くまもりNews
国の森林環境譲与税試算 和歌山県田辺市へ毎年1億円配分
以下、2018年12月31日紀伊民報記事より
国が2019年度に森林管理を目的に導入する森林環境譲与税の和歌山県田辺市への配分額は、21年度までの3年間、各年1億421万円と県が試算した。全国屈指の多さという。手入れが不十分な人工林を再生し、いかに山村振興につなげるか。市の手腕が問われる。
県がスギやヒノキなどの私有人工林の面積や自治体の人口、林業就業者などの指標を使って試算した。年間の配分額は(和歌山)県が9620万3千円、(和歌山)県内市町村合計が3億8477万3千円。全国の約1700市町村への配分額が160億円で、田辺市の額は平均の10倍近い。配分額は4年後には1・5倍になる見通し。
国が19年度から始める森林経営管理制度では、森林所有者自身で伐採や植林ができない場合、市町村が経営管理の権利を得て、意欲と能力のある林業経営者に間伐などを再委託する。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率も高まる。
ただし、実行段階では課題も多い。田辺市でも所有者に意向調査をするが、相続人がどれだけいるかなどの把握はこれからだ。
林業経営に適さない森林は、市が管理する。ただ、直接管理は難しく、委託するにしても担い手不足の中、対応できる経営者がいるか分からない。県の協力、広域連携も必要になる。
熊森から
昨年、国会で成立した林野庁提出「森林経営管理法」は、日本の森林所有制度を根底からひっくり返す大転換法でした。
しかし、この法案は、パブコメも採らず、突然、国会に出たため、ほとんどの国民が、そんな法案が国会に出たことすら気づいていないのではないでしょうか。
(法案通過後、施行令と施工規則については、パブコメがとられましたが、パブコメを寄せたのはそれぞれ2名と0名でした。熊森はこのようなパブコメが取られていたことにも気づきませんでした)
昨年末、紀伊民報さんが、この問題をタイムリーに記事にしてくださったことに感謝します。
熊森がこの法案に気づいたのは、林野庁が、手入れが不十分な人工林(=放置人工林)を所有している山主は、意欲と能力が低いと決めつけたことに、一部の自伐林家が反論した時です。
人工林を放置しているのは、ありにも奥地過ぎたり急斜面過ぎたりして、伐り出せない、無理して伐り出しても赤字になるからです。こんなところは天然林に戻すべきなのです。どうしようもないものがあるのに、山主の意欲と能力が低いとして、山主に責任を負わせるのは、私たちもひどいと思いました。
この法律では、放置人工林や所有者不明の山林は、川下の素材生産会社などが山主に代わり伐採して林業利用するか、市町村が50年の管理下に置くかすることになっています。
個人所有の山が公有林化されていくことに議論は必要かもしれませんが、熊森としては、あまりにも放置人工林が多過ぎて、第1次被害者の野生鳥獣、第2次被害者の地元の人々、第3次被害者の花粉症国民などの大変な被害を思うと、もう一刻の猶予もない状況にあると思います。日本の水源の森を再生させるためにも、林野庁の一大発想をうまく活用したいと思います。
2018年西日本豪雨災害死者200人
赤色:スギヒノキの単一造林1030万ヘクタール 7割~8割が放置されている
手入れ不足の放置人工林の内部(和歌山県)
天然林内部
ただ、戦後の拡大造林政策によって造林し、現在50年生となったスギ・ヒノキの放置人工林を伐採した後、再びスギ・ヒノキ苗を植えたのでは何をしていることかわかりません。
今春から配当される森林環境譲与税は、放置人工林を多く抱える地元市町村には多大のお金が配当され、使い道は市町村に任されます。とりあえず積み立てておくではなく、まず天然林再生のための人材を確保し、直ちに有効活用を図っていただきたいものです。当協会を呼んでいただければ、使い道はいくらでも提案できます。
都市部は、その町の水道源となる山を有する町の放置人工林を天然林化するために、森林環境税をそこに寄付するなどしていただきたいです。