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カテゴリー「_国会・行政」の記事一覧

「令和元年、市区町村における森林環境譲与税1年目の使途計画」を調査してみて思うこと

2019年に成立した「森林環境税・譲与税法」の付帯決議には、この税は「放置人工林の天然林化」とそのための体制づくりにも使えるという条項が入りました!

熊森のロビー活動の成果です。(既報)

 

熊森は、この付帯決議が効果を発するよう、まず、全国市区町村議会に「放置人工林の天然林化」に取り組んでいただきたいという請願書を送りました。次に、室谷悠子会長以下本部スタッフや各支部長以下支部員らが直接訪問または電話をかけるなどして、これはと思う市区町村の首長、議員、担当職員に精力的にお願いして回りました。(これまでの活動は、当協会ブログのキーワードに「森林環境譲与税」を入れて検索ください)

 

また、会員や大学生アルバイトにも手伝ってもらって、これまで数百に上る全国市区町村の使途計画調査を行いました。(大変なエネルギーを要しました!)

群馬県、東京都、静岡県、岐阜県、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、福岡県、石川県、埼玉県は、全市区町村の聞き取りを終えました。

結果、残念ながら、人工林の広葉樹林化に使おうと考えている町は、まだ例外的なわずかさでした。

日本では奥山荒廃報道がなされないため、森からの湧き水の激減や、生息地を失った野生動物たちの悲鳴に気づいていない行政マンがほとんどで、危機感がないのかもしれません。

 

以下の円グラフは、使途計画調査の結果です。

 

<令和元年、市区町村に於ける森林環境譲与税の使途計画>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都府県別の円グラフも作成済みです。せっかくの調査結果ですから、マスコミの皆さんにもデータを活用していただきたいです。

注:森林環境譲与税の使途報告は、1年後に、全国市町村によって公表されます。

 

 

熊森から

(1)税の「人口」配分比率に見直しが必要

森林がない又は少ししかない都市部であっても、人口が極端に多いと多額の税が配分されます。その結果、森林整備に使うことと限定されているこの税の使い道が思い浮かばないなど、ありがた迷惑に思っている担当部署もありました。

また、反対に、荒廃した森林は多いが人口が少ないために税の配分が少なくなっている郡部では、この程度の税額では思い切った森林整備に取り組めない。むしろ従来県が徴収してきた森林税の方がけた違いに大きく、今後も林業整備費用はこちらに頼りたいという声もありました。

現在、森林環境譲与税は、50%が「私有林人工林面積」、20%が「林業就業者数」、30%が「人口」の比率によって配分されています。

至急、税の配分比率を再検討すべきであると思います。

 

(2)都市配分税を、水源の森となる郡部の市町村に回す

当面は、都市部に過剰に配分された今回の森林環境譲与税を、その都市の水源の森がある川上の郡部市町村の森林保全に一定量回すことを、熊森は提案しています。

 

(3)いまだに森林整備=林業整備という認識の市町村

熊本県の代々の林業家であった平野虎丸くまもり顧問は、森林保全と林業整備を完全に分離しないかぎり、日本の森は再生しないし守れないと主張されています。

 

これまで我が国における森林整備予算は、林業だけに使われてきたと言っても過言ではありません。(経済第一、人間至上、自然生態系無視、森林で暮らす生物無視)

今回の調査で、いまだ多くの市町村が、森林整備予算=林業整備という発想から抜け出せていないことがわかりました。

平野顧問は、そもそも、業というのは、農業、漁業、工業、商業、全て民間がやることであり、どこの省庁に、業に取り組んでいるところがあるというのか。民間の林業者のためにも、国土保全のためにも、林野庁は、林業から撤退して、本来の行政としての仕事だけに取り組むべきとも強く訴えておられます。

 

 

結構多くの市区町村担当職員から、都道府県や林野庁の使途説明会に、「人工林の広葉樹林化」の使途などなかったという声がありました。しかし、林野庁に問い合わせると、きちんと説明したということです。今後、都道府県や林野庁には、この税が広葉樹林化にも使えることを印象付ける積極的な説明をお願いしたいです。

 

より多くの市区町村が、森林環境譲与税を林業だけではなく人工林の広葉樹林化にも使ってくださるように、熊森は今後も粘り強く全国市区町村にアタックしていきます。

みなさんもぜひ、お住いの市区町村長さんや担当職員に声を届けてください!

