くまもりNews
9月28日 土砂で埋まっていく日本の渓流に危機感 兵庫県宍粟市<渓流の生物調査>
くまもり本部は、兵庫県の奥山の渓流に入り、水生生物の調査を行いました。
地元集落のおばあさんの話によると、昔は、この時期になると、30㎝ぐらいのアマゴが産卵のために浅瀬にたくさん上がって来て、女でもいくらでも手づかみできたということです。
8年前にここの谷川を見た時、すでに魚影が、見当たりませんでした。
地元の方の中には、釣り人が来て乱獲しているとか、バッテリーを持った人がやって来て、根こそぎ魚を獲っていったとか教えてくださる方もあり、わたしたちは胸を痛めました。
渓流魚は絶滅してしまったのでしょうか。今回、専門家に来ていただき、みんなで調査することになりました。
この日、指導して下さったのは、くまもり会員で渓流釣り歴40年のベテラン渓流釣り師です。
まず最初に、この方は、青い雑巾で水中の岩肌をぬぐわれました。
そこには、何匹かの小さな黒い虫がついていました。これだけで、「この川に、魚がいます」と、この方は断言されました。さっそく、釣り針にミミズを付けて、谷川の魚がいそうなところにたらすと、しばらくして12センチのアマゴがかかりました。
「まだ、アマゴが残って居た!」
わたしたちはうれしくなりました。初めてアマゴを見る人もいました。確かに、ヤマメと違って、体側にきれいな赤い斑点が付いています。
魚は、写真撮影後、直ちに、川に戻してやりました。
わたしたちは、タモ網を使ってガサガサ調査をしました。
川の中の石の下は、水生生物たちの大事な隠れ家です。石ををひっくり返すと、川虫やサワガニ、カジカなどの生き物の姿が少しありました。隠れていたところをびっくりさせて、申し訳なかったのですが、生き物たちと少し出会えてほっとしました。
(今回確認できた水生生物)
〇アマゴ、タカハヤ、カジカ、サワガニ、イモリ、川虫…本当に少しだけですが、見つけることができました。
× イワナとヤマメは、見つかりませんでした。
今回の調査で、谷川の水量が少なかったこと、流れが緩やかなこと、岩の下の空間が土砂で埋まっており、魚たちの隠れ家があまりないことなどが気になりました。
渓流釣り師は、まず山に入るとき、上流の山を見るそうです。戦後の拡大造林で、人工林にされてしまったところは、水量が激減です。魚もそれにつれて激減で、釣り場としては、だめだそうです。
また、人工林の中は下草が生えていないため、雨が降るたびに表土が流出し、谷川に流れ込んで、川を埋めていきます。川の流れが緩やかになると、水の中の酸素が不足したり、淵がなくなったり、川の中の岩の下にあった大きな空間(水生生物の隠れ家)が埋まったりして、渓流魚や川虫などの水生生物は生きづらくなります。
また、ダムが造られると、これらの魚は海に行けなくなってしまいます。
この日、興味深いお話をいろいろと聞かせてただきました。くわしいことは、会報などで、会員のみなさんにお伝えしていきたいと思います。
最近は、原生林でも下草が消えて、林床が茶色一色になっている所が多々あります。
ササが消え、林床には、シカが食べないチャボガヤがうっすらと生えているだけです。(6月撮影)
この原因はシカだと言われていますが、それだけが原因かどうかはわかりません。その結果、雨が降ると、原生林からも土砂が流れ出て、原生林内の谷川までもが埋まっていきます。
ここでも、沢の両岸の樹木の根がむき出しになっており、川岸の土砂が谷川に崩れ落ちているのがわかります。その結果、両岸の樹木があちこちで倒れ込んできていました。
わたしたち人間が、経済や自らの欲望のために行ってきたことが、多くの魚たちや虫たちの生息場所を奪ったのだと思うと、悲しくなりました。
もう一度、昔のようにこの谷川に大きな魚をたくさんよみがえらせるには、大量の水量と、速い流れを復活させることが必要です。そのためには、この地域の奥山全部の風景を、昔の広葉樹林に戻さねばなりません。一市民団体だけでは限界があります。国を動かさなければ、だめです。
★当協会がシンボルにしているクマから見れば、戦後人間が奥山にしてきたことは、実りをなくし、昆虫をなくし、渓流魚をなくしたことで、徹底的にクマたちから餌を奪ったことになります。クマたちは里に出ていくしかありません。