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福井大学助教授のドングリ運び批判はどこがおかしかったのか③完結編

保科氏のドングリ運び批判の問題点

 

③実証なき憶測による批判

 

保科氏は報告文で、どんぐり運びは自然生態系を攪乱する自然破壊行為である、是が非でも阻止しなければならないと批判されています。その理由は以下でした。

 

1.運んだドングリは人間のにおいがついているため、クマが食べることはあり得ない。ネズミ、イノシシ、カケスの餌になるだけ。

2.運んだドングリから羽化したガが、クリを加害する可能性がある。

3.繁殖力の高いネズミの個体数の増加要因となって農業被害に直結する。

4.万一クマがドングリを食べた場合、人間との適正な距離感が狂い、クマの射殺が促進される。(日本ツキノワグマ研究所所長米田一彦氏の指摘だそうです)

5.野生動物に対する餌付けになる。(以上、報告文より)

 

 

私たちが知っている範囲で、ドングリ運びを最初に実施されたのは、和歌山県鳥獣保護連絡会(和歌山県猟友会組織)会長の東山省三先生です。先生は、和歌山県の広大な山が人工林化された結果、クマがえさ場を失って絶滅しそうになっているとして、実のなる木を植え続けられていました。一方で、クマの絶滅を止めたい一心で、1991年から何度か、猟友会の人たちにも手伝ってもらって大量のドングリを山に運ばれました。あれから30年近くたっていますが、何の問題も聞いていません。

 

熊森協会が2004年にドングリを運んでからは16年になります。地元の方たちと一緒に運んだことも多いのですが、今に至るまで上記のような不都合は一度も報告されていません。

 

2004年、2010年、2020年、これまで熊森協会が大々的にドングリを運んだのはこの3回ですが、同じ県内でも運んだ場所が違いますし、その時だけの一過性のものなので、餌付けになどなりません。餌付けだと批判されている人は、何を勘違いされているのでしょうか。

 


 熊森が運んだドングリを夜じゅうずっとクマが食べ続けていた

 

熊森はドングリ運びが落ち着いた2005年3月、ドングリ運び批判の根拠を知りたくて、アポを取り、保科氏を訪れました。もちろん当協会の研究者である主原先生にも同行していただきました。

 

森山会長が、各地から熊森に送られてきたどんぐりのサンプルと産地データを指さし、「どのドングリを運んではいけないと思われたのですか」と問うところから、意見交換会が始まりました。

 

保科氏は、ドングリのサンプルを見て「私はドングリの種類なんて知りません」と言われました。熊森がびっくりして、「一体先生は何のご専門家なのですか」と問うと、「コケについている1ミリの虫です」ということでした。

 

今は、研究が細分化されているので、確かにその方面はお詳しいと思いますが、日本にあるすべてのドングリ種とドングリに付く全ての虫を長年研究し続けてきた主原先生の専門性の前には、話になりませんでした。

 

ネズミに関しても、山にいるネズミの種類や行動半径まで全部調べた上での熊森のドングリ運びでしたが、「何ネズミが増えると思われるのですか」という熊森の問いに、保科氏は「ネズミだよ」と言われただけで、ネズミのことも調べておられないことが分かりました。

 

誰よりも自然を守りたいのは熊森協会です。「ドングリ運びが自然破壊というのなら、ツキノワグマが餌を求めて山から出てきて皆殺しにされているのを黙って見ているのは、自然破壊ではないのですか」と森山会長が尋ねると、保科氏は、「全部捕まえて、山奥に放してやればよかったんだよ」と、答えられました。2004年、奥山の実りゼロという大異変が起きていたことも、御存じなかったのです。(専門家と言われる人たちが、2004年は度重なる台風でドングリの実が落ちたと言われているようですが、間違いです。2004年春、奥山はまるで神隠しにあったように、全ての木々に花がついていなかったのです。熊森は、秋、山からすべてのクマが出て来ることを春の時点で予測していました。熊森以外、いかに誰も奥山を見ていないかがわかります。)

 

現場調査なき憶測、実証なき憶測による批判だったのです。

 

長時間の意見交換後、保科氏は、「熊森協会って、ぬいぐるみのクマを抱いている馬鹿な奴らだと思っていました。こんなすごい研究団体だと知りませんでした」と、言われました。

 