 

<スギ・ヒノキ人工林の広葉樹林化に取り組もうと思われるみなさんへ>

広葉樹林に戻すにはコツがあります。長年取り組んできた熊森がノウハウを全てお伝えしますので、お知りになりたい方は、当協会までご連絡ください。

 

森造り先進市事例紹介 

(2020年3月30日発行くまもり通信102号特集より)

「豊田市に学ぶ森づくり」 NO 1 、 NO 2、 NO3 

 

 

林野庁「森林・林業白書」の目標とする森林の状態を見て絶望です 熊森の見解を知りたいです

(以下、会員からの手紙)林野庁の「森林・林業白書」を読んでみました。「森林・林業基本計画」における森林の有する多面的機能の発揮に関する目標を見て、国が今後、天然林をますます減らそうとしていることを知り、絶望的になりました。これでは日本の野生動物たちは生き残れません。熊森の見解を教えてください。

以下の表は、令和元年林野庁「「森林・林業白書」から

 

<林野庁の回答>

 

奥山原生林に手を入れることは今後もうありません。今残されている奥山天然林は、今後も手つかずで保全します。

 

天然生林というのは、原生林だけではなく、放置された里山や竹林も含まれます。要するに人の手が入っていないということです。

 

この表が示しているのは、放置されて密生している里山を、昔のような野生動物との緩衝帯になるように間伐したり、広がり過ぎた竹林を伐採するなどして、里山整備を行っていきますという意味です。その結果、すっきりした広葉樹林が誕生します。人の手が入って様々な年代の木が育っていれば、全て育成複層林です。

複層林というと、一般的には、林業用に年代の違うスギやヒノキを植林した人工林のことと思われますが、このような広葉樹だけの里山の育成複層林もあるわけです。

この計画で今後、我が国の広葉樹林面積が今より減ることはありません。

荒れた里山に人の手が入るんだな、育成単層林(スギやヒノキだけの一斉植林)がどんと減って、年代が違うスギ・ヒノキの複層林や針広混交林、または広葉樹の複層林を増やそうとしているのだなと読み取ってください。

 

熊森から

熊森もかつて、この資料を見たとき、ぎょっとして林野庁に説明を求めました。

お役所言葉は、一般国民には本当にわかりづらいです。「森林・林業白書」の中に、将来の森林想像図が出てきますが、その絵は林業が前面に出ており、将来もスギやヒノキの人工林でいっぱいです。

熊森としては、説明と絵が一致していないとして、林野庁に改善を求めているところです。

 

熊本県在住の平野虎丸氏(熊森顧問82歳)もずっと指摘してこられたように、森林保全と林業は全く別物なのです。戦後、林野庁が林業に乗り出したことで、森林保全作業と林業整備作業をごちゃまぜにしてしまった。これが、わかりにくさの原因です。森林整備と言いながら、実際に林野庁がやっているのは林業整備であることがほとんどです。きちんと分離して書くべきです。

ちなみに、平野氏は、林野庁は一刻も早く林業から撤退すべきであり、日本の森や野生動物を守るためには、他の省庁のように行政機能一本に戻るべきであると主張されています。

丸尾県議が「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」の公開を求め質問してみた結果

兵庫県当局の答弁は誠実なものではありませんでした

 

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴い、兵庫県にある熊森本部もテレワークに切り替えています。

これまで忙し過ぎて書けていなかったことを徐々にアップしていこうと思います。

 

まず初めは、兵庫県鳥獣対策課と兵庫県森林動物研究センターが主導して開催している「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」を、当局が開催場所・日時・内容に至るまで、全て徹底的に非公開としている問題です。

 

3月11日の兵庫県予算特別委員会農政環境部会で、丸尾牧兵庫県議(尼崎市選出)が質問してくださいました。

 

<質問の大意>一昨年、兵庫県が主導して近隣府県に呼びかけて発足した「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」に関して、協議会・科学部会の委員名と会議・議事録・プログラミングデータなど根拠の資料を公開すべきだ。

兵庫県のツキノワグマ推定生息数の算出法は問題だらけで過大推定になっていると日本福祉大学の山上俊彦教授(統計学)が指摘されている。参考人として科学部会などにお呼びして、ご意見をうかがってはどうか。

 

