くまもりNews
8月7日 第19回くまもり全国大会 前半速報
- 2016-08-15 (月)
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会場の都合で、初めて夏の全国大会となりました。
暑い中お集まりくださったみなさん、ありがとうございました。
最初に、この1年間に亡くなられた鳩山邦夫顧問、梅本奈良地区長、一般会員のみなさんに、黙とうをささげました。
オープニングは、早苗ネネさんの「夏の思い出」です。すばらしい歌唱力です。2番は全員で歌いました。
森山会長の挨拶3分
熊森が全国で支部活動を展開しているのは、実はすごいことなんですよ。我が国の自然保護団体の中でも、こんなことができているのは熊森だけです。そんなすごい団体だったのか、そんな団体を支えているんだという会員としての自覚と誇りを持って、どこでも胸を張って、「熊森会員です」と、堂々と名乗って下さい。
リーダーとなる条件は、弱者を守るために、本気で怒れるかどうかです。燃える思いを何年たってもずっと持ち続けられるかどうかです。
リーダーがいないと運動は進みません。全生物に畏敬の念を持つ持続可能な21世紀文明を構築していくために、熊森リーダーよ、各地に出でよ。
室谷副会長の基調報告10分
年1回の大切な基調報告を、今年から会長に代わって後継の副会長が行いました。
(副会長報告要約)
熊森20年目の活動に入っています。多くのみなさんが私たちの活動に共感して参加し、ご支援くださって、ここまで来ることが出来ました。
兵庫県は平成8年からツキノワグマの狩猟を禁止にしました。これは、23年前、中学生だったわたしたちが、兵庫県のツキノワグマが絶滅しないように、当時の貝原知事に直訴したり、今の天皇皇后両陛下にお手紙を書いて訴えたりした結果、ご理解をいただき勝ち得たものです。
しかし、今、兵庫県は今秋から、クマ狩猟を再開しようとしています。
兵庫県は兵庫県森林動物研究センターのある研究員が、捕獲数と目撃数をもとにコンピューターシミュレーションしたデータを使って、兵庫県のクマは1992年の60頭が爆発増加して2015年には940頭になったと結論づけています。
しかし、この推定生息数は、人里で捕獲されたり、人里で目撃されたりしたツキノワグマの数を元に計算されており、目撃情報に至っては、同じクマかどうかを検討することなく1頭としてカウントしてしまっています。また、繁殖率が低いはずのクマの増加率が、シカ並の15%~24%になっているなど、ふつうに考えると納得できないことだらけです。
統計学が専門の日本福祉大学の山上俊彦教授は、兵庫県のモデルそれ自体が、
①、捕獲が増えれば生息数が増加するという前提に立っていること、
②、2010年山の実りが大凶作の際捕獲された101頭という前代未聞のすごい数を異常値として処理していないこと、
③、隣接県である京都や岡山、鳥取との間の移動が考慮されていない
など、推定法に様々な問題点があるとし、どう考えても940頭は「過大推定」であり、計算の重要な要素となる「捕獲率、自然増加率、生存率」は、事前に用意されたシナリオに沿って事後的に設定されたと批判されてもやむを得ないと結論づけています。
山上教授が、兵庫県が公表した資料をもとに標識・再捕獲法という推定法でシミュレーションをすると200~400頭という結果になりました。
推定生息数の計算というのは、前提や要素を変えることにより、いくらでも値が変わるものです。このような机上の計算によって兵庫県のクマは爆発増加したことにされ、環境省が安定生息数とする800頭を超えたからと、狩猟が再開されようとしているのです。
兵庫県の狩猟再開で何より問題なのは、推定生息数の数字だけに着目し、クマ本来の生息地である兵庫県の奥山が大荒廃してクマが棲めなくなっていることを全く考慮していないことです。
奥山には放置されたスギ・ヒノキの人工林が延々と広がり、林内は今も下層植生がゼロです。この状況は、1992年に私たち中学生が声を上げた24年前から、ほとんど何も改善されていません。
