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全国各地で投資目当ての外資メガソーラーが日本の山野を食い物に 奈良県平群町建設予定地視察

兵庫県の緊急事態宣言が解除された翌日の2020年5月22日。森山まり子名誉会長が出かけて行ったのは、「たたみごも平群の山」と『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』にもうたわれた奈良県生駒市平群町です。

 

今、この町で、アメリカに本社がある投資会社によって、平群の起伏に富んだ山野を48ヘクタールも切り崩し、谷を埋め、一枚の巨大な斜面にして、太陽光発電パネル6万枚のメガソーラーを作る計画が持ち上がっています。

 

何とかこの計画を阻止しようと、今、地元熊森会員らが「平群メガソーラーを考える会」を結成して、反対運動を繰り広げています。少しでも力になれないかと森山名誉会長が出かけて行った次第です。

 

熊森は太陽光発電を否定しているわけではありません。しかし、山野を大がかりに切り崩しての太陽光発電は絶対に認められません。もう我が国は十二分に山野を破壊してしまいました。今残されている山野はいずれも大変貴重であり、そこは人間によって肥沃な平地から追い立てられた様々な生き物たちが、最後の命を輝かせている場所なのです。

しかも、山野の複雑な地形にはすべて自然界としての意味があるのです。それらを無視した造成では、野生生物だけではなく必ず人間にもしっぺ返しが来ます。山崩れなど、どれだけの人災が起きたら人間は目が覚めるのでしょうか。

 

 

赤い線で囲まれている山林部分が開発予定地です

 

近鉄生駒線終点の東山駅で落ち合い、まず最初に開発されるという森を、考える会の皆さんに案内していただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開発予定地の山林です

 

近くには万葉集に登場する竜田川が流れ、古墳時代、奈良時代など、いにしえの貴重な遺跡をあちこちに残す由緒ある土地です。人工林の率が極めて高い奈良県にあって、なぜか平群町は、人工林率20%程度。ほとんどが自然林なのです。生い茂るアベマキやコナラの巨木群がフラワーロードという大きな農道沿いから見えます。桐の花がきれいに咲いていました。シカがいないのでしょうか。下草もびっしり繁っています。鳥の声があちこちから聞こえてきます。

コンクリートジャングルの中で日々暮らしている都会の住民としては、平群の自然豊かな山林は全て歴史的景観として傷つけず保存しておきたくなります。

 

目先の金もうけにしか関心のないような外資系企業に、なぜ、私たちの国土を売り渡さなければならないのかと憤りを覚えます。残念ながら、今の所、規制する法律はありません。すでに平群の山野は、何カ所かが残土処理場にされており、農道には埋め立てなどのためトラックが行きかっていました。すべて、目先のお金目当てなのです。胸が痛みました。

 

この山野の谷を埋め立てるとどうなるのか。大雨で崩れてしまうことは小学生でもわかることです。しかし、開発業者は、小さな調整池を三つ作ることで安全性は確保されると主張しているそうです。木々や下草がしっかりと根を張り、山が水を吸収する健全な森以上に確かな防災はないのですが。

 

実際の開発にあたる東京の子会社を調べると、マンションの一室が事務所で、その部屋には他にも650社が名を連ねているそうで、実態が何かさっぱり見えないペーパーカンパニーのようです。これらの会社の資本金は1円とか10円とか多くても10万円だそうです。もし開発後、災害が起きたり何か不都合なことがあっても、弁償する能力があるのでしょうか。どうして国は、このような実態が不明確な会社に、貴重な自然を破壊し、地域に災害をもたらす恐れのある巨大開発を認めるのでしょうか。

 

「平群メガソーラーを考える会」のブログ

 

視察後、事務所で、考える会の5人の方々と長時間懇談しました。

 

最初に森山名誉会長が「本気の3人がいたらどんな運動も勝てる。日本の自然が守れないのは、大人がみんな弱虫だから」という恩師の言葉を紹介しました。その後、何らかを参考にしていただきたいとして、行政も裁判所も開発を止めることはできないなかで、どうやって住民運動で無茶な開発を止めたか、体験談を話しました。

考える会の皆さんからは、行政と協定書を交わしたはずの開発企業がいつの間にか消え、別の開発企業に変わっていく、住民説明会に参加したが、業者が質問に明確に答えないなど、様々な不安が出されました。

うかがった話の中で一つ、希望のある話が聞けました。

岩手県遠野市の条例です。遠野市はすでに山野を削ってメガソーラーが建設されてしまいましたが、その後、大雨で山から濁流が噴き出すなどの被害が出るに及んで、1ヘクタール以上のメガソーラーを作らないという市独自の条例を制定したのです。

この遠野市の条例を、日本全国に広めなければならないと思いました。

 

遠野市広報(濁水写真)

 

 

 

 

 

 

 

今回お会いした皆さんは、熊森の小冊子「クマともりとひと」を読んで「とても感動しました」「知り合いや子どもに読ませたい」とおっしゃってくれていました。

いろんな人生がありますが、次世代に責任を持ち誠実に生きようとする人間なら、最終的にはみんな同じところに集まってくるのではないかと思いました。

社会を動かし、世の中を変えるには会員数が必要です。ぜひ皆さんに、次々と生き物や森を守っていっているくまもりの会員になっていただきたいです。

(くまもりへの入会はこちらから)※年会費1000円から入会できます。

 

筆者は、新入職員として初めてこうした集まりに同行しました。

思ったことを以下に書きます。

①住民として、災害が起きた後の補償を企業に求めるのではなく、災害が起きると予測される開発を企業に絶対にさせないことが大切。濁流にのまれた家や命は、たとえ大金を積まれたところで、元に戻るものではありません。

②人間が手を入れ続けないと山林が荒れるという誤解を振り払う必要があります。考える会の人たちの中にも「自分たちも高齢になってきたので、山林を維持できなくなるのでは」という不安を持っておられる方がいました。人間が手を入れ続けなければ荒れるのは、人工林です。スギやヒノキの単相林や、昔の里山のように人間が作り上げたマツタケ山やクヌギ・コナラ・などの落葉広葉樹は、確かに人間が手を入れ続けなければ保てません。しかし、放っておけば一時期バランスを崩したとしても、その土地の気候風土にあった健全な森に移行していき安定します。

人間が手を入れて荒れる自然はあっても、人間が放っておいて荒れる自然などありません。

もう今は少なくなりましたが、未開の地を見ていただければ一目瞭然です。

 

平群のメガソーラーが、住民の力で白紙撤回されるよう心から祈ります。

これまで熊森は、尾根筋の風力発電問題に取り組んできましたが、今後は、自然保護団体として、山野を削るメガソーラー問題にも取り組んでいきます。

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