兵庫県鳥獣対策課課長の答弁:委員ご質問の広域協議会の会員と議事録におきましては、すでに公開をしている所でございます。また、科学部会の委員と議事録におきましても、今後公開する予定としております。協議会及び科学部会の会議の公開につきましては、原則公開を行おうと考えておりますが、委員の率直な意見交換などを阻害する場合においては、非公開ということを考えております。(兵庫県議会インターネット中継録画からそのまま文章化)

 

この委員会の後、丸尾議員から熊森に「山上俊彦教授の招へいは拒否されましたけれど、広域協議会は今年から公開されますよ。まず一歩前進です」という喜びの連絡が入りました。

 

熊森は念のため、後日、兵庫県庁の鳥獣対策課に確認してみました。

 

熊森:広域協議会の科学部会の委員名や議事録は、どこに公開されているのですか?インターネットで探し回ったのですが、見当たりません。

 

鳥獣対策課:出していません。

 

熊森:先日の丸尾議員の質問に対して、課長さんは「すでに公開している」と答えられていますが。

 

鳥獣対策課:情報公開請求があれば、公開しようかなという意味です。

 

熊森:公開されないから、情報公開請求をするのでしょう。そういうことなら「すでに公開をしている所でございます」は、虚偽の答弁だったということになりますよ。

 

熊森:今年から広域協議会や協議会の科学部会が公開されることになったんですよね。傍聴もOKですよね。

 

鳥獣対策課:非公開です。傍聴も不可です。

 

熊森:科学部会の委員のお名前は教えてもらえるのですよね。

 

鳥獣対策課:部会の委員が教えてもいいと言った場合の話で、いいと言わなければ公開できません。

 

熊森:今後公開する予定としておりますと答弁されたら、誰だって公開されると思ってしまいますよ。

 

鳥獣対策課:もう一度、(議会の)課長の答弁を一言一句確かめてください。公開するとまでは言っておりません。公開は委員の率直な意見交換を阻害する恐れがありますので。

 

熊森が丸尾議員に「鳥獣対策課に確かめると今年もまた非公開だそうです」と伝えると、丸尾議員は絶句しておられました。

 

熊森から

兵庫県に問いただした結果、要するに県は、今年も広域協議会を非公開のまま続けるのだということがわかりました。

しかし、県議会をインターネット経由で傍聴し質疑のやりとりを聞いた一般の県民はみんな、丸尾議員と同様に「今年から公開されるのだ」と受け取ってしまったに違いありません。

 

兵庫県の行政担当者の対応は、まるで公開しているかのごとく受け取れる答弁を議会の場ではしておいて、疑問の声が上がったら、委員の率直な意見交換などを阻害する恐れがある場合は非公開であると最後に付け加えてある。よく聞けと、まるで私たち県民に非があるかのように持って行くやり方です。

 

このような県担当者の答弁は、世にまやかしと言われているものです。私たち県民をはじめ、県民の信託を受けて選ばれ質問権を行使してくださった丸尾議員に対しても失礼な答弁であり、県民全体の奉仕者であるはずの行政担当者としてあるまじき姿勢です。

 

広域協議会は、今年度も多額の私たちの税金を使って開かれる会議です。それなのに、兵庫県の行政担当者や、兵庫県の政策を決めている森林動物研究センターの研究員は、国家機密でもあるまいに、どうしてここまでツキノワグマに関する会議の内容を隠そうとするのでしょうか。

自信がない?

科学的と称してきた発表内容に、実は科学性がない?

県民に知られたらまずいことがある?

 

民主主義の社会は、十分な情報公開があってこそ初めて成り立つものです。みんなで情報を公開しあって他者の意見も聞く。この姿勢がない行政担当者や研究者は、失格だと思います。誰もお互い、神様のような完璧な人間ではないのですから。

 

この日の農林水産部会で、農林水産部長が「世界に誇る兵庫県森林動物研究センター」などと、兵庫県森林動物研究センターの研究者のことを絶賛していました。この発言にはさすがに熊森も、耳を疑いました。

 

3年ごとに部署替えがある行政担当者には専門知識がありませんから、難しい数式や難しい専門用語を並べたてる専門家のいうことを信じるしかないのだろうと思います。しかし、一つのものだけを絶対的に信じきってしまう姿勢はとても危険だと思います。

 

