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ひともクマも放っておけない 八幡平クマ牧場を熊森本部が急遽訪問 5月21日⑥

クマは、広大な山野を駆け巡って初めて生を全うできる動物です。そのため、クマは、人間が飼えるような動物ではありません。人間がクマを飼うことを許されるのは、クマを保護するためにやむをえなかったときだけです。戯れに、又は、お金儲けの為にクマを飼うことを、当協会は認めておりません。飼えば、必ずクマが不幸になるからです。

当協会は、野生グマの保護活動や奥山保全・再生活動に全力を挙げて取り組んでおり、連日手がいっぱいです。八幡平クマ牧場に取り残されている29頭のクマたちのことは、心配でずっと気になっていましたが、残念ながら食料援助を少しするぐらいしか余力がありません。事件後直ちにトウモロコシ粉を200キロ送ったものの、餌は足りていると言われたので、それきりになっていました。秋田県庁やNPO法人が関わってくださっているということで、何とか助けてやってもらえるようにと祈るような気持でいました。

飼育員が亡くなられたあと経営者と県庁職員が飼育作業に入っているが、少人数であり作業が大変だということを聞いて、秋田県と岩手県の熊森会員のみなさんに、どなたかボランティで飼育補助に駆け付けてあげていただけませんかと連絡をしたところ、ある会員の方から、「行ってきましょうか。ただし、雪の具合はどうかきいてもらえませんか」という電話が入りました。

初めて牧場経営者に電話をしたところ、長話になりました。この方は、平成20年から八幡平クマ牧場の第4代目経営者となられたそうです。当時破たんした八幡平クマ牧場を親子4人で見に行って、クマってかわいいなと、家族一同、クマたちにほろっとしてしまったのだそうです。他に本業があるので、残されたクマたちを助けてやろうと思われたそうです。しかし、クマ牧場の経営は、昭和62年開設当時のクマで大儲けできた頃とは世の中が変わってしまっており、本業からの収入を注ぎ込んでも注ぎ込んでも赤字が膨らむ一方。完全に破たんして、追い詰められ、閉園を宣言したところに、今回の事件。

いつの世でもそうですが、こういう時、高見の見物を楽しんでいるだけの心ない人々からの誹謗中傷が追い打ちをかけます。熊森も、何度もそのような悲しい経験をしたことがあるので、身につまされました。経営者の方は気丈に話されてはいましたが、クマたちを貰ってくれる所は全く見つかっておらず、本業と29頭のクマの世話との2足のわらじもあって、参ってしまっておられるのが伝わってきました。

ひともクマも放っておけない。

「熊森本部がまず、急遽秋田に行きます」というと、「来てくれるのか。うれしいよ」経営者の方が、電話の向こうで笑顔になられたのが感じられました。東電だって、銀行だって、破たんしたら国から助けが入る。それが人間社会じゃないか。面倒を見てくれるクマ牧場を探して、1頭でも多く保護してもらって、どうしても残ったら八幡平で終生保護飼育するしかないだろう。熊森に何ができるだろうか。まず行ってみよう。クマ29頭だなんて、とてつもなく大変な問題だけれど、相手はクマなんだから、やはり熊森が動かなくてどうする。取るものもとりあえず、5月21日早朝、本部からの2名が、神戸空港から秋田に向かいました。(続く)

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