くまもりNews
奥山の急斜面を支えてきたトチノキ巨木群を伐採業者から守る方法がない
11月17日の滋賀県朽木村のくまもり奥山調査は、急斜面を支えてきたトチノキ巨木群を伐採業者から守ろうと一生懸命滋賀県で動いておられる市民のみなさんの要請で行われたものです。
山を案内していただきながら、これらのトチノキを伐ってしまったら、山が崩れてくるのではないかと感じました。そうしたら、砂防ダムを造って抑えるのでしょうか。そうなれば、すごいお金が必要になるし、山はコンクリートで固められて生態系が壊れてしまいます。
今や奥山人工林地帯で建設ラッシュの砂防ダム(他地域の例)
今、スギは高く売れないので、放置されている杉山人工林が多いのですが、一方、トチなど広葉樹の巨木は1本100万円などと高く売れるので、わずかに残された貴重な広葉樹の巨木が、業者によって1本5万円などと2束3文で買い占められ、伐採されていっています。由々しき問題です。これらの巨木は、多くの森のいきものたちの命を支えてきた木です。
山林主たちは高齢化しており、広葉樹の巨木が高く売れることなど知りません。法廷で争う力もありません。よって、この流れを止める力が地元にはありません。日本は、自由な経済活動を認める国ではありますが、何らかの歯止めをかけないと、この国の自然はますます失われていき、取り返しのつかないことになります。野生動物たちが、山で暮らせなくなり、田畑に出て来て農作物被害を起こして農家を苦しめるようになります。水源の森はどんどん劣化して、湧き水を失い、農業用水にも困るようになります。
そばで見ると、本当に大きなトチノキでした。現在、守る会の人たちが、これらのトチノキの伐採を一時ストップさせていますが、今後どうなるのかわかりません。
案内して下さった滋賀県民のみなさんは、「ここは、琵琶湖に一番多くの水を注ぎこんでいる安曇川(あどがわ)の水の、最初の一滴が湧き出す場所なので、なんとしてもこの水源の森をみんなのために守らねばならない」と言われました。近畿2府4県1400万人の暮らしを支える琵琶湖の水です。滋賀県民のみなさんの優しさが胸にしみました。むしろ琵琶湖の水に生かされてきた他府県に住む者こそが、このような森の保全に何らかの形でかかわるべきだと思いました。
トチノキ巨木伐採跡地
トチの木巨木伐採跡地には大きな空間が残されていました。伐採にあたって、周りの木を伐ったことも関係します。
トチの木は、ヘリコプターでここから運び出されたそうです。新しくできた空間の林床は、シカが食べないシダで覆われていました。谷間には、切り刻まれた不要な木の枝が散乱していました。全て、経済第一主義・人間至上主義のなせる業です。