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富山市の事故例から:ツキノワグマによる人身事故を減らす方法

富山県で、クマによる人身事故が発生しました。

お怪我をされたお二人の方に、心からお見舞い申し上げます。

それにしても、どうして人身事故が発生してしまったのでしょうか。

このクマを生かして山に返してやることはできなかったのでしょうか。

 

<以下、報道から>

 

警察や市によると、5月17日(日)朝8時28分に「高速道路ののり面にある繁みに1頭のクマがいる」という目撃情報が入りました。

 

午前9時25分ごろ、同市石田の無職、Kさん(92)が自宅の家庭菜園で作業していたところ、クマに遭遇。驚いて転倒し、左脚の骨を折りました。約5分後に、近くの畑で農作業をしていた同市小杉の飲食店経営、Iさん(84)がクマに右腕と右脚をかまれました。2人とも県立中央病院に運ばれましたが、命に別条はありませんでした。

 

午後1時15分、クマは民家の庭に逃げ込んだところを警察官立ち合いの元、猟師が銃で射殺しました。若いメスグマでした。

 

現場は北陸自動車道の南側で、富山地方鉄道上滝線の布市駅に近く、周辺には住宅地があります。

 

聞き取り、メディア情報より熊森作成

 

クマを追う、現場関係者 北日本放放送2020.5.17より

 

熊森から

富山市の担当者に電話で聞き取ったところ、現場周辺にはクマを引き寄せるものは何もなく、どうやってそこまでクマが来たのか、経路もわからないということでした。胃の内容物は草だったそうです。

 

熊森としては、現場近くの地理的特徴から、このクマは人目に付かない時間帯に、河川敷に沿って草を食べながら山から出てきたのだろうと思います。その後、山に帰りそびれたクマは川の繁みを伝って移動していたのではないでしょうか。その際、何らかのきっかけがあって(障壁があった、あるいは人を避けたなど。ちなみに現場の近くにある富山空港は、神通川の河川敷が滑走路になっています)北陸道ののり面に出てしまったようです。一般に、ツキノワグマは、人をとても恐れています。今回のメスグマも。人に見つかって恐怖におののいたと想像できます。

 

目撃情報を得て、日曜返上で、市担当者、県担当者、猟友会、警察など皆さんが現地に駆け付けられ、クマの捜索に当たられたそうですが、クマは見つからなかったそうです。クマは、これらの人間の動きを息を潜めてそっと見ていた可能性があります。

 

捜索中も、一般市民から、クマを見かけたという情報が次々と入り続けていたそうです。

多くの人間がクマを追いかける。多くの市民が屋外にいる。この状況が人身事故を誘発するのです。

何とか改善願いたいものです。

 

このクマは、人間から逃げようと走り回った結果、次々と人間に見つかるはめになり、もうどうしていいかわからず、パニックになってしまっていたのでしょう。

 

必死で逃げているときに、急に目の前に現れた人を攻撃して逃げきろうとするのは、人もクマも同じです。こうして、また、人身事故が発生してしまったのだと思われます。

 

先進的な海外では、このような場合、行政は住民に屋内退避を指示します。全員でクマをそっと見守って、クマが逃げて帰るまで待つと聞いています。「クマ1頭のために、人間活動が制御されるのはおかしい」という考えもあると思います。しかし、人身事故を起こさず、クマの命も守るためにはとても有効なやり方ではないでしょうか。

 

奥山生態系の保全・再生に取り組んでいる熊森は、日本最大のクマの保護団体でもあります。熊森として、いつも一番恐れているのは人身事故の発生です。

ひとたび人身事故が発生すれば、人も大変です。クマはその場で殺されてしまいます。

本来、平和愛好者であるはずのクマが、マスコミによって人を襲う恐ろしい動物のような誤ったイメージに、あおりたてられて、独り歩きしてしまっています。

どうして人身事故が発生したのか。事故が起こるたびに熊森は調べ、考えます。

 

人身事故を起こしたクマは、射殺されて当然という声もあると思います。しかし、今回のクマも、人身事故など起こしたくなかったと思います。

海外のように、クマが山に帰りましたという放送があるまで人間が全員家に入っていたら、人身事故は起きませんでした。警察や行政にも責任はあると考えます。

 

このクマにいつの時点で射殺決定が下りたのかはわかりませんが、富山市は緊急の場合のために、あらかじめ3頭のクマ駆除枠を取ってあるそうです。今回のクマはこの駆除枠を使って射殺したのではなく、警察官職務執行法によって射殺したそうです。

