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北海道砂川市の養鶏場で箱罠に捕獲された若ヒグマ、捕獲3日目にやはり殺処分 電気柵設置を!

砂川市で、養鶏場の飼料倉庫のガラス戸を割って中の麦を食べるなど、農家に被害を与えてきた若いオスヒグマが、7月30日夜、箱罠にかかりました。

 

 

 

 

 

 

 

日テレより

 

北海道の多くの町で、罠設置は事実上自由に認められ、罠に掛かったヒグマは100%殺処分されてきました。(2019年度殺処分されたヒグマは、756頭)

7月31日のニュースでは、直ちに射殺せず、動物園などの貰い手を探しているということで、ヒグマに心を寄せている方々の中には、ついに北海道でもヒグマを殺さない動きが出てきたと、感激された方も多かったと思います。しかし、実際は8月2日に殺処分されています。

 

今回すぐに射殺しなかったのは、昨年、土手にいる子グマを砂川猟友会長が射殺した時、同じ場所にいたもう一人の猟友会員が、安全確認が不十分な発砲であったと指摘したことから、公安委員会が猟友会長の銃免許を取り上げたという事件がバックにあるようです。(罠免許は取り上げていない)

この猟友会長に対する処分に反発して、他の砂川猟友会員も、みんなが銃を使わないことにして公安委員会などに抗議している最中のようです。私たちには、問題の真相がわからないので、この問題に対するコメントは差し控えさせていただきます。

 

砂川市で捕獲されたヒグマの貰い手を市が探しているというニュースを初めて知った時、私たちがまず思ったのは、もらい手などいるわけがないのに、本気なんだろうかということでした。

 

放獣するしかない。

 

動物園を探すと言っても、動物園は保護のためにあるのではなく、展示のためにあるのです。今いるヒグマが死なない限り、新たなヒグマなど不要です。かわいい子熊ならまだしも、野生で大きくなったヒグマを貰う動物園や施設など考えられません。(人が根気よく愛情をかけ続けて飼えば、野生で大人になったクマでもいずれ人によくなつくようになることは、熊森がツキノワグマで実証済みです)

このヒグマの命を助けてやろうと思った人がいたとしても、ヒグマを飼うにはものすごく堅牢な獣舎が必要で、そんな獣舎を今日明日にすぐ用意できる人などいません。これだけ力が強くて巨大な動物を養うことができるのは、豊かな大自然だけなのです。

 

捕獲されたことで、このヒグマが学習して、放獣後、もう人間の所には行かないようにしようと反省するのを期待するしかありません。

 

ヒグマ研究第一人者で札幌市在住の熊森顧問門崎允昭先生は、ヒグマがここにやって来ないようにするには、

 

電気柵設置しかない

 

と断言されています。

 

熊森は、砂川市担当者に、①被害額を弁償する、②今後ヒグマがこの場所に来ないように電気柵設置代を出す。よって、このまだ若いオスグマを放獣してやってほしいと交渉しました。

 

しかし、市の担当者は、絶対に放獣しないと断言しました。理由は、放獣してもし被害が出たら自分たちの責任になるからというものでした。

 

みなさんはどう思われますか。

熊森は、放獣したら、このヒグマは森の奥にとんで帰ると思います。人間と違って、よくもオレを捕獲したなと人にかかってきたりしないと思います。放獣後、もし、何かあったとしても、この地にこのヒグマがいるのは自然です。元の自然に戻っただけですから、行政の責任など何もないと思います。

 

 

どうも、北海道民のおおかたの野生動物観は、長年ツキノワグマなど多くの大型野生動物たちと共存してきた本州のわたしたちと違うような気がします。

 

北海道出身のある本部スタッフは、本州に来て近畿地方のいくつかの奥地にクマ調査に入ったとき、地元のみなさんがクマのことを「クマさん」と敬意をもって話すのに驚いたと言います。2階の窓を開けたらカキの木にクマが来ていたと言われるので、行政に知らせましたかと聞くと、不思議そうに、何で届け出る必要があるのか。昔からクマさんと一緒に暮らしてきたと言われ、北海道ではありえない感覚だと思ったそうです。

 

明治以降、入植した和人たちは自分たちが生きる大地を得るために、人の2倍も3倍も大きい先住民であるヒグマを駆除し続けました。開拓者だったのです。

北海道大学では、どうしたら北海道からヒグマを根絶殺害できるかを研究されていたそうです。

ヒグマから見れば、見つかり次第、訳なく銃を撃ってくる人間は、悪魔のような存在だったと思います。アイヌと違って、和人はヒグマと共存した経験がなかったといえるのかもしれません。

 

もちろん入植者は、全国各地から北海道に新天地を求めて移住してきた人たちですから、殺生を禁止する仏教の慈悲の心を併せ持つ人たちも多かったはずです。同じ生きとし生けるものとして、銃の前には完全無力で人間に滅ぼされようとしている哀れなヒグマに深い思いを寄せた方々もおられたのではないでしょうか。

 

