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高倉良生都議会議員と、「東京のクマと森のこれから」を考える:熊森オンラインシンポジウム

オリンピックの開催で注目されている我が国の首都「東京都」は、クマが生息する世界で唯一の首都だと聞いたことがあります。

しかし、<東京都レッドリスト2020>によると、クマは、南多摩地域で絶滅危惧2類、西多摩地域で準絶滅危惧で、絶滅の危機に瀕している野生動物です。

 

6月5日、日本熊森協会は、東京都議会議員の高倉良生議員をゲストにお招きし「東京のクマと森について考える」というテーマで1時間のオンラインシンポジウムを開催しました。東京都民を中心に、54名の方々にご参加いただきました。

 

1,あいさつ 日本熊森協会 会長 室谷悠子

 

東京へ行くたびに人の多いことと大都会であることに驚きます。この首都東京には、わずかですがクマが棲んでおり、また、わずかですがクマの棲む森があります。これは世界に誇るべきことです。

東京の人はほとんどが都会に住んでおり、クマの棲む森と自分たちの関係を知りません。しかし、私たちは、森がないと水も酸素も得られません。大都会東京で、大量に使われている水は、関東平野を取り囲む熊の棲む森からの湧き水が川に流れでたものです。

森は、クマをはじめとする動物、鳥、昆虫、微生物などたくさんの生きものがつくりあげており、私たちは、生きものがつくる森に生かされています。

 

今、東京の森は荒廃しており、クマが生きられる環境にないだけでなく、水源保全や災害防止の観点からも危機的な状況です。私たちは、次の世代が豊かに生きられるように、野生動物と共存し、森を再生しなければなりません。

過疎と高齢化が進む現地で森を再生していくのは簡単ではありませんが、たくさんの人が住み、日本の中で一番経済力のある東京であれば、知恵を出し合えば野生動物との共存もできるはずです。

日本熊森協会は実践活動を通じて、クマの棲める豊かな森再生の流れを広めていきたいと思っています。

 

2,「日本の奥山と野生動物の危機的状況について」
・・・・日本熊森協会本部 主任研究員 水見竜哉

 

 

日本では、過去100年間にかつての日本文明が大切にしてきたブナやミズナラの巨木が繁る奥山の水源の森を広大に伐採し、野生動物のエサにならないスギやヒノキの人工林に植え替えてしまいました。

林業は大切ですが、林業としては使えない奥山にまで植えた人工林は、今や広大な放置林となり、ツキノワグマをはじめ多くの生き物が餌場を失って里に出て来る原因となっています。

九州や四国、西日本地域では特に人工林の割合が高く、山々は保水力を失い、この数年間に豪雨による土砂災害で甚大な被害が頻発しています。近年地球温暖化の影響により、わずかに残された自然林でも、ナラ枯れや下草の衰退が深刻化しています。

 

日本熊森協会は、この国にもう一度、祖先が大切にしてきた大型野生動物との「棲み分け共存」の文化を取り戻すことをめざしています。

そのために、奥山の放置された人工林を再び野生動物が棲める豊かな森に復元し、里での殺さない鳥獣被害対策を徹底していきたいです。これらの実現には法改正が必要で、そのためには多くの会員数が必要です。会員数が増えると、国会で自然を守る法律を作ることができます。

 

皆さん、どんどん会員を増やしていってください。

 

3,「東京都のクマ行政について」 

・・・・日本熊森協会東京都支部 副支部長 木村理絵

 

 

私たち東京都支部は6年前から、クマの生息地である奥多摩町の役場の担当者に、「住民の方の安全が大切なことは 十分理解いたしておりますが、クマと共存するために、まず、被害防除対策を図って頂きたい」と、喉がかれるほどお願いし続けてきました。しかし、駆除一辺倒でなかなか前へ進みません。

 

町には、被害対策の予算がなかったからです。このまま殺され続けていては、「東京のクマは必ず絶滅してしまう」と焦りを感じている中で、高倉議員と出会いました。

 