 

富山県は、県職員が麻酔銃でクマを捕獲する体制が整備されているということで、すばらしいと思います。この体制を使って、民家に逃げ込んだクマを捕獲して山に返してやれなかったのでしょうか。

 

クマが最後に植物で覆われた民家の庭に逃げ込んだのは、人間たちに追いかけられて、どこかに逃げ込みたい一心だったのだろうと思います。銃を構えた多くの猟友会員に囲まれて、このクマはもう人身事故を起こして逃げおおせる可能性は消えていたと思われます。

 

現場で対策に当たられたみなさんは、使命感を持って頑張られたと思いますが、初めてのミスで人間の所に白昼留まってしまったこのクマを麻酔銃で捕獲して山に返してやることもできたのではないでしょうか。他生物にも思いやりある優しい社会を作っていきたいものです。

 

P.S 熊森からの質問に対して、お忙しい中で隠すことなく丁寧に答えてくださった富山市の担当者に感謝します。

 

砺波平野の散居村で、無抵抗のクマを射殺 6月25日追記

6月14日、富山県砺波市でクマが射殺されました。

中日新聞(6月15日付)

場所は、農家が1軒ごとに点在し、その家を屋敷林が囲むという、絵にかいたような美しい散居村です。
熊森本部は、さっそく市の担当者に聞き取りを行いました。

 

●砺波市農業振興課担当者

14日の午前9時頃、砺波市庄川町五カ地区の水田で、クマの足跡が発見されました。

砺波市の担当者から聞き取り、熊森本部が作成。 ※クリックすると大きくなります

 

山から約3km離れた庄川扇状地の端でクマが出ることがない場所でした。驚きました。

警察がパトロールを開始したところ、五カ地区から北西に約2km離れた荒高屋地区の散居村で、水田の畦をクマが歩いていました。クマを追ったところクマは民家の屋敷林に入りました。

民家には人がいたので、家の外には出ないようにしていただき、現地に駆けつけた猟友会と市の職員と警察で屋敷林に入りクマの捜索をしました。クマは1頭で、屋敷林のスギの木に登り始めました。近くには小学校や中学校もあり、山から5km以上離れているので追い払いはできないため、殺処分しかないという判断になりました。警職法に準じて猟友会に発砲許可を出し、クマを射殺しました。

 

(熊森から)

このクマの胃の中は空っぽだったそうです。夜、食料を探しにそっと出て来て、朝帰りしそびれたことも考えられます。

ニュースの映像を見ると、クマは耳を立てて人間を警戒している様子でした。時折、人間や車から離れようと走っていました。

ふだん見慣れない車や人間に出会ってどんなに怖かっただろうかと思います。

担当者は、民家の敷地に侵入したといっていましたが、人間が騒ぎ立てて民家に追い込んでいるようにも見えました。

人間に対して、爪を立てることもなく、終始おとなしかったこのクマのどこが危険だったのでしょうか。

このクマは、人間に危害を与えるつもりなど全くありません。

人間は最初からこのクマを殺すことしか考えていません。

人間に猛省を促したいです。

 

①6月25日熊森本部が砺波市担当者に電話

 

熊森:初めから殺すありきで、なんとかこのクマの命を助けられないかという心が見えない。

今回のことは、富山県庁にクマの放獣体制がないことが 一番の問題ではないのか。

砺波市:富山県庁にはクマの放獣体制があります。

熊森:それは初耳だ。富山県はクマを放獣しない県だと思い込んでいた。誰が放獣業務を行うのか。

砺波市:・・・

熊森:担当者が知らないというのは、放獣体制がないということなのではないのか。

 

6月25日熊森本部が富山県担当者に電話

熊森:富山県にクマの放獣体制はありますか。

富山県:あります。放獣業務(吹き矢・麻酔銃)を実施するのは、県の職員です。

熊森:最近ではいつ放獣されましたか。

富山県:2010年に山から出て来たクマを箱罠で獲り、うち17頭に麻酔をかけて放獣しました。

熊森:その後8年間の放獣実績が毎年ゼロなのはなぜですか。ずっと、富山には放獣体制がないのだと思っていました。

富山県:放獣場所がないからです。山林所有者が放獣を許可してくれないのです。

熊森:放獣させてほしいという依頼など、受けたことがありませんが。

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