くまもりNews
日本学術会議・兵庫県共催「野生動物と共に生きる未来」は、ごまかし・隠蔽のオンパレード、科学の名に値しない異論封じの仲間内発表会②
シンポジウムの後半に移ります。
今回のシンポジウムの発表者のみなさんは、博士号を持つなど、一流大学を出たそうそうたる肩書きの方ばかりです。
兵庫県森林動物研究センター研究部長の横山真弓氏が、「兵庫県に於ける野生動物管理システム」という題で発表しました。
大荒廃している兵庫県の森を、豊かな森と見せかける
兵庫県の植生図が提示されました。右上に濃い緑がスギ・ヒノキ人工林、黄緑色は広葉樹林とあります。
1980年植生図
あれえ?兵庫県の森ってこんなに広葉樹林が多かったかしら?
何度も訪れ、どこにスギ・ヒノキ人工林があるのか大体わかっている町の一つ、但東町に注目してみました。
嘘ーッ、人工林が、もっとあちこちにあるはずだよ。
熊森が、環境省生物多様性センターが出している環境保全基礎調査の最新版を使って、スギ・ヒノキ・サワラ植林を赤く塗った植生図があります。
但東町部分だけを比べてみました。
横山氏提示 濃い緑が人工林 熊森提示 赤色が人工林
ずいぶんと兵庫の山のイメージが違ってきます。スギ・ヒノキの人工林内では野生動物は生きられません。
この後、横山氏は、但馬地域に於けるある集落の1950年と1980年の植生の変化という図を提示されました。隠す必要などないと思いますが、集落名は不明にされていました。
1950年 1980年
左図の灰色部分が荒れ地だそうです。30年後、集落の周辺には、森林が再生してきて、無立木地が消え、野生動物の生息環境はとても良くなったということを言いたいようです。このデータだけでそのようなことが言えるのでしょうか。
兵庫の森が豊かなら、そこから人里に出て来る野生動物たちはけしからんということになります。
しかし、実態は正反対なのです。
一部だけ出して全体イメージを作るのはごまかしです。人工林にせよ自然林にせよ、木が生えていても、内部が大荒廃していて野生動物の餌などほとんどないところがたくさんあります。
兵庫県は下層植生が消えている場所などの全県データを持っているのですから、そちらこそを提示すべきです。
野生動物が生きていくために必要なのは、ねぐらと食料です。そこを保障してやらないと棲み分け共存などできません。
熊森は兵庫県に対して、有害捕殺や頭数調整捕殺された多数のクマの胃内容を情報公開請求していますが、胃の中は全て空っぽだったとして、兵庫県は公開しません。
他県に同様の資料提供を要請すると、ちゃんと全頭分教えていただけます。
頭数調整捕殺する前にまず、彼らが何を食べているのか、生息地は保障されているのかが大切です。
兵庫県のクマ、サル、シカ、イノシシは、どこにおればいいのですか。
どこにいても殺されるというのが現状です。
兵庫県の山は、里山も奥山も、今、内部が大荒廃しています。これまで横山氏は、兵庫の森は絶好調、これまでで一番豊かと、国の戦後の森林政策の失敗を覆い隠す発言を続けて来られました。
行政のみなさんには非常に使いやすい研究者だと思います。しかし、最近、あの林野庁でさえ、人工林の7割が放置されて、内部が荒れていると発表する時代です。もう隠せなくなっています。人工林率や放置人工林問題にふれない野生動物管理発表は、やめるべきです。
このブログでもこれまで何度も兵庫県森林動物研究センターを批判してきました。
数字や図表を多用したところで、ごまかし、隠蔽があれば科学ではありません。
誰もが納得できるデータでなければ、科学的ではないのです。
指摘し出したらきりがないので、個々の指摘はもうやめます。
熊森のように、現場を歩き続けている者たちは、ごまかし、隠蔽にすぐ気づきますが、一般県民は、おそらく行政も含めて、誰も、まず、気づかないでしょう。
今回のシンポジウムの開催趣旨に、参加者の皆様と活発な意見交換を行いますとありました。大事なことです。しかし、結局は、質問や意見は前もって紙に書いて提出させ、自分たちに都合のいいものしか取り上げませんでした。これではシンポジウムではなく、単なるワイルドライフマネジメント派の発表会に過ぎません。
熊森はいつでも受けて立ちますので、ワイルドライフマネジメント派のみなさん、本当の討論会をしましょう。初めに殺すありきだと、日本中が物言えぬ弱者を強い者が迫害する恐ろしい国になっていくと感じます。もうなっていますが。
私たちは、野生動物たちを害獣視するような反自然的なこと、非倫理的なことが、兵庫県の周りの府県に広がって行くことを、今、真剣に恐れています。
人間の人間による人間のためのワイルドライフマネジメントは、必ず破綻します。人間社会もゆがめられていきます。
「王様は、裸だ!」と、誰かが大きな声で叫び、人々に目を覚ましてもらう時だと感じました。(完)