くまもりHOMEへ

くまもりNews

10月29日 兵庫県農政環境委員会「クマの大量捕殺問題」傍聴 兵庫県当局の答弁に熊森一同唖然

2019、10、29、兵庫県ツキノワグマの大量捕獲問題について、与党議員3名、内訳、黒川治議員(尼崎市)、島山清史議員(神戸市)、柴田佳伸(姫路市)が質問されました。

 

熊森本部が最後列に設置された席で傍聴       兵庫県インターネット中継動画より2019.10.29

 

10月29日開催の農政環境常任委員会のもようは、兵庫県議会HPのネット中継バックナンバーよりご覧いただけます。

こちらをクリックください。(過去分1年間配信)

 

熊森本部から3名が傍聴に出かけ、残りの本部スタッフは、本部でインターネット中継を見ることになりました。

 

上記インターネット中継動画面では、傍聴者と兵庫県当局者が近い距離にあるように見えますが、実際はかなり離れていました。その上、当局の県庁職員たちは立って前を向いて発言するため、机上のマイクが用をなしておらず、傍聴席では当局の声がほとんど聞き取れませんでした。

 

本部に戻ると本部スタッフたちがみんな当局の発言に憤慨したりあきれはてたりしていました。どうして聞き取れたのかと思い、インターネット中継を視聴してみてびっくり。

 

会場ではあんなに聞き取れなかった声が、ネット中継では全てはっきりと聞き取れるのです。何も会場に機材はなかったようでしたが、天井にマイクでもついていたのでしょうか。また、私たち傍聴者の一挙一動がはっきりと見れるのにもびっくりしました。1台もカメラなど会場で見かけませんでしたが、どこにカメラがあったのかなと思いました。

 

さて委員会冒頭の当局の発表ですが、発表者に問題意識がないのでしょうか、問題点がさっぱりわからない報告ばかりでした。その後、県会議員からの質問が相次ぎました。

 

以下は、質疑応答の要旨です。 熊森作成の全議事録は、ここをクリックして頂くと見れます。

 

 

黒川治議員(尼崎市):クマの推定生息数が、800頭以上は狩猟可ということは、県としては400~800頭くらいが兵庫県に於けるクマの適正頭数と考えているのですか。

三輪課長:800頭以上は絶滅する恐れのない数になります。それなりにいて、獲ったとしても大丈夫という数です。

400頭から800頭は、狩猟はしませんが集落に出てくる加害個体に関しては、集落から200mゾーンまでは有害捕獲を実施する状況です。

(熊森から:田畑や山奥にある施設から200m内も捕獲実施地域というのが抜けていますね。兵庫県のように山が浅く奥山が大荒廃している県で、全国一律の規定を持ち出すのはいかがなものか。兵庫県は数字ばかり見ているが、たとえ800頭いたとしても、えさ場を失えば絶滅します。兵庫県担当者は、生息環境を見れていない。一度、部屋から出て現場に行ってほしい。ご案内します)

 

黒川議員:狩猟実績はどれくらいですか。

三輪課長:平成28年が4頭、29年が1頭、30年が5頭のです。

 

黒川議員:どのくらいの数の箱罠を設置しているのですか。設置期間はどれくらいですか。

三輪課長:概算で2000基です。環境省の指針や森林動物研究センターのクマの増減率を加味しまして、生息推定数の15%である124頭を上限に有害捕獲し、狩猟もやります。124頭超えても、集落周辺に加害個体が出てきましたら当然捕獲して参ります。

(熊森から:この日すでに、兵庫県のクマ推定生息数が県によると800頭を大きく割っていたのに、なぜ狩猟を実施するのか説明されていません)

黒川議員:124頭上限で、人里や、集落・人がおるゾーンに罠が2000基?!異常なくらい数が多いのではないか。また、有害捕獲、錯誤捕獲って何ですか。

三輪課長:クマの有害捕獲ということで、元をたどれば集落の方々の思いで申請があがってきて許可を受けたものは、殺処分します。シカとかイノシシで申請を出している檻にクマがかかった場合は、錯誤捕獲という事で放獣しております。

(熊森から:集落の方々から捕殺してほしいという申請があがってきたから県が許可を出したことになっています。しかし、この件に関しては、熊森は以前から、はなはだ疑問です。確かに、捕殺を希望する地元もあるでしょうが、地元をまわってみて感じるのは、殺すまではしなくて良いという声も結構あります。

情報公開請求で熊森が県内全部の捕獲要望書を入手したところ、まだ、クマが出てきていない春の時点で県からの捕殺許可が数百も降りていました。しかも、捕獲要望書は県が印刷したものであり、捕獲申請理由には全く同じ文がたくさんありました。県が(正確には、兵庫県森林動物研究センターの研究者が)、クマの大量捕殺を企て、捕獲申請理由の例文を地元に提示して書かせていることが考えられます。2379基のクマ捕獲用箱罠の設置場所には、全て、北緯東経が細かく記録されていました。何のため?研究者として新たな論文発表を企てているのでしょうか?)

