くまもりNews
7月19日 当協会顧問平野虎丸氏(熊本県)は36年前から、奥山、沢から50メートル、急斜面のスギ・ヒノキの人工林を広葉樹林に戻せと主張し続けている
林業家の家に育った平野虎丸氏は、今回の阿蘇を中心とした九州北部豪雨災害に、人一倍無念でしょう。ずっと、こうなることを警告し続けて来られたからです。以下、平野氏のブログ特定非営利活動法人エコシステムの写しです。
2012年07月19日00:45
熊本県は、いつ、どこが崩れてもおかしくない状況となっています。
九州全部と言えば全部。日本全国どこでも、同じ状況です。日本の山々はすべて、林野庁による「森林法」の支配下にあるからです。
17日の熊日朝刊には、「人家近い林 早急に間伐を」というタイトルの記事も掲載されていました。
村田宗城大学名誉教授と被災地を歩く、という副題がついています。
以下に、一部抜粋します。
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「表面を覆う火山灰由来の黒ぼく土は水を通すが、黄褐色の土は粘土質で水を通しにくい。黒ぼく土が水を含むと重くなり、浮力も働く。
阿蘇全体に共通した地形で近年経験のない大雨のため、多くの場所が崩れた」
「保水力がある木を植えること自体はいいが、間伐が行き届かないと根がしっかり張らず、災害に弱い」
村田氏は、11人が死亡し、家屋約80戸が全壊した1990年7月の豪雨災害でも坂梨地区を調査。急傾斜地や川岸に植えられたスギやヒノキが濁流に流されて橋に引っ掛かるなどして流れをせき止め、水害の原因になったと分析している。
「雨が降った時に踏ん張るのは山しかない。防災対策の意味でも人家に近い人工林の間伐を早急に進めるべきだ。10年たてば効果が出る。木材として伐採した後は、広葉樹など地盤が弱い阿蘇に合った植樹を検討してほしい」
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1.スギやヒノキは、挿し木ですから直根がない。
2、間伐をしても根が深く入り込むことはない。
3、すべての木の根っこが横に張ることで根っこどうしが手をつないでいる。
4、雨水の地下への浸透が少ない。
5、雨水はスギやヒノキの根っこの上を流れていく。
6、従って、スギやヒノキは雨水を十分に地下に送ることは不可能で保水力は少ない。
間伐が推奨されるのは、間伐したあとに直根のある実生の雑木や雑草が生えるからです。
しかし、木材生産における間伐は15年生ぐらいから徐々に行うものであり、40年~50年を経た阿蘇地域のスギやヒノキは成長しすぎていて、間伐は遅すぎます。
急斜面において、
100本の挿し木スギを30本間引くとすれば、100本で受けていた風を70本で受けることになり、
台風などには弱くなり、倒木の危険性が高まります。
今以上に危なくなるのです。
平坦地においての間伐は意味があるでしょうが、急傾斜地での間伐は危険なだけです。
大学の先生たちは自ら林業をされたことがないので、具体的なことになるとあやふやで、頭だけの想像になっています。
間伐をすると10年もすれば効果が出る、といわれていますが、10年の間には、いったいどれだけの人々が犠牲になることでしょうか。
私は36年も前から今回のようなことを予見して活動をしてきました。
一刻を争っているのです。
今回の土砂崩れでわかったように、年齢のせいで、急傾斜地のスギやヒノキは崩壊寸前にあります。
特に、小さな沢は危険です。
大雨によるスギ・ヒノキの倒木によって、小さな沢が信じられないほど大きな沢に変貌します。
私がこれまでに書いてきたブログをぜひお読みいただきたいと思います。
こんな災害が起きないように、私は、林野庁にも環境省にも、熊本県にも、口をすっぱくして言ってきました。
特に今年は、熊本市にある森林管理局も訪問しましたし、東京から林野庁の職員が熊本の説明会に来られた時にも言いました。
7月7日(土)には、鹿児島県に新幹線で出向いてまで、環境省の職員の皆さんに、挿し木スギ・ヒノキの山は土砂崩れを起こすから森ではない、と訴えました。
阿蘇の土砂崩れは、それから4日後の7月12日未明に発生したのです。
虫の知らせだったのかもしれません。
挿し木スギ・ヒノキ山の麓に暮らす住民の皆さんの安全を一番に考えるならば、
1、安全な場所への移転
2、スギ・ヒノキの全伐
しか方法はありません。
ぜひ、ご検討のほどをよろしくお願いいたします。