くまもりNews
くまもり全国支部長研修会 1泊2日:座学+青山高原現地視察
4月15日(土)の全国大会が終了すると、支部長たちは直ちに新大阪のユースホステルに移動し、恒例の1泊2日の全国支部長研修会に参加しました。全国大会に都合で参加できなかった支部長たちは、オンラインでこの研修会に参加しました。
1日目夜
15日 19時30分~ 支部から18名、zoomで6名が参加
室谷会長から、今後もどこにも気兼ねなく物言える自然保護団体であり続けたいとして、熊森の現在と今後についての話がありました。
2歳の長男と支部長研修会に参加された室谷会長
特別講師として、宮城県丸森町からご夫婦で参加してくださり全国大会で10分間理路整然と熱のこもった発表をしてくださった義高光氏が、森林伐採を伴うメガソーラー建設計画からどうしたら地域や森を守れるか、実体験に基づいたリアルなお話を30分間語ってくださいました。
目を見張る内容でした。参加した本部スタッフたちはもちろん、支部長の皆さんも圧倒されたと思います。
支部長研修会でお話をいただいた内容は一般公開を前提としていないので、公開はできませんが、義高さんが全国大会で発表された内容については、ユーチューブで公開させていただいています。
支部長発表
リンパ癌と壮絶な闘いをされていた熊本県支部の上田支部長は、見事に癌を克服され、今回の研修会に元気な姿でお越しくださいました。癌との闘いの日々や熊森活動への熱い想いを語られました。
今や、日本人の半分が癌にかかる時代です。明日は我が身。参考になりました。上田支部、貴重な克服体験をありがとうございました。熊森は今も昔も、みんなで信頼し合いお互いに思いやり励まし合う温かい家族です。
その後、各支部長から支部活動報告があり、課題の共有が行われました。
支部活動の歴史が一番長い滋賀県支部の村上支部長の発表には、目を見張りました。すごく大きく活動されているな、すばらしいなと思いました。
本部同様、どんな活動も一朝一夕に実るわけではなく、息の長い粘り強い活動を根気強くみんなで仲良く続けた者たちだけが、ついに大輪を咲かせるのだと感銘を受けました。
22時から24時までは、開放された食堂での自由時間。支部長間の親睦が深まったと思います。
2日目
16日朝 9時30分~10時30分 支部から17名、zoomで8名が参加
室谷会長と本部職員から支部活動や支部の運営等に関しての話がありました。
最後に、再エネ森林破壊問題を担当している本部スタッフより、この日の午後から見学する予定となっている三重県青山高原の風車群についての事前説明と見学ポイントのレクチャーがありました。とてもよくまとまっているので、皆さんも動画でご覧になってください。
三重県青山高原の風車群について
レクチャー中のスタッフ
16日午後からは支部代表13名や新城市の市議会議員の方々、本部スタッフらで三重県の青山高原を訪れました。案内してくださったのは、地元で風力発電の反対運動を長年続けておられる武田恵世氏です。
国定公園である青山高原には現在89基の風車が建っており、異様な光景が広がっていました。風車はメカ上とても故障しやすいそうで、故障しては直すを繰り返しています。一番古い風車群は20年を経過しており、新しい風車に置き換えるために停止していました。
青山高原に居並ぶ異様な風車群
青山高原の現状を見学
異音を放つ巨大風車
古い型の風車だからでしょうか。ブレードは回転するたびに「ブーン、ブーン」と大きなローター音を響かせます。加えてブレードが時速200km以上のスピードで空気を切り裂く音が重なります。とても居心地の良い場所ではありません。参加者の中には早くも体調不良を訴える方が数名出ました。
巨大風車
健康被害もさることながら、切り開かれた高原はあちこちで崩れてきており、環境への悪影響は計り知れません。事業者は、崩れた個所はその都度修理していると言いますが、過去に斜面崩壊が起きた箇所の修復工事は応急的なもので、今後また崩れてしまうだろうと感じました。野生動物たちはこんな環境では、とても暮らせないだろうと感じました。生物多様性の喪失です。
あちこちで斜面崩壊が起きており、国定公園なのに林道使用不可
百聞は一見に如かず。参加された皆さんは風車が建設されるとどうなるか、実感できたと思います。(完)
初めて参加された支部長の感想 要旨
青森県支部長 石戸谷 滋
