くまもりNews
例外種以外のほとんどの狩猟鳥獣の捕獲数が激減している事実を、どう考えるか
- 2013-08-14 (水)
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わが国の狩猟対象鳥獣は、鳥類29種、獣類20種(うち5種類は外来種)の、計49種である。
今年の3月12日、環境省や有識者が出席して、「狩猟鳥獣のモニタリングのあり方検討会」が持たれた。事務局は、自然環境研究センターである。
その中で配布された資料に、狩猟鳥獣の1923年(大正末期)から現在までの捕獲数(狩猟数+有害捕殺数)の推移グラフがある。それを見て驚いた。例外種と外来種以外は、どれも激減している。
<鳥類29種の場合>
捕獲数が増えているのは、カワウ1種のみで(Aタイプ)、あとはキジに代表されるように、どれも激減している(Bタイプ)。以下、環境省HPから。
(Aタイプ)
カワウ
(Bタイプ)
ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾ ライチョウ、ウズラ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く。)、キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズ メ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス
<獣類20種の場合>
捕獲数が増えているのは、特定外来生物法2004年によって根絶殺害捕殺が始まっている外来種を除くと、イノシシとシカのみで(Aタイプ)、あとはウサギに代表されるように激減している(Bタイプ)か、クマのようにどちらともいえないもの(Cタイプ)である。
(Aタイプ)イノシシ、シカ
(Bタイプ)
タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン、イタチ、アナグマ、ハクビシン、リス、ウサギ、
< 熊森の考察>
これらのデータは、いったい何を意味しているのだろうか。
狩猟者が減って、捕獲される狩猟鳥獣が減ったのか、かれらが田畑を荒らさなくなったので、有害捕殺しなくてもよくなったのか、または、例外種を除いて、これら自然界の野生鳥獣の生息数が激減したのか。
いつも見ている狩猟者数の推移グラフを、ここでもう一度見てみよう。
もちろん、地域や種類によっても違うし、生息環境も、森林に生きるもの、草原に生きるものなど、個々の状況は違うだろうが、西日本に住んで山の中を歩き回っているわたしたちに言わせれば、例外種以外は、我が国の野山から野生鳥獣が限りなく激減していっているように思える。
狩猟対象鳥獣以外にも言えることだが、むかし、どこにでもいた鳥獣が見当たらなくなってきている。緑に覆われた国土を見て安心している人がほとんどだが、実際は、野生鳥獣の棲めないひどい自然環境になってきていると言えるのではないか。スポーツやレジャーとしての狩猟など奨励している場合ではないのではないかと思えるのである。
農家がシカ、イノシシなどの大型動物に田畑を荒らされるようになって、所によっては農業ができないほど困っておられるのは、私たちも各地で見聞きしてきた。なぜ多くの鳥獣が激減する中で、これらの大型動物だけが大量捕獲されているのか。誰も説明できない。人間には自然界がわからない。
今、必要なのは、一般的なハンターを増やすことではなく、シカ、イノシシ、加えるなら、クマ、サル、この対策員を養成することではないか。しかも、これらの動物だけを見ているのではなく、彼らの本来の生息地が今どうなっているのか調べ、どうしていけばいいのかまで考えられる専門知識と、生命尊重を最優先にして考えられる倫理感あふれた対策員が必要とされていると思う。