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7月19日 地元が推進?原発の町福井県美浜新庄ウィンドファーム尾根筋風力発電計画の地元を訪問

ご存じのように、福井県三方郡美浜町は原発の町です。

2021年4月、福井県杉本知事が40年を超える老朽原発である3号機の再稼働に同意し、運転中です。

 

「樹齢300年のブナ巨木林、風力発電で伐採の危機」として、美浜新庄ウィンドファーム20基~25基事業計画反対するネット署名が出ていたので、今年7月6日、くまもりもフェイスブックで賛同署名を呼びかけました。(8月15日現在の署名数9935筆)

事業主はグリーンパワーインベストメント(略称GPI)で、主要株主は、Pattern Energy Group LP(アメリカ・カナダ)という外国資本です。

 

完成予想図(くまもり作成)

 

ところが、熊森本部に一部の方から、地元が賛成しているのに反対していいのかという疑問の声が入りました。

 

自然度9のブナ林が伐採されるというのに、地元が承認している?

どういうことなのか、さっそく熊森は現地を訪れました。

 

現地に近づいてくると、原発からの大量の送電線が張り巡らされていました。(下写真)

 

 

 

 

 

 

会ってくださったのは、現在、町会議員の松下照幸氏と事業者のGPIの社員2名です。

 

松下氏は美浜町で、長年、反原発運動を続けられてきた方で、会社員から町会議員となり、反原発派議員として孤軍奮闘してこられました。

美浜町では13年前、経産省の補助金で風力発電を造ろうとしたことがあったそうですが、そのときはうまくいかなかったようです。

松下氏は今は『森と暮らすどんぐり倶楽部』を立ち上げ、林業振興・木材利用の様ざまな試みをまち起しにつなげる仕事をなさっています。どんぐり倶楽部の事務所の前には、見慣れない木が生えていました。油桐(アブラギリ)という木だそうです。

 

 

 

 

 

 

青いTシャツの方が、松下さん

新庄区は6000haの山林を有しており、ほとんどが自然林という自然豊かな地区です。福井県と滋賀県の県境に、石川県の白山の一番いい森に匹敵するブナの巨木の原生林が残されていたなど、熊森本部は今回初めて知りました。

 

 

 

 

 

以前の新庄区は、薪炭やアブラギリの種から油をとる仕事が盛んだったそうですが、いまはもう成り立ちません。

現在の町の産業を訪ねると、ほぼすべてが原発関連の仕事ということでした。

この地に優れた地場産業があったら、原発は来なかったという痛切な思いが、松下さんの粘り強い活動を支えています。脱原発を言うだけではだめ、原発に頼らなくても町の人々の生活が成り立つようにしてこそ、脱原発が実現すると松下氏。

 

風車製造メーカーは日本にはありません。松下氏はドイツまで2度視察に行かれました。ドイツでは田舎へ行くほど経済が元気になるそうです。騒音や振動など、風力発電には様々な問題がありますが、技術革新で、年々改善されており、松下氏は今後の技術革新に期待されていました。

 

熊森からの質問に答えていただきました。

 

①尾根筋はクマなどの野生動物たちの通り道です。そこを削って平らにして風車を建てることによる鳥や野生動物たちへの影響は

松下氏:新庄地区の山はほとんどがブナ・ミズナラ林だが、クマはほとんどいない。なぜか動物があまりいない。

(役場担当者によると、美浜町でのクマ目撃は年間4~5頭で、ほとんど山の中だそうです。)

イノシシは山にいるが出てこない。シカは減った。サルは出てきたら花火で追い払いをしている。金網や電気柵で被害防除対策をしている。

 

②ブナの巨木を伐採することによる自然生態系への影響は?

松下氏:昔から炭焼きなどでブナを伐採してきた。自然林は一部を伐採してもすぐに再生するから問題ない。美浜町としては人工林は崩れるので、山を広葉樹に植え替えているそうです。

 

③風力発電を誘致したいメリットは?

松下氏:雇用が生まれること。今は、ほとんどが原発関連の仕事。あとは公務員、土木、水産ぐらい。

 

共に訪れた新庄の山に詳しいくまもり滋賀県支部の会員たちが、「25基も風車を建てないでほしい。特に尾根にブナの巨木群がある2か所はこの上もなく貴重な自然生態系なので、あの場所だけでも、絶対に残してほしい」と懇願されました。

 

熊森本部から

 

自然度9のブナの原生林というのは最高の原生林です。

新庄の山にお詳しい松下氏に新庄の森を案内していただきたくなりました。

 

確かに、昔からこの地区の山は一部を伐採して利用しては再生させてきたのだから、必ずしも伐採がいけないわけではないと思いました。問題は、尾根に至る広い道を急峻な山に造って、尾根を平らに削り、大きな穴(深さ20m?)を尾根に掘ってコンクリートを流し込んでいいのかということです。

 

セメントの灰汁による地下水の汚染、鳥や野生動物たちへの影響、大雨時の山崩れ…予測不可能な不安がいっぱいです。母なる大地に人工の手を加えない方がいいに決まっています。しかも、いったんやってしまったら、流し込んだコンクリートは二度と取り外せない、リニア同様、もう二度と元に戻せない再生不可能な大開発なのです。

 

熊森はクマたちの棲む水源の森を守ることが使命なので、尾根筋への風力発電は絶対にやめるべきと考えていますが、ではどこに造ればいいのかということになると、まだまだ知見不足です。風力発電の寿命は20年ということですが、20年後どうなるのか、まだ事例を知りませんから、不明点でいっぱいです。

しかし、原発以外に仕事がないという現状は確かに問題で、これは美浜町だけの問題ではなく、第一次産業を切り捨てて工業大国をめざしてきた我が国の政策の見直しを、国民みんなで考えねばならない時に来ていると思いました。(完)

 

P.S

ブログを読んだという、山に詳しい地元の人から電話が入りました。

くまもりは今、大雨のたびに九州の山がどれだけ崩れているのか知っているのか。自然林を伐採してスギを植えたのにどんどん崩れてるんだよ。風力発電は、尾根を皆伐してそのあと何も植えないんだよ。尾根から崩れるって断言すべきだろうとのお叱りでした。

 

 

 

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