くまもりNews
新たな「認定失効制度」により、FIT認定が取り消されたメガソーラー計画地の山々
- 2023-05-25 (木)
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再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)制度が創設されて今年で11年となります。
この間、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)からFIT認定を受けたものの、運転開始期限を過ぎても運転が開始されない事業案件が多くあります。
原因は、事業者がもうけを多くしたいため、ソーラーパネルの価格が下がるのを待っていたり、最初から発電事業に参画する気などないがFIT認定を取っておいて認定を転売してもうけようとしていたり、土砂災害、景観、自然環境破壊を懸念する地域住民との紛争が続いており、事業者が工事の着工や運転開始ができない状況に陥っているなどです。
これらの事業について、これまで国は様々な措置を取ってきましたが、ついに2022年4月1日、「認定失効制度」の施行に踏み切りました。
対象は、主に10〜50kWの太陽光発電事業者で、認定は取得しているが運転を開始していない場合は認定を失効させるという制度です。
これにより、2023年4月以降、エネ庁は順次認定失効物件を発表し始めました。約6万7000件以上が認定失効となるとみられています。ほとんどがこまごまとした案件だったと思われますが、この中で、認定が失効された2つの大規模メガソーラー(発電量が1MW=1000kWを超えるもので、1ヘクタール以上の敷地が必要)について、予定地の山々を見てみましょう。
(1)奈良県山添村メガソーラー
(事業面積81ヘクタール、甲子園球場の21倍の広さ)
奈良県北東部に位置する人口約3500人の山添村は、村の8割を山林が占めています。
2019年突然、村の東側の山肌に奈良県最大というメガソーラー建設計画が持ち上がりました。
守られた山添村メガソーラー計画予定地の山 MBSのテレビNEWS2021年より
山添村では30年前、この山にゴルフ場計画が持ち上がったことがあるそうですが、飲料水がゴルフ場の農薬で汚染されるとして、みんなで阻止したということです。今回、メガソーラー計画に反対する住民ら約1600人が署名を村に提出し、村議会でも全会一致で「同意なき計画への反対」を決議していました。
(熊森は、この問題を取り上げてくださったMBSテレビに拍手を送りたいと思います。これでこそ、マスコミの価値ありです)
(2)さいたま小川町メガソーラー
(事業面積86ヘクタール、甲子園球場の22倍の広さ)
事業者である小川エナジー合同会社は、官ノ倉山と石尊山の一部に太陽光パネルを敷こうとし、約72万立法メートル(熱海土石流の盛り土の10倍以上)という大量の盛り土を行い、その約半分にあたる土砂を外から搬入するという計画でした。この点を問題視した経済産業相は、事業者による環境アセス準備書に対し、抜本的見直しを求める異例の勧告を行っており、注目されていました。
熊森から
どちらも熊森が大変胸を痛めていた事業案件です。
直接的には広大な生息地を破壊され、イノシシをはじめ山に住む様々な動物たちが生きられなくなります。
もちろん、地域住民の安全で安心な生活が脅かされます。
しかし、どちらもFIT認定(≠許可)を受けているとして、業者は強気。再エネ事業は合法ですから、どうして事業を中止させるのか、地元住民には難題です。裁判所は違法か合法か判断するだけですから、裁判所に訴えても合法物件には勝てません。
今回、認定失効に至ったのは、地域でふるさとの山を守ろうと粘り強く事業阻止運動をし続けた勇気ある人たちがいたからです。議会や首長もがんばったんだろうと思います。
降ってわいたような自然破壊事業を止めるため、自腹を切って、時間や膨大なエネルギーを使い、1円にもならないことのためにがんばり続けたふるさと愛にあふれるみなさんを、熊森は心から讃えたいと思います。「今だけ、金だけ、自分だけ」の今の日本で、他生物や次世代のことも考え、業者から提示されたお金に目がくらまない日本人もまだまだいる、心強い限りです。
無謀な再エネ事業に対し、泣き寝入りしかないとあきらめておられる全国の多くのみなさん、どうぞ勇気を出してNOの声を上げてください。熊森が事務局を務めている再エネ問題連絡会にご加入ください。(会費無料)自然破壊事業の止め方を伝授させていただきます。
祖先が守ってきた山を、たった20年間の固定資産税欲しさに半永久的に破壊してしまう。こんな失敗をしないように、共にがんばりましょう。心ある国会議員たちも、今、国土保全をめざしし、再エネ法規制に動いてくださっています。
太陽光発電は駐車場の屋根や都会のビルの屋上など、新たな自然破壊を伴わないところで実施していただきましょう。
駐車場に設置された太陽光パネル ネットより
業者はこの後この事業をどうするのかわかりませんが、白紙撤回されるまで、熊森は見届けたいと思います。
山なくして人なし、山あっての人間。(完)