一方、わずかに残る自然林は、地球温暖化や酸性雨のためか、近年猛スピードで劣化し、ナラ枯れでドングリが実る木々が枯れてしまい、笹の一斉開花やシカの食害などで下層植生がきれいに消え、クマの夏の餌である昆虫もいなくなっています。もはや自然林内もクマの餌場や棲家ではありません。生息環境がこのような危機的な状態なのに、なぜ兵庫県は、クマが絶滅の危機を脱したなどと言えるのでしょうか。わたしたちが自動撮影カメラを何台も掛けて調べたところ、奥山は、ほぼ空っぽで、人里にクマの生息分布が移動しており、ドーナツ化現象が起きています。
下層植生も昆虫も消えた原生的な森の中
延々と続くブナの木々に残る多くの古いクマの爪痕は、ここがかつてクマの生息地であったことを示す
狩猟とは、被害も被害の恐れもないのにレジャーやスポーツとして野生動物を獲ることです。山の中にそっと潜んでいる数少ない臆病なクマまで、犬をかけて追い回して捕殺するというのは、あまりにも残酷です。熊の胆が漢方薬で高く売れ、うまくいくとクマ1頭で100万円になると言われています。乱獲も心配です。
兵庫県のクマ狩猟再開という間違った動きが、西日本の他府県に広がっていくことも予測され、これも心配です。今後も、兵庫県に対し、方針変更を求めてできる限りのことをしていく決意です。
奥山荒廃に伴い、クマだけでなく、シカ、イノシシ、サルなど日本各地で野生動物が山から出て来るようになりました。戦後の森林政策の失敗によるものです。地元の人達は本当に困っておられます。野生動物たちは有害獣として大量に捕殺され続けており、まだまだ捕殺拡大の一途です。
このような野生動物の大量捕殺は、全国で10年以上も続けられていますが、これまでのところ被害低減の成果がほとんど上がっていないのが現状です。殺しても殺しても里に餌がある限り、すぐに元の数に戻ってしまいます。大量捕殺というのは、現象に対する対症療法でしかなく、生命軽視思想に基づく残虐な目先の解決法です。野生動物の本来の生息環境である奥山荒廃の問題を、人間が責任を持って解決し、野生動物たちが山に帰れるようにしてあげて棲み分けが復活しない限り、真の解決にはなりえません。
先日九州の山を視察してまいりましたが、どこも植えられるだけスギを植えたという感じで、60%を超える大変な人工林率でした。水位の低下も起きていました。人工林があちこちで広範囲に皆伐されていました。
あちこちで皆伐されている九州の人工林
九州では皆伐地を放置しておけばすぐに自然林に戻っていくということですから、放置しておけばいいと思うのですが、驚いたことに、その跡地にまたスギが植林されていました。こうならないようにするには、補助金制度を変えていく必要があります。みんなで行政に訴えて、過剰に造ってしまった人工林を九州から、次々と自然林にもどしていくモデルを示してください。九州の支部のみなさんにがんばっていただきたいです。熊森が各地で、自然林再生のモデルを示していけるようにがんばりましょう。
経済はとても大切ですが、経済を最優先すると、人間が生きるために不可欠な自然を破壊してしまうだけでなく、平和で安心して暮らせる社会や、人間性そのものまでをも破壊してしまいます。
日本社会は今、大変で、自分のことだけで手がいっぱい、自然保護どころではないという声も聞こえてきます。そんな中で、自然を守り、他者のために、他生物のために活動しているわたしたち熊森会員の生き方は、多くの人々に、人はどうやって生きていけばいいのかという指針を与えるものです。
わたしたちは、持続可能な生き方とはどういうものか、ライフスタイルや生き方の提案もしていかなければならないと考えます。
命というものの価値が本当に小さく軽くなってしまっている現代だからこそ、わたしたち熊森の自然保護活動はより大きな意味をもっています。会員のみなさんは誇りを持って活動し、何よりも多くの人々に熊森を広めていただきたいです。