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新潟県南魚沼市の診療所で冬籠り?射殺される寸前の母子グマを熊森が現地に急行し救出!②

兵庫県西宮市本部から南魚沼市への道のりは、思ったよりも大変でした。

山々はもう雪をかぶっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南魚沼をめざして、ひたすら走る

 

職員が向かっているので、それまで動かず待ってほしいという電話を、熊森本部から、診療所、南魚沼市役所に入れてもらいましたが、返答は得られていません。

処分される前に、現地に着かなければならない。気が焦ります。

 

10:30やっと現場の診療所に到着。(西宮市を深夜に出発して、10時間半かかったことになります)

母グマに麻酔がかけられた後でした。

さっそく行政と交渉開始です。

熊森が来春までこの3頭を預かる代わりに、来春、南魚沼の山に放獣が交換条件です。

 

交渉は難航しましたが、やっと話がついて、熊森が春まで預かることになりました。

とにかく、山から出てきたクマを殺さない流れを熊森が作るしかないと必死でした。

 

有害動物と書かれた有害捕獲檻に、猟師が親子グマを投げ込みました。

(有害動物というレッテルを貼られてしまうと、殺すという結論以外は見えてこなくなります。クマが有害動物なのではありません。今の地球上で、一番環境を壊し続けているのは人間です。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻酔がかかったままの母グマに子グマ2頭が抱きついている。

 

とにかく、新潟県内の安全な場所に保護し、本部から持参したドングリと水を与えると、まず母グマから、その後は子グマも母グマをまねて、狂ったように食べ始めました。

慌てて本部に、ドングリをすぐ段ボール4箱、新潟に送ってくれるよう追加を依頼しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毛布を敷く。水とドングリは、いつでも食べられるようにセット。

 

この3頭の命を何としても守る!そんな気持ちでいっぱいでした。

 

今年、南魚沼市では、人身事故が多発しており、多くのクマを有害駆除してきました。こんな中、助けられるクマは助けてやりましょうよという熊森の呼びかけに答えてくださった南魚沼市担当者のやさしさに深く感謝します。

 

夜、この日のニュースをネットで確認してショックを受けました。

「診療所に立てこもっていた親子グマを無事捕獲しました。

けが人はありませんでした。」

これだけで終わっていました。

捕獲されたこの親子グマがこの後どうなったのか、記者たちの関心がここにないのはどういうことなのだろう。熊森が現場で交渉しているのを見ていたはずなのに。一般の方は、捕獲された親子グマが、その後どうなったか知りたいと思うでしょう。

 

ニュースをいろいろと探して、やっと、この後のことを書いた記事を見つけました。「愛護団体がこのクマを引き取りました」でおしまい。

ほめてもらうためにしたことではありませんが、このような報道には割り切れないものがありました。クマが山から出て来ざるを得ない背景、共存するためには、生息地を保証し、捕殺に頼らない棲み分けの道を探ることが必要なこと、クマの習性をよく知り、適切な対応をとることで多くの人身事故を防ぐことができること。事件として大騒ぎするだけでなく、メディアの方に共存のために伝えていただきたいことはたくさんあります。

 

有害駆除用の檻では狭すぎるため、兵庫県で熊森が保管している広い檻を運んできて、クマたちを移し替えることになり、次の日からいろいろと準備が始まりました。急なことだったので、手配にいろいろと時間がかかりました。

兵庫から新潟へ檻を運んだ4トンユニック

12月15日の檻移し替え実行日には、秋田県からクマの扱いに慣れている方やいざという時のために麻酔を打てるクマに慣れている獣医さん等、各地から、必要な技術を持った方々が、新潟県に集結しました。檻移しの失敗は絶対に許されません。綿密に打ち合わせましたが、やはり緊張します。

 

母グマが異変を察知して、子グマを抱えて放そうとしません。人間の方に行こうとした子グマに、だめ!と言わんばかりにかみつきました。母の子を守ろうとするすさまじい愛情に、一同、改めて胸を打たれ、涙が出そうになりました。母グマの警戒心は強く、檻の移し替えは難航しました。

熊森は、冬ごもりしようとしているクマに麻酔銃を撃った例をこれまで知りません。

今回、もう何度かこの母グマは麻酔銃を撃たれているので、次に再び麻酔銃を撃つと死ぬかもしれません。いろいろと悩みましたが、とにかく広い檻に移し替えねばならないので、獣医さんの判断で、眠らない程度の一番弱い麻酔を吹き矢で母グマにかけました。

 

こうしてやっとのことで、無事3頭の檻移しが終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、通気口だけ開けて、扉を閉め、部屋を暗くしました。

 

専門家に見てもらったところ、この親子グマは、どうやら冬ごもりに入りそうです。

与えたドングリも食べる量は減ってきました。クマを自動撮影カメラで観察してみると人がいないときは、ずっと寝ている様子で冬ごもりに入ろうとしています。

野生グマがそうであるように、親子グマの人に対する警戒心はとても強く(野生で生きるために不可欠なことです)、人が近くにいるだけでクマたちは安心して冬ごもりに入れないようです。異変がないか、毎日そっと担当者が覗く態勢は整えましたが、それ以外はそっとしておくことになりました。水とドングリはいつでも食べられるようにしてあります。

 

この親子の救命を応援してくださった皆さん、救命に携わってくださった皆さん、この度は本当にありがとうございました。たくさんの方のご協力がなければ、実現できませんでした。

 

今年は、全国でクマの大量捕殺が起こっており、捕殺されたクマは5000頭を超えると予測されています。5000分の3の命です。でも、この親子グマを助けたことにより、出てきたらすぐ捕殺ではなく、救える命を救い、共存をめざす流れをつくることにつなげたいと思います。

地元に対し、どうしたら人身事故を防げるかという広報をしたり、クマのひそみ場となっている場所の草を刈ったり、カキの実を狙ってクマが来ている場合は、カキもぎをしてそのカキを山に運ぶなど、市民団体として地元にできることを、今後も会をあげてやっていきたいと思います。

 

来春、この親子グマを無事山に返しましたといういいニュースを、みなさんにお伝えしたいです。(完)

 

 

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