなりません。

人間は神様ではないのですから、良かれと思ってしたことが失敗することもあります。

林野庁が素直に失敗しましたと認めたら、ほとんどの国民は拍手すると思います。

森林所有者が、主伐して材を売ろうとしないのは、彼らに意欲がないからではなく、材を出せないような奥地や道も造れないような急斜面に国の指導でスギやヒノキを植えてしまっていたり、材は出せるけれど人件費や運搬費がかかってかえって赤字になってしまうなど、伐採できない理由があるからです。

そんなことは、ほとんどの国民が知っていることです。

 

拡大造林政策を考え出した林野庁も、それに乗った山林所有者も、そんな政策が人目のつかない奥地で展開されていたことに気づきもしなかったわたしたち多くの国民も、みんなここで反省して、未来のために出直しましょう。

 

戦後の森林政策の一番の失敗は、山を全て林業という人間の経済活動にだけ使おうとしたことです。

生きられなくなった森の動物たちは泣いています。

花粉症の人達も苦しんでいます。

渓流釣りの人達も渓流魚が激減して怒っています。

「森林・林業再生プラン」の失敗は、日本と条件の違う国のモデルを真似ようとしたことです。

山は地方によってみんな違うのに、東京で考えた一つのモデルを全国に強要したことです。

 

山にはさまざまな機能があるのに、それを忘れて、スギやヒノキの林ばかりにしてしまったら、弊害が出るのは当然です。現在放置されている広大な人工林は、手を入れても仕方がないから放置されているのです。

 

熊森は、これらは原則として伐採して森林環境税で自然林にもどしてしまうべきだと考えます。近い将来3軒に1軒が空き家になると言われています。建材としてのスギ・ヒノキの爆発的な需要は見込めないでしょう。

自然林を再生することにより、涸れた川がよみがえり、土砂災害が減り、農家の獣害が軽減される、このような朗報を期待します。

 

さまざまなな立場の人たちが、「森林経営管理法案」

「林野庁法案概要」に、意見を述べています。

 

・自伐型林業推進協会

4月24日 問題法案が衆議院通過 「自伐」重視と環境破壊の矛盾

・日本農業新聞 5月11  日「乱伐の恐れ、山守る林家の声を 主伐推奨荒廃進む」

・日本農業新聞 5月16日現場の不安拭う審議を

 

クマ、サル、シカ、イノシシなどの大型野生動物の住む森をこの国に保全するという熊森の理念からこの法案をチェックしてみましたが、国から森林環境税を得た市町村が、民間から預かった人工林をどのように経営管理しようとしているのか具体的なことが書かれていないため、今の段階では評価のしようがないです。

 

林業は大事な産業ですから、林業が林業として成り立つしくみを林業家に作ってあげてほしいというのは、熊森もずっと願ってきたことです。

 

今後熊森は、奥山など林業に向かない場所は自然林に再生していくよう、市町村担当者や市町村議会議員のみなさんに全力を挙げて訴え続けて行きます。

 

p.s この法案によって、江戸時代の藩ごとの責任ある森林保全制度が再現される方向に進んでくれればいいなと思います。

現在、山林の境界が不明となっている場所が多くあります。その点をどうするのか林野庁に問い合わせてみましたら、現段階ではその対策はまだ考えていないということでした。

 

 

 

 

 

 

もう隠せない全国都道府県の林業公社大破綻  奥山人工林を自然林に戻し公社を廃止すべし

熊森の見解

戦後、林野庁が進めた「拡大造林政策」の失敗によって、森の動物、地元農家、林業家が、生死にかかわる大被害を受けています。

近い将来の都市の水源を壊されたという点では、都市市民もやがて被害に気づくことになるでしょう。

 

「拡大造林政策」は、元々、私たち人間が自然の恩恵を受けて初めて生きられる動物であることがわからない研究者たちが考え出した理論で、林野庁も初めは良かれと思って推進しました。

 

事ここまでに至ったのは、以前の私たちも含め、山林崩壊に気づかなかった国民、山林崩壊の実態を国民に伝えようとしなかったマスコミ、知っても声を上げなかった林野庁や全国民に責任があります。よって、膨大な税金で損失を穴埋めすることはやむをえないと思います。

 

自然を破壊して造林し続けてきた針葉樹一辺倒の人工林を、税金を投入して、奥山を元の自然林に戻してから森林公社を廃止してください。

 

自然林に戻すべき5か所       

奥山・尾根・山の上1/3・急斜面・沢筋 

 

もちろん、林業が成り立つ場所の人工林は、地元林家が林業で生活できるように配慮してから、公社を閉めるべきです。

 

 

以下は、5月6日の朝日新聞デジタル記事です。

林業公社を廃止し、森林資産を時価評価した11県

「資産2407億円」実際は99億円 廃止11林業公社

 借金で木を育て、売った収益で返済する。そんな青写真で事業を続けてきた都道府県の外郭団体「林業公社」の廃止が近年相次いでいる。これまで公社を抱えていた39都道府県に朝日新聞がアンケートしたところ14府県が公社を廃止し、うち11県が森林資産の実際の価値を回答。計2200億円の債務に対し、時価評価額は100億円弱だった。差額の多くは税金での穴埋めになる。

 

ほかに廃止した岩手、大分、京都の3府県は時価評価していないか時価を答えなかった。公社を維持している25都道県は帳簿上、森林資産の価値の合計額が債務を上回っているが、実際に木材の売却や、公社の廃止で時価評価した場合、損失が生じる可能性が高い。

 

日本は国土の約7割(約2500万ヘクタール)を森林が占め、うち約3割は国有林。その他の民有林を対象に、1960年代に多くの公社が設立された。借金で民有地に木を育てた後、伐採して土地のオーナーと収益を山分けし、借金を返すのが主な仕組みだが、木材価格が下がり、売れても利益が出にくい実態がある。

 

ただ各公社は業界団体の会計基準にのっとり、森林の価値は帳簿上、「育てるのにかけた費用と同じ価値がある」とみなしている。木を育てる経費や借金などの債務が膨らんでも、同時に森林資産の価値もその分、上乗せできる仕組みだ。実態は損失が増えても表面化しないため、対応の先送りにつながりやすい。

 

朝日新聞が森林の実際の価値を都道府県にアンケートしたところ、公社を廃止し、時価を回答したのは福井や広島、青森など11県。うち10県は2010年度以降に廃止していた。これらの公社は、債務を上回る2407億円の森林資産があるとしていたが、実際の評価額は99億円余で、4%程度の価値しかなかった。

 

公社を存続中と回答したのは兵庫や島根など25都道県で、16年度の債務総額は8437億円に達している。現行の会計ルールでは、計30万ヘクタール超の森林の価値は帳簿上、「9千億円超」あることになっている。(赤井陽介)

 

■時価で評価し、損失の確定を

宮脇淳・北海道大学教授(行政学)の話 林業を取り巻く環境の変化で、木を売って収益を上げるのが難しくなった中、独自の簿価の仕組みが対応の遅れにつながり、負担が将来世代に先送りされる結果となった。早めに時価で評価し直し、損失を確定して原因を総括するべきだ。その上で、「環境や防災のため」という公益性を明確にし、新しい森林管理の制度を考える必要がある。

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