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「クマが襲ってきた」発行:秋田魁新報社 

秋田県が平成28年度、478頭ものクマを駆除したことを知って、許せない思いがしていました。

こんなことになったのは、鹿角市でのクマによる死者4名事件に秋田県民が過剰反応した結果だろうと思いこんでいました。

当協会としては、事件当時、秋田県の行政や森林管理署に、連日、手当たり次第に電話をして、「ただちにタケノコ採りの入山禁止措置を!」と、お願いし続けた経緯があります。しかし、秋田側の動きは遅くて、そうこうしているうちに次々と死傷者が増えていきました。私たちには苦々しい思い出です。

 

秋田県会員から、秋田魁新報社が昨年末に「クマが襲ってきた」という本を出版したので読んでみてほしいという連絡が入った時、題を見て、またマスコミはクマを一方的に悪者にしているのかと、少し不愉快な思いになりました。

 

この度、熊森の理事から偶然この本が送られてきたので、読んでみました。そして、これまでの秋田の事件への自分の一方的な思いを深く反省しました。

やはり兵庫県から遠く離れた秋田の事です。自分ではわかったつもりになっていましたが、わかっていなかったことがたくさんありました。やはり現地の声を聞くことが大切です。

いろいろと教えられ、考えさせられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

秋田魁新報2016報道ファイル(さきがけブックレット)

 

題に関しては、読後も抵抗がありますが、内容は非常に誠実でよくできており、いい本です。もちろん、熊森としては、秋田県はクマを殺さない対応をもっと追求すべきだという思いは残りました。

 

感想が2つあります。

 

秋田の奥山の異変について

去年、秋田の集落に出てきたおびただしい数のクマや、クマを集落へ誘引した物については良くわかりました。しかし、これまでクマたちが棲んでいた秋田の山の状況が、今どうなっているのかの調査報告がありません。クマの行動に異変が起きたのなら、秋田の山にも異変が起きているのではないかと思えます。ミズナラが大量に枯れているとか、昆虫が消えているとか・・・。

集落側の過疎化高齢化がクマの出現を許しているという面はもちろんあると思いますが、クマ問題を考えるには、クマが出てきた場所や出てきたクマばかり見ていないで、クマがこれまで棲んでいた山に異変が起きていないか目を向ける必要があると思います。

 

「狩猟」効果について

人とクマとの棲み分けを復活させることは最重要ですが、そのために「現代狩猟」は必要でしょうか。疑問です。

クマが人間を怖いと思い、人間を避けるように仕向けるというのは、確かに必要だと思います。昔のマタギ的な「狩猟」なら、大勢の人間に追い掛け回されて逃げ終えたクマが人間を恐れるようになる効果はあったと思います。

しかし、今の銃には望遠鏡がついておりライフルの性能も飛躍的に発達しています。狩猟といっても、もはや人間はクマを追いかけず、クマが人間を人間と認識できないまでに遠く離れた所から100発百中でクマを撃つと以前聞いたことがあります。

クマにしたら、人間に狙われたことがわからないなら、人間を怖がることにつながりません。しかも、殺してしまったら、人間を恐れるクマは誕生しません。その上、棲み分けることが大事なのに、山奥にハンターが入ってきてクマを狩猟すれば、クマはどこにいたらいいのかわからなくなってしまいます。

もし、奥山に豊かな自然が残っていれば、ハンターが銃で脅しながら、クマを追い掛け回して奥山に追い上げることには意味があると思います。

「現代狩猟」の棲み分け効果について、国民的議論が必要だと思います。

 

<最後に>

鹿角の事故で79才のご主人を亡くされた女性が、「クマばり悪りと言われね。クマも命さもらってこの世さ来て、生きねばねえんだもの。じいさんとばったり会って、びっくりしたんだべ。かじるか引っ掻くかしかできねえ生き物だもの。クマも真剣だ。恨む気なんてないです」と答えておられるのを読んで、会いに行って手を取り合いたいほど、共感しました。必死に生きている生き物たちの身にもなって考えられる、このような自然観が、私たちの祖先の文化なのです。

 

秋田県鹿角市のクマによる死者4名事件に関心をお持ちの方は、ぜひ、ご一読されますようお勧めします。

秋田魁新報社のみなさん、これだけの本を作られるのは大変だったと思います。この本を作って下さったことに、心から感謝します。

日本にも、まだ、このようにまじめな本を作ってくださる記者さんたちがおられることを知って、うれしくなりました。

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