くまもりNews
NHK盛岡 再生可能エネルギーか?絶滅危惧種イヌワシか?を見て
- 2024-07-21 (日)
- 再生可能エネルギー
NHK盛岡2024年07月04日放映
以下は、上記番組を見て書かれた文です。
本人の了承を得て、以下に紹介させていただきます。
風力発電とイヌワシは、両立しない
比企の太陽光発電を考える会(埼玉県) 小山正人(獣医)
このNHKの番組のタイトルに「再生可能エネルギーか?絶滅危惧種イヌワシか?両立のジレンマ」とあります。ジレンマとは、相反する二つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態のことですから、一方的に風力発電が進められている現状ではタイトルとしてふさわしくないと思います。
番組の中で油井先生が重要なことをおっしゃっていました。「風力発電所が建設されると、衝突を恐れて、発電所の周囲500mはイヌワシをはじめほとんどの鳥が近づかなくなり、餌場として使えなくなる。貴重な餌場が減ることで、イヌワシが飢餓状態に陥ってしまう。このまま発電所の建設が相次いだら、あっという間にイヌワシは滅んでいなくなる。このままでは、第2のトキになってしまう」むしろバードストライクよりこのことの方が深刻なのです。
イヌワシが繁殖能力を持つようになるには、生後4年かかります。イヌワシのつがいは、日本全国あわせても200つがいしかいません。それに繁殖能力を持たない4歳未満の若鳥100羽を合わせても全国で500羽しか生息していません。
この200つがいを維持するには、繁殖成功率が36.17%以上必要であることがわかっています。繁殖成功率とは、全つがいのうちヒナが巣立ちしたつがいの割合です。かつて40~50%であった繁殖成功率は、1990年頃から激減し、現在は11%です。つまり、何もしなくてもどんどん減っている状態であり、風力発電施設を作る余地などないのです。風車とイヌワシの両立など到底無理、直ちに風力発電計画を中止にしなければならないと言えます。
記事の最後の方に出てくる風力発電事業者社長は、取材に対し「これだけの(イヌワシ調査の)負担増は、風力発電事業をやっていく上では経済的に難しい問題はある。イヌワシが餌を実際にとっているかをしっかり確認し、イヌワシの保護にもデータをいかしていきたい。我々ができる範囲で対策を講じれば、イヌワシと風力発電所は共存できると思っている」と述べています。しかし、ここにも大きな落とし穴があります。今のつがいが餌場として使っていなくても、風力発電機を建てることによって次世代のイヌワシがなわばりを作る場所を狭めていることになるのです。
岩手県は、「再エネ拡大の一方、イヌワシの保護の方針も当然、掲げている。どちらも環境を重視した政策。どちらかを無視することはできない。」と言っています。どちらかを無視することはできない、本当にそうなのか?と考えてみる必要があります。イヌワシの生息地を変えることはできません。生態系が失われたら二度と元には戻らないし、イヌワシが絶滅したら元に戻りません。一方、風力発電は他の発電方式に変えることができます。そもそも現在計画されている風力発電施設をすべて設置したとしても国内全電力量の1%にすぎません。そのわずか1%の電力を得るための犠牲が大きすぎると思いませんか。
環境省は、令和3年8月19日に「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を策定しました。全国の目標つがい数を206つがい、繁殖成功率を36.17%と定めました。この目標が達成できていない以上、国は風力発電開発を止めなければならないと思います。
熊森から
すごい視点です。多くの方に伝えたい。