 

捕獲要望書(=捕殺要望書)クリックして頂くと大きくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捕獲許可書(=捕殺許可書)クリックして頂くと大きくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(熊森から:捕殺許可書には適切な被害防除対策がなされていない場合は放獣するとあるが、県は春の時点ですでに約650頭の捕殺許可を降ろしてしまっている。矛盾している)

 

黒川議員:獲らえるだけではなく、集落のカキの木を除去したり、シカの有害駆除した遺体をほったらかしにして、クマのエサになっているような状態もあることを聞いてますので、そういう対策もしっかりとしていただきたいです。罠にクマが来そうな好物も入れていると聞いています。2000基の罠というのは多すぎるし、クマを里におびき寄せているという話も聞いています。過剰な捕獲体制になっているのではないかなというふうに思います。今必要でないところは外して、過剰捕獲にならないよう考えていただけないかなと思います。よろしくお願いします。

罠の設置期間に対する答弁はまだでしたね。

 

三輪課長:狩猟期間以外です。

黒川議員:要は何か月間ですか?何日間?

三輪課長:6か月間です。1年間ぶっ通しで置いているものではありません。

黒川議員:1年間ではなく6か月間だからそんな心配はいりませんよという答弁なのかもしれませんが、逆に2000か所に6か月間も置いているというのにびっくりしました。

 

 

島山清史議員(神戸市):クマ捕獲檻が2000個あるという事で、人の命を守ることも大切ですけれども絶滅する危険があるのではないかという声もある中で、まず獲ったツキノワグマをどうゆう処理にしているのかを確認したいです。

三輪課長:メスのクマは今年も、森林動物研究センターの研究員がメスの体の中を見て繁殖の状況がどうかとかいうことで研究材料に使います。オスにつきましては、研究材料的なものはほとんど揃いましたということなので、今年度から基本的にはセンターは引き取らないという事ではありますけれども、狩猟者の方がセンターに引き取ってくれと言えば引き取ります。

(熊森から:野生動物は誰のものでもないはずなのに、これまで見てきたところ、兵庫県では研究センターがあるため、論文を書きたい研究者のしたい放題。クマの死体が多数手に入らねばできないような研究ってどうなんだろう。過去の歴史を見ても、研究者がトップに立つと残虐さが暴走した例がいくつもある。軍隊だけではなく、研究にもシビリアンコントロールが必要。)

島山議員:獲ったクマは価値があるとも聞いております。124頭という捕獲したクマをしっかりと管理できるのかという心配をこの罠の数をみて思います。私が見た感じで言うと、それ以上に闇で獲られて流通している心配はないのかどうかを確認したいんですけれども。

三輪課長:有害捕獲でやっている部分については、申請が来て、県が許可を出してきちっとやっておりますので心配ないと思います。熊の胆の話が先ほど出ましたが、いろんな方から、東北の方からいろいろ情報をあつめたり、面識のある森林動物研究センターにも聞いたんですが、今は熊胆は売れないと聞いております。もしそれが高い金で売れているというものでありましたら、私どもの関知しないところで回っているのかなあと思いますけれども、今私たちが確認している中では、そうゆう流通はしていないよと聞いております。

(熊森から:突然、東北が出て来たのでずっこけました。東北の山は福島原発事故の放射能汚染がいまだ高くて、熊の胆の売買を禁止されているところが多いため、東北にしたのかもしれません。今年、兵庫県の猟師が、熊の胆は今も流通していると証言した話を熊森が県に伝えているのに、県は調査しなかったのだろうか。関知しないところ、確認している中ではなどと、後で突っ込まれないように答えているのはさも役人らしい)

島山議員:まあそのへんは私が聞こえてくる所とは実態が違うのかもしれませんが、やはりそうゆう危惧はあると思うんですよね。クマというと。利用価値があると思いますし、この罠の数は今の生息数の数からするとちょっとあまりにも多くてですね、(3年前から大量罠を常設し始めたのは)、集落の安全対策でやられているという事以上に危惧を、実際私は感じました。そうゆう124頭という数の管理ですね、ここを越えたものでも安全対策で獲っていくというのはですね、安全という事であれば、そこはもう少し見直された方が。私も人身の安全は一番ですけれども、やはりかつて絶滅が危ぶまれていて、20年間保護されてきてここまで回復したものを、また一気に獲るという所をみると、危惧するところがあります。来年もそうゆうことが無いようにですね、しっかり管理をしていただきたいと、これは要望しておきますのでよろしくお願いします。

 

 

柴田佳伸(姫路市):野生動物の生息地の整備についてなんですが、広葉樹林の育成を進めているという事なんですが、どの地域でどのような成果が表れているのかを教えていただきたいのと、クマの生息地の整備が大切だと思うのですが、どのようにお考えですか。

