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兵庫県森林動物研究センター10周年事業とNHK

9月17日13時から、兵庫県三田市の兵庫県立人と自然の博物館4階ひとはくサロンで、兵庫県森林動物研究センター10周年事業として、企画展特別セミナー「ひょうごのツキノワグマ 保護管理のあゆみとこれから」が催され、約50名の県民が参加しました。

 

第1部

①過去から現在までのツキノワグマの分布 森光氏

②ドングリの豊凶とツキノワグマの人里への出没 藤木氏

③行動と繁殖 横山氏

④何頭いるか 高木氏

 

第2部

①兵庫県に於ける保護管理の方針と現場での対応 広瀬氏

②豊岡市鳥獣対策員 岡居氏(ハンター)

 

質問時間なし

 

発表してくださったみなさん、ありがとうございました。

 

 

しかし、熊森は、みなさんの発表で、いつもどうしても腑に落ちない部分があります。

 

●クマ生息地の荒廃や、劣化した自然環境の話が全く出ない

どうしてクマたちの本来の生息地の写真や話が出ないのでしょうか。生息地の自然環境の変化を抜きにして、クマ問題は語れないと思います。

みなさんの発表には、今回も、人工林のジの字も自然林劣化のレの字も出ませんでした。奥山にどんどん道路や砂防ダムができているのに、開発のカの字も出ませんでした。

生息地は内部が砂漠化した放置人工林でいっぱいですよ。残された自然林は、内部が公園状態で、下層植生が消えており、臆病者のクマが棲めるようなところでは、もはやありませんよ。

 

兵庫のクマたちの生息地の自然環境について、兵庫県森林動物研究センター研究部長の横山真弓さんはいつも、「兵庫の森は今絶好調、豊かな自然にめぐまれている」と言われますが、クマたちが聞けば泣くと思います。兵庫県立大学の研究者たちは、みなさんとても頭のいい方なので、クマ生息地の荒廃や劣化に気づかないはずはありません。

研究者として、生息環境の問題については触れるなと、環境省や林野庁から注意されているのでしょうか。理解に苦しみます。

地元の人達はみんな知っていますよ。戦後の森林政策の失敗で山にえさがなくなったから、動物たちが山から出て来るようになったことを。

 

●どうしてクマたちの心がわかってやれないのでしょうか

山の実り大凶作年に、夜、民家の柿の木に親子で登っていたクマの映像を2回出されましたね。突然強烈なサーチライトで照らされても、母熊は逃げずに木の上でじっとしており、何もわからない子熊は、母熊の背中に乗ったり降りたりしていました。これは、人間を恐れなくなったクマとみなしていいのでしょうか。

私たちは、この母熊は、心臓が爆発するほど怖かったのだけれど、子供がいるので逃げるに逃げられなかったんだと思います。

同じ場面を見ても、人間側からだけ見るのと、クマの立場にも立って見るのとでは、解釈が180度反対になります。

前から不思議に思っているのですが、熊森本部がある兵庫県では、県立大学や森林動物研究センターに送り込まれてくる研究者たちは、なぜかみなさんワイルドライフ・マネジメント派で狩猟大好きという方が多いようです。

この日発表された皆さんも、狩猟再開を進めたいと思っておられるのでしょうか。

もしそうなら、ライフル銃を持った人間に追い回される恐怖や、弾が体にあたったときの痛さを想像してみてください。人間にも恐怖や痛さがありますが、動物たちも人間と同じように、恐怖、痛み、悲しみ、生への欲求があります。もし自分がハンターの餌食にされて、何もしていないのに銃で撃たれたらどう思うだろうかと想像してみてください。

 

クマ数が20年で10倍になったら、誰でも気づきます

みなさんは大学で専門的に勉強したエリートでなければわからないむずかしい計算ばかりされていますが、猟友会の方に一度アンケートを取ってみられたらどうでしょうか。クマの痕跡やフンの数が20年で10倍になったら、どんな鈍感な人でも、計算などしなくても気づきますよ。

今回、最後に猟友会の方が、兵庫のクマが今940頭いるのなら、前から940頭いたのだと思うと言われたのは至言です。

熊森協会が出来て20年です。20年前と比べて、本当に熊棚を見かけなくなったし、クマが木に登った爪痕を見なくなりました。糞も見つけられなくなりました。クマが10倍に増えたなどあり得ません。

コンピューターで何日もかけて計算するより、山を歩いている人間の感覚の方が、ずっと正確だろうと私たちは思います。

 

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上写真は、当日の研究者のパワーポイント発表

上図には、1996年の兵庫県クマの生息数は100頭以下で、20頭~50頭と書かれています。

兵庫県は、これを提示することにより、その後20年間で県内のクマが10倍に爆発増加して、狩猟を再開しなければならないほどの異常事態に陥っていることを強調したかったのでしょうが、反対に、墓穴を掘ったと思います。

日本のツキノワグマ研究の第一人者に、20年で10倍に増加の兵庫県のクマ数変化グラフを見せると、即座に一言、「あり得ないよ」と言われました。

県内の20年以上山に入っておられる猟友会のみなさんに、このグラフを見せて下さい。みんな笑いだすのではないでしょうか。「ありえないよ」って。日本の人口は、現在1億2千万強ですが、20年後に12億になったという割合です。そんなことになれば、誰でも増えたと気づきます。実際は、山中のクマの痕跡は、見つけられないほど、ますます減ってきているのです。

さあ、兵庫県は、今度はどんな手で、すでに発表してしまった<20年で10倍増加>の、もみ消しをしていくのでしょうか。

ちなみに、940頭の推定生息数を発表した研究者は、現在、さっさと県職員を辞めて、野生動物捕獲会社を設立し、その社長に収まっています。

 

当日会場に、NHKのカメラマンと記者が来られていたので、本日の行政発表だけを一方的に流さないようにお願いしておきました。しかし、NHKニュースを見られた人から、行政発表だけを一方的に流していたという報告を受けました。残念です。一方的な報道では、国民が判断を誤ってしまいます。マスコミの責任は重大です。

 

 

 

 

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