くまもりNews
10月13日 兵庫県クマ無差別大量捕殺体制を知って、強烈な精神被害を受けた集会参加者たち
「兵庫県3年目のクマ狩猟と大量捕殺を考える会」が、尼崎市商工会議所で開催されました。
室谷会長が、兵庫県のクマ対応の変遷と背景についてレクチャー
9月13日、9月26日の熊森ブログでもお伝えした通り、熊森本部は今年、兵庫県のクマ有害捕殺が暴走していることに気づき、7月12日、3名で兵庫県庁鳥獣対策課を訪れました。そして、21年間兵庫のクマや山を見続けて来た者として、今年、こんなに有害捕殺されるクマが出るのはおかしい、いったいどのような基準で有害とみなしているのかなど、担当者に実態を調べていただくようにお願いしました。
しかし、残念ながら、3か月近く待ってもお返事がいただけませんでしたので、独自に調査に乗り出すことにしました。
そして、既に報告させていただきましたが、県発表の生息推定数が918頭(360頭説もあり)という兵庫県のクマに対して、春の時点でクマ捕殺許可数が数百件、井戸知事名で下ろされていたことなどが発覚してきました。ここまでやるかと信じられないようなクマ大量捕殺を強化する体制が兵庫県行政により仕組まれていたことがわかり、この集会で報告させていただきました。
集会には、尼崎市選出の県会議員さんもご参加くださいました。
後半は、水見研究員による現地調査報告です。
報告には、地元で取材してきた人たちの動画が次々と映し出される(公表許可済み)
山間にあるA町では、山すそに沿って民家がズラリと並んでいます。
従来、クマ捕獲罠の設置が認められていた場所を、水色で塗ってみました。
これまでは、集落に出て来たクマが捕獲対象だった
昨年7月から黄色に塗られた集落裏の山中200メートルゾーン、または山中にある田畑や施設から200メートルゾーンにも、クマ捕獲罠を掛けていいことになりました。
罠は、山中に多数設置されているシカ・イノシシ罠にクマと書いた札をつけて共用罠とし、クマがかかれば、クマがいたら怖いからという精神被害名目(実際の被害は何も出ていない)で殺処分していいことになっていました。
クマ捕獲罠の設置場所が大きく拡大された
しかも、200メートル以内にいるクマだけを捕殺するのではなく、遠くのクマまで米糠という強力な誘引剤で誘引して罠に呼び込み、かかったクマは、捕殺上限137頭という制限がかかってはいるものの、問答無用で、無差別に殺処分していました。
シカ・イノシシ・クマ共用捕獲罠
山の中でおとなしく暮らしているクマまでを、しかも具体的な被害が何も出ていないのに精神被害名目で殺処分するということは、兵庫県が、クマをもシカ・イノシシ並に頭数調整対象としたことを意味します。これまで県は、クマは管理計画という名であっても、実態は保護計画ですと表向きは言っていましたが、実態は完全に管理計画であることが明らかになりました。
兵庫県は、これだけのクマの有害捕殺体制(無害捕殺体制)を構築しながら、今年からクマ狩猟に於いても、ひとり上限1頭の制限を撤廃し、クマ狩猟許可を希望者全員に与えることにするなど、とにかくクマを殺すことに躍起になっています。
クマは犬よりずっと鼻がいい動物です。1キロメートル先の腐った魚の匂いを嗅ぎつけてやってきたクマの例を報告されている研究者もおられます。大好きな米糠の発酵臭をぐっとこらえて集落より200メートル以内の罠に入らないようにがんばったクマがいたとしても、県は、今度は、そこにハンターを派遣して狩猟を奨励してくるのです。クマ狩猟希望者に今年も県は、バッチを与えたり講習会を開いたりして便宜を図っています。
現在のクマ捕殺場所:集落罠、裏山200m以内罠、それより奥は銃で狩猟
突然クマの有害捕殺数(無害捕殺数)が増えた訳を知って気分が悪くなり、多かれ少なかれ集会参加者は皆、大きな精神被害を受けました。
クマに対してここまでの捕殺体制を組んでいる都道府県はありません。兵庫県は、貝原知事時代に築いた「全国一のクマ保護先進県」から、まちがいなく井戸知事になって「全国クマ保護ワースト1県」に転落です。
このような指示を出す県行政には、クマに恨みがある人がいるのか、クマとの共存をめざしている熊森をつぶしてやろうという人がいるのか、他府県と比べても、もうとにかく兵庫の異常なクマ捕殺体制です。
シカやイノシシはずいぶん前から頭数調整の名目で、殺せるものはすべて殺すという無制限捕殺が行われています。もちろん、私たちは、これも生命尊厳思想を忘れた間違った対応だと思っています。しかし、シカやイノシシと比べて、繁殖力が弱く、生息推定数がけた違いに少ないクマにまで頭数調整捕殺を導入するなど信じられません。しかも、このようなやり方に変えたことを、一般県民はもちろん、県の委員にさえ隠していました。許せないことです。
捕殺数と推定生息数
この日、地元の人達や地元の猟師たちの声が多く紹介されました。
もちろん、兵庫県にはクマなど殺してくれといつも大きな声で言われる町長さんもおられますが、意外なことに、クマとは昔から共存してきたので、クマ殺せの声は集落にないという所も多いのです。
地元猟師たちの中には、クマは増えていない。研究者が、今の数が918頭というなら、昔も918頭だったのだろう。この20年間に15倍に爆発増加したと言われても、笑ってしまう。2倍になっただけでわかるよと苦笑する方もおられました。
猟師だがクマ狩猟再開には絶対反対。地元にはクマを捕りたい猟師などおらん。都会の猟師が来て半矢グマを作るだけ。迷惑しているという声もありました。
熊森から
兵庫県は、地元住民や地元猟師からクマをどうしてほしいかアンケートをきちんととって、私たちに一度見せてください。
今のようなクマの大量捕殺を願っているのは、地元ではなく、兵庫県森林動物研究センターと兵庫県行政ではないのかと思えてきました。
今回、自分たちで現地に行って調べてみて、私たちは、兵庫県で何かとんでもないおかしなことが行われているという感想を持ちました。
兵庫県のクマが爆発増加したと騒いでいた研究者たちは、公務員を一斉に退職し(ひとりはセンターに残っておられますが)、野生動物の捕獲業務等を行う株式会社を設立し、兵庫県森林動物研究センターがあるのと同じ町に本社を置いて、行政からの仕事を請け負ってもうけておられますが、これはどう考えればいいのでしょうか。