以下は、現在進行中の新型コロナウイルス対策について、インターネットから拾ったコメントです。

「専門家の方々は医師免許があっても普段は診療しませんから。こういう方が主導的に感染症対策を決めるのは、暴走するリスクすらあると思います。テクノクラート(科学者・技術者出身の政治家・高級官僚)が主導権を握ると、しばしば暴走して第2次世界大戦のようなことになる可能性もありますよね。専門家に対応を丸投げするのは非常に危険なことだと思います。医療現場の判断を優先すべきでしょう。」

 

このことは、あらゆる分野に言えることではないかと熊森は思います。どんな問題に対しても、幅広い人の知見を集める、衆知を集めることが必要なのです。

熊森は設立以来23年間、徹底した現場主義で兵庫県のクマ問題に誠心誠意取り組んできました。審議会にしろ、広域協議会にしろ、兵庫県が熊森を排除しようとし続けている理由が全くわかりません。(以上)

 

9月8日、兵庫県選出の国会議員が、荒廃した兵庫の奥山を視察

熊森本部は、国会議員のみなさんに、戦後の拡大造林政策で荒廃した日本の奥山を、現地でご自分の目で見ていただきたいとずっと願ってきました。現場で、五感で体感しないと、野生動物たちが悲鳴をあげているわけがわからないからです。

 

 

都市部から奥山まで視察に行くには、往復と現地滞在で、丸1日を要します。

国会議員のみなさんは超多忙です。

これまで熊森と奥山に入ってくださったのは、視察当時、兵庫県選出の国会議員だった赤松正雄氏と、石井登志郎氏のお二人だけです。

 

うれしいことに、この度、兵庫県選出の片山大介議員が、9月8日の丸1日を開けて、室谷悠子熊森会長らと共に兵庫県の奥山に入ってくださいました。

熊森本部の案内で奥山荒廃をご自分の目で見られた3人目の国会議員の誕生です!

 

この日、午前9時、車で神戸市を出発し、兵庫県北部の人工林地帯に向かいました。

人工林地帯に入ると、さすがに片山議員も「よくここまで植林しましたねえ」と、人工林率の高さに驚いておられました。

これまでも見て来られた風景だと思いますが、説明がないと、山を見ているようで見れていなかったのだろうと思いました。

 

この日は、9月に入ったというのに猛暑日。片山議員は熊森本部スタッフの説明を聞きながら、人工林、広葉樹植樹地、天然林と湧き水などを、噴き出す汗をぬぐいながら山に入って視察し続けてくださいました。また、地元リーダーの話を聞いたり、地元の人達と言葉を交わしたりもしてくださいました。

 

片山議員は、翌朝、東京での会議に出なければならないので、夕方まで奥山の視察を続け、夜の新幹線で東京に向かわれる予定でした。

ところが、あいにくこの日の夜、台風15号が関東地方を直撃する恐れがあるという情報が入り、新幹線が計画運行を発表。新幹線が動いているうちに東京に向かうには、午後3時に姫路駅に着いていなくてはならないことになりました。

残念ながら、最後に見ていただく予定だった若杉天然林の視察を中止せざるをえませんでした。若杉原生林は、また別の機会に見てくださるそうです。片山議員、本当にありがとうございました。

 

百年先千年先を見越して、今取り組まねばならない日本の奥山水源の森の緊急保全活動。このような私たちの市民活動を支援したところで、1円にもならない上、生きている間は評価もされないし、票にもつながらないと思います。

それでもいいので、この国の未来のために動きたいと時間を割いてくださる国会議員が目の前に現れました。国民のひとりとして、久し振りになんとも言えないすがすがしくて幸せな気分にひたることができました。

 

片山議員に続いて、かつてクマたちが多く棲んでいた奥山水源の森の荒廃実態を見ておこうと思ってくださる国会議員さんや地方議員さんがおられたら、ぜひ、当協会にお知らせください。経費は、当協会の会員の会費を使わせてもらいますので、無料です。

 

熊森事務所に帰り、今日撮影した写真を使ってさっそくこの日のブログを書こうとしたのですが、不注意で画像を消去してしまいました。がっくりしていましたら、片山議員が東京に向かう新幹線の中で書いてくださったと思われるツイッターが、片山議員のカメラに記録された写真と共にアップされていました。

 

片山大介議員のブログ>も、ご覧になって下さい。

 

 

国有林管理経営法改正、参院農林水産委で可決 

 付帯決議に「広葉樹林化」の言葉が入る

 