高倉議員は、東京都の「動物との共生を進めるプロジェクトチーム」の座長を務めた経歴をお持ちで、森やクマの問題に関心をもってくださり、2019年11月には都議会の環境建設常任委員会で質問をして下さるなど、積極的に動いてくださいました。

 

そのかいあって、東京都のツキノワグマ対策がテコ入れされ、2020年には2443万円のクマ被害対策用予算が付きました。

これにより、猟友会による追い払いや電気柵設置等にお金が出るようになり、クマが逃げられる穴付きのイノシシ檻が8基も購入されました。現在も町は、試行錯誤のなかで改革を進めていってくださっています。

クマ研究第一人者の大学の先生がサポートして下さっていることも奥多摩からお聞きし、大変心強く思っています。ようやく、少し共存への希望が見えてきたと感じています。

 

東京都のクマの捕殺を減らすため、東京都支部でも自分たちで生息地復元ができるフィールド地を持ち、都民がクマの棲む水源の森を再生したり、棲み分けをお手伝いしたりする実践活動を広めていきたいです。

 

4,「東京都の奥山水源林の現状と、ツキノワグマ保全に向けた課題」 東京都議会議員 高倉 良生 氏

 

私が日本熊森協会の方々と知り合ったきっかけは、2017年に青梅市で親子グマ3頭が殺処分され、うち2頭の子熊は無許可で殺処分されていた事件でした。当時、私の先輩である、日本熊森協会顧問の赤松正雄先生が日本熊森協会とわたしをつないでくださいました。

 

私は、山に登り自然の息吹を感じることが好きです。東京の山にも昔から何度も登ってきました。

しかし、近年、山に登ると、そこにはかつて私が見て感動した豊かな自然の森は消えており、山はスギやヒノキの「畑」になっていました。大規模に伐採されている場所もあり、昔の豊かな山の面影が消えているのを見て、私は愕然としました。

この状況で、クマが山から出てきて殺処分されるニュースを日々見てきて、心を痛めていた一人であります。

 

2019年11月当時、私は東京都議会の環境・建設常任委員会の委員でした。そこで、

1、      ツキノワグマの出没時には、捕殺ではなく、追い払いや誘因物の除去、電気柵の設置を徹底すること。

2、     森林環境税・森林環境譲与税を活用し、クマが生息する西多摩郡で、放置された人工林は、自然林への誘導を行うこと。

3、      親子のクマは殺処分しないこと。

4、      捕獲の許可権者である東京都は、違法捕獲が起きないよう市町村への指導を強化すること。

の4つの事を提案させていただきました。これを首都東京でやることの意味は、非常に大きいと思っています。

 

この後、質疑応答の時間となり、多くの質問が寄せられました。

 

【参加者から】

・東京都はオリンピックを前にして、「世界の首都で唯一クマが生息していること、しかし、クマは絶滅寸前のため、生息地の保全に急いで取り組もうとしている」と、英語で全世界に発信したらいいと思う。

・東京都の人工林で林業に使われない場所は、豊かな山に早く戻してほしいです。

・全国でクマがこんなにたくさん駆除されていることを知りませんでした。東京の奥地にクマがいるというのは驚きです。

等々、多数のコメントが寄せられました。

 

【熊森から】

ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。初めての支部向けシンポジウム、好評でした。

次回のくまもりオンラインシンポジウムは全国向けで、7月17日(土)に開催予定です。

テーマは、ツキノワグマの錯誤捕獲問題です。詳細を近日公表いたします。皆様ふるってご参加下さい。

 

皆さまのご支援が増えると、くまもりが守ることのできる野生動物や豊かな森が、さらに増えます。

生きとし生きる多くの命を救うために、まだの方は、ぜひご入会下さい!

すでに会員になってくださっている皆さんは、一人でもいいので会員を増やしていただきたいです。

入会ページhttps://congrant.com/project/kumamori/2662

 

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