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熊森が運んだドングリをクマたちが食べています その1

地球温暖化や酸性雨(酸性雪)などの人間活動の影響を受けて、昨年に引き続き、多くの地域で、今年も山の実りゼロの異変が続いています。

たとえば、ブナの生育条件は、年平均気温が6度~12.5度まで。気温が上がると正常種子は実りません。ブナは大凶作で、実りはゼロです。

また、どんぐり類が枯死するナラ枯れの大発生など、信じられない事態が起きています。

奥山をフィールドに活動する私たちには、クマたちの本来の生息地である冷温帯の森が急速に劣化していると感じます。

飢えに苦しむクマたちが、日本海側の里や市街地に出て行き、連日殺処分されており、人身事故も多発しています。私たちは日々胸を痛めています。

 

緊急対策として、里の実りを山へ

環境危機による食糧不足により、人里周辺のカキ、クリ、どんぐり、オニグルミなどを食べに来ているクマは、エサが得られれば山へ戻ります。私たちは、近づかないでそっとしておいてやってほしいと思っています。絶滅防止のために、捕殺を控えるべきだと呼びかけています。

しかし、過疎化と高齢化で動物との棲み分けのための対策ができておらず、クマと人の突然の至近距離での接触を避けることが難しい地域が多いことも事実です。

このような場合、人身事故を防ぎ、クマの乱獲を止めるためには、クマたちを山にとどめることが必要です。そのためには、里の実りを、山中に運ぶことを緊急対策としてせざるを得ないと考えています。

 

下の動画は、山からクマが出てこないように、熊森が地元の方たちとクマの通り道にドングリや集落でもいだ柿などを運び、自動撮影カメラをかけてチェックしたものです。クマが、里の味を覚えると批判される方もいますが、柿は山にもあり、すでに昔から、クマは凶作年には、食用の木の実としてずっと認識しています。

 

ドングリを運んだ日時 昼 2020年10月26日14時35分

クマがやってきた日時 夜 2020年10月26日20時48分 暗くなってから、1頭のクマがやってきました。

熊森スタッフがカメラを回収したのは、10月27日の10時30分です。この間、約20時間の記録が取れました。

クマがドングリを食べている映像

 

2020年10月27日5時23分まで、実にこのクマは8時間半にわたって休まずに食べ続けていました。

クマは暗闇の中で、ドングリを食べ続け、明るくなる前に立ち去りました。クマは夜行性の動物ではありません。なぜ、暗いうちにドングリを食べるのかと言えば、それは人を避けて行動しているからでしょう。クマは、人を恐れ、できれば接触を避けたいと思っていることがわかります。

熊森が、大阪府豊能町で保護飼育している元野生のツキノワグマの「とよ」と同じ格好で食べています。

「とよ」との違いは、「とよ」は明るい昼に食べますが、このクマは、暗闇の中で食べていることです。

クマが立ち去ると、直ちに複数のタヌキが現れ、このドングリを食べ始めました。

 

このようなボランティア活動を続ける熊森に対して、焼け石に水と笑う人や反対する人もいます。しかし、何もしなければこのクマは里に下り、飢えに苦しんで夜、里の柿の実をこっそり食べに行き、大量に仕掛けられた罠に掛かって殺されるか、朝帰りが遅れて人間に見つかり、大勢の人たちに追い掛け回されて射殺されることになるでしょう。その過程で時には人身事故を起こしてしまうかもしれません。そちらの方がいいのでしょうか。多くの皆さんに考えていただきたいです。

山に実りが無い場合の緊急対策として、自治体や地域のみなさんにドングリ運び柿運びの実践を検討していただきたいです。

(注)山やクマに詳しくない方がどんぐりを運ぶのは危険です。私たちは、一般の方に山にどんぐりを持って行くことを推奨しているわけではありません。クマの出てきている地域で通り道を考え、人との接触が起こらない場所に置く必要があり、森やクマに詳しい集落の方や猟友会と一緒に行うことが望ましいです。

 

元野生グマ「とよ」の飼育からわかる秋のクマのどんぐり食

「とよ」は、大阪府豊能町で推定5歳でイノシシ用の箱罠にかかり、殺処分が決まったため(鳥獣保護法によれば錯誤捕獲で放獣しなければならないのですが)、やむを得ず熊森が、高代寺の協力のもと保護飼育することになりました。

とよを飼ってみてわかったことですが、成獣グマは50キロのドングリを約一週間で平らげます。200キロ運ぶと、1頭のクマを1か月間山に留められます。

秋は、クリやどんぐりなどの堅果を好む

10月13日に、「とよ」にドングリの山を与え、中央にリンゴと柿を1個づつ置いてみました。

「とよ」は、掃除後、運動場に出されると、ドングリの山に飛んできて、リンゴと柿を前足で払いのけ、ドングリと栗だけを抱きかかえるようにして、ずうっと食べ続けていました。(観察時間4時間)

冬ごもり前のこの時期、クマが本当に食べたいのは、皮下脂肪を蓄えるために欠かせない栗やドングリなどの堅果類の実りなのです。

ドングリの山の上に覆いかぶさるようにしてドングリを食べ続ける「とよ」

 

 

時たま、プールに行って水をゴクゴク飲み、また、ドングリのところに戻って食べ続けていました。

プールの水を飲む「とよ」、冬ごもりに向けてだいぶん皮下脂肪がついてきました。

 

人と心を通わせられる穏やかな生きものです

クマとの共存策を考えるには、殺されたクマを解剖して研究しているだけではだめで、生きたクマを飼ってよく観察することが必要です。クマを飼うと、いろんなことがわかってきます。人間と深く心が通じ合えるすばらしい動物です。

 

野生で大人になったクマは人を恐れています。しかし、愛情いっぱいに飼育すると、クマはやがて人間を信頼するようになり、よくなつきます。そして、表情が明るくなり、幸せそうな顔付きになります。それを見た人々の頬はゆるみ、みんなが笑顔になってゆきます。

高代寺(大阪府)の「とよ」10歳 2020.10.13撮影

 

 

クマとの共存のために動き出そう

クマは、今、まるで凶悪犯罪者のように報道されていますが、大きな誤解です。大変な間違いです。

飼ってみると、人間よりずっと平和的で飼育者を思いやるやさしい動物であることがわかります。

祖先がしてきたように、人と棲み分け生息できる環境を取り戻してやれば、クマは日本の国土で人間と十分共存できる動物です。

 

戦後、広大な奥山生息地を破壊した私たち人間が、責任を取って、奥山を復元しませんか。

情けはクマのためならず。

私たちの大切な水源の森を未来永劫に守ることでもあるのです。

 

山の実りが皆無になってしまった今、当面、山裾に、クマの餌場として、クマ止め林(凶作年のえさとなるような柿やクリ、平地で実るクヌギなどのドングリ種の林)を造っていきませんか。

目の前の問題解決を図るため、里でもいだ柿やドングリを、山に運んでやりませんか。

学校が子供たちにドングリ集めを広めてくだされば、すばらしい情操教育、環境教育になります。

今秋の緊急対策として、里のドングリを集めてくださっているすべての皆さんに、心から感謝申し上げます。(完)

 

 

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