上記法案は、5月22日から週2日ペースで5日間、計約13時間30分にわたるに参議院での審議を終え、本日2019年6月4日に農林水産委員会で採択されました。明日本会議でも採択の予定。

日本熊森協会は、国有林でこそ、天然林化を率先して進めてほしいと訴えていました。

参議院農林水産委員かでの採決の際、附帯決議で、

「木材の安定供給・造林・保育・間伐等の施業の効率化、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要不可欠な路網整備、鳥獣被害対策、立地条件等に応じた広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するとともに、所要の予算を確保すること」(第10項)

という条項がつき、衆議院の附帯決議では入っておらず、私たちが求めていた「広葉樹林化」という文言が入りました!

みなさん本当にありがとうございました。

 

その他にも、附帯決議の前文で「昨今、頻発している自然災害への対応や、地球温暖化防止に対する国民の強い関心等も踏まえ、国有林野の有する公益的機能は、より一層十全に発揮されることが求められている」と指摘し、「生物多様性の保全や災害防止等の森林の公益的機能を重視した管理経営を一層推進していくこと」(第1項)、企業に長期に亘る大面積の伐採権を与える「樹木採取権」の指定にあたっては、国有林の「公益的機能の維持増進に悪影響を及ぼさないよう、森林の特性に応じたゾーニングを踏まえ、樹木採取区の指定を行うこと」(第4項)といった、災害防止、水源保全、野生動物たちの生息地としての国有林の役割を重視し、大規模な伐採が、こういった機能を阻害しないように求める条項が入りました。

 

この間、インターネットで審議の様子を見続けているうちに、吉川農林水産大臣や牧元林野庁長官をはじめ、質問に立ってくださった国会議員の方々、表には出ないけれど、裏で一生懸命質疑応答を支えられたみなさんに、すっかり親近感を抱くようになりました。心からご苦労様でしたと、今は労をねぎらって差し上げたい気持ちでいっぱいです。

 

国会審議を見ていて、国会議員は大変だなあとつくづく思いました。これだけ専門性の高い議論を人前できちんとした言葉で短い時間内に語ろうと思ったら、特別高い知性と猛勉強が必要です。改めて、なんだか、国会議員のみなさんが、すごく偉く思えてきました。

 

どの意見もそれなりに一理あります。議員のみなさんが自由に発言されているのを見ていると、日本はやはりいい国だなあと思わざるを得ません。政治はここまで進歩したのですね。

 

本当は、5月中に採決してしまう予定だったようですが、日本熊森協会、自伐型林業推進協会、東京パルシステムなどが、この法案に対して声を挙げたためか、理事のみなさん(堂故委員長、上月議員、田名部議員、紙議員)の叡智で審議日程が1日加算されたようです。超多忙な国会なのに、国民としては感謝です。うれしいです。

 

団体の要望

●日本熊森協会

国有林内の人工林は232万ヘクタール。一方、戦後の拡大造林政策によって皆伐された奥山原生林の面積は628万ヘクタール。自然保護団体である日本熊森協会としては、豊かな森を造るクマなどの大型野生動物が棲める水源の森を取り戻したいので、国がこの度、民間企業に頼んで国有林内の人工林を皆伐するのであれば、伐採跡地にはまたスギやヒノキを植えるのではなく、原則として、植えない森造りで全てを天然林に戻してもらいたいと願っています。

広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するという言葉が付帯決議に入ったことは、室谷悠子会長らによるロビー活動の成果だと思います。

 

●自伐型林業推進協会

皆伐と再造林のサイクルでは一時的な収益確保にしかならず、不足している林業人材の育成は極めて困難である。大規模山林分散型の多間伐林業を推進すべきである。(熊森も全く同感です)

 

5月24日 元農林水産大臣政務官に面会

「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」について

 

衆議院の審議では、<立地条件等に応じた針広混交林化の多様な森づくりを推進する>という付帯決議を付けていただきました。

 

日本熊森協会としては、もう一歩踏み込んで、国有林内の人工林伐採跡地の広葉樹林化(ベター)又は天然林化(ベスト)を進めてもらえるように訴えています。

なぜなら、自然界では、気候や標高によって、自然状態が広葉樹林であったり、針広混交林であったり、針葉樹林であったりします。よって、熊森のめざす森林を一言で表すには、「天然林化」という言葉が最適なのです。

 

  

