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今、ニホンジカが一体どうなっているのか 日本人が対面している自然保護上の難題

1977年の論文を読むと、ニホンジカは絶滅が心配されていました。

シカは、当時は郡部の人でも、奈良公園や宮島に行かなければ見ることの出来ない珍しい動物だったのです。

50センチ以上の積雪日が30日を超えると死亡個体が出始め、50日を超えると、死亡個体が多発するという報告もあります。雪深いところでは、シカは動くことができなくなり、生きられません。

ーーーあれから36年。

今や郡部では、シカが増えすぎた、殺しても殺してもシカが減らないと、悲鳴が上がっています。

いったい、この国のシカたちに、何が起きているのでしょうか。

 

 

そんななか、私たちがニホンジカについて得た情報を、以下にまとめてみました。

自然界には、人間にわからないこと、理解不可能なことがたくさん起きますから、断定はできませんし、どこまで正しいのかも、わかりません。

しかし、人間に翻弄されてきたシカの姿は見えます。

 

シカはどうなったのか 

江戸時代、シカは、林縁の平地に今よりもたくさん棲んでいたと思われます。奈良のように、神様としてシカを大切にする地域もありました。

シカ生息地域の農家は、農作物をシカやイノシシから守るため、柵を設置したり、追い払ったり、時には殺害したりしながらも、この国で共存してきました。

 

明治になって近代化が進む中で、西洋文化である狩猟が一般にも導入され、野生鳥獣が獲られるようになります。(我が国では、明治になるまでの1200年間、「殺生禁止令」が出続けていた)

日本人の人口爆発が起こり、農地化や宅地化がどんどん進んで、シカたちの生息地であった湿地や草原は次々とつぶされていきました。

本来、平地の草食獣であったシカは、山へ山へと追いやられていきます。(今、シカが高山にまで上がっていますが、それ自体が異常なのだそうです)

大雪の年には、シカは動けなくなって、大量に餓死しました。

昔、たくさんいた野犬<ノイヌ>に、絶えず襲われました。(昔、本州や九州にいたのはオオカミではなく、大神としての野犬であるという説による)

戦争中には、食料として人間に食べられ、絶滅寸前にまで追い込まれたところもありました。

 

絶滅の恐れが叫ばれるようになって、メスジカを狩猟対象としないように等と、シカ保護策がとられました。

野犬は東京オリンピックの時に徹底的に駆除したし、飼い犬の放し飼いも禁止されました。これによって、生まれたての子ジカなどを捕食していた動物がいなくなりました。

 

戦後の国策である拡大造林政策によって、スギ・ヒノキの苗木を植えるため、奥山原生林が猛烈なスピードで、皆伐されていきました。

伐採跡地は、一時、大草原と化しました。

草食動物のシカが山の中で増えだしました。

しかし、その後、植林苗が育って、スギ・ヒノキの木々が大きく育つようになると、林中は真っ暗になり、林床は砂漠化してきました。

シカは、生きられなくなって山から出て来始めました。

 

その存在を忘れるほど見かけなくなっていたシカが平成になって、突然人里に現れ出し、みるみる目撃数を増やしていきました。人に追われると、山奥まで造られた道路を通って、簡単に移動します。また、人間が造ったこれら林道の法面に吹き付けられた外来種の草々は、シカたちの格好の餌場となりました。柔らかい草を食べているうちに、気づくと人里に出ていました。

地球温暖化で雪が減り、シカの大量餓死があまり起きなくなりました。(ただし、2012年は大雪でした)

我が国が工業立国をめざしたため、農業従事者が減って、耕作放棄地が目立ち、今や、シカたちが本来の平地の生息地に戻ってくるようになった形です。

農業被害、森林被害、生活被害・・・地元の人たちが、シカ被害に悲鳴を上げ始めました。郡部では、過疎化高齢化が進んでおり、シカに対応する力がありません。

 

<注:以上の記述に新たな情報が入れば、当協会としては、その時点で書き換える予定です。>

 

行政は、保護策をやめて、とにかくシカ数を減らそうと、メスジカも積極的に獲るように、猟友会に依頼しました。現在国は、シカ1頭を獲ると、捕獲者に8千円の報奨金を出しています。市町村の上積みもあって、シカ1頭の捕獲報奨金が2万円となっているところもあります。しかし、獲っても獲ってもシカ数が減らないと言われています。

 

(熊森から)

環境省は、研究者を使って、シカ大量捕殺装置を開発したり、猟友会と連携してハンター養成事業に力を入れ、国をあげてシカ捕殺に躍起となっています。そこには、野生動物の命に対する尊厳など完全に吹っ飛んでいます。生きとし生けるものに対する共感など、もはやありません。研究者たちが唱える適正生息数(1平方キロメートルに3頭)になるまで、人間の力で被害が出ないようにシカ数を減らし、その後はその数を保持しようと考えているようです。

 

しかし、野生鳥獣の数は、自然界では著しく増減を繰り返しながら長期的に一定となるようバランスをとっていくものです。人間が、人力で生息数を思い通りに調整してやろうという発想自体に無理があるのではないかと私たちは思います。

また、今のような大量殺害一辺倒の対応で、「私たちは野生鳥獣とこの国で共存しています」と言えるのか、当協会としては疑問を感じるのです。人としての倫理上の問題もあります。

そこで、環境省の担当官と意見交換をしようと思い、10月17日、兵庫県本部から3名が上京しました。(次ブログに続く)

 

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