批判精神は大切ですが、熊森のどんぐり運びを1度でも見学しに来たり、ご自分でも実験してみてから批判してほしかったです。そうすれば、このような批判にはならなかったはずです。

 

保科氏と熊森で意見が一致したこともありましたが、最後まで意見が一致せず平行線だった点は、保科氏が、ドングリを運ぶなら煮るべきだと主張され、熊森は、煮て死んだどんぐりには、ヒメアカキクイムシやグラナリアコクゾウムシが発生する恐れがある上、死んだドングリを山に運ぶと産業廃棄物不法投棄に該当するため、煮ることは不要と主張したことでした。

 

多様な意見が尊重されるべきですから、もし保科氏がドングリを運ばれる時があれば煮られたらいいと思います。

 

保科氏(中央)と友人(後ろ)、対談に参加した熊森本部、石川県支部、福井県会員
2005年3月19日

 

保科氏が大学の先生であったばかりに、当時、全テレビ・全新聞・全雑誌が、保科氏のドングリ運び批判に乗っかって熊森のドングリ運びを一方的に自然破壊行為とする報道を全国版で展開しました。そのため、熊森協会はドングリを運んだバカな自然破壊団体という理不尽なレッテルを未だに貼り続けられています。

 

また、これらのマスコミ報道によって、一生懸命ドングリを集めて送ってくださった多くの純粋な子供たちや善意の人々が、自然破壊に協力してしまったと勘違いし、心がつぶれてしまいました。せっかく森保全や野生動物保護に関心を持とうとしてくれたのに、残念です。子供たちとドングリを集めたとして校長先生から叱責された教師など、どんなに多くの人達が言われなき罪状に傷ついたことか知れません。(涙、涙)

 

熊森のどんぐり運びを取材しに来たマスコミは当時、一社としてありませんでした。熊森には、説明したり反論する機会が一切与えられなかったのです。このような報道姿勢に、熊森は本当に強い憤りを感じました。

 

この日の意見交換会後、保科氏は最後に正座して、「みなさん、ごめんなさい」と謝られましたが、謝られても、私たちが失った信用、受けた傷はいまだ取り返しのつかないものです。

 

現在、ツキノワグマに関しては、劣化する一方の奥山、暴走する地方自治体の大量捕殺、くくり罠への誤捕獲グマの全頭殺処分(法違反です)など、ツキノワグマの種の存続が危ぶまれる事態が年々強まってきています。

 

今こそ、国民がクマ保護に立ち上がらなければならない時に、ネット上のドングリ運び批判を見て、自分ではよくわからないが以前、大学の先生が批判されたことがあったからとして、熊森に連絡するのをやめてしまわれる人たちの例が、最近いくつもありました。(保科氏はこの意見交換会以降、ドングリ運びを一切批判されていませんし、この後予定されていた富山県のシンポジウムでのどんぐり運び批判講演も自主的に降りられています)

 

熊森としては、これまで保科氏の名誉のために、当時の意見交換会のことは公表しないできましたが、クマという種を保全するために、正確な知識を国民に持っていただかねばならない必要性を感じ、事実を公表することにしました。熊森は、当日の意見交換会の全録画を所有しています。

 

ネットリテラシーが叫ばれています。ネットは便利ですが、ネット情報をうのみにせず、確認していく賢明さが国民に求められていると思います。今回、ドングリ運び批判のどこがおかしかったのか、全3回のブログを読んでいただき、ありがとうございました。

 

熊森は、事実を伝えました。この後どう判断されるかは、個人の自由です。熊森本部はいつでもみなさんの質問に誠実に、事実でもってお答えする用意があります。

 

どんぐり運びだけでなく、当協会について書かれた嘘八百の長い匿名情報も過去に飛び交っています。当協会の職員になりたかったのに採用されなかった青年の腹いせ創作ブログです。自分だけは匿名で、熊森関係者は実名にして嘘を書く。この上もなく卑怯です。

 

事実を確かめもせず、そういう情報にすぐに飛びついて拡散している人たちに、猛反省を促したいです。もう少し賢くなって、情報の真偽を見分ける目を持っていただきたいと切に願います。

 

嘘情報を匿名で発信している人には、いったんネットに出してしまった言葉は永久に消せませんよと、ネットの怖さを伝えておきたいです。嘘を書いたことは、誰よりも自分が知っているはずです。(完)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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