広葉樹林         針広混交林           針葉樹林

 

・戦後、皆伐した奥山原生林の面積628万ヘクタール

(民族の大失敗、近い将来水源枯渇の恐れ)

・国有林内の人工林面積232万ヘクタール

・造りすぎたためなどの理由で針広混交林に戻す国内人工林の面積343万ヘクタール(林野庁発表)

→ (熊森の主張)ならば、国有林内の人工林面積から、まず天然林に戻すべき

 

5月23日夕方、自民党農林水産委員会理事の上月良祐議員事務所から、お会いできるという連絡をいただき、森山まり子名誉会長が急遽、上京しました。

 

参議員議員会館

 

上月良祐議員と森山熊森名誉会長

 

上月議員は、茨城県選出で農林水産大臣政務官をされていたことがわかりました。「これから人口も減っていく一方ですから、使わなくなった山や田畑は、自然に戻していけばいいと個人的には思っています。」と、言われました。熊森の主張を誠実に聞いてくださったことに心から感謝します。

記念写真を撮ってもいいですかとお聞きすると、天然林化を訴える熊森の資料をさっと手に持って、これと一緒に撮りましょうと言われ、うれしかったです。

この法案に関する審議時間は少ししかないようですが、引き続き、審議を見守っていきたいと思います。

 

参議院農林水産委員会議員への配布物第2弾

 

①国有林内では林業をせず、天然林にもどす要望書

②植林ではなく植えない森造り(=天然更新)を

 

赤松顧問の投稿「豊かな森を取り戻すために」が神戸新聞全県版に

神戸新聞全県版に掲載! 2019年5月26日(日)

日本熊森協会は、熊森運動を理解してくださる議員のみなさんに、党派を超えて個人として応援していただいています。

赤松正雄元衆議院議員に応援していただくようになって、20年です。

この度、神戸新聞オピニオン(7ページ)の、「見る思う」というコーナーに、赤松顧問の投稿文が掲載されました。すばらしいことだと思います。

5月26日神戸新聞7面

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今国会で「国有林野管理経営法の一部を改正する法案」が審議されていますが、放置人工林を伐採することも大切だが、伐採後どのように森づくりがなされるのかが重要であるという趣旨の投稿文です。日本熊森協会は、まさにその通りだと思います。

また、なぜ、日本熊森協会の主張を理解するようになられたのかも書かれています。

ぜひ多くのみなさんに読んでいただきたいです。

「豊かな森を取り戻すために」赤松正雄

 

読まれた方は是非ご感想を送ってください。赤松顧問に届けます。

 

 

 

国有林野の管理経営法改正案に熊森が要望書 

2019年5月15日も、国有林野の管理経営法改正案に対する質疑が、農林水産委員会で続行されました。

今回の法改正は、国有林内の手入れが行き届いた収益の上がる人工林を、とりあえず大手の10社に600ヘクタールぐらいずつ50年にわたる伐採権を与え、伐採させてあげるというものです。国民の税金を使い、1ヘクタール当たり220万円のお金をかけて手入れしてきた優良人工林が対象です。

マスコミのみなさんにこの法案を取り上げていただき、国民の声を聞いてもらいたいです。

 

熊森作成資料 (Wクリックで大きくなります) 国有林内の人工林

 

本日は、午前午後と5時間以上ぶっ通しの審議でした。国会議員のみなさんも、大変だなあと思います。

インターネット中継で、4月25日、5月8日・9日・14日・15日と審議を見てきましたが、問題点を真剣に調べ追究されている議員さんが何人もおられることがわかってきて、うれしくなりました。

こういうのを見ていると、その国会議員や官僚のみなさんの人間性やレベルが、一目瞭然でわかりますね。

 

5月15日インターネット中継 衆議院 農林水産委員会

(Wクリックで大きくなります)

 

熊森が出した要望書です。熊森要望書

 

今回の法改正は問題がありすぎて、まだまだ不明部分も多く、国会中継を視聴している一国民としては、継続審議が必要だと感じます。

数の力で、さっさと採決してしまわないように願いたいです。

 

質問内容をネットにあげている議員が見つかりました。4月25日本会議質問分

衆院本会議国有林野管理経営法改正案緑川議員質問(予定稿)

