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くまもり本部・支部、人身事故とクマの絶滅回避のために、里の実りを山に運んでいます

奥山原生林でひっそりと生きながらえてきた日本のクマたちは、戦後の林野庁の拡大造林政策と、奥山開発で、広大なえさ場を人間に破壊され、生息地を失いました。

外から見ると青々とした人工林、林内食料はゼロ

 

さらに、近年、残されたわずかな自然林の中から、ブドウやイチゴ類など果肉が多汁で柔らかい果物である液果の実りが少なくなっています。受粉してくれる昆虫が、地球温暖化等の影響で大量絶滅したからです。

ほとんどの液果は虫媒花です。写真は、ミズキ  

 

ドングリ類など実の堅い堅果の実りも少なくなりました。酸性雨等の影響で、木々が弱ってきており、大量枯死してしまったからです。(ナラ枯れ、カシ枯れ、シイ枯れ)

今年枯れたクヌギの巨木(兵庫県)

今年夏の鳥取大山のナラ枯れ(赤色部分の木が枯れてしまった)

 

様々な液果の実りやミズナラを中心とする堅果の実りに頼って生きてきたツキノワグマたちは、食料を失いました。ツキノワグマは日本の奥山にいるだけでは生きられない状況になっています。ブナは幹の構造上、ナラ枯れしませんが、多くの地域で、去年も今年も大凶作。実りがゼロです。木々が弱ってきているのです。

 

こんなことになったのはすべて人間活動が原因です。

 

冬ごもりに備えて今大量の堅果を食べ続けなければならないクマたちは、連日、里の木々の実りを求め、次から次へと山から出てきています。

クマと共存する経験をしたことがない集落では、対応の仕方がわからず、皆さん悲鳴を上げておられます。

猟友会、警察、行政、マスコミなど大勢で1頭のクマを追いかけまわして、クマをパニックに陥れ、人身事故を誘発させています。

 

クマは人間と違って、本来、争いを避ける大変平和的な動物です。至近距離での突然の接触を避ければ、人身事故のほとんどは防げます

 

日本のほとんどの役所は、クマが出てこないように里の柿の木を伐ったり、里の柿の実をもいで捨てたりするよう、地元に指示しています。

しかし、里の実りを利用できないと、クマたちは生きるために仕方なく、里を通り越して、その先の市街地に出て行くようになりました。

これが今、日本中で起きているクマ騒動の実態です。

 

熊森は、臆病なクマたちが、夜こっそり民家の柿の木に登って柿の実を食べていたら、静かに見守ってくださいと地元にお願いして回っています。

奥地に行くと、昔からクマと共存してきた集落が今もいくつもあって、必死で柿を食べるクマを皆さんそっと温かい目で見守っておられます。こういう集落では、クマによる人身事故は全く起きていません。

 

このようなことが無理な集落では、柿の実をもいでください。

熊森も手伝って本部・支部、みんなでどんどん山に運んでいます。

熊森本部資料より  山中のクマの通り道に運んだドングリと柿

熊森本部資料より  ドングリやカキを食べたクマの糞

熊森本部資料より  人間の運んだドングリを食べに来たクマの兄妹(自動撮影カメラ)

 

以下は、今年、くまもりの支部から送られてきた10月の活動報告写真です。

集落の方と協力して、一緒に、軽トラでごみ袋50袋分ものもいだ柿と集めたドングリを、クマが山から出てくる道に大量に運びました。

 

次の日見に行くと、「クマのエサ場です。近寄らないで下さい」という看板を、地元が立てておられました。

 

辺り一面クマの糞でいっぱいでした。

もいだ柿の実、ドングリを運び続けると、クマをこの場所で止めることができます。

 

 

平地のクヌギやコナラのドングリを、クマの通り道に運ぶ熊森会員たち

 

この町では、山裾に実のなる木をたくさん植樹して、令和のクマ止め林を作っていこうという熊森提案に賛成する方が、何人も出てきました。

 

熊森は、奥山水源の森の再生活動を進めるために結成されたボランティア団体で、がんばっています。しかし、これには時間がかかります。

当面のクマ対策として、平地向きのドングリや、カキ、クリなどを地元の皆さんと、山裾にたくさん植えていこうと思います。

 

飢えて人里に出て来ざるを得ない哀れなクマたちが、やっとのことで見つけた食料を取り上げた上、「危険」とレッテルを貼り殺してしまう。こんな行為が、今、日本全国で展開されており、このようなことが続けば、クマの個体数は激減し、クマは確実に絶滅します。

 

熊森は、やさしい解決法が一番優れていると思います。

 

クマが里や街中に出てきたという現象だけを見ている人たちは、現在のクマの異常事態に対してびっくりするような間違った原因説を出しておられます。

 

<クマが山から出てくる誤った原因説>

1、クマが爆発増加した(クマ爆発増加説)
熊森反論:本来の奥山生息地は空っぽです。

2、クマが人間をなめだした(人なめ説)
熊森反論:人間が怖いから人間から逃げようとして人身事故を起こすのです。

3、クマが山のものより里のもののほうがおいしいと味を占めた(味しめ説)
熊森反論:実験で、ドングリと柿やリンゴを同時に与えると、クマはドングリに飛びつきます。

4、クマが生息地を拡大しようとしだした(生息地拡大説)
熊森反論:生息地拡大ではなく、ドーナツ化現象です。

5、地元が里山を放置した(里山放置説)
熊森反論:里山は1960年から放置されています。

 

どうしてこんなに誤った原因説が世に出回るのでしょうか。

日本熊森協会の原因説は、ただ一つです。

→1、山から食料が消えた

 

小泉進次郎環境相が26日にクマ被害対策の会議開催を表明されているそうです。

クマの生息環境の危機的な状況も踏まえた共存のために何をするべきかを具体的に進めることができる会議になることを祈るばかりです。(完)

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