4月14日の午後から日本熊森協会の全国大会、同日夜と翌日午前には支部長研修会、午後からは三重県青山高原の風力発電現場の視察、私はそのいずれにも参加しました。
全国大会は、尼崎市の「ホテルヴィスキオ尼崎」で行われました。大会には各県の支部長の他に数名の国会議員も来賓として出席されており、これが熊森がその存在を世間に訴える場なんだなあと感じました。今年の大会は「東北地方の森林破壊型再エネ事業の阻止」をテーマとしていて、宮城県の代表たちの他に、私も「みちのく風力発電事業」の現在の状況を伝える5分間程度のスピーチを行いました。
全国大会終了後、本部スタッフと支部長たちは「新大阪ユースホステル」に移動、そこで支部長研修会が開かれました。対外的な宣伝の場である全国大会から、実質的な打ち合わせの場である支部長会議に移ると、会場も質素なユースホステルに変わったわけです。関西らしいと思いました。
支部長研修会では、何と言っても、宮城県丸森町耕野地区で大規模太陽光発電事業に反対する本気の運動を繰り広げている義高(よしたか)光さんのレクチャーに圧倒されました。
義高さんはまず「事業者に正面切ってのイデオロギー論争を挑んでも、勝ち目はない」と言い切りました。彼らは反対運動の論点を知り尽くしていて、最初からそれを無視するつもりでいるからです。ならばどうすればいいかということを、経験をもとにおはなししてくださいました。
(内容非公開)
勉強になりました。
支部長交流会で得たもの
(省略)
翌16日、一行は三重県の「青山高原ウインドファーム」を見学しました。案内してくれたのは、地元で風力の反対運動を繰り広げている武田恵世さんという歯医者さんでした。この人がまた徹底して風力のことを調べているのです。(「自然エネルギーの罠 化石燃料や原子力の代わりになり得るエネルギーとは何か」という著書もあります。)
青山高原風力発電所には、現在91基の風車が設置されています。建設後20年以上が経つ750kWの小型のものから、5年前に建てた2,000kWのものまで、混在しています。
見学当日は、私にはかなり強い風が吹いているように感じられ、風車もよく回っていました。でも、この程度の風では、発電はするものの、送電にまでは至らないだろうと武田さんは言います。少々の発電では、送電する意味がないのだそうです。つまり、この日のような風の弱い日は、このウインドファームの出力はゼロになります。ではどのぐらいの風が吹けば送電できるの? 傘がさしにくいぐらいの風が必要だが、それはめったに吹かず、1週間にせいぜい1日半ほど、設備利用率は20%以下で、しかも2,000kWという定格出力で発電する時間はさらにその10~20%程度に過ぎないのだそうです。
業者はどこも発電実績を非公開としています。あまりに低すぎることがバレないようにでしょうか。そして、対外的には、定格電力で発電しているとして数字を出しているようです。こんなカラクリがあったのかあ。
では中部電力の子会社はなぜこれを建てたのか? 「うちはクリーンエネルギーに力を注いでいます」という宣伝をして建設するだけで儲かるからです。再エネの裏側を見せられ、ちょっとばかばかしくなりました。
この発電所の敷地および取付道路の風化も見てきました。そこは毎年いくつもの小さな土砂崩れが起きているそうで、10年、20年というスパンで見るとひどい劣化になっています。風力事業者の説明会のとき、副社長が「風車を建設すると確かに自然破壊が起きるが、それは建設するときだけの話だ」と言いましたが、ああ、あれは嘘だったのかあ・・・。山を削って何か大きなものを造るとき、そこでは継続的に自然破壊が進むのですね。
再エネを規制する条例について。現在、太陽光発電を規制する条例が全国で約200件、太陽光と風力の両方を規制する条例が数十件できているそうです。弁護士でもある室谷会長によると、「条例で再エネを規制するのは違法ではない」そうです。
ドイツやデンマークなどは概して日本よりも風が強く、山地が少ないため、日本より風車の発電に適しているそうです。洋上風力発電も、海が遠浅であることで、比較的造り易い。けれども、ヨーロッパでも再エネ発電が成功しているとは言い難いそうです。
メディアを使っての大々的な(自然にやさしいという美しくてきれいな)キャンペーンによって、再エネの本当の姿が市民には見えにくくなっている感じがする、と室谷会長。
いま無理やり進めている再エネ化のしっぺ返しがいずれ来ると思っておいた方がいいかもしれません。