なかなか鋭いです。問題点が良くわかります。

他の議員さんも、こういうのをネットに上げて下さったら、国会中継を見る国民が増えるのではないでしょうか。

改正法案衆院審議始まる 国有林内の人工林伐採跡地は未来の林業のためにもせめて針広混交林に

2019年5月8日から衆議院農林水産委員会で、「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」の審議が始まっています。この法案のことは3月2日のブログでも紹介しました。

5月9日の議員のみなさんの質疑のようすは、インターネット(衆議院3時間3分)で見れます。(長時間ですが、とても面白くて参考になりますので、可能な方は是非ご覧になってください」)

 

日本に住む私たち全生物の大切な財産である国有林の今後50年の姿が決まる大切なターニングポイントです。多くの国民の皆さんに関心を持っていただき、声を上げてもらいたいです。

 

 

林政審議会(平成31年2月20日)の配付資料:林野庁という資料によると、わが国の森林面積のうち3割にあたる761万ヘクタールが国有林で、そのうち3割にあたる232万ヘクタールが戦後の拡大造林政策で植えられたスギ・ヒノキ・カラマツを中心とした針葉樹の単一人工林です。

 

林業不適地とされる急傾斜地や林道から離れた奥山にあるものを除く人工林が、今回の伐採対象地で、50年の伐期を迎えているそうです。

 

広大な面積にびっしりと植えられたスギの人工林

 

この法案は簡単にいうと、「林業の成長産業化をめざす」という名目で、国民の膨大な税金を使って国有林内で国が育ててきた人工林の樹木伐採権を、「意欲と能力のある林業経営者」と呼ぶ、実質、大手の林業会社に数百ヘクタールの人工林を最高50年間提供するものです。こまごまとした私有林の人工林と違って、国有林の人工林は広くまとまっており、道路も入っているので、材を搬出しやすく有利です。しかも、伐採後の再造林は国が経費を持ち育林もしてくれます。樹木を採取する前に、樹木料を国に納付しなければならないなどいくつかの制約があり、中小の地元林業会社の参加は難しいと考えられます。

 

これが林業の成長産業化を促進させることになるのでしょうか。大手素材生産会社はもうかるかもしれませんが、一から自分たちで苦労して育てた木を伐るのでなければ、ただのバイヤーであり、林業とは言えないのではないでしょうか。

国有林問題を報道するマスコミ人がまずいないので、ほとんどの国民が何も知らないうちに事が進んでいっています。

 

今後、5月14日には参考人招致が予定されているそうです。

 

私たち熊森は、今回の法案による皆伐地は、スギ・ヒノキ・カラマツの再造林ではなく、原則として以前のように天然林に戻していただきたいです。

国有林は、本来、公益のために存在するのであって、経済活動の場となる林業には使うべきではないと考えます。

どうしても林業用地にしなければならない国有林があるのなら、そこは、その山に合った針広混交林施業を施していただきたいです。

50年後、何の材を育てておけば売れるのか、誰にも予測できません。

人気の建材が、スギ・ヒノキ・カラマツに代わって、ケヤキやクリに代わっているかもしれません。

針広混交林にしておけば、公益的機能の増進はもちろんですが、未来の林業のためにもなります。

パルプ、家具材、バイオマス燃料などは、断然、広葉樹がいいです。

 

 

スギ苗を植林後放置したため、広葉樹が自生し、針広混交林になった山

 

熊森としては、急傾斜地や林道から離れた奥山にある国有人工林を放置してもらっては困ります。

材の搬出は不可能でしょうが、群状皆伐などを施し、こちらは天然林に戻していただきたいです。

 

胸がつぶれる 石木ダムに50年間反対し続けてきた地元住民たちの土地を長崎県が強制収用申請 

映画「ほたるの川のまもりびと」を、見に行きました。(現在、大阪の第七藝術劇場など各地で上映中)

なんとなく、ほたるを川に呼び戻す活動かと思って見に行ったら、全然違う内容でした。

 

 

50年前、川棚町に石木ダム計画問題が持ち上がりました。

地元住民が50年間も反対運動を続けておられます。

50年!?もう、気が遠くなりそうです。

人生のほとんどすべてを、ダム反対に費やさざるをえなかったことになります!

