くまもりNews
8月20日 読売新聞 クマ出没 今夏相次ぐ…京都府北中部の里山
京都府北中部の里山でツキノワグマの出没が今夏、相次いでいる。丹後、中丹5市では、すでに4月以降で302件の情報が寄せられ、昨年度1年間の件数(221件)を上回っている。今秋は、エサになる広葉樹の実の生育が悪くなる見通しのため、秋頃まで頻繁に民家周辺に出現する可能性が高まっており、府や市町が注意を呼びかけている。
各市によると19日までに、京丹後市79件(昨年度72件)、宮津市67件(同54件)、綾部市55件(同41件)、舞鶴市52件(同36件)、福知山市49件(同18件)。府丹後広域振興局によると、与謝野町では103件(同24件)。昨年度93件だった南丹市は11件だが、府南丹広域振興局によると、同市美山町で、クマがワナにかかったシカを襲っている様子を猟師が目撃したケースがあったという。今夏、目撃が増えていることについて府森林保全課は「明確な理由は分からない」という。
民家・農産物被害 山の実少なめ、秋も懸念
人的被害の報告はないが、民家、果樹園、ハチミツなどが被害に遭う例が出ている。
福知山市大呂では17日午後9時頃、1頭をおりで捕獲。その後、山林にかえしたが、同地区では、山際に設置された鶏舎が同日朝に荒らされ、ヒナ50羽が被害にあったばかりだった。同市夜久野町畑でも12日朝、ハチの巣を狙ったクマが民家外壁を壊す被害があった。
京丹後市でも久美浜町で、桃や梨などが荒らされる報告があった。これまでに4頭を捕獲し、常習性が見られなかったため、いったん山にかえしたが、市は出没を知らせる看板を出現場所付近に立て、注意喚起している。
中丹、丹後、南丹の各広域振興局は「発情期にあたる6月が近年では目立って多く、里山だけでなく、これまで以上に民家周辺で出没している」と分析している。
秋以降も出没は増えそうだ。クマの出没を予想するため、毎年9月、山林で広葉樹の生育状況を調査している府森林技術センター(亀岡市)によると、昨秋はブナやコナラ、ミズナラ、ヤマグリの実が多かった。ブナは実を多くつけると、その後、数年は実が少なくなり、他の木々も実が隔年で、多くつけるのと少ないのを繰り返す傾向がある。
今秋は山の実が少なくなりそうなことに加え、夏場に「人里にはエサが豊富にある」と“学習”したクマが、例年以上に秋にも下りてくる可能性が高まっている。
各市町は、餌になるものを屋外に放置しておかないことや、農作業や山に入る際はラジオや鈴など、音の出るものを持っていくよう呼びかけている。
京都府内のツキノワグマ
府によると、京都市北西部から兵庫県に隣接する福知山市夜久野町や京丹後市久美浜町にかけての山林に生息。200~500頭と推定されている。府レッドデータブックで絶滅種に次ぐ絶滅寸前種に指定。捕獲されても、住民に危害を加えるおそれが高くない場合は、山にかえす措置がとられている。
(2010年8月20日 読売新聞)