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平成27年度からの都道府県別クマ・サル・シカ・イノシシ対策を決める第11次「鳥獣保護管理事業計画」

平成26年に環境省は、その数が著しく増加し、またはその生息地が拡大している鳥獣による生活環境、農林水産業または生態系にかかる被害に対処するための措置を法に位置付けるためとして、いわゆる

「鳥獣保護法」正式名「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」

の内容を改訂すると共に、「管理並びに」を付け加えて、法律名も

  →「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」

と、変えました。管理=殺し、生息地を縮小させることです。

 

環境省はもはや、昔のように、「野生鳥獣を守る」ところではありません。国民の意識が付いていけないまでに、変節しています。

 

☆国の法改訂を受けて、兵庫県がどう判断するのか見極めるため、委員として、傍聴人として、熊森は、2月17日、平成26年度兵庫県野生動物保護管理運営協議会に出席しました。

 

(1)特定鳥獣指定について

環境省の方針を受けて、各都道府県知事は、これまでの特定鳥獣を、保護すべき一種または管理すべき(=殺すべき)二種に分類して、それぞれ保護計画または管理計画を策定することになりました。各都道府県の鳥獣行政が策定する「鳥獣保護事業計画」も、「鳥獣保護管理事業計画」という名称に改められました。

 

(熊森より)・・・自然界の生き物をまるで工業製品のように、一種または二種等と機械的に振り分けようとする発想自体が既にクレージー。自然とは何かということが全く分かっていない人たちが考えた案なのだろうかと残念に思いました。鳥獣行政は地方分権なので、都道府県ごとに判断すれば良いと言われても、同じ都道府県内でも、地域によって野生鳥獣の生息状況はかなり違っています。一律規定など無理です。兵庫県行政の判断は、以下です。

 

<兵庫県行政が出した判断>

保護すべき第一種特定鳥獣・・・ クマ 

管理すべき第二種特定鳥獣・・・ シカ、イノシシ、サル

みなさんの都道府県では、どのように分類されましたか。

 

(2)指定管理鳥獣捕獲等(等=殺傷)事業の創設

 

(熊森より)・・・指定管理鳥獣とは、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるとして、環境大臣が定めた鳥獣です。国がこのたび指定管理鳥獣に指定したのは、シカとイノシシです。指定管理鳥獣に指定されると、以下のことが、都道府県の判断でできるようになります。まるでナチスの根絶殺害(ホロコースト)であり、もはや狂気です。

 

①捕獲等の許可が不要・・・住宅地、墓地、公道以外なら、鳥獣保護区内であろうと国立公園内であろうと、見つけ次第どこでも殺して良い。

②夜間銃猟等の規制緩和・・・24時間罠や銃で殺し続けても良い。死体を山中に放置しても良い。

 

これまでの有害駆除とちがって、そのシカやイノシシが、人間に何の被害も与えない所、例えば山奥に生息していても、撃たれます。鳥獣たちは、なぜ撃たれたのか分からない為、どこにいればいいか学習できなくなります。しかも、1年中24時間撃たれるため、鳥獣たちはどこにおればいいのかわからなくなり、大混乱をきたすと思われます。

人間のすることには必ずミスがありますから、人身事故も多発すると思われます。猟友会もこの事業は危険過ぎると猛反対されてきました。

 

<兵庫県行政が出した判断>

 

本年度(平成27年度)は、指定管理鳥獣捕獲等事業を導入しない。

みなさんの都道府県では、どうなりましたか。環境省によると、指定管理鳥獣捕獲等事業を導入した都道府県があるそうです。どこなのか聞いても教えてもらえませんでした。

 

(その他)

認定鳥獣捕獲等事業者(民間の株式会社など)制度の導入、住宅地での麻酔銃による捕獲、網猟免許、罠猟免許の取得年齢を18歳へ引き下げなどは、全国一斉に導入されます。

 

平成26年度兵庫県野生動物保護管理運営協議会での、熊森森山会長の主な発言

 

・生息地の保証を・・・大型野生鳥獣が山から出てこざるを得なくなった元凶である鳥獣の棲めない兵庫県内の人工林率は、この間1%も下がっていない。

 

<兵庫県クマ生息地の主な人工林率> 朝来市66%、養父市61%、豊岡市43%、宍粟市73%、香美町44%、新温泉町45%

 

しかも、わずかに残された自然林が、近年年々劣化する一方で、昆虫も消え、実りも消えて、野生鳥獣が棲めなくなっている。人間が破壊した野生鳥獣たちの生息地を復元してやらずに、かれらを撃ち殺すだけなら、人間がもう悪魔になってしまう。野生鳥獣の生息地の復元に取り組むべきだ。ある論文によると、我が国には草地が500万ヘクタールあったが、戦後ことごとくつぶされてほぼ消えたということだ。シカに草原という採食場所をある程度は返してやるべきなのではないか。

 

・命を奪うことを人間が機械的に決めるべきではない・・・兵庫県のツキノワグマ推定生息数の中央値は、今回798頭であり、800頭を超えると狩猟再開となっている。今は、保護対象動物で、あと2頭増えたら捕殺対象動物になるなど、あまりにも機械的だ。第一、なぜ、生息推定数の中央値が798頭になるのか理解できない。人間が勝手に考えた数式に、勝手に考えた数字を入れて、800頭を超えたら狩猟再開すべきと勝手に決めている。人間の勝手が過ぎる。数字の検証をしたいので、ずっと言い続けてきたことだが、このような数字が出てきた全過程を公表してもらいたい。(目撃数と捕獲数を2大パラメーターとして、いろいろなことを加味した結果、コンピューターが計算して出した数字ですと言われても、何が何だかわからないので、検証のしようがない)

最近、韓国ではクマの胆(くまのい)が日本の10倍の値段で流通しているという。安易なクマの狩猟再開によって、捕獲が暴走する恐れもある。

→ 兵庫県の回答・・・クマの生息推定数の中央値が800頭を超えたからといって、狩猟を即再開するというような機械的なことはしません。

 

 

(環境省の野生鳥獣対策政策についての熊森見解)

他生物の生命の尊厳が完全に吹っ飛んでいる。

この大地は人間だけのものではないのに、まるで人間だけのものと勘違いしている。

クマ・シカ・サル・イノシシから人間は豊かな大地を作ってもらうという大恩恵を受けているのに、まるで彼らの存在が有害オンリーであるかのごとく取り扱われている。

野生鳥獣の問題は、生息地の自然環境や餌場、ねぐら、他の生物とのつながり(リンク)などをしっかり見ていかなければ解決できないのに、それらを無視して、クマ・サル・シカ・イノシシという動物だけをバラバラに見ている。

自然観、動物観が、根底から間違っている。完全に強者の一方的な論理である。この様な政策では、野生鳥獣との共存など永久に不可能なばかりか、人間社会をも、強者の一方勝ちという優しさを失ったものにしてしまうだろう。大変残念である。

 

最近メディアは情けないことに、国家権力の顔色をうかがいながらの報道しかしないので、国民は国がこのような残酷なことをしていることをまず誰も知らない。以前なら考えられなかったことだ。知れば多くの人達が間違いなく胸をつぶすだろう。反対する声が起きるだろう。

今回も兵庫県庁記者クラブに協議会を傍聴しに来てくださるようにお願いしたのだが、一社も来なかった。記者が記事を書いても、デスクに没にされるという話をよく聞くが、それでも記者は、傍聴にきてほしい。国が国家権力を使って進めようとしている非人間的で理不尽なことを、国民に届けてほしい。

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