くまもりNews
9/15 くくりわなに誤捕獲された子グマから離れぬ母グマ、哀れ母子とも射殺 栃木県
新聞記事より 9月15日
15日午前11時ごろ、塩谷町下寺島の田んぼ脇のあぜ道で、イノシシ捕獲用のわなにツキノワグマ1頭が掛かっていると、同町役場に届け出があった。
矢板署によると、現場近くで母グマとみられるクマも1頭発見。近くに人家があるため、同役場から依頼された地元猟友会が午後3時25分ごろ2頭を射殺した。クマは体長81センチ、体重約20キログラムと、体長108センチ、体重約60キログラム。
–以上–
●熊森栃木県会員が、この事件に対して関係者から電話で聞き取った結果が、熊森本部に届きました。大変胸の痛む事件であり、本部からも、関係者に電話をしました。関係者の方は、大変良心的で、質問に対して包み隠さず話してくれました。
<関係者の話>
田んぼのあぜ道に埋め込んでいたイノシシ用くくりわなに、子グマがかかっており、近くに母グマがいるという通報が入りました。放獣しなければならないと思いつつも、栃木県ではクマの放獣体制が整っておらず、専門家もいないので、どうしたものかと思いつつとりあえず現地に行ってみました。川を挟んで30メートルほど離れた対岸の田んぼのあぜに、後ろ足がくくりわながかかった子グマがおり、5メートルほど離れたところで、母グマがうろたえていました。人間たちがやってきたことに気づいていると思うのですが、母グマはその場から離れようとしませんでした。
私たちは、花火や空砲で母グマを驚かしてしばらく遠くに追いやるというような試みは、行いませんでした。母グマがそばにいるから放獣できないとして、まず母グマを射殺しました。次に、罠にかかっていた子グマも射殺しました。その後でそばに行ってみると、もう1頭の子グマがいましたが、そのうちどこかへ行ってしまいました。
(熊森から)
●環境省は、残酷で誤捕獲動物を多く生む、くくり罠を禁止すべきです。
くくり罠は、強力なばねで足にかかったワイヤーを締め付けるため、四足動物の足が3本になってしまいます。2本足になった犬を見たこともあります。残酷な上、獲ろうとした動物と違う動物が誤捕獲されることが後を絶たず、結果的には何の被害も出していない動物まで、今回のように殺してしまうことになります。いったんくくり罠にかかると、外してやろうと思っても、動物が暴れるため、全身麻酔をかけない限り外すのがとてもむずかしくなります。
誤捕獲の実態は、普通は報告されないので、闇から闇に、絶滅危惧種の動物も含め大量に誤捕獲され、殺されています。環境省は、くくり罠の直径を12センチ以下とする規制をかけたから、クマはかからないと言っていますが、今回のように子グマにはかかるし、成獣グマでも指等がかかる例が、後を絶ちません。その上、罠をかけた人が直径12センチを守っているかどうかチェックする部署が、この国には実質上ありません。
●子グマと子グマを思う母グマの心を思うと、今回のような場合、人間としては本来、絶対、殺せないはずです。豊かな森を造ってきてくれた森の動物たちへの感謝を忘れていませんか。熊森はもっともっと大きくなって、現地に直行して罠を外せるように、早くなりたいです。
●誤捕獲されたクマを殺すのは、鳥獣保護法違反です。誤捕獲された動物は、その場で逃がさねばならないことになっています。この点に対しては、兵庫県行政を見習って下さい。兵庫県行政は、誤捕獲グマは、全て放獣してくださっています。
●栃木県はクマの放獣体制を整えるため、早急に、専門家の育成をはかり、もしくは、放獣できる団体や業者と連携してください。
県庁に問い合わせると、大型獣を扱っておられる獣医さん3名が、平成15年度から、クマ放獣時の麻酔に本格的に携わってくださっているそうです。しかし、放獣地を自分の市町内に持っているのは、県内では日光市と那須塩原市だけで、残りの市町は、放獣地をまだ見つけていないので、放獣できないということでした。→くまもりとしては、必ず元棲んでいた山があるのですから、そこへ帰してやるべきだと思います。
●全国都道府県の熊森会員は、1頭1頭のクマ事件に関して、電話で聞き取りをしたり、現地を訪れたりして、どうしたら集落にクマが出て来なくなるか、どうしたらクマが殺されなくなるか、考えたり、現地でアドバイスをしたりしてください。
◎以下は栃木県塩屋町の産業振興課がインターネットで公表している、クマのパンフレットです。これはとてもよく作られています。
・・・・・・・・・・
クマとの事故を防ぐために
クマとの事故を防ぐための注意事項(クマ出没情報を含む)
栃木県にはツキノワグマがすんでいます。
普段はおとなしい動物ですが、時には人が襲われることもあります。
私たちが気を付ければ、多くの事故を防ぐことができます。
クマに出会わないために
(1)クマに襲われないためには、クマと近くでばったり出会わないようにすることが最も大切です。
・クマがいそうな場所には行かない
・早朝や夕方は特に注意
・一人での行動は避けよう
・音を出しながら歩こう(鈴やホイッスル)
(2)農作業を行う際に注意すべきこと
・作業中にラジオなど音の出るものを携帯して、自分の存在をアピールする
・クマの出没情報に留意し、行動が活発になる早朝・夕方は周囲に気を付ける
・森林、斜面林などのそばの農地はクマの出没ルートになりやすいので特に注意し、周囲の刈り払いなどを行う
・頻繁にクマが出没する地域においては、できるだけ単独での作業は避ける
(3)誘引物の除去
・クマを誘引する生ゴミや野菜・果実の廃棄残さなどを適切に処理する
・果樹園が最も被害を受けやすいので、収穫後の放置果実は適切に処理する
・クマは収納庫等に入り込むことがあるため、収納庫はきちんと施錠するなど管理を徹底する
・草刈り機などに使われるガソリンなどもクマの誘引物になるため、保管場所に注意する
もしもクマに出会ったら・・・
クマが人を襲う理由の多くは、自分の身や子グマを守るためなので、クマを刺激しないことが大切です。
・静かにゆっくりとクマから離れる(大声を出さない)
・クマに背中を向けない、走って逃げない
・グループで固まる
・子グマには絶対に近づかない(近くに親グマがいる)
ツキノワグマの特徴
・臆病でおとなしい
・嗅覚がするどい
・木登りがうまい
・人より足が速い
・食べ物のほとんどは植物の実や芽、葉。ハチやアリ、(最近は)死んだシカなども食べる。
・体重はおとなのオスで80kg程度、メスで60kg程度。
・・・・・・・・・・