25年ほど前、旭川の営林署の人たち数名に、ヒグマをどう思うかインタビューをして回ったことがあります。「ヒグマにはいつも会っているけど、穏やかな動物だ。本州のツキノワグマのように人身事故など起こさない。私たちの作業場の横で、子供を連れてきて遊んでいるよ」という、回答ばかりでした。ヒグマもツキノワグマ同様、争いを好まない平和愛好者なのだとわかりました。自分が人間にやられそうにならない限り、ヒグマの方から人間をやっつけてやろうなどとは思ってもいないのです。そんなヒグマを、私たち人間は殺すのです。

 

以前はヒグマ駆除一辺倒だった北海道庁ですが、現在、ヒグマとの共存を打ち出しています。しかし、私たちのようにヒグマへの理解や共感からではなく、生物多様性の保全が世界的な流れとなってきたことが大きな原因かもしれません。

北海道のヒグマも平和愛好者

 

ヒグマと共存しなければ、私たちは豊かな自然や豊かな森を失います。ヒグマへの愛ではなく、自分たちの利益のために、ヒグマを絶滅させないようにしようと思ったのでしょうか。北海道は先進的な海外と比べると、共存のための制度が、まだほとんど整っていないように熊森は感じます。

 

今回の砂川市のヒグマ殺処分の件で、いろいろな方から熊森本部にメールが入りました。以下にご紹介します。

 

メール

・7月3日からたびたび養鶏場の飼料にやってきた問題個体だから殺処分するしかなかったと市の担当者は言われましたが、どうしてもっと早くヒグマ用の電気柵を張るなどの対策をとられなかったんでしょうか。問題個体を生み出した人間側の責任はないのでしょうか。おびき寄せておいては殺すという悪循環を繰り返しているように感じます。

 

・アイヌの人々はクマを神聖な生き物としてみなし、共存してきました。北海道も、今後は、自然や野生動物に対して、敬意をもったやり方で問題解決を図って欲しいと思います。

 

・私は、日本人が最近ますます人間第一主義になっていると感じ、とても危惧しております。自然あってこその人間であることがわからなくなってしまっている方が多いと思います。

 

・殺さないヒグマ対策に取り組んでこそ、子供たちに尊敬される大人です。ヒグマが先住民であったことを忘れない謙虚さが、日本人に必要です。

 

・私はカナダに長い期間住んだことがあります。私が出会ったほとんどのカナダ人は、クマに遭遇したことがあると言っていました。しかし、クマを捕獲して殺処分するという考えはなく、人間がクマの生息地の近くにいるのだから、こちらが注意すれば良いという人ばかりでした。

 

クマよりも、※スカンクの方が困ると言う人もいました。(おならをかけられると1週間は強烈な臭いが取れません)
カナダも昔は今の日本のようにクマ駆除一辺倒だったそうです。カナダでできたことは、日本でもきっとそのうちできると信じています!

 

熊森注 スカンク   ツキノワグマ研究第一人者の熊森顧問長野市在住宮沢正義先生は、かねてより、クマ対策に使えるとして、スカンクの強烈な臭いに注目されています。猛獣の目の前を、マリリンモンローのような足取りで平気で歩くスカンクは、相手に脅威を与えるのではなく、相手に嫌われることによって、身を守っているのです。スカンクの臭いを研究して工場で合成できると、クマよけに使えるかもしれません。

 

 

(最後に)暑い日々です。箱罠に囚われの身の3日間、このヒグマに水や食料を与えてやってくださっていたのでしょうか。箱罠の中の誘引物につられてうっかり入ってしまったという一度の失敗だけで死刑判決を受けたこの若いオスヒグマの冥福を祈ります。共存するには、人間側にも寛容ややさしさが必要です。

 

毎年、数百頭ものヒグマが、北海道でこうやって問答無用で殺されていく。北海道は開発されたといっても、山だけではなく、まだ平地にも広大な森が残されているところが多く、そこもヒグマたちの生息地です。本州と自然条件がかなり違っているため、本州人がわからないことも多々あります。そのため、私たちは北海道民の声もしっかり聞いていきたいです。

平地もミズナラなどの森で、ヒグマの生息地である北海道

 

カナダ在住のクマ研究者、カピラノ大学名誉教授の熊森顧問フイッツアール先生は、カナダで半年教え、京都大学で半年教えることを繰り返しておられました。日本のクマ対応を調べて、以前のカナダと一緒だ。クマを駆除対象としか見ていない。生きとし生ける者への共感が日本人から失われている。なんて遅れているのだろう!とショックを受けておられました。先生のご自宅のリンゴの木にも大きなクマが来るそうですが、「ダメ!」と言うと帰っていくそうです。どうしても帰らないクマは、カナダでは自分たち自然保護団体が捕獲してヘリコプターで山奥に運んで放獣しているとして、写真を見せてくださいました。

 

野生動物を害獣視し、殺す対象としか見ない今の日本、人間が根本的に狂ってしまっていると私たちは感じます。

 

彼らが一体どんな悪いことをしたというのか。人間の物を食べた。食べられたら困る物なら、確かに大変な労力を要しますが、殺す前に食べられないように被害防除の努力を人間側もすべきでしょう。

 

ヒグマが先住民として尊重される日々が一日も早く来るように、心あるみなさんに、もっともっと声を上げていただきたいです。わたしたちは、熊森北海道支部が立ち上がる日を、釧路在住のプロのネイチャーガイドで野生動物写真家である熊森顧問安藤誠氏(自称北海道人)と共にずっと待っています。(完)

 


			
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