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兵庫県、今年のクマ大量捕殺を可能にしたまさかのしくみ

今回は、兵庫県で8月末までに、前代未聞43頭もの大量のクマが捕殺された謎に迫ります。

 

熊森の森山名誉会長は、貝原知事時代の2001年から井戸知事時代の現在まで18年間、兵庫県の野生鳥獣保護管理協議会の委員を務めており、1回の欠席もなく全出席してきた最古参委員です。しかし、その森山名誉会長ですら、どうして突然、これだけの数のクマが夏までに大量に捕殺されたのか、さっぱりわからないと言います。

 

熊森本部は、私たちに情報を公開してくれない県鳥獣対策課に業を煮やし、疑問解明のため、クマ生息地を訪れました。

 

地元で見聞きしたことは、初めて聞くまさかの連続でした。そして、43頭ものクマが捕殺された原因が見えてきました。

 

現地では、去年の7月から、県の指示でクマの捕殺方法が突然変わったということです。

兵庫県は昨年、集落や田畑(山中に点在するものも含む)から、200メートル以内ならば、山中にいるクマを捕殺して良いと勝手に決めました。(無茶苦茶だと思いますが、これは私たちも知っていました)
ある地元の元猟師は、「集落の裏山は昔からクマの生息地だで。200メートルの根拠は何なのか。今は山中に施設もいろいろとできており、そこからも200メートルというと、クマはもう山にいてはいけないことになる。」と憤っていました。

 

今年は4月の時点で、県から地元に、クマの捕殺許可頭数が前もって割り当てられたそうです。(まさかー)

その数は、合併前の1旧町あたり、30頭ぐらいだそうです。(そんなー)

単純計算すると、春の時点で、兵庫県内で約800頭のクマ捕殺許可が県から降ろされたことになります。

4月ですから、まだ、農作物をはじめ何の被害も出ていません。

集落の区長が「クマが怖い。罠にかかったクマは殺してほしい」という方の選択肢に〇を付けたら、これでクマによる精神被害が成立し、捕殺許可がもらえるのだそうです。

 

山中には現在、シカやイノシシを無制限無差別に捕獲して、掛ったらすべて殺処分する膨大な数の鉄製の箱罠が仕掛けられており、ヌカなどの誘引物が入っています。

2年前までは、山中にいるクマは捕獲対象から外されていましたから、もしこの罠にクマがかかったら誤捕獲として放獣されていたはずです。

しかし、去年7月からは、市町から許可を得たシカ・イノシシの捕獲わなに、兵庫県が許可したクマという札をつけて、シカ・イノシシ・クマの共同捕獲罠に転用していいことになったそうです。

 

捕獲許可の札が2つ付いているのが、シカ・イノシシ・クマ共同捕獲罠、800基設置?

 

クマはヌカの発酵臭に強力に誘引されますから、山にいるクマを山中に設置した共同捕獲罠に引き寄せて、かかったら問答無用ですべて殺処分するようになったのです。(県はこのような補殺方法の変更を、県の協議会でも、審議会でも出していませんから、県民はもちろん、委員ですらほとんど誰も知らないと思います。)

もちろん、クマによる農作物被害などが生じた時は、これまで通り、ドラム缶檻で捕獲して有害駆除する捕殺法も、同時進行です。

クマの札が付いていない箱罠や、くくり罠に誤捕獲されたクマは、今も放獣しているそうです。

 

クマは大変臆病な動物ですから、今や、人工林や下草が消えた奥山天然林より、過疎化高齢化で放置されて藪が生い茂っている里山の山中の方が姿を隠せて安心できる場所です。

 

そこに突然、クマに何の警告もなく、ヌカが入ったおびただしい数のクマ捕獲罠が設置されたのですから、クマの目撃は増えるでしょうし、次々と罠にかかって殺処分されていくクマがあとをたたないのは当然です。(県はそんなことを指導していたのか)

 

そのクマは臆病で、人間の所には絶対に出て行かないと決めた、人間に被害を及ぼすことのないクマだったかもしれないのですが、そんなことは問答無用です。

 

罠にかかったクマは、子グマであっても、銃か、麻酔+電気ショックで、殺処分するそうです。

 

こんな補殺方法に変わったのなら、8月までに43頭捕れるね。

私たちは納得しました。

クマへの共感や思いやりのなさで、兵庫県は、全国ワースト1になってしまいました。

もはや有害捕獲ではなく、シカ・イノシシ同様、クマの個体数調整捕獲が始まっていたのです。

 

ただし、県内クマ捕獲数が生息推定数の15%にあたる137頭を超えないように、歯止めはかけられているということです。

地元は、クマを捕殺するたびに、兵庫県森林動物研究センターに連絡しており、センターは137頭に達したら、罠にかかったクマを放獣する体制に切り替えるそうです。

 

生息推定数918頭、15%までは獲って良い、県内生存推定数800頭以上は狩猟可、集落200メートル以内なら山中にクマ捕獲罠を掛けてヌカで誘引して無差別捕殺して良い。すべて人間が考えたどこまで正しいかわからない数字に従って、他生物の命を人間が機械的に操作しているだけです。

 

兵庫県はクマと人間の棲み分けを図るとクマ管理計画に書いていますが、実際に兵庫県がしているこのような野生動物対応は、棲み分けとは到底呼べません。

人間の他生物に対する倫理観は、こんな程度でいいのでしょうか。

 

私たちは、クマだけでなく、山の中にいて人間の所まで出てこない動物まで、人間が山中に入って行って殺すのは行き過ぎだと思います。みなさんはどう思われますか。しかも、一方で、私たち人間は、奥山を動物が棲めないまでに大荒廃させたまま放置しているのです。

 

問答無用で殺されていく野生鳥獣たちの哀しい叫び声が聞こえてきます。

 

10月13日の「兵庫県クマ狩猟3年目と大量捕殺を考える会」に、ぜひ、みなさん、お集まりください。

野生鳥獣との共存について根本的なことから考え直しませんか。地元の方の声も聞いてみましょう。

日本は歴史のある国です。祖先はどのように対応して、全ての野生鳥獣と共存してきたのでしょうか。

歴史から学ぶことも大切です。

 

<兵庫県クマ問題を考える会>

14:00 ~16:00(13:30開場)
尼崎商工会議所 502号
兵庫県尼崎市昭和通3-96(阪神尼崎駅より北へ徒歩5分国道2号線沿い)

 

p.s ただ一つ、地元を回って私たちが救われる思いがしたのは、「クマなんておとなしい動物じゃ、山中にいるのまで殺さんでいい」といって、クマ捕殺申請を出さなかった集落がいくつかあったということです。クマの本当の姿を知っている人たちが、まだいたんだ。

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