豊かな森づくり課 山口課長:野生動物共生林整備事業でありますが、県民緑税を活用しまして実施をさせていただいております。事業の目的ですが、1つはバッファゾーン整備とございまして、農地と森林部分を刈りはらいまして見通しを良くします。そうすることによりまして野生動物の潜み場が無くなりまして、野生動物というのはシカでもイノシシでも潜み場を使って集落近くまで移動して参りますのでそういった環境を作らないようにしますのがこのバッファゾーン整備事業でございます。効果ですが、5年前に調査をいたしました第二期の緑税の対策におきましては、バッファゾーン整備といいますのが防護柵の設置とセットで行いますので効果が高いという事もございまして、12市町22集落で調査を行いました結果、8割の農地で被害が減少したという検証結果がございます。

 

それとその近隣の奥山での広葉樹林整備も行いまして、そういったところで生息環境を創出しまして、集落に出てこないようにという事で人と野生動物の共存と、共生という考え方ではなくて共存という考え方で事業を実施しております。又奥地の方につきましても植生保護柵をしましてシカに食べられてしまってなかなか広葉樹林が育ちにくい状況にございますが、それを囲む柵をつくることで下草の回復や、広葉樹の稚樹の生育を順調に助け、野生動物の生息環境が徐々に整ってきているというような効果を確認しております。

(熊森から:クマの餌場が復元できたような場所を見たことがないので、あるのならぜひ見せてほしい。議員の質問は、広葉樹林化した地域と効果を尋ねている。生息地整備が進んでいるのか聞いている。これでは答えになっていない。バッファゾーン整備の必要性は認めるが、野生動物の餌場を作ってやることが抜け落ちている。)

三輪課長:獣害ベルト整備事業というのは同じような藪の刈り払いや未利用果樹の除去でございますが、集落単位で取り組める事業という事で、今取り組んでいる所でございますので、こういった事業を活用しながら野生動物との棲み分けを図っていきたいと思います。

(熊森から:野生動物の餌を除去するばかりでは、野生動物は空腹に耐えかねて、死を覚悟で集落に出て来るしかなくなる。奥山にそれ相当の餌場を同時に復元してやるべきだ。一番大切なことが、完全に抜け落ちている。)

 

 

田中環境部長:クマに関しては柵というものが通用しないという事もありますので、集落の周辺を罠で囲ってベルト地帯をつくっているようなイメージであります。この2000基という罠の数ですが確かに多いと思います。ただ、ちょうど平成28年、29年と人身事故が続いた年、29年度の途中からやったんで、30年度から通年化してやったわけですけれども、だからと言って100の罠が2000になったからと言って20倍獲れるかというとそうゆうことはございません。

(熊森から:電気柵の効果は大きいですよ)

森林動物研究センターの方ではじいて出した数の中で、推定生息数の15%124頭を制限値として限りなく守ります。800頭のあたりをうろうろするような政策を行うことで個体数管理、人身被害も0という世界を保てるんじゃないかと今やっておりますので、ご理解いただきたいと思います。

(熊森から:大量に設置した箱罠の中の誘引物で集落周辺にクマを呼び込んでいる今の状態が、一番人身事故を誘発しており、危険。)

1点だけこれは申し上げたいんですけれども、都市部の先生からしたらアメリカでクマを放獣したという話はイメージがすんなり通るかもしれませんが、たぶん郡部の方と温度差があるのかなと思いつつ、しかし我々も捕ること自体が目的化しておりませんし、一定の数の中で共生できるということ、これのせめぎあいを、日本の誇たる森林動物研究センターとともに進めているという事で、ある意味で先進的な取り組みをしているというところで、どうぞ、安心して、ご対策を見ていただいたらなと思った次第でございます。よろしくお願いします。

 

熊森から

当局の説明や答弁を聞いていて思ったこと。

 

当局の答弁には、奥山生息地を人間に破壊されて食料不足に苦しんでいるクマへの思いやりがゼロであり、一方的な人間優位を感じた。共存するには、お互いに相手の存在を尊重し合う必要がある。殺すことによって数合わせゲームをしようとしているようで残念。

 

兵庫県行政が森林動物研究センターの研究者を心底信頼していることが、何度も答弁で示されたと思う。ならば、このような場に彼ら研究者こそ出て来て答弁すべきだ。三輪課長は今春この部署に来られたばかり。3年ごとに部署移動して専門知識を持ち合わせる暇がない当局が答えるのには無理がある。

 

当局は、自分たちには非がないと、自分たちを必死に守るように答弁していると感じた。議員はどうせ良く知らないのだから簡単にあしらっておけば良いとでもいうように感じて、県民としては不愉快だった。

 

都市部に住んでいる議員だからそういうことをいうのだろうなどと決めつけるのは、大変失礼だと思った。野生鳥獣とどのように共存していけばいいのかは、全県民が考えていかねばならない重要問題であり、兵庫県の大多数を占める都市部の県民や都市部の県会議員の声をシャットアウトしてはならない。地元にも熊森会員はいるし、会員でなくても、都市部の者と同じ自然観、野生動物観を持っている人はいる。

 

今回質問された議員の発言は、同じく生きとし生けるものとして大変素朴で的を得ていたと思います。

 

兵庫県が今しているような、強力な誘引剤を使ってクマを集落周辺におびき出し、大量常設した罠にかけて全て捕殺してしまうなど、生態系保全上からも、生物倫理上からも、許されることではありません。

フィード

Return to page top