 

映画によると、住民は、業者によるダム工事の強行に備えて実力阻止部隊を結成し、1年中見張っています。

 

 

工事をする人は、行政からお金をもらって次々と新しく元気な人がやってきますが、地区を守ろうとする住民には、どこからもお金が出ません。その上、代わってくれる人もなく、同じ人間がずっとがんばり続けるのですから、もうへとへとだと思います。みんな年老いていきます。

想像しただけで、どんなに大変かと思います。

休みの日でも、旅行にも行けず見張りを続けなくてはなりません。

 

たとえ、どんなに意味のあるダム工事計画であったとしても、50年間も住民が立ち退きたくないと断り続けているのですから、完全に行政の負けです。

行政が最後まで残っている13家族を説得できなかったのです。

そんなところにダムを造る権利は国にも県にも市にも誰人にもありません。

もはや基本的人権を認めるかどうかの問題です。

いくら自分がいいと思っても、相手が絶対嫌だということは、してはならないのです。

これは、最低限の社会ルールだと思います。

 

行政としては、地元の人たちに、みなさんを50年間も苦しめ続けてきてすみませんでしたと謝り、反対運動に命を懸けてきた信念の住民たちを表彰すべきでしょう。

 

ところが、こともあろうに、長崎県は、国がダム事業を認定したことを盾にとって、ダムの完成で水没するおよそ9万平方メートルの土地などを国家権力によって機動隊を使って強制的に収用するための「裁決申請」を行ったのだそうです。もう無茶苦茶だと思いました。完全に、政治ゼロの世界です。

 

それにしても、小さな小川のような石木川をせき止めて、あんな大きなダムいっぱいの水などたまるのでしょうか。

 

工事会社が仕事欲しさに政治家を動かして、ダム工事を進めようとしてきたとしか思えません。

作家故森村桂さんが言われていたように、工事会社にお金をあげたらいいと思います。

50年も、彼らなりにがんばり続けたのですから。

ただし、工事は一切しないでください。

(土建業のみなさんは、国土をコンクリートで固める自然破壊工事ではなく、今後は、放置人工林の天然林化を仕事にして下さい。それなら応援します。)

 

 

みなさんも、ネットで石木ダムのことを調べてみてください。

50年前と今では、時代がすっかり変わっています。

これからはどんどん人口が減っていく時代です。

調べれば調べるほど、ここまでの無茶がこの国で許されていいのかと、胸がつぶれそうになりました。

 

熊森顧問の、京都大学名誉教授今本博健先生が、石木ダムを造る必要など全くないことを、見事、論理的に説明されています。

 

全国から長崎県知事に、もうここの地区の住民を自由にしてやってほしい。これ以上いじめるのはやめよという声を届けませんか。こんないじめを見逃して、いじめのない学校や社会など作れません。

強大な国家権力に押しつぶされようとしているこの地区の13軒の勇者たちを、全国民で支えていきましょう。

 

最近、各地で、このような国家権力による国民いじめや野生動物いじめが目立ちます。

まだ正義感を失っていない若者たちに、先頭に立って声を上げてもらいたいです。

 

国家権力につぶされそうになっている弱者たちを、人ごとだと思って黙って見すごす人たちは、本当に自己中で、弱虫だと思うのですが、みなさんはどう思いますか?

 

熊森は声を上げます。

映画の最後に登場した川原(こうばる)地区のみなさんの歌声が、今もずっと耳に残っています。

最後まで戦い続けてきた13軒のみなさんの心を思うと、泣きそうになりました。

 

 

みなさんも、長崎県知事に声を届けてください!

 

中村法道 長崎県知事 

長崎県庁 〒850-8570 長崎市尾上町3-1 電話095-824-1111(代表)

FAX  095-826-5682

 

 

P.Sちなみに、ダム賛成派の声も聞いてみようと思ってネットで調べてみると、何と、長崎県が、ダム推進動画を造っていました。

 

長崎県制作、石木ダム推進動画の感想>

偏見無しで見せてもらったつもりですが、見ただけで、その嘘嘘しいこと。

バックには大きな川棚川が流れていますが、今回のダムはその支流の小川みたいな小さな石木川をせき止めるダムで、問題をすり替えていることがすぐにわかりました。

それにしても、登場人物はみなさん、やらされていることが見え見えの演技。

お金がもらえるなら、良心や正義感を捨てる人はいつの世でもいるんですね。

 

映画「ほたるの川のまもりびと」に出て来た人たちの真実味ある発言と、思わず比べてしまいました。

反面動画として見てください。

おもしろいです。

 

改めて、人間どう生きるべきか教えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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