くまもりNews
8月1日 第26回くまもり本部原生林ツアーに26名(大人19名、小学生7名)がご参加!
- 2021-08-16 (月)
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私たち都市市民の命を支えている水源の森を見に行こう。
本部原生林ツアーは、くまもり25年の歴史の中で毎年欠かさずに実施してきたイベントです。
コロナの感染状況から、今年も去年同様、自車参加で実施することになりました。
集合場所は、兵庫県千種町千種高原です。
まず最初に、地元の千種川源流の会の阿曽さんに、大苗を植えておられる山を案内していただきました。
21年前に皆伐された山は、ススキが原になっていた
この山は、約70年前、千種町が約300haもの自然林を皆伐した後、国にスギやヒノキを植えてもらった官行造林地でした。
標高は900メートル、多い時は雪が4メートルも積もるという豪雪地帯です。
植林後の手入れがなされなかったこともあって、元々の広葉樹が植林苗の間に大きく育ってしまい、まるで自然の針広混交林のようになっていました。
2000年、千種町と林野庁の契約期限が来て、契約どおりこの森の立木を皆伐して売却し、売上金を町と国で山分けすることになりました。
千種町の人工林率は83%です。千種町の森の動物たちはこの森の広葉樹に頼って生きています。この森を皆伐されたら、生きていけません。当時、日本熊森協会は姫路工業大学助教授の佐古井一朗先生と力を合わせ、この森を伐採しないよう、兵庫森林管理署(林野庁)にお願いしましたが聞き入れられず、皆伐が始まりました。
しかし、大運動の結果、千種町の大英断もあり、皆伐は30haで止まり、残り270haは針広混交林のまま千種町に返還され保全されることになりました。
皆伐されてしまった部分に、熊森をはじめいろいろな団体が3年苗を植林し、シカ柵を設置してこの場所を広葉樹の森に戻そうとしました。しかし、雪解け時になだれ落ちる雪に柵が壊されることの連続で、その度にシカに苗木を食べられてしまいます。
何度植林に挑戦しても、森に戻せません。残念ながら、ついに熊森もギブアップしてしまいました。
この後ここに、地元の阿曽さんたちが、シカに食べられないような大苗を植えて森の復元に乗り出され、成功されつつあります。阿曽さんたちは、千種川の源流を守るだけではなく、川でつながった海まで視野に入れて水の循環を守ろうとされています。その展望を皆で伺いました。
次に参加者の皆さんに見ていただいたのは、放置人工林の内部です。中は暗くて食べものは何もありません。
さて、いよいよ、お待ちかねの岡山県若杉天然林85ヘクタール。
以前、この森にはクマが2頭棲んでいましたが、今はもういません。
入口の広場でお弁当を食べてから、天然林に入ります。
大人たちはくまもり職員から植物や生き物、奥山生態系の詳しい解説を聞きながら頂上をめざします。
今回は、昆虫に詳しい奥津会員も特別参加、参加者の見聞を深めてくださいました。
子どもたちは地図を片手に見つけたものを書き込んでいきます。
この森は、25年前は本当に素晴らしく豊かな原生林だったそうですが、年々劣化。
今年はさらに、ナラ枯れでミズナラが大量に枯れていました。
谷川の水量が例年と比べて激減
枯れて倒れたミズナラの根っこの大きさを体感
今年の原生林ツアーはお天気も良く、林内は涼しくて、最高のコンディションでした。
楽しかったねえ。生き生きとした参加者のお顔。
ずいぶんと劣化してしまった原生林ですが、それでも初めて参加された皆さんは、この森に大感動されていました。
今年も原生林ツアーを企画して良かったです。
<参加者の感想>
・自然がたくさんあってニホントカゲにも会えた。川の水を飲んだ。これからは水を大事にしようと思った。(大阪府在住 小学5年生)
・健康な山の姿は気持ちがいい。ゆっくりとここにいたい、帰りたくないと思いました。気持ちのいい場所は、自然の持つ本来の営みがあるというサイン。しっかりと今の課題と向き合い、先のまた先に紡いでいきたいです。(兵庫県在住)
・今まで意識して歩いたことがなかったのですが、天然林にはたくさんの木や生きものがいて、水が豊かで美味しいことが分かりました。子どもたちはいつもはスマホやゲームをしていることが多いのですが、今日はイキイキしていました。(大阪府在住)
くまもりから
全員の感想文を読ませていただきましたが、参加して良かった、勉強になった、感動した、初めて森のことがわかってきたなど、満足度の高い感想文ばかりでした。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。
全国の支部でも、原生林ツアーを実施できるようにしたいです。