くまもりNews
シカなどによる農業被害問題の解決は柵で囲う 4/27 くまもり全国支部長会②
上の審議中継の中で、シカ・イノシシ・サルなどの野生動物による農業被害に苦しむようになった滋賀県高島市のある集落の取り組みが、電柵部会長によって紹介されています。
簡単に言うと、国などの補助金を使い、自分たちも一部負担して、集落全軒が協力し、集落と田畑を全部電気柵で囲ってしまい、野生動物被害問題を解決したということです。もちろん、柵のメンテナンスなど、今後も作業は必要です。
金網と電気柵で徹底的に集落を囲った兵庫県のある町。
熊森本部のある兵庫県でも、このような集落が次々と誕生しており、わたしたちはこれまでもいくつか視察させてもらってきました。集落を柵で取り囲むには、1集落で何千万円というお金が必要です。現在、私たちの税金が、このような事業に回されています。農家の被害を思うとやむおえないと思います。
日本の農家は以前農作物を守るため、イナゴなどの虫の大群と闘って激減させ、次に、スズメなどの鳥の大群と闘って激減させ、その後は、ネズミやモグラなどの小型動物と闘って激減させ、今は、大型動物たちと闘って、数を激減させようとしています。虫や鳥や小型動物は、農薬や、圃場整備によって姿が消え、農業被害問題が解決されてきましたが、今、大型動物たちとの闘いは、金網や電気柵、箱罠や囲いわなによってなされています。
大日本猟友会の会長さんが、衆議院環境委員会参考人質疑で、江戸時代も、農家はイノシシやシカに、銃で立ち向かって闘っていたという話をされていました。今となっては、その当時のことは、資料もわずかしかなく、推し量るしかありませんが、状況は今とかなり違っていたと思います。
以前、国際自然保護連合生態系管理委員会北東アジア副委員長である河野昭一先生(京都大学名誉教授)にインタビューさせていただいたとき、戦後、東北6県分の面積に相当する、入らずの森であった樹齢何百年という広大な奥山原生林が、国策として皆伐され、動物たちの棲めない針葉樹だけの人工林にされてしまったことを教わりました。
江戸時代にも、人と動物たちの境界線で、せめぎあいがあったでしょうが、野生動物達の背後には、人間が入ることもない深い森が生息地としてどっしりと控えていたのです。
今や、戦後の開発に次ぐ開発と人工林化で、どこまでも奥地に人間が入り込んでしまっています。「田畑に出て来る動物たちは殺してしまえ」では、共存はできないと思います。共存しないと、人間も、奥山水源域を失うなどして生きていけなくなるのです。
今は、人間が1歩も2歩も下がって、奥山から撤退し、林道も閉鎖し、人工林も自然林に戻し、その上で、はみだしてくる野生鳥獣たちを奥山に追い返すため、かれらと闘うべきだと思います。
野生動物たちの生息地保障については、今回の「鳥獣保護法改正案」は、全く触れておりません。
今回の法改正によるこの法案の、他生物に対する思いやりのなさを思うと、人間として恥ずかしくなります。実質、環境省案を作っておられる頭の良い立派な先生方が考え出した案が、どうしていつもこのように、血も涙もない案になってしまうのか、残念でなりません。なぜ、人間が壊した広大な生息地を、かれらに返してやろうとしないのでしょうか。